はじめに
みなさんこんにちは。
『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』はセレズニアポイズンが制したわけですが、それから2週間経ちスタンダードには変化が生じています。毒々しい世界は浄化されたのでしょうか。
今回は3/18(土)に開催された『Standard Challenge』の大会結果を振り返っていきます。
注目トピックは?
セットのコンセプトを前面に押し出したセレズニアポイズンは、1マナ域から始まる展開力に毒カウンターを絡めた超速攻戦術であり、対ミッドレンジを念頭に構築されていた既存のデッキは圧倒されるばかり。ゲームレンジの違いが与える影響をまざまざと見せつけられました。最終的に優勝を果たし、セレズニアポイズンはこれ以上ないセンセーショナルなデビューを飾ったわけです。
そこから2週間が経過し、ミッドレンジのサイドボードには決まって全体除去の姿があります。
採用されているのはセレズニアポイズンを中心に、アゾリウス兵士などのアグロにも効果が高いカードがズラリと並びます。どのカードも1枚でボードを綺麗に掃除してくれますし、《一時的封鎖》にいたっては《スクレルヴの巣》までまとめて追放してしまいます。どうやらミッドレンジデッキは、メタゲームからダニを駆除しようと本腰を入れはじめたようです。
セレズニアポイズンを支えていたのは単体除去に対する強さです。2マナの除去ですらテンポ損してしまうクリーチャーの軽さ、採用率の高い除去の当たらないサイズやタイプ、そしてそれらを保護する《タイヴァーの抵抗》。ほかにも《タミヨウの保管》や《ロランの脱出》など単体除去に対するガードはいくらでもあげられるものの、全体除去に対する有効な解答はありません。
一時は、オンライン大会でグリクシスミッドレンジに次ぐ2番手まで勢力を拡大していたセレズニアポイズンですが、そこから急降下。現在は苦しい時間帯となっています。
厳しいマークにあっているセレズニアポイズンの希望の光となっているのが《潜伏工作員、アジャニ》です。一度リセットしまった場合のボード再構築の足掛かりとなり、+1/+1カウンターをばらまくことでダメージやマイナス修正除去を回避する助けにもなります。何よりもプレインズウォーカーであるため、対処手段が限られているのも嬉しいところ。奥義までたどり着ければ、戦闘せずに毒勝ちを狙えるようになります。
《潜伏工作員、アジャニ》により、セレズニアポイズンは復権することができるのでしょうか。それでは大会結果をみていきましょう。
3/18(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | That0neKid | エスパーレジェンズ |
準優勝 | CSwicky97 | エスパーレジェンズ |
トップ4 | unagieel | 白単ミッドレンジ |
トップ4 | FerMTG | 青単テンポ |
トップ8 | Vonducky | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | Salvatto | 白単ミッドレンジ |
トップ8 | Rhianne | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | Sorento04 | グリクシスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
3/18(土)の『Standard Challenge』はエスパーレジェンズを使用したThat0neKidが制しました。メインボードから《スレイベンの守護者、サリア》と《婚礼の発表》が共存する新たな構築となっています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 10 | 4 |
エスパーレジェンズ | 9 | 6 |
白単ミッドレンジ | 2 | 2 |
オルゾフミッドレンジ | 2 | 2 |
青単テンポ | 2 | 1 |
その他 | 7 | 1 |
合計 | 32 | 16 |
メタゲームの中心は再びグリクシスミッドレンジへと戻ったわけですが、エスパーレジェンズと白系ミッドレンジがそのタイミングを狙っていました。白単、オルゾフは全員がトップ16以内に入るほどです。
トップ8デッキリストはこちら。
エスパーレジェンズ(10位)
エスパーレジェンズはエスパーミッドレンジの中でも非クリーチャー呪文を減らし、デッキの半数近くを伝説のクリーチャーが占めている構成となっています。
《スレイベンの守護者、サリア》《敬虔な新米、デニック》といった戦闘に特化した対グリクシスミッドレンジ用のメタクリーチャーを、《離反ダニ、スクレルヴ》や《策謀の予見者、ラフィーン》でバックアップしていきます。3色かつ1ターン目から動くデッキですが、《英雄の公有地》とファストランドがあるため、非常に安定しています。
今回ご紹介するのは、メインボードから《スレイベンの守護者、サリア》と《婚礼の発表》が同居する新しいタイプ。『ヨーロッパの地域チャンピオンシップ』にArne Huschenbeth選手やThoralf Severin選手らが持ち込み大きな戦果をあげたエスパーレジェンズです。
Four players. One list. 2nd, 3rd, 18th, 39th.
— Arne Huschenbeth (@Huschenmtg) March 13, 2023
Big thanks to Nico Bohny and Lukas Honnay for tuning the deck to perfection!
Congrats to the best travel partner for making Worlds!
And thanks to Eddy Mucha for putting the whole Crew together!#LECNaples pic.twitter.com/nxmMxP6dW6
既存のアーキタイプへ加えられたスパイスは《婚礼の発表》と《剃刀鞭の人体改造機》の2種類。これまでエスパーレジェンズは《スレイベンの守護者、サリア》との兼ね合いからメインボードの非クリーチャー呪文は数枚の《喉首狙い》や《切り崩し》とされていましたが、大胆にも4枚採用されています。
《婚礼の発表》はクリーチャー主体のデッキにあって角度の違う攻め手であり、対処の難しさが上げられます。《かき消し》や《絶望招来》など対処できるカードはありますが、序盤から迫りくるエスパー側のクロックを的確に捌きながら《婚礼の発表》に備える余裕はありません。《スレイベンの守護者、サリア》が対処された際の二の矢であり、《策謀の予見者、ラフィーン》頼みだった3マナ域を埋めてくれています。
グリクシスミラーでよく見る《剃刀鞭の人体改造機》は、攻撃的なエスパーレジェンズの戦略に噛み合う2マナ域。追放除去の少ないグリクシスでは対処が難しく、《削剥》や《切り崩し》されようともマナさえあれば何度でも戦場へと戻ります。《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」で捨てたり、《屍術の俊英、ルーデヴィック》や《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の「切削」で直接墓地へと落としてカードカウントを稼ぐこともできますね。
現環境のデッキの中でファストランドの恩恵をもっとも受けたのは、間違いなくエスパーレジェンズです。《金属海の沿岸》と《闇滑りの岸》を得たことで3色デッキながら《ラフィーンの塔》の不採用に成功し、《離反ダニ、スクレルヴ》→《スレイベンの守護者、サリア》→《策謀の予見者、ラフィーン》といった円滑な展開が可能となりました。後引きするタップイン土地に泣かされる日々は終わりを告げたのです。
《悪意ある機能不全》はセレズニアポイズンなどのアグロ対策。ブロッカーとして機能せず低タフネスな《剃刀鞭の人体改造機》などと入れ替え、横に並んだ小粒なクリーチャーを一掃してボードの切り返しを狙います。
白単ミッドレンジ(3位)
白単ミッドレンジは《神憑く相棒》や《婚礼の発表》のようなアドバンテージのとれるパーマネントを軸に構築されたデッキです。1枚で複数のトークンを生成してくれるためボード上の攻め合いで強く、単体除去に耐性を持ちます。《軍備放棄》や《骨化》といった軽量除去も多く、その守りはまさに鉄壁。
強固な守りから繰り出されるフィニッシャーには、これまた破壊効果に強い《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といったパワーカードが据えられています。
今回ご紹介する白単ミッドレンジは、ファストランドの加入で大いに強化された多色デッキのマナベースを狙った構築となります。
現在のスタンダードにはグリクシス、エスパー、ジャンド、さらに《偉大なる統一者、アトラクサ》ミッドレンジなど3色以上のデッキが少なくありません。《ザンダーの居室》、スローランド、ファストランド、ダメージランドと1枚で複数の色マナを生成できる土地は数多あり、これらを限界まで採用することで非常に安定したマナベースが構築できるためです。
今回3位に入賞した白単ミッドレンジは《廃墟の地》《解体爆破場》を使い多色デッキのマナベースを攻め、色マナを枯渇させてしまいます。多色土地が強すぎるがゆえに基本土地は隅へと追いやられ、採用枚数はせいぜい2枚が限度。つまり、3枚目の《廃墟の地》からは一方的な《不毛の大地》となるのです。能力を起動すればいつでも《平地》を出せるため、ほかの能力付きの土地と違って《軍備放棄》との相性もグッド。
序盤からマナベースを攻めていきますが正直なところ8枚では足りません。そこで目を付けたのは《永岩城の修繕》です。一度使った《廃墟の地》を再利用しつつ、さらにダメージソースにもなってくれます。
度重なる土地破壊によりマナ差がつけばいよいよフィニッシャーの出番です。通常の白単ミッドレンジでは《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》ですが、徹底してマナベースを攻めていくため《セラの模範》が4枚採用されています。この天使から《永岩城の修繕》や《解体爆破場》を繰り返しプレイすれば、相手の戦場は焦土と化してしまいます。
白単ミッドレンジは防御網の構築にやや時間がかかるため、セレズニアポイズンのような軽く数で攻めてくるデッキを苦手としています。《一時的封鎖》はクリーチャーのみならず、土地以外のパーマネントを対処できる万能全体除去。《スクレルヴの巣》ごと相手の戦場を一掃し、あとは悠々と後続を対処していきましょう。
上記の白単ミッドレンジと同一コンセプトで、黒がタッチされたオルゾフミッドレンジのリストも併せて掲載いたします。メインボードの《無形の処刑者、ケイヤ》は重いものの、呪禁を持っているため戦場に出る前にしか対処できません。対象をとならない《絶望招来》で除去しようにも、《廃墟の地》でマナベースを攻められたうえで5マナまでたどり着くのは至難のわざ。多色ミッドレンジ相手には必殺の1枚となります。
おわりに
今回はセレズニアポイズンを克服し、グリクシスミッドレンジを意識した2つのミッドレンジをご紹介しました。マナベースを狙う白単ミッドレンジには既存の構築では対応するのが難しく、一度ハマってしまうと抜け出せません。MOのみならずMTGアリーナのラダーでも見かけるデッキであり、注意が必要です。
それでは次回の情報局でお会いしましょう!