はじめに
みなさんこんにちは。
ついに『機械兵団の進軍』の全カードリストが公開となりました。新メカニズム「バトル」はどんな活躍をみせるのか、今から楽しみです。
さて、2月から行われてきたパイオニアによるチャンピオンズカップ予選も大詰めを迎えています。ネオフォームが登場するなど話題に事欠かないパイオニアですが、現行のカードプールでの開催は今週末を残すのみとなります。
週末の予選に向けて、今回もパイオニアの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
前回の集計で使用者数上位にいたのはラクドスミッドレンジ、アゾリウスコントロール、緑単信心、アブザンパルへリオン、グルールミッドレンジの5つのアーキタイプでした。アグロ~コントロールまでさまざまな戦略が同居し、さらに複数のコンボデッキまで存在しているパイオニアですが、極端な有利不利がつかないフェアデッキに人気が集中していました。
ですが、先週末の結果ではその傾向に変化が生じています。
(編集者注:上記の表は、2つのプレミアム予選での合計使用者数が3名以上のデッキタイプのみを表示しています。また、縦軸は大会ごとのメタゲームを、横軸はプレミアム予選での各デッキタイプ使用者数の合計を表しています)
ラクドスミッドレンジは不動の首位となっているものの、注目すべきは2番手以下です。最近勢力を伸ばしているアブザンパルへリオンはコンボデッキの中では始動ターンが早く、かつ安定しています。機体を落として釣るだけのシンプルながら強力な戦略であり、早さがものをいうコンボ対決でも一歩リードできます。
3番手まで数を伸ばしてきたのが人気沸騰中のエニグマファイヤーズ。ボードコントロールを得意としている対ラクドスミッドレンジ筆頭デッキです。ここ最近のプレミアム予選では抜群の安定感をみせており、トップ8に指定席を持っているといっても過言ではありません。事実、2月11日に開催された吉祥寺予選を除く、すべての晴れる屋のプレミアム予選でトップ8に入賞しています。
アブザンパルへリオン、エニグマファイヤーズといったデッキが増加したことで、対ラクドスをコンセプトに構築されていたミッドレンジは巻き添えくらってしまい、立ち位置が悪化しています。
グルール機体はその典型であり、フェアデッキゆえに戦場にあるマナ以上の動きはできません。マナ加速からの《無謀な嵐探し》+機体では、コンボデッキに対して速度でもボードでもスケールでも優位が取れず、一転して狩られる側となってしまっています。
この変化を受けて、今が使いどきとなっているのがアゾリウスコントロールやスピリットです。エニグマファイヤーズのようなキーカードのはっきりしたデッキやパーマネントを軸にした展開の遅いデッキが増えたことで、打ち消し呪文の価値が高くなっています。ラクドスミッドレンジに対して有利とはいかないものの、ラクドスミッドレンジを倒してきたコンボデッキなどを狩る立場にいます。事実、2大会で5名プレイヤーがアゾリウスコントロール(内1名のエスパーを含む)を選択してトップ8に入っていました。
それでは大会結果をみていきましょう。
チャンピオンズカッププレミアム予選 in 日本橋店
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | イトウ ハヤト | エニグマファイヤーズ |
権利獲得 | タカバ ユウマ | 白単人間 |
トップ4 | ヒガシダ ナオキ | アゾリウスコントロール |
トップ4 | ナカムラ コウキ | ネオフォーム |
トップ8 | ムラエ リュウジ | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | テラサワ ユウ | アゾリウススピリット |
トップ8 | クロダ マサシロ | アゾリウスコントロール |
トップ8 | イマイ チサト | アブザンパルへリオン |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者48名で開催されたプレミアム予選(日本橋店)はエニグマファイヤーズと白単人間が権利を獲得しています。トップ8にはアゾリウスコントロールとスピリット合わせて3名が入賞しており、打ち消し呪文有するデッキが結果を残しています。
アゾリウスコントロールは打ち消し呪文に加えて、《冥途灯りの行進》や《魂の仕切り》など優秀なパーマネント処理手段も有しています。パイオニアはクリーチャー中心のフォーマットであり、それはコンボデッキも同じです。ゴールまでの過程は別ですが、パルへリオン、ネオフォーム、独創力のいずれもフィニッシュ部分にはクリーチャーが使われています。そのため打ち消し呪文、インスタントタイミングでプレイ可能なパーマネント対処手段での二重対応となります。
トップ8デッキリストはこちら。
エニグマファイヤーズ
エニグマファイヤーズはデッキ名にもなっている《奇怪な具現》と《創案の火》によるコンボコントロールデッキ。《岩への繋ぎ止め》と《力線の束縛》によりクリーチャーデッキへのガードは厚く、ゲームをスローダウンさせて《奇怪な具現》設置を目指します。
デッキ内に起動型能力を持つカードがあり、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしているため、呪文のコストを踏み倒す《創案の火》は相性の良いカードです。
《奇怪な具現》が定着後はエンチャントをクリーチャーへと変換しながら戦場へ出た際の誘発型能力で差をつけていきます。たとえば《ナイレアの存在》をコストに《スカイクレイブの亡霊》を呼び出せば、カードを1枚引きつつ相手のパーマネントを除去できるわけです。フィニッシャーは《帰還した王、ケンリス》や《偉大なる統一者、アトラクサ》《空を放浪するもの、ヨーリオン》が務め、ボードと手札を圧倒していきます。
《奇怪な具現》に依存した戦略のため、デッキを掘り進めるエンチャントが優先して採用されています。《苦々しい再会》《ナイレアの存在》は2マナと軽くドローできるエンチャントであり、《奇怪な具現》設置後は相手に合わせて妨害クリーチャーなどへと姿を変えます。《苦々しい再会》は速攻を付与できるため、タイムラグなく《キキジキの鏡像》の起動型能力を使えることを覚えておきましょう。
複数のキャントリップエンチャントに加えて確定サーチカードとして《月恵みのクレリック》が採用されています。手札ではなくライブラリトップに置くためもどかしさを感じますが、手札破壊の影響を受けない利点があります。
《力線の束縛》をはじめ、最近のエキスパンションにより強化されたデッキです。《機械の母、エリシュ・ノーン》はミラーマッチのキークリーチャーであり、着地したが最後、誘発型能力を封じられてしまうためデッキ自体が機能しなくなってしまいます。活躍するマッチアップは限られていますが、エニグマファイヤーズ自体が人気でミラーマッチが多くなっているため、今ならば採用し得なクリーチャーといえるでしょう。
ネオフォームに続き、ここにも《偉大なる統一者、アトラクサ》の姿があります。『団結のドミナリア』で《力線の束縛》が収録されたことで7マナクリーチャーを採用できるようになりましたが、同コスト帯はクリーチャーの激戦区。ボードコントロールの《龍王アタルカ》、パーマネント処理の《産業のタイタン》、コントロール奪取の《裏切りの工作員》などの選択肢があります。
《偉大なる統一者、アトラクサ》はボード処理ではほかに劣りますが絆魂と警戒によりダメージレースに強く、圧倒的なリソース補充能力は唯一無二となります。万が一引いてしまったとしても、デッキの構成上手札からもプレイ可能です。
アゾリウススピリット
アゾリウススピリットは軽量の飛行クリーチャーと打ち消し呪文を組み合わせたクロックパーミッションの一種。序盤からライフ攻めていく攻撃的なスタイルながら、打ち消し呪文があることでコンボデッキや重くソーサリータイミングでしか動けないデッキ相手を得意とします。デッキ内のクリーチャーをスピリットに統一しており、部族固有のカードの恩恵を最大限に受けられるように構築されています。
クリーチャー自体の線が細く、軽量除去の多いデッキを苦手としますが、コンボデッキが増加傾向にあるためメタゲームに適したした選択といえます。
アゾリウススピリットを代表するクリーチャーといえば《呪文捕らえ》にほかなりません。妨害要素とダメージクロックをセットにした攻防一体の存在であり、《大牙勢団の総長、脂牙》や《奇怪な具現》《大勝ち》《異形化》など環境にあるキーカードのほとんどをカバーしています。
しかも対象にとった呪文を「打ち消す」ではなく「追放する」ため、打ち消し呪文泣かせの《至高の評決》や《引き裂く流弾》も対処できます。定着後は《鎖鳴らし》などで守りながら、速やかにダメージレースを制しましょう。
《霊灯の罠》はスピリットデッキ限定の《マナ漏出》。早ければ2ターン目からプレイでき、ソフトカウンターながら要求するマナが多く、 中盤以降も打ち消し呪文としての役割を失いません。確率は低いものの、1マナクリーチャー+《執着的探訪》+《霊灯の罠》のブン回りパターンもあり、必須の打ち消し呪文となります。
パイオニアには墓地対策カードが複数ありますが、そのなかでもっとも強力なのは《安らかなる眠り》です。着地した瞬間に墓地にあるカードと、それ以後置かれるカードすべてを追放します。つまり、対処しない限りは墓地を活用することすらままならないのです。このカードを採用できるのも白いデッキの利点といえます。
《厳しい試験官》といえば、一時期アゾリウスコントロールで《睡蓮の原野》のコストを踏み倒すコンボで見かけましたが、ここでは対策カードとして採用されています。軽量の《機械の母、エリシュ・ノーン》ともいえるクリーチャーであり、エニグマファイヤーズは機能停止に追い込まれてしまいます。2マナを支払えば能力自体は解決されますが、上空からダメージレースをしかけるスピリットの群れが時間を与えてくれません。
そのほかの大会結果
チャンピオンズカッププレミアム予選 in トーナメントセンター 大阪
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | オオハシ ヨシヒロ | アゾリウスコントロール |
権利獲得 | ホリ マサタカ | エニグマファイヤーズ |
トップ4 | フクドメ ユウ | エスパーコントロール |
トップ4 | クスノキ イオリ | アゾリウスコントロール |
トップ8 | ハンヌキ ユウヤ | グルールミッドレンジ |
トップ8 | カトウ ヒロム | 緑単信心 |
トップ8 | ウメモト タカヒロ | エニグマファイヤーズ |
トップ8 | セノオ タケシ | 呪禁オーラ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者112名で開催されたプレミアム予選(TC大阪)はアゾリウスコントロールとエニグマファイヤーズが権利を獲得しています。
トップ8に入ったグルールミッドレンジは《エシカの戦車》を《探索する獣》と入れ替え、さらにメインボードから《エンバレスの宝剣》を採用しています。メタゲームがコンボデッキへと傾くなかで、5ターン前後でライフを詰めきるショートレンジのゲームを意識しています。
セレズニアオーラは、呪禁クリーチャーへオーラを重ね貼りして強化する一点突破戦略です。単体除去が優先されるパイオニアにおいて、環境の隙をついた戦略であり、ボードコントロール呪文の大半が効きません。コンセプトこそしっかりしているものの、問題となるのは打点の伸び。いくらオーラをプレイしようとも《天上の鎧》か《きらきらするすべて》がなくては押し切るまでに時間がかかってしまいます。
《皇の声、軽脚》はほかのオーラから《天上の鎧》をサーチすることで打点不足を解決するとともに、状況に合わせた1枚挿しを探し出すシルバーバレット役を兼ねています。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回もプレミアム予選の結果をお伝えしてきました。ラクドスミッドレンジは最大勢力を保ってこそいますが、エニグマファイヤーズやアブザンパルへリオンからピタリとマークされています。アブザンパルへリオンに限っては《未認可霊柩車》や《真っ白》といったカードで対策可能ですが、エニグマファイヤーズは解決の糸口が掴めません。不利な相手がおらず万能デッキと謳われたラクドスミッドレンジでしたが、ここにきて追い込まれています。
地域による多少の差はあるかと思いますが、このままエニグマファイヤーズとアブザンパルへリオンが現状の割合を維持するならば、打ち消し呪文と《安らかなる眠り》を持つアゾリウスカラーのデッキチャンスが巡ってきます。今週末にはどんなデッキが活躍するのでしょうか。
プレミアム予選最終週となる今週末には晴れる屋水戸店とトーナメントセンター 東京で大会が控えています。参加される方のご武運をお祈りしつつ、筆をおきたいと思います。