パイオニア情報局 vol.11 -『兄弟戦争』後のパイオニア-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

プロツアーへの参加権利をかけた最終予選となる地域チャンピオンシップが先週末に愛知県で開催されました。店舗やプレミアムなどの各予選を突破した猛者たちが一堂に会し、18個の枠をかけて、パイオニアにて雌雄を決したわけです。

今回は『兄弟戦争』の与えた影響と、地域チャンピオンシップの結果などをお届けします。

トピック:『兄弟戦争』の影響

まずは発売されたばかりの『兄弟戦争』ですが、早くもパイオニアで活躍しています。既存のデッキのアップデートにとどまらず、新デッキの構成要素となるカードも見つかっているようです。

既存デッキの収穫

ラクドスミッドレンジ

前環境からトップを走り続けていたラクドスミッドレンジと緑単信心は、新戦力を得たことでその地位を確固たるものとしています。

苦難の影

ラクドスミッドレンジの2マナ域には軽量の《ゲトの裏切り者、カリタス》こと《苦難の影》が採用されています。追放時にトークンこそ生成されませんが、軽さは明確なメリットです。効果を及ぼすターンが早いこともあり、死亡時の誘発型能力や戦場と墓地を行き来する《弧光のフェニックス》からすれば無視できない存在です。

また、打点の高い2マナ域を得たことでコントロールやコンボに対しても積極的にダメージレースを狙っていけます。軽いダメージソースと干渉手段を組み合わせることで、相手の防御体制/コンボが完成する前にライフを詰め切れる隙のない構築となりました。

緑単信心

街並みの地ならし屋石の脳

緑単信心はサイドボードに新顔があります。《街並みの地ならし屋》を重い《隕石ゴーレム》と侮るなかれ。一度パーマネントを破壊するだけだった《隕石ゴーレム》と違い、《街並みの地ならし屋》は複数枚との交換が狙えます。そのサイズ感も相まって単体でダメージレースを完結させ、無限マナ以外での勝ち手段となります。

「蘇生」や《苦難の影》の効果で追放されたとしてもご安心を。《大いなる創造者、カーン》の手で無限に手札へと戻ります。

《石の脳》《不屈の独創力》コンボなど特定のカードに頼ったデッキへの対策です。指定に制限はないため土地をキーとする《睡蓮の原野》もうかうかしてはいられません。

アゾリウスコントロール

環境のトップ2に迫るのがアゾリウスコントロールの存在。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を軸にした防御的なアーキタイプは、序盤をいかにして捌くかが課題でした。

魂の仕切り

《魂の仕切り》は一時的とはいえ土地以外のあらゆるパーマネントを対処し、コントロールが確立するまでの時間を稼いでくれます。軽いインスタントであり、戦略にも合致しています。パイオニア環境にあって追加の2マナは見た目以上に重く、まさにアゾリウスコントロールが求めていた干渉手段。アグロ~コンボまで幅広く対応してくれるのです。

しかも、自分のパーマネントを対象にとればプレイする際に追加のマナは必要ありません。割られそうになった《一時的封鎖》《力線の束縛》を守ったり、プレインズウォーカーの忠誠度をリフレッシュできます。

新デッキの中核として

無限ダンジョン

ガイアの眼、グウェナ

《ガイアの眼、グウェナ》《失われた業の巫師》と似たカードですが、「パワーが5以上であるクリーチャー・呪文を唱えるたび、自身の上に+1/+1カウンター1個を置き、これをアンタップする」と一文が加えられています。つまり、2マナ以下のパワー5以上のクリーチャーならば好きなだけプレイできるわけです。

アーチリッチ、アサーラック

《ガイアの眼、グウェナ》《アーチリッチ、アサーラック》の相性の良さに目をつけたのが無限ダンジョンです。

無限ダンジョンはその名の通り、《ガイアの眼、グウェナ》+《アーチリッチ、アサーラック》を揃えて、繰り返し《ファンデルヴァーの失われた鉱山》を踏破するデッキ。この2枚では1マナ足りないため、《ガイアの眼、グウェナ》の生成マナ数を増やすか、《アーチリッチ、アサーラック》のマナコストを引き下げることでコンボ完成となります。

眷者の神童、キナン伝説の秘宝バントゥの碑カル・シスマの恐怖、殺し爪

《眷者の神童、キナン》《伝説の秘宝》は余剰マナを、《バントゥの碑》《カル・シスマの恐怖、殺し爪》はコストを軽減するコンボパーツです。キーカードに依存しているものの、《集合した中隊》《異界の進化》など補助パーツが充実しており、最速3ターン目に決まる速度も魅力です。

プロツアー権利獲得ラインを探る

チャンピオンズカップ JAPAN & KOREA

冒頭の通り、先週末にはプロツアーへの最後の関門である地域チャンピオンシップ(サイクル1)が国内で開催されました。同イベント上位18名にはプロツアーへの権利が授与されます。以下はプロツアーへの権利を獲得した18名のデッキタイプになります。

デッキタイプ 使用者数 占有率
ラクドスミッドレンジ 7 (38.9)
アゾリウスコントロール 3 (16.6)
白単人間 3 (16.6)
グルール機体 2 (11.1)
緑単信心 1 (5.6)
エスパーコントロール 1 (5.6)
ラクドスサクリファイス 1 (5.6)
合計 18 (100%)

最多権利獲得デッキはラクドスミッドレンジと、非常にわかりやすい結果がでています。新規カードとしては《苦難の影》があり、軽量のダメージソースが増えたことでこれまで以上に隙のないデッキとなりました。

魂の仕切り徴兵士官婚礼の発表

目を引くのは3名で並ぶアゾリウスコントロールと白単アグロでしょう。前者は《魂の仕切り》を手に入れたことで序盤の防御を強固なものとし、打ち消し呪文と合わせることでどのレンジの相手に対しても五分以上に立ち回れます。

後者はリソースを伸ばせる《徴兵士官》を手に入れました。《徴兵士官》はメインボードの戦略に沿った軽量のダメージソースでありながら、消耗戦に強いクリーチャーです。単体除去の多いラクドスミッドレンジに対しては《徴兵士官》とサイドボードの《婚礼の発表》と合わせて、リソース面を大幅に強化します。

どちらのデッキも仮想敵であるラクドスミッドレンジを強く睨んだ構築となっていることがわかりますね。

そのほかの地域チャンピオンシップ

日本の予選に先立ち、世界3箇所で地域チャンピオンシップ(サイクル1)が開催されていました。以下はプロツアーへの権利を獲得した110名のデッキタイプになります。

デッキタイプ 使用者数 占有率
ラクドスミッドレンジ 19 (17.3)
イゼットフェニックス 18 (16.4)
緑単信心 17 (15.5)
アゾリウスコントロール 11 (10.0)
白単人間 6 (5.5)
グルール機体 6 (5.5)
ラクドスサクリファイス 5 (4.5)
ロータスコンボ 5 (4.5)
セレズニアオーラ 3 (2.7)
アブザンパルヘリオン 2 (1.8)
《不屈の独創力》コンボ 2 (1.8)
《奇怪な具現》デッキ 2 (1.8)
青単スピリット 1 (0.9)
黒単ミッドレンジ 1 (0.9)
アタルカレッド 1 (0.9)
ディミーアオラクル 1 (0.9)
オルゾフミッドレンジ 1 (0.9)
セレズニアカンパニー 1 (0.9)
バント人間 1 (0.9)
ケルーガファイヤーズ 1 (0.9)
バントスピリット 1 (0.9)
イグナスコンボ 1 (0.9)
ジャンド城塞 1 (0.9)
《嵐の伝令》コンボ 1 (0.9)
セレズニア天使 1 (0.9)
エスパーコントロール 1 (0.9)
合計 110名 (100%)

国内予選の結果、最多権利獲得デッキは変化したものの、ラクドスミッドレンジ、イゼットフェニックス、緑単信心の3つがほぼ横並びとなりました。

国外では好調だったイゼットフェニックスでしたが、国内では墓地へのガードがまったく下がっておらず権利獲得者は増えていません。サイドボードには《弾けるドレイク》《若き紅蓮術士》、プレインズウォーカーなど追加の攻め手が採用されていましたが、数を伸ばすにはいたりませんでした。

アゾリウスコントロールと白単人間は国内の結果でも一定数を占めていたため、次はグルール機体を見ていきます。

ラノワールのエルフ無謀な嵐探し領事の旗艦、スカイソブリン

グルール機体はエリア予選後期に登場した比較的新しいデッキですが、マナクリーチャーから早いターンに《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》を狙う豪快な戦略です。特に《領事の旗艦、スカイソブリン》はボードコントロール役であり、《致命的な一押し》《戦慄掘り》で対処されないため、ゲームを一方的なものとします。《無謀な嵐探し》のサポートもあり、機体が着地がすぐに攻撃に向かえるため、ラクドスミッドレンジに強い構築となっています。

以下は個々の大会のメタゲームになります。

大会結果

チャンピオンズカップ JAPAN & KOREA

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 平山 怜 ラクドスミッドレンジ
準優勝 京極 匡将 ラクドスミッドレンジ
トップ4 八十岡 翔太 ラクドスミッドレンジ
トップ4 村栄 龍司 ラクドスミッドレンジ
トップ8 中村 修平 緑単信心
トップ8 セゴウ ケンジ ラクドスミッドレンジ
トップ8 清藤 和哉 アゾリウスコントロール
トップ8 河野 融 ラクドスミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者196名で開催されたチャンピオンズカップファイナル サイクル1を制したのは平山 怜選手。決勝トーナメントでは柔軟な対応が求められるラクドスミッドレンジのミラーマッチを三連続でくだし、優勝を手にしました。

思考囲い鏡割りの寓話税血の収穫者

トップ8中、6名がラクドスミッドレンジと海外の地域チャンピオンシップとはまったく違った、かなり偏った結果となりました。硬軟織り交ぜた柔軟な対応力と、序盤からのダメージソース、不利なマッチアップすら打開してくれる《思考囲い》と万能感が強いことが人気の秘訣と思われます。

さらに《墓地の侵入者》《真っ白》など、複合的な墓地対策もあり、イゼットフェニックスやアブザンパルヘリオンといったデッキにもガードを一切下げない無慈悲なデッキとなっていました。

ラクドスミッドレンジ比較

ラクドスミッドレンジは1枚で何役もこなすクリーチャーと手札破壊、クリーチャー除去にプレインズウォーカーとミッドレンジの王道をいくデッキ。軽量除去が多いことから速度で押すアグロデッキに強く、クリアになったボードを骨太なクリーチャーで制圧します。

鏡割りの寓話〔l_〕〔l_〕

この手のデッキにありがちだった引きムラも《鏡割りの寓話》の加入により改善されています。最近のカードも多く、直近1~2年のスタンダードで遊んでいた方にはお馴染みのカードばかりかもしれません。

いまさら細かく語るべきではないため、今回はトップ8に残ったデッキのカード選択について比較していきます。

真っ白ヴェールのリリアナ

平山選手のみがメインに採用した《真っ白》は、イゼットフェニックスやアブザンパルヘリオンといった墓地を活用するデッキへの選択です。対して《ヴェールのリリアナ》はミラーマッチをはじめ、ミッドレンジやコントロールにも効果的です。イゼットフェニックスの増減に合わせて選択しましょう。

栄光をもたらすもの領事の旗艦、スカイソブリン

京極 匡将選手が採用した《栄光をもたらすもの》以前の記事でも紹介した通り、ミラーマッチでのキーカード。《致命的な一押し》《砕骨の巨人》といった採用率の高い除去の範囲外であり、流行の《パワー・ワード・キル》でも対処されません。《領事の旗艦、スカイソブリン》と違い、《鏡割りの寓話》でコピーも可能です。

変わり谷ハグラの噛み殺し

ラクドスミッドレンジの土地総数は25枚が主流ですが、八十岡 翔太選手のようにプラス1枚とる選択をしたプレイヤーもいました。土地事故を回避しつつ、《黙示録、シェオルドレッド》《領事の旗艦、スカイソブリン》《絶望招来》のマナ域までストレートに伸びるようになっています。

《変わり谷》は起動コストも軽く、クリーチャー化できる土地の中ではもっとも攻撃しにいきやすいカードです。《税血の収穫者》《死の飢えのタイタン、クロクサ》などとの相性は気になるところですが、序盤に引かないように採用枚数を抑えており、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》もあることからそれほど気になりません。

《ハグラの噛み殺し》は呪文/土地の両面カードであり、状況に応じた使いまわしが可能。単色デッキ以外は基本土地の採用枚数が低く、ほとんどの場合3マナでプレイ可能です。

チャンピオンズカップファイナル(アメリカ)

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Matthew Saypoff 白単人間
準優勝 Takahama Ken イゼットフェニックス
トップ4 Michael Letsch セレズニアオーラ
トップ4 John Tatian ロータスコンボ
トップ8 Eli Loveman ラクドスミッドレンジ
トップ8 Daniel Kristoff 青単スピリット
トップ8 Derrick Davis アゾリウスコントロール
トップ8 Chris Ferber 《奇怪な具現》ファイアーズ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者928名で開催されたDreamhack Atlanta 2022 U.S. Regional Championshipは白単人間が制しています。トップ8に残ったアーキタイプは全部で8種類とパイオニアらしさが垣間見えた結果でした。

チャンピオンズカップファイナル(ヨーロッパ/中東/アフリカ)

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Miguel Castro イゼットフェニックス
準優勝 Theau Mery アゾリウスコントロール
トップ4 Thierry Ramboa イゼットフェニックス
トップ4 Ben Jones イゼットフェニックス
トップ8 Adriano Moscato ラクドスミッドレンジ
トップ8 André Santos ラクドスサクリファイス
トップ8 eren kacmaz アブザンパルヘリオン
トップ8 Adrien Houssard 緑単信心

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者408名で開催されたLegacy European Championship Sofiaはイゼットフェニックスが制しています。トップ4の内3名がイゼットフェニックスであり、明確な勝ち組となっています。

チャンピオンズカップファイナル(ブラジル)

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Pedro Mocelin ラクドスミッドレンジ
準優勝 Jorgemi Sant’Anna ラクドスミッドレンジ
トップ4 Álvaro Almeida ディミーアコントロール
トップ4 Eduardo Vieira ラクドスサクリファイス
トップ8 Pedro Perrini アゾリウスコントロール
トップ8 Pedro Avena イゼットフェニックス
トップ8 Eduardo Cesar 緑単信心
トップ8 Tulio Jaudy セレズニアカンパニー

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者196名で開催されたCity Class Games Showdown Iはラクドスミッドレンジが制しています。トップ8のセレズニアカンパニーは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒にした意欲作であり、戦場にでたときの誘発型能力を持つクリーチャーが多数採用されています。

おわりに

今回は地域チャンピオンシップの結果からプロツアー権利獲得デッキを中心にご紹介しました。ラクドスミッドレンジ-緑単信心-イゼットフェニックスの突破率が高いものの、日本では下馬評通りラクドスミッドレンジが最多となっていました。今後はどのようなメタゲームが形成されるのでしょうか。

黙示録、シェオルドレッド茨の騎兵弧光のフェニックス

今週末にはBIG Pioneer Festival 2022が開催されますね。チャンピオンズカップの覇者であるラクドスミッドレンジが制すか、はたまた別のデッキが現れるのか、注目していきましょう。

参加される方のご武運を祈りつつ、今回はここで筆をおかせていただきます。

この記事内で掲載されたカード

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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