はじめに
みなさんこんにちは。富澤です。
『機械兵団の進軍:決戦の後に』のリリースから1週間が経ちました。前回は《銅纏いの先兵》を採用した白単人間をご紹介しましたが、ほかのカードの活躍も気になるところですね。
今回は『第23期スタンダード神決定戦』の大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
先週末に開催された『第23期スタンダード神決定戦』で人気を集めたのはラクドスミッドレンジでした。『プロツアー・機械兵団の進軍』から2週間が経ちましたが、いまだに環境の中心には黒と赤を基調とした中速デッキの姿があるようです。
スタンダードでラクドスとミッドレンジを結び付け、流行させている原因は《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》です。単体でボードと手札の両方にアドバンテージをもたらすカードでありながら、2~3マナと軽いため序盤からゲームに影響を及ぼします。仮に片方のプレイヤーのみがこれらのカードをコントロールしていた場合、そのまま勝敗が決まってしまうだけのカードパワーを秘めています。
実際、今大会でも多くのプレイヤーがこれらのカードを採用していました。トップ16以上のデッキリストを確認したところ、《鏡割りの寓話》は43枚、《勢団の銀行破り》は49枚採用されていました。どちらも採用していなかったのはわずか2名のみでした。
では、参加者たちはこの2枚のカードとどう向き合ったのでしょうか。たどり着いた答えは、これら2種類のパーマネントを着地させない手札破壊と打ち消し呪文にありました。
ラクドスが選択したのは《強迫》です。1マナゆえに後手番であっても《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》を対処でき、手札を確認することで後のゲームプランを組み立てやすくなります。トップデッキには対応できませんが、何よりも軽さがうりとなります。
グリクシスが選んだのは手札破壊と打ち消し呪文の併用です。《強迫》ほどの軽快さはありませんが、《かき消し》にはテンポ面でのリターンが見込めます。《希望の標、チャンドラ》や《多元宇宙の突破》といったフィニッシャーを2マナで対処しながら、余ったマナをほかの用途に使用できます。打ち消し呪文はミッドレンジやランプに対して強烈なカウンターパンチとして機能するのです。
中盤以降無駄になる手札破壊も《鏡割りの寓話》があればリスクを気にせず採用できます。上位に入賞したデッキには、ミッドレンジのミラーマッチを制する工夫があったのです。
それでは大会結果をみていきましょう。
第23期スタンダード神決定戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 高橋 優太 | ラクドスミッドレンジ |
準優勝 | 細川 侑也 | グリクシスリアニメイト |
トップ4 | 横川 裕太 | ラクドスブリーチ |
トップ4 | 齋藤 慎也 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | 内藤 圭佑 | アゾリウス兵士 |
トップ8 | 江原 洸太 | ラクドスブリーチ |
トップ8 | 原 康貴 | 4色ローム |
トップ8 | 平山 怜 | 5色ランプ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者47名で開催された第23期スタンダード神決定戦は高橋 優太選手が制しました。フィニッシャー選択や戦略に多少の差はありますが、ラクドスをベースにしたデッキが5名残っています。
5色ランプのサイドボードには《軽蔑的な一撃》が採用されています。ラクドスミッドレンジやミラーマッチ用のカードであり、主に《多元宇宙の突破》などのフィニッシャーを狙います。現環境には《偉大なる統一者、アトラクサ》や《原初の征服者、エターリ》といった着地如何で勝敗を左右するクリーチャーがいるため、《否認》よりも優先して採用されています。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 10 | 2 |
グリクシスミッドレンジ | 5 | 3 |
5色ランプ | 4 | 3 |
グリクシスリアニメイト | 4 | 2 |
ラクドスブリーチ | 3 | 2 |
アゾリウス兵士 | 3 | 1 |
青単テンポ | 2 | 1 |
赤単アグロ | 2 | 1 |
エスパーミッドレンジ | 2 | 0 |
その他 | 12 | 1 |
合計 | 47 | 16 |
半数近くのプレイヤーがラクドスベースのデッキを選択しています。一部は打ち消し呪文入りのグリクシスカラーとはいえ、ランプ戦略にとって理想的なメタゲームが形成されていました。それを裏付けるように3名がトップ16に入賞しています。
ラクドスミッドレンジ
ラクドスミッドレンジは、単体除去や火力でボードを平らにしていく捌きに重きをおいたアーキタイプ。2マナ以下の軽量インスタントを多用しており、テンポ良く対処しながら《税血の収穫者》や《鏡割りの寓話》へ繋げてボードを切り返していきます。
トピックでも触れましたが、現環境で優先的に対処すべきは《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》の2枚です。《強迫》は後手番であってもその両方に対処できるため、メインボードから4枚採用されています。非クリーチャー呪文を採用していないデッキはエスパーレジェンズくらいであり、4枚採用したことによる裏目はほとんどありません。
グリクシスミッドレンジなどの3色以上のデッキと違ってタップイン土地を処理する手間が省けるため、《強迫》からゲームを始めても流れるように呪文をプレイできます。《絶望招来》や《多元宇宙の突破》、《ギックスの残虐》など強力な呪文が溢れており、中盤以降に引いても無駄になりにくい環境となっています。
5色ランプなどの高コストクリーチャーへのキラーカードである《多元宇宙の突破》。《偉大なる統一者、アトラクサ》や《原初の征服者、エターリ》を狙ってサイドインします。プレインズウォーカーを選択できる点も見逃せず、プレイした際は自身の墓地に《希望の標、チャンドラ》が落ちていないか探してみましょう。
グリクシスリアニメイト
グリクシスリアニメイトはボードコントロールの優れたグリクシスミッドレンジをベースにして《絶望招来》の代わりに《ギックスの残虐》+《偉大なる統一者、アトラクサ》のパッケージを加えた構築です。妨害手段には青の利点である打ち消し呪文が採用されています。
《偉大なる統一者、アトラクサ》はリソース補充兼フィニッシャーですが、このカードを抜きにしても戦略が成り立つところが強みといえます。
メインとなるのは《ギックスの残虐》を用いた《偉大なる統一者、アトラクサ》の高速召喚です。《税血の収穫者》の血トークンや《死体鑑定士》、《鏡割りの寓話》のⅡ章を利用して墓地へ《偉大なる統一者、アトラクサ》を落とし、《ギックスの残虐》で戦場へ戻します。
《偉大なる統一者、アトラクサ》は除去耐性はありませんが、戦場へ出たときの効果で圧倒的なカードアドバンテージが見込めます。ひとたびリアニメイトに成功すれば自身の効果で次の《ギックスの残虐》を引き込める可能性が高く、絶え間なく戦場へと現れます。仮に《ギックスの残虐》がなかったとしても、《偉大なる統一者、アトラクサ》のアドバンテージを最大限活用したミッドレンジプランへと変更すれば良いのです。
3色になったことで《強迫》にプラスして打ち消し呪文が採用されています。汎用性の高い《かき消し》と、ミッドレンジに効果的な《否認》の2種類です。いずれのカードも序盤の《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》、中盤以降の《絶望招来》や《多元宇宙の突破》に対して効果的です。
サイドボードにも追加の打ち消し呪文がとられています。《軽蔑的な一撃》は《否認》の穴であるクリーチャーをカバー呪文。《偉大なる統一者、アトラクサ》や《原初の征服者、エターリ》を対処しながら、《ギックスの残虐》による友情コンボも狙えます。
4色ローム
4色ロームは伝説のクリーチャーと土地をテーマにしたコンボデッキ。伝説のクリーチャーを並べて《天上都市、大田原》などの「魂力」コストを引き下げつつ、「切削」や「サイクリング」付きの土地を用いて《大スライム、スローグルク》を育てていきます。《英雄の公有地》の恩恵を最大限利用したデッキであり、伝説のクリーチャーであれば色を選ばず採用可能です。
ひとたび回りだすと圧倒的なボードコントロール力があるものの、白抜きゆえに《策謀の予見者、ラフィーン》が採用できず、デッキを掘り進める手段に乏しいので以前の構築は安定性にやや難がありました。
《侵攻の伝令、ローナ》は4色ロームに安定性をもたらしたカードです。4色ロームは戦略上伝説のクリーチャーを並べる必要があり、《侵攻の伝令、ローナ》は貴重な2マナ域を埋めてくれます。召喚酔いがとければドローを進めるわけですが、伝説のクリーチャーのみのデッキであるため毎ターン2回以上の起動が見込めます。
キーカードへたどり着きやすくなっただけではなく、《大スライム、スローグルク》の成長も加速度的にアップしています。複数枚引いてしまった同名カードを有効牌へと変換するなど多方面での活躍してくれます。
《腹音鳴らしとフブルスプ》は新たな除去枠。土地の多いこのデッキでは確定除去に近い効果です。ドローは1枚ですが、捨てる枚数は自由であるため《大スライム、スローグルク》の成長にも役立ちます。
おわりに
今回は神決定戦の結果をお伝えしました。支配的な力を持つ《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》の活躍はいつまで続くのでしょうか。テンポデッキの巻き返しはあるのでしょうか。
今週末にはアリーナチャンピオンシップが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。