皆様”スタンダード”の時間です
ど~も、富澤です。
『指輪物語:中つ国の伝承』が発売されてモダンやレガシー、ヴィンテージは大いに盛り上がっているようですが、もうみなさんは《一つの指輪》を使いましたか?歴代の禁止カードと比較しても遜色ないパワーを有しており、環境は瞬く間に変化し始めています。現在は如何にして《一つの指輪》を上手く使うかお試し中といったところでしょうか。
オーバーパワーとわかっていますが、主にスタンダードをプレイしている自分としては使えないのが残念です。せめてリミテッドで引いて強さを堪能したいと思います。
それでは今週も情報局スタートです。
先週末の注目トピックは?
現在のスタンダードを定義する色は何かと聞かれれば、多くの方は「黒」と答えるのではないでしょうか。単色にはじまり、あらゆるカラーコンビネーションでのミッドレンジやコントロール、3色以上の戦略と多岐に渡り活躍しています。毎週末に開催されているオンライン大会でも一定の結果を残しており、先週末にいたってはトップ16中半数以上が黒いデッキでした。
一時期のグリクシスやラクドスとは違って圧倒的なアーキタイプこそありませんが、メインカラーとしてもサブカラーとしても活躍できる器用さは黒の魅力のひとつです。特定のカードを欲したとき、手を伸ばした先には黒があるわけです。あらゆるデッキに引っ張りだこの黒はスタンダードを定義する色といっても良いでしょう。
では、なぜ黒の評価は高いのでしょうか。今回のトピックではカードの採用枚数から、黒の人気の秘密を紐解いていきたいと思います。
採用枚数トップ5
以下の表は先週末に開催された『Standard Challenge』におけるカードごとの採用枚数(メインとサイドの合算)になります。黒系ミッドレンジが活躍したこともあり、単体除去とフィニッシャー、手札破壊の三要素が上位を独占しています。
不動のボードコントロール
黒のお家芸である軽量の単体除去が1、2位となりました。《切り崩し》と《喉首狙い》はセットで採用される傾向にあり、黒系をメインカラーとするデッキではメインとサイド合わせて4枚ずつ取られています。これらのカードがある限り、赤単アグロやアゾリウス兵士を自由にさせません。
序盤はアグロの出鼻をくじき、中盤以降はマナコストの高いクリーチャーを対処することでテンポアドバンテージを得られます。2マナ以下のインスタントであり、構える際のテンポロスを最小限に抑えてくれます。クリーチャーの展開とボードの対処を同時におこなえるミッドレンジは当然として、防御に特化したエスパーコントロールでも3~4枚採用されています。
ボードコントロールでは赤の火力や白のエンチャント除去との比較になります。前者は直接火力としても換算しない限り効果範囲が狭く、後者は《骨化》や《力線の束縛》があり、効果こそ万能ですが、構築面の制限が厳しく使い勝手がやや劣ります。《骨化》にいたってはソーサリータイミングでしかプレイできません。
安定のフィニッシャー
3番手はこの存在抜きに現代の黒は語れない法務官《黙示録、シェオルドレッド》です。《絶望招来》亡きスタンダードにおいて、フィニッシャーと聞いてまずはじめに思い浮かぶカードではないでしょうか。
《黙示録、シェオルドレッド》をフィニッシャーたらしめているのはドロー時の誘発型能力です。攻撃に向かえば毎ターン6点のダメージ(4+2)を与え、さらに対処手段を引き込むためのドロー呪文を咎めて追加のライフを要求します。攻撃しなかったとしてもターン経過とともに自動的にライフが増減していくため、《放浪皇》が怖ければアンタップ状態をキープしているだけで良いのです。
守っては高タフネスにより火力や戦闘に強く、赤いデッキで除去するには《ナヒリの戦争術》や《引き裂く炎》など特定のカードに限られます。相手からすればターンが経てばたつほどライフを回復されてしまうため、損を承知で複数枚のカードを使うしかありません。対アグロ性能の高さからサイドボードでの採用も多く、エスパーコントロールでは良く見かけるクリーチャーです。
欠かせないサイドボード
ここまでメインボードで採用枚数の多いカードを見てきましたが、サイドボードではどうでしょうか。ここで登場するのは単体除去と並んで黒の片翼を担う手札破壊です。《強迫》は相手のデッキを選ぶものの、コストパフォーマンスが高く欠かせない存在です。
《強迫》の強さは「相手のプランを瓦解させ、自身の脅威を通すことができる」点にあります。相手のプレインズウォーカーや《多元宇宙の突破》のような脅威をプレイされる前に対処し、打ち消しや除去を抜きることでこちらの脅威を定着させてくれます。自分と相手の手札を見比べて最適なプランを立て、最良の1枚を奪うのです。
先週末はクリーチャーへ意識が向いていたため採用枚数では単体除去や《黙示録、シェオルドレッド》に軍配が上がりましたが、コントロールやミッドレンジ、ランプ中心のメタゲームでは増える傾向にあります。
黒が人気の理由
採用枚数順に見てきましたが、黒が人気の理由は干渉領域の広さと確固たるフィニッシャーにあるとわかりました。赤や白ではボード以外には触れず、青の打ち消し呪文では戦場に出たパーマネントをどうすることもできません。黒は一色で軽量の単体除去と苦手なマッチアップを改善する手札破壊、さらに攻防に優れたフィニッシャーまでいるのです。デッキ構築が黒を軸にしてスタートするのも頷けます。あとは足りない部分をほかの色で補えば良いのです。
黒単以外のディミーアやラクドス、ゴルガリなどのミッドレンジのメインボードにも《切り崩し》と《喉首狙い》、《シェオルドレッド》がそれぞれ4枚ずつ採用されています。現在の黒いデッキはこれら12枚から構築がスタートしているようです。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
7/1(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Talisker | ディミーアテンポ |
準優勝 | MJ_23 | 赤単アグロ |
トップ4 | Rex_Iudex | ゴルガリミッドレンジ |
トップ4 | billsive | エスパーコントロール |
トップ8 | WilcoP | 5色ランプ |
トップ8 | _Shatun_ | 4色ランプ |
トップ8 | Tunaktunak | エスパーコントロール |
トップ8 | Arianne | エスパーレジェンズ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
7/1(土)に開催された『Standard Challenge』を制したのはディミーアテンポ。2~3マナ域と1~2マナの干渉手段でサポートしていく、テンポ戦略に特化したアーキタイプです。以前の記事でミッドレンジと紹介しましたが、ここにテンポデッキと訂正いたします。
エスパーコントロールやランプも複数残っていますが、サイドボードに共通するクリーチャーが採用されています。《金属の徒党の種子鮫》は相手のサイドプランとのミスマッチを狙うカードであり、除去が減るサイド後に活躍を狙って投入するクリーチャーです。呪文ベースのデッキであれば相手の動きに対応したり、自らドロー呪文をプレイするだけでライフを削るに十分な数の培養器トークンを生成してくれます。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーコントロール | 6 | 4 |
赤単アグロ | 4 | 1 |
黒単ミッドレンジ | 4 | 1 |
ディミーアミッドレンジ | 2 | 2 |
アゾリウス兵士 | 2 | 0 |
オルゾフミッドレンジ | 2 | 1 |
4色ランプ | 2 | 2 |
ゴルガリミッドレンジ | 2 | 2 |
その他 | 8 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
エスパーコントロールが最大母数となり、単色アグロ、ミッドレンジ、ランプとバランスよく続きます。3色デッキは序盤の不安定さが弱点であり、単色デッキにつけ込まれるのが世の常ですが、その分サイドボードを厚くとり対応しています。《黄昏の享楽》や《痛烈な一撃》など赤単アグロを意識した選択が目立ちます。
トップ8デッキリストはこちら。
ゴルガリミッドレンジ
ゴルガリミッドレンジは、アドバンテージ生み出せるクリーチャーと単体除去を組み合わせたアーキタイプ。戦闘ダメージを与えることでアドバンテージへと繋がる《深根の道探し》や《グリッサ・サンスレイヤー》を展開し、《喉首狙い》でブロッカーをどかしてライフを詰めていきます。
フィニッシャーは2種類のシェオルドレッドとプレインズウォーカーが担当します。やや重い構築ですが、スタッツが優秀であったり、戦場に出たときの誘発型能力を持つクリーチャーが多く採用されています。
2マナ域に採用されているのは《腐れ花》《しつこい負け犬》《深根の道探し》の3種7枚のクリーチャー。ここでは《深根の道探し》に注目していきます。
タフネスが3と硬く、赤単の速攻クリーチャーを受け止め《火遊び》に耐えてくれます。ただ《切り崩し》に当たるのは残念です。
しかし、《深根の道探し》の本領が発揮されるのはプレイヤーかバトルへダメージが入ってから。「諜報」が誘発し、しかる後に土地があればを戻してマナを伸ばします。不要牌を落としてドローの質をあげ、《しつこい負け犬》を墓地へと送ればアドバンテージへと早変わりです。このデッキではマナ加速を安定させるために《土建組一家の監督所》が採用されています。
3マナ域にはボードのプレッシャーを高めるクリーチャーがそろっています。《グリッサ・サンスレイヤー》は除去耐性こそないものの、先制攻撃+接死と戦闘では無敵の存在。この能力を活かして単身で攻撃へ向かい、プレイヤーへダメージが通るたびにアドバンテージを稼いでくれます。
主に追加ドローを選択しますが、エンチャントやプレインズウォーカーを多用するデッキにとってはほかの効果も考慮に値します。セレズニアエンチャントに対しては、ほかのクリーチャーを先に出してボードにプレッシャーをかけ、《骨化》させた後でプレイして定着を図ります。
《シェオルドレッド》はミッドレンジやコントロールに効果のあるクリーチャー。戦場に出ただけでカード1枚分の仕事をこなすため交換枚数で損しにくく、回避能力がありクロックとしても優秀です。トークンを無視できる点も素晴らしく、必ずカード1枚分アドバンテージを生み出します。
序盤からライフを詰めていくデッキですが、消耗戦となれば《真実の教典》の出番です。ボードと手札を根こそぎにし、すべてのクリーチャーを配下に加えます。条件が厳しく起動自体が難しいため基本的にはクロックとして使用しますが、長引いた際は別角度の脅威として勝負を決めてくれます。
サイドボードにはランプやミッドレンジで使う《強迫》や《多元宇宙の突破》、追加の除去など多種多様なカードがそろっています。
可愛いイラストの描かれた《歴史の彼方》は、黒系ミッドレンジの弱点であったセレズニアエンチャントを意識した1枚。《樹海の自然主義者》から《神聖なる憑依》までまとめて流してくれます。ただし、生成されたスピリットトークンには触れないため、プレイされた返しを狙いたいところ。
仮に《骨化》など1枚だけ割りたい際は《温厚な襞背》を優先します。戦場に出たときに追加マナを支払うことで、エンチャントかアーティファクトに触れる優れもの。ほかにもライフ回復や墓地対策が選べ、緑とは思えぬほど器用なクリーチャーです。
そのほかの大会結果
7/2(日):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | FerMTG | 黒単ミッドレンジ |
準優勝 | _Batutinha_ | 5色ランプ |
トップ4 | Ignotus97 | エスパーコントロール |
トップ4 | Nammersquats | エスパーコントロール |
トップ8 | Soto_ | 青単テンポ |
トップ8 | Coly2 | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | MaxMagicer | 4色ランプ |
トップ8 | Shadowz2005 | ゴルガリミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
7/2(日)に開催された『Standard Challenge』は黒単ミッドレンジが制しました。メインボードに4枚採用された《ヴェールのリリアナ》は対コントロール、ランプを意識した採用であり、リソースを削り選択肢を絞ってビートダウン完遂までの時間を稼ぎます。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーコントロール | 8 | 5 |
4色ランプ | 5 | 1 |
青単テンポ | 3 | 1 |
ディミーアテンポ | 2 | 2 |
黒単ミッドレンジ | 3 | 2 |
ゴルガリミッドレンジ | 2 | 1 |
赤単アグロ | 2 | 1 |
5色ランプ | 2 | 1 |
その他 | 5 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
変わらずエスパーコントロールがトップメタとなりましたが、黒系ミッドレンジも複数名のプレイヤーを上位へと送り込むことに成功しています。先週末に限ってはメインボードは対クリーチャーを、サイドボードでは対コントロールを意識した構築が功を奏したようです。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は採用枚数に着目し、黒いデッキの根底を支えるカードを探ってみました。《切り崩し》と《喉首狙い》《黙示録、シェオルドレッド》は戦略の基盤となるカードです。サイドボードの《強迫》まで含めると干渉できる領域が広く、単色とは思えない対応力の高さです。コントロールやランプが増えるようなら、《強迫》をメインボードに移すなど柔軟な構築が可能です。今後も黒いミッドレンジ戦略は一定の数を保つことになりそうです。
『指輪物語:中つ国の伝承』が発売されてモダンばかりに注目が集まっていますが、7月1日より公式のスタンダードイベントである「夏のスタンダード感謝祭2023」が始まっています。晴れる屋ではこちらのスケジュールにて開催中です。特製プロモパックがもらえるため、奮ってご参加ください。
それではまた次回。