メタゲームブレイクダウン
晴れる屋メディアチーム
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みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームです。
221名が参加した『第24期モダン神挑戦者決定戦』は終了し、残るは神決定戦のみとなりました。デッキは《不屈の独創力》とリビングエンドによるコンボ対決です。一瞬たりとも目が離せませんね。
意外だったのは両者のデッキに《一つの指輪》と《オークの弓使い》のいずれも採用されていない点です。『指輪物語:中つ国の伝承 』発売以降、環境を大きく変えたカードであり、神と挑戦者どちらかは使用するものと予想していました。実際のところ、《一つの指輪》と《オークの弓使い》の採用率はどの程度だったのでしょうか。
本稿では昨日のメタゲームブレイクダウンと合わせて、指輪とオークの採用枚数についてをお届けしていきます。
(編集者注:使用者4名以下のデッキは「その他」に計上しています。)
今大会のデッキ分布は上から順にカスケードクラッシュ、ラクドス想起、緑単トロンと並び、先月開催されたプロツアー・指輪物語の影響を色濃く受けたかたちとなりました。
最多使用者数だったデッキはカスケードクラッシュ。デッキ内のカードのマナコストを3以上に統一することで、《断片無き工作員》などの「続唱」カードから確実に《衝撃の足音》をプレイするフェアデッキです。フェアデッキに分類されてはいるものの、3ターン目にして8~10点と圧倒的なクロックを形成します。
「続唱」カードの関係上、カスケードクラッシュはティムールカラーをベースに構築されます。ですが、一部のプレイヤーはデッキの対応力を上げるべく、《力線の束縛》をタッチしていました。従来のフェッチランド+デュアルランドに加えて「土地サイクリング」を得たことで、多色デッキながら安定したマナベースを持っています。攻撃的な戦略ゆえに、土地からのダメージもそれほど気になりません。
《ロリアンの発見》は《島》のみならず、島タイプを持つ土地カード全般をサーチ可能です。限りなく土地に近いカードとして運用しながら土地の総枚数自体を切り詰められるため、安定性を損なわずに土地の引きすぎを緩和しています。また、青いカードが増えれば《否定の力》や《緻密》の代替コストが安定するメリットもあります。
打ち消し呪文と攻撃的な戦略の組み合わせは、長丁場を想定するうえでも最適な選択肢と考えられたようです。
2番手はラクドス想起と緑単トロンが同数で並びます。前者は先のプロツアーの優勝デッキであり、クロックの速度と干渉力で群を抜いています。「想起」クリーチャーと《フェイン・デス》があれば、1ターン目から有効牌を2枚奪う4点クロックか、ボードを一掃しながら8点クロックが形成されるわけですから。
さらに《鏡割りの寓話》と《思考囲い》はデッキに柔軟性をもたらしています。相手に応じて手札を変え、どんな相手やゲームプランにも対応できます。
新顔《オークの弓使い》はその狙撃能力で環境からタフネス1のクリーチャーを締め出した張本人であり、これまで欠けていたラクドス想起の2マナ域にピタリとはまりました。これによりデッキ全体の軽量化に成功しています。《ミシュラのガラクタ》や《考慮》、《鏡割りの寓話》のII章、《一つの指輪》など「カードを引く」効果は数多あり、《オークの弓使い》が機能しない場面はほとんどないのです。
相手に対応を迫り続けるうえでは、ラクドスの持つ干渉手段と軽量の攻撃的なカードを組み合わせがベストな選択肢となりえます。
後者はモダン界のランプ、マナこそパワーのトロンデッキ。モダン黎明期からコンセプトそのままに残っているシーラカンス、というのは『指輪物語:中つ国の伝承』以前の話です。ここ最近もっとも強化されたデッキのひとつです。
マナ加速からプレイされる《一つの指輪》は時間とリソースを同時にもたらしてくれます。続くターンにプレイされるのは単体でゲームを終わらせてしまう《ワームとぐろエンジン》、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》、《解放された者、カーン》など。準備に時間がかかるものの、補って余りあるほどのパワーカードでゲームをねじ伏せます。
爆発力と不安定さがセットだったトロンは《大いなる創造者、カーン》を得たことで、大きく変化しました。マナが伸びきる前にプレイできる脅威を手にし、その忠誠度能力も相まって戦略の幅が広がったのです。ランプ一辺倒だった構築に変化が生じており、コンセプトを崩さずにマナカーブを多少前倒しにしたミッドレンジ寄りの構築も登場しています。
ですが、今大会はトップ16まで見渡しても使用者0人と厳しい結果となりました。赤いデッキのサイドボードには《血染めの月》や《黒曜石の焦がし口》などの採用が目立ち、土地メタカードが増え過ぎたのが敗因と思われます。
使用者10名以上のデッキは4つあり、残るひとつは4色オムナスや《不屈の独創力》を抑えてバーンでした。古来より姿は変わらず、火力でプレイヤーを狙っていく戦略です。クリーチャー数を絞ることで相手の除去を無効化し、打ち消し呪文以外では対処の難しい直接ダメージ呪文をこれでもかと採用しています。
バーンからすると《一つの指輪》のプロテクションは厄介ではあるものの、その効果はいつしか途切れてしまいます。《創造の座、オムナス》や《ワームとぐろエンジン》などの何かしらのライフ回復手段がない限りアップキープコストが自身の首を絞めることになりますし、仮にあったとしても《頭蓋割り》が睨みを利かせています。
バーンは《ボロスの魔除け》をタッチしたボロス型が一般的ですが、中には《オークの弓使い》を採用した構築もありました。
ここからはデッキ分布を離れて、カードに注目していきます。プロツアーでは採用枚数ワンツーとなった《一つの指輪》と《オークの弓使い》。212のデッキが提出された神挑戦者決定戦ではどれほどの使用されたのか集計してみました。
カード名 | 採用総枚数 | 採用デッキ数 |
---|---|---|
《一つの指輪》 | 201 | 58 |
《オークの弓使い》 | 232 | 65 |
《一つの指輪》を使用していたのは58名、総枚数は201枚にのぼります。デッキとしては緑単トロンを筆頭にアミュレットタイタンやスケープシフトなどの土地コンボが多く、次いで《創造の座、オムナス》絡みの多色ミッドレンジ、コントロールの順でした。
一般的に、土地コンボは緑をベースにしたものであり、ドローなど手札を増やすカードが不足していました。回ったときは圧倒的ながら、安定性に欠けていました。《一つの指輪》はこれらのデッキにとって貴重なドロー呪文であり、さらにはコンボまでの時間を稼いでくれるマスターピースだったのです。
主にメインボードに3~4枚採用されるカードですが、ラクドス想起などのミッドレンジデッキのサイドボードにも少数採用されていました。
他方、《オークの弓使い》はといえば65名が採用し、232枚使用されていました。
人気のラクドス想起をはじめ、ジャンドやグリクシスシャドウでの採用が目立ちました。そのほかクリーチャーをベースにした《サムワイズ・ギャムジー》コンボや《スランの医師、ヨーグモス》コンボでは《召喚の調べ》や《集合した中隊》とセットで採用されていました。
モダンにはさまざまなアーキタイプがありますが、2マナ域には《オークの弓使い》や《レンと六番》を採用したデッキが一定数存在します。現在のモダンはタフネス1に厳しい環境となっています。
今回の神挑戦者決定戦はプロツアー後ということで、プロツアーで活躍したデッキに人気が集中していました。《一つの指輪》と《オークの弓使い》はそれぞれ3割ほどのプレイヤーが選択しており、今後も一定の勢力を保ちそうです。
余談ですが、先日禁止解除されたばかりの《定業》についても調べたところ、18名のプレイヤーが合計63枚を採用していました。カウンターモンキーやグリクシスシャドウで採用されていましたが、モダンに定着できるのでしょうか。
最後になりますが、神決定戦は本日19時より晴れる屋チャンネルにて生配信されます。お見逃しなく!