歴代統率者神4人の直接対決!マスターズゲームカバレージ

いってつ

夢のマスターズゲーム

晴れる屋トーナメントセンター東京の歴史はトーナメントの歴史でもある。

カジュアルフォーマットと位置づけられ、公式フォーマットでありながら競技イベントが開かれることが少なかった統率者戦。その統率者戦の本格的かつ定期的に開かれるトーナメント、「統率者神決定戦」が始まったのも、ここ晴れる屋トーナメントセンター東京だ。

これまでに4人のプレイヤーが神の座についてきた。歴代の神は互いに神の座を奪った、奪われた関係ではあるものの、4人全員が一堂に会してゲームを行ったことはなかった。

今回、歴代統率者神にコマンダーサミットにおいでいただき、最強のプレイヤー4人によるエキシビションマッチを執り行った。いわば、「マスターズゲーム」である。

今回はそんな非常にハイレベルで学びの多いゲームをお届けする。

選手紹介

第1期・第2期統率者神 ツボイ選手

綱投げ、アキリトリトンの英雄、トラシオス

初代統率者神にして、唯一神の座を防衛した経験を持つツボイ選手。使用するのは《綱投げ、アキリ》《トリトンの英雄、トラシオス》だ。

「ティムナ&クラムが板」と言われる中、トラシオスはともかくアキリは少々珍しい選択。しかし《綱投げ、アキリ》《新生化》《異界の進化》することでほとんどのコンボパーツにアクセスできる構成になっている。

防衛線となった第2期統率者神決定戦では対戦相手の《深淵への覗き込み》《偏向はたき》したことで勝利したことが印象深い。

トーナメントをきっかけに名をあげた選手ではあるが、カジュアルな統率者戦も熱心にプレイしており、幅広いプレイヤーと交流がある。最近公式フォーマットになった「誓い破り」も精力的にプレイしている。

第3期統率者神 タカハシ選手

織り手のティムナルーデヴィックの名作、クラム

挑戦者決定戦では《織り手のティムナ》《ルーデヴィックの名作、クラム》ミラーを後手ながら制し、その勢いのまま神決定戦でも勝利したタカハシ選手。ティムクラ使いとしても統率者戦プレイヤーとしても、タカハシ選手は「あの日」間違いなく最強のプレイヤーであった。

その尋常ではない練習量から、「30時間(一日のプレイ時間)」「ティムナの息子」「邪神」とも呼ばれるタカハシ選手。ツボイ選手とはまた違った形でコミュニティに愛される神となった。

第4期統率者神 ヨシダ選手

トレストの密偵長、エドリック

ヨシダ選手は《トレストの密偵長、エドリック》が登場したころからずっとエドリックを研究し続け、GPサイドイベントの統率者日本選手権でも優勝経験のある、有名な選手である。

そんな日本最強の統率者戦プレイヤーが神の座についたのは第4期のこと。「ついにとった!」本人はもちろん、周囲の仲間たちにとっても喜ばしい、悲願達成となったのだ。

ありとあらゆるトーナメントに現れては参戦レポートを残し、新セットがリリースされるたびに幅広い視点でのカードレビューを執筆するなど、その知見の共有にも積極的だ。

現・第5期統率者神 タテツ選手

秘儀を運ぶもの、パコ熱心な秘儀術師、ハルダン

統率者神決定戦も第5期ともなれば強豪、「いつものひとたち」がシングルエリミネーションを占めるようになりつつあった。そんななか、見覚えのない選手が勝ち残っていた。それが《秘儀を運ぶもの、パコ》《熱心な秘儀術師、ハルダン》のタテツ選手だった。

これまで神の座についてきた選手はコミュニティに属し、大会に熱心に参加して研鑽を積んできたのに対し、タテツ選手は毎日寝る前に欠かさず一人回しを繰り返して技術を磨いてきた孤独な達人である。

グレートゲーム

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ゲームはエドリック、ティムクラ、トラアキリ、パコハルダンの順となった。

《悪戯な猫霊》《喜ぶハーフリング》とテンポよく展開するエドリックに対し、ティムクラは《イーオスのレインジャー長》。サーチは《エスパーの歩哨》。ああ、またロングゲームになってしまうかも……と思った次の瞬間、トラアキリから《幻影の像》。「もちろん、《イーオスのレインジャー長》です。サーチはこちらも《エスパーの歩哨》」。

イーオスのレインジャー長

いい加減にしてほしい。こっちはサクっと鮮やかなゲームを見届けて同時進行しているガチコマも見たいんだ。

花の絨毯

一方、パコハルダンは受け取ったターンで《花の絨毯》!エドリックからは「うわーっ、トラウマなんだけど!」と悲鳴。実際、パコハルダンがエドリックから神の座を奪ったゲームでは《花の絨毯》によるマナ加速が大きなファクターになったのだ。

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冷静にゲームをみつめるパコハルダンことタテツ選手

エドリックからは《トレストの密偵長、エドリック》、ティムクラからは《織り手のティムナ》が戦場へ。「う~ん……このマッチアップ、絶対にパコハルダンの時間になっちゃうんだよな」とこぼすのはティムクラ。

《秘儀を運ぶもの、パコ》《熱心な秘儀術師、ハルダン》は高速にコンボを決めるようなデッキではないものの、統率者が戦場にそろえば一度の攻撃で4枚ドローするも同然。“エドリックのトラウマ”である第5期統率者神決定戦では、対戦相手のデッキからコンボパーツを引っこ抜くわ打ち消しをゲットするわの大立ち回りを見せていた。

このマッチアップでは、すでに戦場に 《イーオスのレインジャー長/Rangpier-Captain of Eos》 が2体いることからもわかるように、コンボを押し通すには幾重もの妨害をかいくぐる必要があり、ほんの数ターンでのコンボ勝利は非常に困難だ。このテーブルについているのは歴戦の猛者であり、妨害を何も用意していないとも考えにくい。

となれば早期の決着はなく、パコハルダンが有利なレンジまでゲームがもつれてしまう。実際、この ゲームも《花の絨毯》のマナ加速から《秘儀を運ぶもの、パコ》《熱心な秘儀術師、ハルダン》を着地させてしまった。

致命的なはしゃぎ回りガイアの揺籃の地踏査湿地の干潟

パコが追放したカード

その一撃目。

「おい俺のクレイドル!」とエドリックが狼狽する横で、「つえ~……」と漏らすティムクラ。神決定戦でパコハルダンと直接対決を経験しているエドリックの脳裏にはトラウマがフラッシュバックしているのだろうか。

そんなエドリックの受け取ったターン。

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《幻影の像》。出るなら……」

《イーオスのレインジャー長》になる」。

イーオスのレインジャー長幻影の像幻影の像機械神の肖像

全員、悪人。

あんたまた225分やるつもりなのか。「時間制限はないからな~」じゃあないんだよ。このあと、パコハルダンからも《機械神の肖像》が登場、これも《イーオスのレインジャー長》になった。

波止場の恐喝者神秘の聖域有毒の蘇生耐え抜くもの、母聖樹

パコが追放したカード。

ターンが回ってハルダンの二撃目。

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ティムクラことタカハシ選手。

「聞いてないよ~~~~!!!!」ティムクラ、悶絶。簡単にマナジャンプできるカード《波止場の恐喝者》を自分は失ったことになる。トラアキリからめくれた《有毒の蘇生》も追加ターン呪文を墓地から拾える危険なカードだ。

続いてエドリックの受け取ったターン。

《エルフの指導霊》。を、キャスト」

あまりにも暇すぎるが、すでに大きく膨れ上がっている《秘儀を運ぶもの、パコ》を受け止めるブロッカーでもある……のだろうか。

神秘の教示者悪魔の教示者オークの弓使い

ティムクラはターンを受け取る。意を決した様子で《神秘の教示者》。サーチするのは《悪魔の教示者》《悪魔の教示者》がサーチしたのは《オークの弓使い》だ。それをさらに《ファイレクシアの変形者》でコピー。《オークの弓使い》2枚体制となった!

「フハハ、勝ったな!!」この時点で戦場にはエドリックとパコハルダンの《神秘的負荷》、トラアキリの《エスパーの歩哨》がある。《イーオスのレインジャー長》も複数枚存在し、もはやコンボでの決着は難しい。この後、《オークの弓使い》はマナクリーチャーも焼きはするが、積極的にプレイヤー本体のライフを攻めていく。

息詰まる徴税

これを見たトラアキリからは《息詰まる徴税》。これもまた、対戦相手のドローに反応して宝物・トークンを生成する。先制攻撃警戒を持つ《綱投げ、アキリ》のサイズがどんどん大きくなっていく。

「アキリは7/3です!よろしく!」
「こっちのオークは8/8だぞ!」

エドリックとパコハルダンはここで大きく水をあけられてしまった感がある。

金粉のドレイク沈黙

エドリックからは《金粉のドレイク》が登場。対象はもちろん《オークの弓使い》だ。

これにはティムクラからなんと《沈黙》が飛び出す。各種《神秘的負荷》《エスパーの歩哨》を誘発させ、これは《金粉のドレイク》のコントロール交換前に《金粉のドレイク》を除去してしまおうという意図が見える……が、そのための呪文が《沈黙》である。

《金粉のドレイク》に対応するためのカードなのはわかるが、もし《風に運ばれて》《むかつき》を握られていたら?

《風に運ばれて》は入れてないけど……どうする?消す?」ティムクラは不敵に笑う。これはエドリックが《狼狽の嵐》で対処。

比較的打ち消されにくい《金粉のドレイク》での除去もキャンセルされ、いよいよティムクラとトラアキリのゲームになってしまった。ここで二人が共闘すれば、残る二人を完全に置いてきぼりにして1対1に持ち込むことができる。

Mystic Remora白鳥の歌

ここでティムクラからも《神秘的負荷》。これをトラアキリは《白鳥の歌》で打ち消す。

「それは強い~!それならあんたから倒さなきゃいけなくなる

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《白鳥の歌》を差し向けるトラアキリ(左)

この《白鳥の歌》はトラアキリからの「離縁状」であった。二人でお互いに引いてうまくやっていこう……という《神秘的負荷》を消すということは、トラアキリにはすでに勝利の算段がついているということだ。なら、ティムクラはトラアキリを先に倒す。

実際、その直後のターンにトラアキリから飛び出た《神秘的負荷》をティムクラが《精神的つまづき》

「トラアキリが仕掛けるなら、エドリックとパコハルダンの《神秘的負荷》に振り込みまくってそこのライフを削るからな!」とティムクラが牽制する。トラアキリのライフはこの時点で残り8。だがここで「いやぁ、俺は引かないよ、たぶん」とエドリック。

Mystic Remora

そう、《神秘的負荷》によるドローは「may」である。たとえ対戦相手が4マナを支払わずとも、カードを引かないことを選択できる。ここでエドリックがドローしないと宣言することはトラアキリに与するということだ。エドリックの立場的には優位に経っている二人に不和が生じればチャンスが生まれることになる。そして、残りライフがエドリックは14、パコハルダンが9という状況で、エドリックはすでに7枚以上の手札を抱えてしまっている。もはや、1枚のカードよりも優位な2人の仲間割れを誘因するほうがはるかに大きなアドバンテージになってしまったのだ。

約束された終末、エムラクール

そしてターンは巡る。なんとパコハルダンから《約束された終末、エムラクール》である。もちろん対象はティムクラ。

ここでティムクラは「一緒に《オークの弓使い》を誘発させて、《約束された終末、エムラクール》の能力が解決される前にパコハルダンをゲームから脱落させよう」と提案。

仮に《約束された終末、エムラクール》の能力が解決されたあとにパコハルダンが脱落した場合、ティムクラはタダで追加ターンを得ることになる。そうなればトラアキリが勝利することは難しくなってしまうので、もはや共闘する意味がなくなる。だからこそ、「今このタイミングで一緒にパコハルダンを倒そう」と持ちかけているのだ。

パコハルダンを落とすしかないように思える。しかし、エドリックの「俺は引かないよ」が効いたか。いや、自身の手札の強さ、盤面の強さもあってか、トラアキリはティムクラを信じ切ることができない。

やむを得ず、ティムクラは独力での突破を目指す。《約束された終末、エムラクール》の解決前に《むかつき》《神秘的負荷》はケアしない。が、エドリックはまたも「俺はいいや」《むかつき》をめぐる空中戦がパコハルダン・ティムクラ間でかわされるが、パコハルダンはこれを通せばほぼ勝ちという状況であり、全力で消しにかかり、《むかつき》は解決されなかった。

果たして《約束された終末、エムラクール》は解決される。

パコハルダンはエドリックの反撃、《オークの弓使い》の反撃を防ぐために《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール》まで放つ。

ディレイド・ブラスト・ファイアーボール

持っているカードが強すぎる。ティムクラはなすすべなく、「これは神。神です」と漏らす。エドリックも「これは神ですね」と同意する。

そしてこのエンド前、エドリックから《サイクロンの裂け目》。対象はパコハルダンの《イーオスのレインジャー長》だ。

仕掛けるとしたら次の自分のターンしかない、という判断だろうか。エドリックはターンを受け取るとまずは《時間への侵入》。これは許される。だが、その続きが問題だった。エドリックは追加ターンを獲得しつつ、そのターンのうちに《約束された終末、エムラクール》を唱えてきた。

仮にこの《約束された終末、エムラクール》もティムクラを対象にとって能力を解決すると、次のティムクラのターンはエドリックがコントロールし、パコハルダンがティムクラをコントロールすることはなくなる。その後、追加ターンが2回加わる。

このあとにもう1ターンエドリックのターンがあるため、トラアキリは召喚酔いの解けた《約束された終末、エムラクール》に攻撃され、脱落する。ふたたびティムクラがトラアキリに「いっしょにエドリックを倒そう」と持ちかけるが、これにもトラアキリは反応が渋い。

仕方なく、ティムクラは手札にあった《汚れた契約》《リム=ドゥールの櫃》を唱えて弱いカードに交換しておくことに。

「あとはがんばってくれたまえ!」とティムクラは勝負の行方を見守る構え。

激しい叱責

この前のターンからトラアキリは 《激しい叱責》 を手札に持っており、《約束された終末、エムラクール》の攻撃は返り討ちにできる算段があったのだ。

《約束された終末、エムラクール》の攻撃に対応して 《激しい叱責》 。これにはエドリックから《マナ吸収》。やむにやまれず、トラアキリからは《サイクロンの裂け目》を超過。これは解決されてトラアキリは生き残るが、《約束された終末、エムラクール》が再び登場する。この対象はトラアキリ。

そして迎えたティムクラのターン。アップキープにトラアキリは《沈黙》を差し向けるが、これはエドリックが自前の《意志の力》で打ち消す。

「じゃあいくよー」、と《約束された終末、エムラクール》に操られたティムクラはエドリックが勝つようにプレイを進める。パコハルダンのライブラリーから《法務官の掌握》《運命のきずな》を追放してライブラリーアウトが可能な状態にし、《沈黙》まで撃ち、完全に裏目をつぶして《死の国からの脱出》《思考停止》でエドリック以外のライブラリーをすべて切削し、《フェアリーの黒幕》の能力で全員にドローさせ、ライブラリーアウト。

ゲームに残ったのはエドリックただひとり!第3期統率者神ヨシダ選手がマスターズゲームを制した!

このなんとも優秀な「全自動エムラクール」のさなか、これは観客が言ったか、テーブルのプレイヤーが言ったか、私自身が漏らしたか……あるいはみんなが口をそろえて言ったか……とにかく私の観戦メモにはこの一言が残されている。

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世にも珍しい全自動エムラクールを見物する人々

「いやあ、統率者戦、面白いねえ」……

約束された終末、エムラクール

《約束された終末、エムラクール》はどんなに不利な状況からでも、一発逆転勝利できる可能性のある非常に強力なカードだ。エドリックはこのカードをティムクラの存在を強く意識して採用しているという。

ゲームを終えて

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私は統率者神決定戦をその始まりから見つめ続けてきました。

カバレージ担当という運営側の人間として、ゲームを中立な立場で見届けなくてはなりません。それでも、ツボイ選手の防衛を目の当たりにして以来、どうしても心のどこかでは神を贔屓してしまい応援してしまいます。神のみなさんは在位期間中はもちろんのこと、その座を退いてもなおイベントに参加されたり、知見を記事にされたりと統率者戦コミュニティの盛り上がりのために多大な貢献をされています。

そんな「見送ってきた」神たちのマスターズゲームを間近で観戦できたのは歴代神4名のご寛大な心あってのことです。

あらためて、素晴らしいゲームを見せてくれたツボイ選手、タカハシ選手、ヨシダ選手、タテツ選手、ありがとうございました。

それではみなさん、第6期統率者神決定戦でお会いしましょう!!

この記事内で掲載されたカード

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いってつ 晴れる屋メディアライターです。最近の悩みは記事執筆と動画出演で忙しくて統率者戦が1日2回くらいしか遊べないこと。 いってつの記事はこちら