ジャッジと一緒にルールを学ぼう! ~「出来事」編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさんこんにちは、晴れる屋メディアチーム所属・認定レベル1ジャッジの島田と申します。

ジャッジと一緒にルールを学ぼう!』では、ゲームでよく使われているカードやジャッジをしていてよく聞かれるルール”のみ”に焦点を絞り、回ごとのテーマに合わせて例を挙げ・極力わかりやすく説明していきたいと思います。

この記事が少しでもみなさんのルール理解に繋がり、ひいてはマジックの楽しさを増すことに繋がれば幸いです。

※2023/9/1時点のマジック総合ルールに基づいています。特に新カードに関するルールのため、今後のルール改定などで内容に齟齬が発生する可能性があることをご了承ください。
※文章の都合上、表現を簡略化・省略している場合があります。
※本記事は複数のジャッジが監修していますが、誤りや疑問点を見つけましたら遠慮なくお問い合わせページまでご指摘ください。

今回のテーマ:出来事

今回のテーマは、エルドレインを代表する要素の一つとしてみんな大好き(ってWizardsの偉い人が言ってました)なあの能力…そう、「出来事」です。

厚かましい借り手

まずは「出来事」を持つカード(ルール上は「当事者カード」と呼びます)の基本情報を説明していきます。

基本情報1

ガムドロップの毒殺者

このように

当事者カードは、文章欄中に小さな枠のある、2組のカード枠を持ちます。

基本情報2

信仰無き物あさり

両面カードや分割カードと同じように、当事者カードも2枚分あるように見えるだけであくまで1枚のカードです。「カードを2枚捨てる」効果のときに当事者カードを1枚捨てればOK!とはいきません。

基本情報3

舞台照らし出現の根本原理

プレイヤーは、当事者カードを唱えるときに「通常通り唱える」か「出来事として唱える」かを選びます。手札から普通に唱えるときのほか、《舞台照らし》《出現の根本原理》などの効果で唱えられるようになった場合もどちらで唱えるかを選べます。

武勇の場の執政官願いのフェイ

このときにもし「唱えることができるか」がチェックされる場合、それは実際に唱えようとしている側だけをチェックします。たとえば「ソーサリー」を指定した《武勇の場の執政官》がいてソーサリー呪文が唱えられなくなっている場合、《成就》は唱えられませんが《願いのフェイ》は唱えられます。

基本情報4

進行中の出来事トークン

「出来事として唱え」たら、その呪文は解決されて墓地に置くに際して、代わりに追放されます。このようにして追放されているカードを俗に「進行中の出来事」と呼びます。 意外なことに「進行中の出来事」は正式なルール用語ではないらしいです(総合ルールに書いてない)。

基本情報5

厚かましい借り手

唱えて出来事を追放したプレイヤーは、「進行中の出来事」である当事者カードを通常の側(たとえば《厚かましい借り手》/《些細な盗み》《厚かましい借り手》側)で唱えることができます。唱えられるタイミングやマナコストは普通に手札から唱えるときと同様です。

基本情報6

「通常通り唱え」たら、特別なことは起こりません。戦場に出たそのクリーチャー(など)が破壊されたら、そのまま墓地に行きます。

基本情報7

執念の徳目軽蔑的な一撃

唱えているとき(唱え始めるときからスタックにあるときまで)の当事者カードは唱えている側の特性のみを持ちます。 たとえば《執念の徳目》を「出来事」である《ロークスワインの嘲笑》で唱えたとき、それは「2マナ」の「ソーサリー – 出来事」なので《軽蔑的な一撃》《組立分解》では打ち消せません。

基本情報8

それ以外のとき(手札やライブラリーにあったり、戦場に出ているとき)は通常の特性だけを持ちます。

苔森の戦慄騎士消失の詩句

たとえば《苔森の戦慄騎士》は通常の部分が緑・出来事の部分が黒ですが、手札や戦場にあるときは緑単色です。なので、《消失の詩句》の対象になります。

退廃的なドラゴン船乗りを滅ぼすもの

ただし、このときも「出来事を持つ」ことに変わりはありません。墓地にある《退廃的なドラゴン》はインスタントの特性を持ちませんが、「出来事を持つカード」なので《船乗りを滅ぼすもの》でカウントされます。

基本情報9

効果でカード名を1つ指定するとき、当事者カードのどちらの部分の名前でも指定できます。ただし、その効果は指定したカード名そのものだけに反応し、もう一方の側には反応しません。また、一気に両方選ぶぞ!みたいなこともできません。

選定された平和の番人木苺の使い魔

たとえば《選定された平和の番人》《木苺の使い魔》を指定した場合、その「出来事」側である《初めてのお使い》のコストはそのままです。逆も同様です。


これで総合ルールに書いてある内容は一通り説明しました。ルール文章がそれほど長くないので、説明もあっさり済みましたね。なんだ、意外と簡単じゃん!これで出来事のルールはばっちり!

……本当に?

2つの側面、二乗のややこしさ

「当事者カード」に限った話ではないのですが、2組以上の特性を持つカード(ほかには「モードを持つ両面カード」や「分割カード」などがあります)は「唱える際にどちら側で唱えるかを選ぶ」という特徴のために複雑な挙動を見せることがあります。ここからはいくつかの例を紹介していきます。

例1

神秘の教示者

前述の通り、スタック以外の領域にある当事者カードは通常の特性だけを持ちます。そのため、ライブラリーにある《厚かましい借り手》(ライブラリーにあるときはクリーチャー)を《神秘の教示者》で探してくることはできません。

しかし、ライブラリーや墓地などから唱えられる効果があると話は変わります。

イゼットの模範、メーレク厚かましい借り手

たとえば《イゼットの模範、メーレク》の「あなたはあなたのライブラリーの一番上からインスタントやソーサリーである呪文を唱えてもよい。」という能力で、ライブラリーの一番上にある《厚かましい借り手》出来事側で唱えることができます。

「なんで?ライブラリーにあるときはクリーチャーだって言ったじゃん!」と思われるかもしれませんが(少なくとも私は最初思いました)、これは「呪文を唱えること」のルールによってそうなっているので「当事者カード」のルールだけを見てもわかりません。なんてこった。

総合ルール601.3e

ルールや効果が、カードやカードのコピーを唱えるのが適正かどうかを判断するのに代替の特性群あるいは特性群の一部だけを参照することがある。その判断のためには、代替の特性でそのオブジェクトの特性を置き換える。そのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。

例2

溺神の信奉者、リーア砕骨の巨人

同様のことが《溺神の信奉者、リーア》でも起こります。「あなたの墓地にありインスタントやソーサリーであるすべてのカードはフラッシュバックを持つ。」というテキストだけを読むと墓地にある《砕骨の巨人》はクリーチャーなのでフラッシュバックを持たないように思えますが、墓地から《踏みつけ》を唱えようとするときには《踏みつけ》はインスタントなのでフラッシュバックを持つようになり、墓地から唱えることができます。不思議ですね。

炎の中の過去

さらにややこしいことに、テキストがそっくりな《炎の中の過去》の場合はなんとフラッシュバックを得ないので唱えられません。

「持つ」と「得る」しか違わないじゃん!そこの違いなの?と思うかもしれませんが、これは効果が常在型能力によるものかそうでないかで決まります。

《溺神の信奉者、リーア》の場合、リーアが戦場にいる間はずっとフラッシュバックを持たせる効果が発揮されています。

これが先ほど紹介した総合ルール601.3eのそのオブジェクトがそれらの特性を持つようになった場合に適用される継続的効果も考慮される。」に当てはまるため、《踏みつけ》にフラッシュバックを持たせられます。

しかし《炎の中の過去》の場合、解決したときに墓地のカードにフラッシュバックを持たせたらそこで終わりです。これは上記の”なった場合に適用される継続的効果”に当てはまりません。なので、フラッシュバックを得させることができません。

例3

ほかにも1枚のカードでややこしいことになるのが《勝負服纏い、チャンドラ》です。

勝負服纏い、チャンドラ

《勝負服纏い、チャンドラ》にはカードを追放して唱えられる効果が2つありますが、この2つには違いがあります。

2番目の[+1]能力「あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。それが赤であるなら、このターン、あなたはそれを唱えてもよい。」では、追放したカードが赤かどうかが重要です。

探索するドルイド煮えたぎるバイパー

この能力で《探索するドルイド》を追放した場合、通常の特性は《探索するドルイド》の色、つまり緑です。どちら側も唱えられません。追放したのが《煮えたぎるバイパー》の場合、それは赤なのでどちらでも唱えられます。

一方[-7]能力「あなたのライブラリーの一番上にあるカード5枚を追放する。このターン、あなたはその中から望む数の赤の呪文を唱えてもよい。(後略)」の場合、追放した後にどう唱えるかが重要です。

この能力で《探索するドルイド》を追放した場合、《獣の探索》を唱えるならそれは「赤の呪文」なので、唱えることができます。《探索するドルイド》は唱えられません。


ほかにも《至高の者、ニヴ=ミゼット》などどうなるか分かりづらいカードがたくさんありますが、個別に説明すると記事がとても長くなってしまうので一旦この辺で切り上げます。すごーくざっくり言うと「唱えるとき以外は通常の特性だけを見る。唱えようとするときや唱えてスタックにあるときは、どっち側で唱える/唱えたかが大事」ということです。

個別に気になる事例がある場合は、お近くのジャッジにご質問ください。もしかしたら、お近くのジャッジも険しい顔をするかもしれません。それくらいややこしいので……

問題

Q1

巨人落とし才能の試験

相手が《切り落とし》を唱えたので、自分は《才能の試験》で打ち消した。相手の墓地などから《巨人落とし》を追放できるか?

Q2

眼識の収集イモデーンの徴募兵

自分が《眼識の収集》で相手の《イモデーンの徴募兵》を追放し、《兵団の訓練》として唱えた。解決された後、その《兵団の訓練》はどうなる?誰が唱えられる?

Q3

閑静な中庭炎心の決闘者

「人間」を指定した《閑静な中庭》1枚と《平地》2枚をコントロールしている。これらの土地からマナを出して《炎心の切りつけ》を唱えられるか?

Q4

有角の湖鯨呪文捕らえ

相手が《礁湖の決壊》を唱えたので、自分が《呪文捕らえ》で追放した。その後、《呪文捕らえ》が死亡した。相手は《礁湖の決壊》《有角の湖鯨》として唱えられる?

Q5

エラントとジアーダ撚り合わせる双子

《エラントとジアーダ》をコントロールしている。ライブラリーの一番上にあるカードを見たら「飛行」を持つ《撚り合わせる双子》だった。これを《敏捷な螺旋》として唱えられる?

おわりに

今回の記事で紹介できるのはここまでです。

ほかにもたくさん気になることがあると思いますので、そのときはお近くのジャッジに質問するか、晴れる屋Discordのルール質問チャンネルでご質問ください。

それではみなさん、次のイベントでお会いしましょう。また次回!

この記事内で掲載されたカード

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