はじめに
みなさん、こんにちは。富澤です。
『イクサラン:失われし洞窟』の全カードリストが公開されました。使いたいカードは見つかりましたか?私は《好戦的な槌頭》が気になっています。個人的に愛してやまない《八百長試合》の誘発条件を一度で満たすパワー6のクリーチャーであり、恐竜専用のマナクリーチャー《イクサーリの伝承守り》から2ターン目にプレイ可能。つまり、3ターン目にして《八百長試合》の「秘匿」解除が狙えるのです。
ここで延々と《八百長試合》の可能性について語りあかしたいところですが、見るべきカードはほかにもございます。過去のスタンダードで大暴れした《魂の洞窟》が復活するのです。
今回の情報局では、『イクサラン:失われし洞窟』に再登場する《魂の洞窟》にスポットを当てていきます。
《魂の洞窟》とは?
《魂の洞窟》が戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。
:を加える。
:好きな色1色のマナ1点を加える。このマナは、選ばれたタイプのクリーチャー呪文を唱えるためにのみ使用でき、その呪文は打ち消されない。
《魂の洞窟》はクリーチャー専用ですが、すべてのマナを供給できる5色土地です。戦場に出る際にクリーチャー・タイプを選ぶため、複数のクリーチャー・タイプが入っている場合でも手札の状況と照らし合わせて運用可能です。たとえば人間を指定すれば人間クリーチャー呪文にのみ使用できるを供給します。この1枚で《スレイベンの守護者、サリア》《侵攻の伝令、ローナ》《魅力的な悪漢》唱えられるのです。
ここでいうクリーチャー・タイプとは、人間などの種族と兵士などの職業の両方を指します。
過去にも5色土地はありましたが、何かしらのデメリットを持っていました。マナの対価としてライフを支払う《真鍮の都》や《マナの合流点》、対戦相手にトークンを与える《禁忌の果樹園》、維持するのに条件のある《空僻地》などなど。一方、《魂の洞窟》にこれらのようなデメリットは見当たらず、マナの使い道に制約があるのみです。
《魂の洞窟》の真価は色マナ供給のみにあらず。打ち消し呪文に対する耐性こそ、このカードで重要視すべき一文です。相手の《かき消し》を無視して、《黙示録、シェオルドレッド》や《偉大なる統一者、アトラクサ》をプレイできるわけです。もはや存在自体がコントロール対策であり、環境から打ち消し呪文を追放しかねません。
かつてインスタントとソーサリーを打ち消し呪文から保護する《すべてを護るもの、母聖樹》がありましたが、タップインでありマナを出すのにライフを支払わなければなりませんでした。カードタイプの違いはあれど、《魂の洞窟》は非常に使い勝手の良い土地とわかります。
それでは過去の《魂の洞窟》の活躍を見ていきましょう。
《魂の洞窟》の歴史を振り返る
初登場は《希望の天使アヴァシン》と《グリセルブランド》のパッケージイラストが印象的だった『アヴァシンの帰還』でした。
《魂の洞窟》はローテーション直後に開催されたグランプリにて頭角を現します。『グランプリ・チャールストン12』においてラクドスミッドレンジが優勝すると、次の『グランプリ・サンアントニオ12』でも同じアーキタイプがワンツーフィニッシュを飾ったのです。このデッキのキーカードこそ《魂の洞窟》でした。
アグロながら4、5マナと重いマナ域を採用したクリーチャーデッキ、つまりはミッドレンジの先駆けともいえるアーキタイプです。序盤からボードにクリーチャーを展開してプレッシャーをかけ、中盤以降は《ファルケンラスの貴種》と《地獄乗り》《雷口のヘルカイト》で一気にライフを詰めていきます。速攻クリーチャーが多く、全体除去の返しであってもすぐに攻勢へと転じられる構築です。
『ラヴニカへの回帰』リリース直後は、《スフィンクスの啓示》や《至高の評決》などを手にして大幅にアップデートされた青白軸のコントロールが本命とされていました。多種多様なボード干渉手段と強力なアドバンテージ源、そこに打ち消し呪文は《中略》に《雲散霧消》、《本質の散乱》と充実しており、隙のない構築といえました。
しかしながら、ラクドスミッドレンジの攻撃力はほかの追随を許さず、防御的なコントロールのガードもやすやすとこじ開けるほどの力を誇りました。これにより、環境初期に登場すると瞬く間にトップメタへと躍り出ました。色調整と中盤の攻め手を打ち消し呪文の上から通す手段として、《魂の洞窟》は大活躍したのです。
これまでは、手札に溜まりがちなマナ域の重いカードほど打ち消し呪文に弱いと相場が決まっていましたが、《魂の洞窟》によってその定石は覆されてしまいました。当然ながら重いカードは強く、打ち消し呪文をすり抜けた場合致命傷となりえます。中速デッキや重いクリーチャーがコントロールの防御を貫通する攻撃力を手にしたのです。
さらには、クリーチャーを使ったコンボデッキでも採用されていました。「切削」過程でクリーチャーと一緒に釣り竿である《掘葬の儀式》まで落とすリアニメイトです。当時はミッドレンジや複数の無限コンボとさまざまなタイプがありましたが、ここでは無限コンボタイプをご紹介します。
《忌まわしい回収》や《根囲い》で墓地にクリーチャーを貯めて、《掘葬の儀式》で《栄光の目覚めの天使》をリアニメイトし、さらに天使の効果で墓地にあるほかの人間クリーチャーもすべてリアニメイトする豪快な戦略です。その際《炎樹族の使者》《悪鬼の狩人》《地底街の密告人》がいれば無限ライブラリーアウトが完成します。
コンボの手順としては《栄光の目覚めの天使》の効果で《炎樹族の使者》《悪鬼の狩人》《地底街の密告人》がリアニメイトされ、《炎樹族の使者》の能力と《悪鬼の狩人》の追放能力がスタックに積まれます。追放する対象を《栄光の目覚めの天使》に指定します。
スタック解決後、出ていたマナを使い《地底街の密告人》の能力を起動型し、《炎樹族の使者》と《悪鬼の狩人》を順次生贄に捧げます。《悪鬼の狩人》が戦場を離れたことで《栄光の目覚めの天使》の効果が誘発し、最初へと戻ります。
コンボ戦略の常として打ち消し呪文に対する脆さがあげられますが、その点も克服しています。この場合《掘葬の儀式》に頼らず、正規ルートで《栄光の目覚めの天使》を目指します。すなわち《根囲い》でマナを伸ばして、天使を指定した《魂の洞窟》から7マナをひねり出すのです。最速4ターンキルすら狙えるデッキでありながら、《魂の洞窟》を経由すれば長期戦を得意とするコントロールの土俵で、脅威を通せます。打ち消し呪文恐るるに足らず。
活躍の可能性
さて、現代に蘇る《魂の洞窟》はスタンダードで活躍する可能性はあるのでしょうか。
《魂の洞窟》を強く使えるデッキや環境を整理すると、「デッキ内の部族が統一されている」「通したいキークリーチャーがいる」「ゲームレンジが広く、単体で脅威となるクリーチャーを採用している」「打ち消し呪文が強い環境」などがあげられます。
現在のスタンダードはアゾリウス兵士やエスパーミッドレンジが大手を振るって闊歩しています。早いクロックと《かき消し》に苦しめられた方も多いはず。《魂の洞窟》があれば《偉大なる統一者、アトラクサ》や《怒りの大天使》《黙示録、シェオルドレッド》などのフィニッシャーを安全に着地させることができるのです。
さらにクリーチャー・タイプと聞けば真っ先に「人間」が思い浮かびます。白を中心にナヤカラーには《結ばれた者、ハラナとアレイナ》や《忠実な護衛、ハジャール》といった良質な人間がそろっており、色マナを安定させるために《魂の洞窟》を採用するメリットは高そうです。《閑静な中庭》もあるため、部族を統一すれば5色人間も構築可能です。
マイナー部族にも光を当てて
実はスタンダードに《魂の洞窟》と《閑静な中庭》以外にも、アンタップインの5色土地があるのをご存知でしょうか。レジェンズタイプのデッキでお馴染みの《英雄の公有地》、吸血鬼限定の《ヴォルダーレンの居城》、ファイレクシアン限定の《種子中枢》、操縦士や機体限定の《メカ格納庫》と4種類も。
このうち「操縦士」は少数のため除きますが、「吸血鬼」と「ファイレクシアン」はそこそこ数がそろっています。《魂の洞窟》と《閑静な中庭》《種子中枢》、さらにはスローランドとダメージランドを組み合わせればクァドラプルシンボルの《ファイレクシアの立証者》と《ファイレクシアの抹消者》の共存も可能となります。
以下はスタンダードに存在する「人間」「吸血鬼」「ファイレクシアン」の一覧です。部族デッキを構築する際の参考にしてください。
青いコントロールに明日はあるのか?
クリーチャーデッキが恩恵を受ける反面、エスパーやアゾリウスなどの青いコントロールは不遇の時代を迎えることになりそうです。幸いにして《廃墟の地》と《解体爆破場》があるため《魂の洞窟》自体は対処できますが、無色マナしか生成できず自身のマナベースが不安定になり、最序盤に置かれた場合打ち消し呪文での防御は不可能となります。
また、戦場に出されてすぐにマナを使われてしまったカードは防ぎようがありません。最低でも1枚は打ち消し呪文を掻い潜り通ってしまうのです。そのため、今後打ち消し呪文を多用した純粋なコントロールの構築は難しいと言わざるを得ません。打ち消し呪文は非クリーチャー呪文用に少量とし、ボードコントロールを重視した構築や攻め手を増やしたミッドレンジへと移行していきそうです。
おわりに
今回は再録される《魂の洞窟》の過去を見てきました。ミッドレンジやコンボなどクリーチャーデッキでありながら、土地を多く必要するデッキ、部族を統一したデッキにはピッタリな1枚です。打ち消し呪文を多用するデッキへの明確な解答といって良いでしょう。
ほかにも『イクサラン:失われし洞窟』には海賊やマーフォーク、恐竜が登場します。《原初の病、エターリ》も恐竜ですし、意外な部族デッキが構築できるかもしれませんね。《魂の洞窟》から《原初の病、エターリ》をプレイしようものなら爽快です。新ガルタや《太陽の化身、ギシャス》にも期待ですね。これからまだまだ新しいクリーチャーが登場するはずですし、楽しみに待ちたいと思います。
さて、みなさまにご報告がございます。これまで続いてきたスタンダード情報局ですが、今回をもって終了となります。約3年間、ご愛読いただきありがとうございました。ここまで連載が続いたのは、すべて読者のみなさまのおかげです。
私の連載は終了となりますが、今後とも晴れる屋メディアをよろしくお願いいたします。
それではまたどこかで。