Translated by Riku Endo
(掲載日:2024/1/12)
はじめに
やぁ、みんな!ハビエル・ドミンゲス(@JavierDmagic)だ。
2023年の競技シーズンが終わり、2024年シーズンの始まりまであと何週間かになっている。
ということは、今がこのシーズン中に自分に起きたことを振り返り、道すがら学んだことや学びなおした有益な考え方について語る良い機会だということだ。振り返ることで自分のためになるし、読んでくれる人たちにとってすでに知っていることであっても、ためになることを願っている。
1. 地域チャンピオンシップ・ソフィア+プロツアー・ファイレクシア
“アーキタイプを実際に極めることの影響を軽視してはならない”
事の始まりはソフィアでの地域チャンピオンシップに、プロツアー権利がない状態で臨んだことだった。プロツアーに参加するために最も重要な大会だったから、自分のすべてを捧げると決めてしっかりと準備した。チームで集まっての調整なども含めてね。
早い段階でほぼラクドスミッドレンジを使うだろうという認識があったから、徹底的にこのデッキについて学ぶことに多くの時間を割いた。今でこそ「デッキを極めることは自分の勝率に本当に大きな影響を及ぼす」と強く信じているけど、ほぼすべてのフォーマットに取り組む競技プレイヤーであるなら、たった1つのアーキタイプをそのレベルに到達するまで使いこなすというのはかなり難しい。特に、それぞれのメタゲームにおいてベストなアーキタイプをプレイしようとする場合はなおさらだ。
ソフィアではすべてが上手くいき、デッキについて深く学ぶことができた。十分な時間があっただけじゃなく、チームメイトもほかのデッキをよく研究していて手強い相手になってくれたし、優れた対戦相手とのあらゆるマッチアップに対して、どのようにアプローチすべきかを理解することができたんだ。
デッキを完璧にマスターするのは、ある状況下で別のプランや異なるプレイングを教えてくれる周りの助けなしには本当に難しいと思う。繰り返しになるけど、マジックについて学ぶには、友人やチームメイトと一緒に学ぶほうがより簡単なんだ。
ソフィアに向けたリストの最後のスロットを調整した時点で、デッキについて本当によく理解できたという感覚があった。マナベースの微調整のような細かなところまで含めて、すべてのことを比較的長い間考えることができたんだ。
最終的にトップ8には残れなかったが、プロツアーの権利を獲得したとともに、デッキへの非常に高い理解と、とても良いデッキを作ることができたという感覚を得て帰ることができた。
この過程で得られた知識は間違いなく『プロツアー・ファイレクシア』に引き継がれ、ソフィアの大会の過程で練り上げられたアイデアとコンセプトを用いて、同じアーキタイプを使い7-3で終えることができた。
ほかのイベントではより浅い知識しかないデッキを使っていたこともあったが、ラクドスミッドレンジを使うことでモダンのイゼットフェニックスのような、過去に自分がたくさん使い込んできたデッキを使っていたときと同じような感覚を味わうことができた。《鏡割りの寓話》のようなカードの使い方を理解するために多くのエネルギーを注いだことも、今後確実に実を結ぶだろう。
この感覚を活かして、残りのプロツアーやシーズン中のほかのイベントでも上手く使いこなせるデッキを選択しようと決めた。
2. MOCS(マジック・オンライン)
“デッキの理解度に応じて、プレイングや結果への期待は現実的であれ”
これは直接的に1つ目と関係していて、同じコインの裏表だ。あるデッキを極めることで、すべてに対するプランを把握できて優位に立つことができる。一方、それほど経験のないデッキを使うことは、わずかな部分で得られる優位性を諦めることになるのだ。
プレイヤーがこのようなシチュエーションに陥るのには多くの理由がある。時間は誰にとっても有限だが、ときには日々やらなければいけないことに追われて、時間がさらに限られたものになる。時間をかけたデッキが、そのときのメタゲームで受け入れられないほどに悪いもので終わってしまうことだってあるだろう。週末に異なるフォーマットをプレイしなければならず、しかもそのうちの1つが未知のものだってあるんだ。
特にMOCS関連のイベントでは、シーズン中に何度かこういった状況に陥ることがあった。プロツアーで使ったデッキのプレイングと、大会前にちょっとだけ使って選んだデッキのプレイングとではとても大きな差があったのだ。あるときには、自分のミスで繰り返し負け続けたせいでフラストレーションがたまることもあった。
ただ考えてみたら、ある意味で理にかなっていることに気づいた。良いプレイヤーがゲームに勝てるのではなく、良いプレイをしたプレイヤーがゲームに勝つんだ。自分が使っているデッキについてあまり詳しくなければ、単純にプレイングも悪くなり、結果慣れたデッキを使うよりも勝率はかなり低くなる。
この精神的な調整をしてからはかなり良くなったように感じた。必ずしもプレイが上手くなったとは思わないけど、より多くミスをしたとしてもそれを許せるようになった。ほかの状況においてもこれに気づいていれば、シンプルに良いプレイができるよう理解度の深いデッキを選んだことだろう。
最近の私は、こういったイベントのためにデッキ選択することをパズルのように考えていて、自分が持つそのフォーマットとさまざまなデッキに関する知識に基づいて、使うデッキの難易度を判断する必要がある。
3. プロツアー・機械兵団の進軍
“2023年以降もデッキ構築は上手くいく”
新環境が始まって数日から数週間経てば、ほとんどのデッキがすでに研究されていると思い込んでしまう罠に陥りやすい。事実、十分な数の大会があった後では、新しいデッキが出てこないことが多いのが現実だ。しかし、必ずしもそうとは限らない。自分で新しいアーキタイプを生み出すだけでなく、すでにあるアーキタイプを新しいカードで調整するだけでも、勝率に大きな変化をもたらすことができるのだ。
ミネアポリスでのプロツアーのレポートの中で書いた通り、僕たちチームは“アンソニーファイアーボール”をプレイした。実際にこの《夜を照らす》は、我々のラクドスミッドレンジに新たな一面を加えてくれた。
あまりに悪く見えたせいで、このカードをデッキに入れるのは少々気が進まなかった。しかし、最終的にアンソニー・リー/Anthony Leeがチームのみんなを納得させ、プロツアーへこのカードを持ち込むことになって本当に良かった。というのも、このカードのおかげでトップ8に4人のチームメイトを送り込むことができたからね。
これに加えて、オータム・バーチェット/Autumn Burchettがこのプロツアーでオルゾフミッドレンジを使い、どのようにしてトップ8入りしたかも目にした。
このデッキはオータムが大会のために構築したもので、私の記憶が間違っていなければ大会全体でこのデッキを使っていたのはただひとりだった。現代のマジックにおいて斬新なデッキを使うことはいつだって罠だと思われがちだが、実際のところハイレベルな大会で優位に立つには最良の方法のひとつなのだ。
4. プロツアー・指輪物語
“たとえ何年も前から知っていたことでも、あなたが知っているすべてのことは間違っているかもしれない”
自分の基礎を疑おう。自分自身を疑おう。他を疑おう。プロツアー・指輪物語のレポートで、我々のチームデッキであるトロンに正確に何が起こったのかを詳しく話し、そのあとの記事ではさまざまなシナリオでどのようにプレイすべきかについて述べた。
このときのトップ8は間違いなくデッキがとても強かったからで、これはチーム全員が「おそらくこのデッキは適切に構築されていないのかもしれない」と疑問を投げかけたからこそ実現したものだった。
これは多くのプレイヤーがいつもやっていることではあるが、競技イベントで洗練されたデッキを使うことに慣れてくると、何年も存在しているデッキに対して「あらゆることが試されていて研究の余地がない」と思い込んでしまうことが多い。ただ、それは違う。
我々はそうではないことを何度も目にしている。ときには新しいカードがデッキの基本的な動きを変えることだってあるし、パイオニアのラクドスミッドレンジの例のように、最高のリストを生み出すために多くの手間ひまがかかったとしても、古い情報に固執しすぎないことが重要なのだ。これはそのデッキをプレイする場合だけでなく、大会でそのデッキと対戦する場合にも非常に大切なことだ。
アミュレットタイタンを例にとってみよう。このデッキはずっと昔から存在しており、2015年のプロツアー『運命再編』の決勝では、このデッキを使ったジャスティン・コーエン/Justin Cohenが、対するアントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio Del Moral Leonに敗れている。何が言いたいのかというと、このデッキはモダンでもかなり古い部類のデッキだということだ。
しかし、このデッキの変遷を見てみると《イリーシア木立のドライアド》が登場する前のバージョンであっても、今と全然違うデッキなのが分かるだろう。
最新のバージョンは《一つの指輪》デッキでもあり、それはすなわち別の角度からの対処を求められる。コンボを止めようと《血染めの月》に頼っても、以前ほどの効果は期待できないのだ。こういった状況での間違った思い込みは、大会で大きな代償を払うことになる。
5. 第29回マジック世界選手権
“ある時点で不十分だったからといって、デッキを過小評価してはいけない”
幸運なことに2023年の世界選手権に出場することができ、チームとしてもアンソニー・リーとプレイヤー・オブ・ザ・イヤーにも輝いたサイモン・ニールセン/Simon Nielsenがトップ4入りを果たした。
結果的に異なるデッキ選択をすることにはなったが、与えられた短い時間の中でチームは合理的に、上手く調整できたと感じている。僕はアンソニーと同じゴルガリミッドレンジを持ち込んだけど理由は…そうだな、この記事の1つ目の教訓による部分がほとんどだ。
しかしながら、結果的にはそれほど痛手にはならなかったが、そうなっていたかもしれないミスがあった。当初我々は赤単を弱いと思っており、それほど気に留めずにいた。このデッキはマジック・オンラインのイベントでそこそこの結果を出し続けていたが、再検討しなかったのだ。そして大会の1-2日前になってやっと、より集中的に対戦したところ、その強さに驚いた。
とにかく素晴らしいデッキというわけではないけど、十分にプレイアブルだったんだ。これは予想外で、調整はすでにかなり終盤にさしかかっていた。何が起こったのかというと、使ってみた初期のバージョンがかなりひどいもので、それから赤単のリストがゆっくりと改善され、大会のための選択肢として妥当なデッキにまでなっていることに一切気づかなかったんだ。
結局、赤単は世界選手権のメタゲームにおいて立ち位置が悪かった。けれども、僕たちチームにはこのデッキがそれほど悪くはないと気づいてから、どれくらい良かったかを調べる機会がなかった。もしこのデッキがもっと良いものであったなら、大会でのデッキ構成がめちゃくちゃなものになっていたかもしれない。その点においては運がよかったと言える。
おわりに
これらが2023年での最大の学びだ。結果的に今年は驚くほど良かったが、まだまだ改善の余地が多くあると思っているので、2024年シーズンはさらに良いプレイヤーになるために努力する。結果が伴わなくても、しっかり取り組んでいくことが選手としてできることだ。それ以外のことはどうにもならない!
次のシーズンがどうなっていくのか待ちきれないし、願わくばマジックをたくさんプレイして友人たちと多くの時間を過ごしたいね!
読んでくれてありがとう。