Translated by Riku Endo
(掲載日 2024/3/6)
はじめに
やぁ、みんな!ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez(@JavierDmagic)だ。
今回はプロツアー『カルロフ邸殺人事件』で9位に入賞することができたイゼットフェニックスについて話したいと思う。9位というのはある意味つらいものではあったけど、デッキは確かに応えてくれたということでもある。
- 2022/7/15
- 《帳簿裂き》で蘇るイゼットフェニックス
- Javier Dominguez
前回このデッキについて話したのは、《表現の反復》が禁止にされたときだった。たしかに禁止直後の夏から今回のプロツアー数日前までは、あまりこのアーキタイプを使っていなかった。でもこれは、パイオニアではアーキタイプについて学んでおけば、それが競技的なレベルである限りは時間が経ってからでも選択肢に入れられるということだ。
「Team Handshake」ではプロツアー用にこのデッキに微調整を施していて、これらの変更によって得られた結果に満足している。
以前のイゼットフェニックスの記事で基礎的な部分についてはすでにある程度触れているから、今回はこのデッキの工夫した点とプレイングのテクニック面について話そうと思う。
それでは、イゼットフェニックスにいったい何が起こっているのか?見ていくとしよう!
イゼットフェニックス
これがプロツアー『カルロフ邸殺人事件』にチームで持ち込んだデッキリストだ。
イゼットフェニックスはしばらくの間ティアー1~2あたりをさまよっていたが、プロツアーへの準備が進む内に、このデッキが大会でもっとも使用率の多いデッキである可能性が高いことが明らかになった。
対面する可能性が非常に高いと予想されているデッキを使うのには、常に多少のリスクが伴う。特にプロツアーレベルだと、相手がマッチアップごとの対策をしっかりおこなってくるので、こういったデッキはかなり分が悪くなるのだ。
個人的にはイゼットフェニックスを使うのは少し気が進まなかったけど、最終的にこのデッキを選択したことには満足している。幸運にもこのデッキに関するスキルと経験を十分に持ち合わせたチームメイトがいてくれて、使おうとしていた一般的なリストから改善することができた。
イゼットフェニックスは全体的に見てすでに洗練されているから、ほとんどのリストはだいたい似通っていた。実際のところ、チームで使うのも普通のリストでいいとは思っていたけど、『プロツアー・機械兵団の進軍』に引き続きまたしてもアンソニー・リー/Anthony Leeが私たちを引き止め、《夢を引き裂く者、アショク》をメインで試してみないかと提案してくれた。
そして数時間後、デッキリストが固まった。
《夢を引き裂く者、アショク》
《夢を引き裂く者、アショク》は、このプロツアーで最も重要ないくつかのマッチアップにおいて、私の目から見てかなり大きな改善だった。
まず《夢を引き裂く者、アショク》はミラーマッチにおいて優れている。ミラーはかなりのロングゲームになることがよくあって、《弧光のフェニックス》と《宝船の巡航》を同時に対処できる非常に効率的な方法になる。それだけでなく、メインデッキに《神秘の論争》を採用したデッキがほとんどないので、それらをケアする必要がないのだ。
また、プレインズウォーカーがテンポのよいカードとして優れているからといって、そのカード・タイプにプレイングを惑わされてはいけない。たしかに《夢を引き裂く者、アショク》はゲームを支配する力があり、早々になにもない盤面に着地すれば実質3ターンキルになりうる。しかし、ほかのプレインズウォーカーとは違って、このカードは《呪文貫き》ですら解答にならないようなゲーム終盤における蓋としても効果的だ。
《夢を引き裂く者、アショク》がミラーマッチに強いことは、たしかにこのカードを採用する最大の理由のひとつだった。しかし対ロータスコンボにおいてこそ、このカードは最も輝く。実際、調整段階でイゼットフェニックスがロータスコンボに勝ったゲームのほとんどに《夢を引き裂く者、アショク》が絡んでいた。
我々はロータスコンボ用のサイドカードとして《夢を引き裂く者、アショク》をとても気に入っていたが、試しに1ゲーム目から使ってみると、このカードが戦場に出たとたんに、明らかに相手がコンボを決めようとするのに苦労していることがわかった。
大きな違いは、1ゲーム目ではこちらが《焦熱の衝動》をフルに採用しており、相手にはクリーチャーが少ないから、いきなり出てきた大きな《龍王ドロモカ》に対処できなくて負けることがそんなに起きないということだ。キャントリップの多く入ったデッキにメインから対策カードを採用すると、トップを操作する術を持たないデッキよりも引ける可能性がはるかに高いため、このマッチアップでの影響は本当に大きいと感じた。
《夢を引き裂く者、アショク》はこの2つのマッチアップにおいて確実に強力だけど、こういうカードを採用するとほかのマッチアップで大きな代償がついてくる。クリーチャーデッキやラクドスミッドレンジ、アゾリウスコントロールが思い浮かぶね。そして、ここにこそチームがこのプレインズウォーカーを採用する本当の理由がある。実際のところ、《夢を引き裂く者、アショク》はほかのマッチアップにおいてもそんなに悪いカードではないんだ。
説明しよう。たとえ上記であげた相手に対してその能力が有効じゃないと仮定して、あるとしてもかなり稀だ(《死の飢えのタイタン、クロクサ》、君のことだよ)。一度でも《夢を引き裂く者、アショク》を維持してターンが返ってくれば、8枚自分のデッキを切削することができる。これで少なくとも《宝船の巡航》をたった1マナで唱えられるし、《感電の反復》や《弧光のフェニックス》がめくれることもあるから、この影響は思った以上にかなり大きい。
アゾリウスコントロールとの対戦で、《夢を引き裂く者、アショク》のおかげで《宝船の巡航》から《時間への侵入》を同じターン内に唱えられたゲームを初めて体験したときに、メインにこのカードを何枚か入れるのは確実なことがわかった。
メタゲームが変化したら2枚採用するのはオススメしないけど、もしイゼットフェニックスが一番使用率の高いデッキなら、何枚か《夢を引き裂く者、アショク》を採用するのがイゼットフェニックスのあるべき姿だと思う。
《錠前破りのいたずら屋》
率直に言って《錠前破りのいたずら屋》は本当に優秀で、イゼットフェニックスがパイオニアのトップメタになった主な理由だと思っている。もちろん《手練》のおかげでもあるけどね。
何も特別なところはなさそうに見えるし、実際のところほかの多くのプレイヤーと同様に単なる《パズルの欠片》の劣化版だと思っていた。そしてそれは間違っていた。大きな間違いだったんだ。
《錠前破りのいたずら屋》はこのデッキにとってこの上ないほどに選択肢を広げてくれた。切削で墓地を肥やし、ほかの呪文にはない形でカードを選ぶことができる。さらに、インスタントタイミングであることが非常に大きい。
《パズルの欠片》だと唱えた返しに《真っ白》で《宝船の巡航》をほぼ唱えられなくなるから、かつてはイゼットフェニックスに対して信じられないほどに強力だった。では《錠前破りのいたずら屋》であればどうだろう?相手のターン終了時に出来事を唱えればゴールはもうすぐそこにある!
このカードには「どんなに効果を読んでも、使っているときほどの強さがあるようには読み取れない」という意味で、《鏡割りの寓話》と通ずるところがあると思っている。このカードがデッキに与えた柔軟性によって、ソーサリータイミングの《パズルの欠片》とあわせて使っていたときより、打ち消し系のカードがかなり使いやすくなっている。
さらにそれだけではなく、おまけでクリーチャーがついてくるんだ。2マナ1/3飛行・警戒、これだけではそれほど大したことなさそうだが、どれだけ優れているかよりよく理解したければ、8マナ5/5でいつでもプレイできる「相棒」の《湧き出る源、ジェガンサ》と比べて見るといい。これなら、複数体の2マナ1/3というのはそんなに悪くないように思える。
《錠前破りのいたずら屋》はまさしくイゼットフェニックスの「相棒」ともいえる存在で、相手も自分もリソースを使い果たして手札もないような状況でこのカードで殴り勝ったときには、まさにそう感じられる。
また《時間への侵入》+《感電の反復》での勝利もより簡単にできるようになる。それに加えて、トップ次第になった状況で《帳簿裂き》の効果を誘発させるのにも優れており、本当にあらゆることができるんだ。
《帳簿裂き》
前回の記事では、《帳簿裂き》がこのデッキにとって多くの役割を果たし、《表現の反復》よりも優れているかもしれないと話した。今回言うとすれば、《帳簿裂き》はデッキで最も重要な脅威であり、明らかに《弧光のフェニックス》そのものよりも大切であるということだ。
このカードについて頭に入れておきたいのが、2ターン目にプレイできたときにはすごく有利で、できなかったときはとても不利になるマッチアップについてだ。その点で私ができる最大のアドバイスは、もしそれが相性の悪いマッチアップの場合、2ターン目の《帳簿裂き》を求めてマリガンするのは、平凡な手札をキープして負けるよりも良い選択だということだ(特にそれが1ゲーム目なら)。もし相手のデッキが分かっていて、絶対に《帳簿裂き》が必要なら、マリガン基準を調整することでより1ゲーム目で勝てるようになるだろう。
《帳簿裂き》を使う上で心掛けたほうがいいことは、2ターン目にプレイすべきか、「謀議」の誘発が保証される3ターン目まで待つか決めることだ。基本的にはなるべく早くプレイするようにしているけど、手札が悪く《弧光のフェニックス》が1枚以上あって、ほかに捨てる方法がない場合は3ターン目まで待つだろう。また、相手がラクドスミッドレンジで1マナや2マナの動きがないときは、除去を持たれていて倒される可能性が極めて高いので唱えないこともある。
《選択》 vs. 《考慮》
これはより難しい問題だ。はっきり言ってほとんどの場合、最初に《考慮》をプレイするのが正解だ。そのほうが墓地を早く肥やせるので、《宝船の巡航》をできるだけ早くプレイできる。
もうひとつ”考慮”(!!)すべきなのは、《考慮》と《選択》両方がある場合、理想としては墓地により多くのカードを置きたいなら《考慮》、ほとんどのものをトップに置いておきたいなら《選択》をプレイしたいはずだ。
例として、キャントリップを唱えて土地でも除去でもトップに置くなら、それはつまりトップがなにであれボトムや墓地に置くのはまれということになる。この例について言えば、先に《選択》を使うほうがいいように思える。《考慮》を使わずに《選択》を使ったからには、《宝船の巡航》を唱えられるチャンスは絶対に逃したくない。そのためには《宝船の巡航》の計算もしておかないといけないね。
《選択》か《考慮》どちらを使うか決めるときに考えるべきそのほかの要因は……
■《選択》はカードをボトムに置く。墓地に置くより弱いように思えるけど、いつもそうとは限らない。ライブラリーに1枚カードが置かれるということは、1ターン分ライフが伸びるという意味にもなりうる。デッキを引ききることもよくあるから、ライブラリーアウトするリスクがあるんだ。こういった状況では、1ターン分追加で攻撃できることになるから《選択》のほうが優れている。
その点では、マリガンして《時間への侵入》のような切り札、はたまた《弧光のフェニックス》でさえもボトムに置いておけば、《手練》に加えて《選択》はゲームに勝つためのカードをライブラリーに十分に保ちながらドローすることができる。《考慮》をほかのキャントリップより優先して使うときはこのことを念頭に置いておこう、そしてキーとなるカードをボトムに送ったか覚えておこう。
■《墓地の侵入者》と《真っ白》は《選択》を先に使う潜在的な理由になっている。《弧光のフェニックス》を墓地に置くなら、戦場に戻すそのターンに置いたほうがいいからね。《墓地の侵入者》に対して、《帳簿裂き》を墓地に置く場合も同じことが当てはまる。対ラクドスでのそういった状況では《選択》のほうが優れているかもしれない。
《手練》 vs. 《選択》/《考慮》
《手練》はソーサリータイミングゆえに先に唱えるキャントリップになりやすいけど、ハンデス呪文に対するごく一般的なプレイングには当てはまらない例外を見つけた。もし《思考囲い》の入っているデッキに対して《選択》と《手練》が手札にあった場合、そのままターンを渡して、今後のターンのソーサリータイミングの選択肢を失うほうが賢明な場合がある。これによって、2つのアドバンテージが得られる。
1つ目は、こちらの何が不足しているか、相手が得られる情報がより少なくなる。これはつまり、キャントリップで引くであろう《帳簿裂き》を相手は抜けないということだ。それだけでも十分だけど、まだある!キャントリップを使って自分の決断をする前に、相手のゲームプランに関する情報を得られることもあるんだ。これを過小評価してはいけない。ハンデス呪文によって相手の手札の内容の多くが明らかになる、というのはよくある。
例えば《帳簿裂き》と《宝船の巡航》が手札にあったとして、相手が《帳簿裂き》を抜いたとする。その場合、おそらく相手は手札に除去を持っていないだろう。こういった情報を使うことで、より自分のキャントリップ呪文の質を高めることができ、それは序盤のターンのソーサリーよりも価値があるのだ。
サイドボーディングガイド
この記事で一番気になるパートだろう!
ミラーマッチ
vs. ミラーマッチ
アゾリウスコントロール
vs. アゾリウスコントロール
ラクドスミッドレンジ
vs. ラクドスミッドレンジ
ロータスコンボ
vs. ロータスコンボ
アマリアコンボ
vs. アマリアコンボ
ボロス召集
vs. ボロス召集
イゼットエンソウル
vs. イゼットエンソウル
《白日の下に》コントロール
vs. 《白日の下に》コントロール
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