第10期ヴィンテージ神決定戦: 森田 侑(東京) vs. 飯野 彬(千葉)

晴れる屋

By Genki Moriyasu

 多元宇宙。それはマジック・ザ・ギャザリングの背景世界を支える世界設定だ。霊気が満ちた闇に無数の次元が存在する世界の集合体。原初の舞台であった次元ドミナリアも、恐竜と海賊が同居する混沌とした新次元イクサランもそのうちのひとつだ。

 そして5年前、プレインズ・ウォーカーであるマジック・プレイヤーたちが訪れた次元の1つにテーロスがあった。ヘリオッド、タッサ、エレボス、パーフォロス、ナイレア。五柱の神々がおわすところ。

 信心で以って現世に顕現する彼らをなぞらえるがごとく。4年前、ゲームとしてのマジック・ザ・ギャザリングでも『神』の称号を得られる大会が開催されるようになった。

 神決定戦。

 シンプルかつ大胆なその名の大会は、フォーマット毎にそのシーズンの『神』を定めるというものだ。今日催されているのは10期10代目の節目となる神決定戦であった。必然、プロアマを問わず多数のプレイヤーたちから注目を浴びている。

 スタンダード神決定戦から戦いの火蓋は切って落とされていた。

 神、岡井 俊樹 vs. 挑戦者、光安 祐樹。

 《霊気との調和》《ならず者の精製屋》が環境から姿を消したあとの環境において最強の一角と名高い赤単アグロ同型戦であった。

 フロンティア神決定戦も既に勝敗は決していた。

 神、松本 友樹 vs. 挑戦者、木原 惇希。

 第1期スタンダード神の座にあった木原が、フォーマットを変えて捲土重来を図った。《霊気池の驚異》コンボ vs. 《時を越えた探索》を積んだダーク・ジェスカイ。ともに特定のフォーマットで禁止裁定も下されているパワー・カード同士の対決となった。

 そしてモダン神決定戦は先ほど終えたばかりだ。

 神、松田 幸雄 vs. 挑戦者、渡邉 真木。

 タイタンシフト vs. 白緑オーラ。コンボ同士の対決ながら、ライフ1点の多寡が非常に大きく戦況を左右するマッチアップだ。1点を守り抜きたい。1点を攻めきりたい。マジックの真骨頂ともいえるライフレースが白熱した。

 三戦三様ながら、いずれも激戦であった。……そして戦いは最大級のカードプールを誇るフォーマット、ヴィンテージに移る。

 マジックの第1セット「アルファ」の時代からのほぼ全てのカードを使えるフォーマット。その派手さ・勢いの良さに”マジックらしからぬフォーマット”とも揶揄されるが、ヴィンテージこそマジックの根幹だと確信しているプレイヤーも少なくない。

 対戦席には既に相対する二人のプレイヤーの姿があった。マジックを愛しヴィンテージを愛する二人のヴィンテージ・プレイヤーだ。

森田 侑

森田 侑

 一人は言わずと知れたヴィンテージ神、森田 侑(東京)

 タイトル創設期から不敗の、唯一神だ。過去の防衛戦では、その圧倒的な知識と戦略を武器に挑戦者たちをパーフェクト・ゲームにも近い勢いで退け続けてきている。自らの試合のみならず挑戦者を決める神挑戦者決定戦の決勝トーナメント実況などでも、その鋭い観察力・洞察力は輝いている。戦いに勝つべくして勝ち、神の座が続くべくして続いている。

 その実力は既にヴィンテージ界の外にも知れ渡るところとなっており、9期連続レガシー神・川北 史朗の最長在位記録に続くとすれば彼しかないという話も出ている。

 そしてこの不撓不屈の神に正面から立ち向かう挑戦者の目もまた、燃えるように輝いている。

 飯野 彬(千葉)

飯野 彬

飯野 彬

 第10期ヴィンテージ神挑戦者決定戦の最終順位は第3位ながら、1位と2位が一身上の都合で決定戦を辞退した為、繰り下がりで挑戦者の権利を獲得した僥倖なプレイヤーだ。『幸運/Good-luck』という大一番では最も必要な要素に一番愛された人間だともいえる。

 ヴィンテージ暦は長く、もちろん実力も伴っている。ヴィンテージのトッププレイヤーのみが集ったAsia Vintage Championshipでトップ8に残っただけでなく、過去の挑戦者決定戦でのトップ8率も非常に高く、安定した勝率もあって挑戦者としての資格は十分だろう。互いにヴィンテージ専門プレイヤーとして普段対戦する機会も多い森田をして「これまででいちばん怖いプレイヤー」だと評している。

森田「……この瞬間が、一番緊張するよ」

 テーブルの脇に置いたペットボトルのお茶を少しだけ口に含み、飯野をまっすぐと見ながら森田が一言こぼした。

 放送インタビューを終え、対戦席につき、対戦の準備もひと段落すると会場には少しの間だけ、しんと静まり返る瞬間があった。神も挑戦者も、二人を見守るスタッフたちも、これから始まる試合に向けて固唾を呑む瞬間だ。

 飯野「土地を置くまでですよね」

 飯野もうなずく。

 “土地を置く。”

 マジックにおいて、ほとんどの場合1ターン目の開始を告げるアクションだ。(ヴィンテージにおいて全くその限りでないのは、誰より当事者たる彼らが熟知している。)

 実際にゲームが始まりさえすれば、普段と変わらない。

ヴィンテージ神決定戦、両者の握手

森田 侑 vs. 飯野 彬

Game 1

 やがて開始の合図がかかり、普段通りダイスが振られた。1ターン目に趨勢が決まることもあるヴィンテージにおいて最重要な先手は、飯野が獲得していた。

 その飯野の《Underground Sea》からの《思案》。順当かつ正当な一手でゲームが開幕した。森田もまた《Underground Sea》からの《定業》でターンを返す。

 穏やかに始まった1ターン目と打って変わって、続く2ターン目に両者のデッキタイプが判明することになる。飯野は《ファイレクシアの塔》を置いてから《閃光》を唱えた。

閃光

 《閃光》は、瞬速を持たないクリーチャーをインスタント・タイミングで着地させるというカードだ。本来は多少割引されたコストを払うことで戦場に定着するが、意図的にコストを払わないことを選べば死亡したときの誘発を踏み倒して利用できるという性質をもつ。《変幻の大男》との組み合わせである「ハルクフラッシュ」は最速0ターンキルを持つコンボとして悪名高い。

 しかし「ハルクフラッシュ」はその構造上、かなりの枚数をコンボパーツにデッキの枠を取られることになる。ヴィンテージには、より少数の枠で構成され、かつ実践的なコンボがもう1つあった。

アカデミーの学長全知

 「レクターコンボ」。《アカデミーの学長》の死亡時誘発型能力で好きなエンチャントを探し出す。いわずとしれた《全知》《引き裂かれし永劫、エムラクール》へと段階的に繋げるアプローチもあるコンボだ。

 若干使いづらい起動コストをもつ《ファイレクシアの塔》が採用されている点からも、森田は飯野のデッキを「レクターコンボ」だと判断したようだ。

森田「流石に、ダメでしょう」

 森田はこの《閃光》を、ピッチ・コストで《意志の力》を唱えて打ち消した。そしてそのまま自らのターンでは攻め手に回る。《禁忌の果樹園》セットから唱えた呪文は《ドルイドの誓い》だ。

禁忌の果樹園ドルイドの誓い

 「オース」。森田が選んだのは、”2マナの呪文1つをプレイ”という、マジック全体を見渡しても最軽量に位置つけされるコンボだ。

 加えて《禁忌の果樹園》でトークンを押し付けることでクリーチャーレスなデッキ相手にも 《ドルイドの誓い》を安定して誘発させる。過去のヴィンテージ神決定戦でも姿を見せたことのある、ヴィンテージではメジャーなデッキ・タイプだ。

 この森田の《禁忌の果樹園》によって、飯野の盤面に1/1スピリット・トークンが沸く。このままなにもなければ森田のアップキープにて 《ドルイドの誓い》は条件を満たして誘発し、ライブラリーに仕込んだ精鋭のクリーチャーが姿をあらわすことになるだろう。

飯野「なるほど」

 飯野は森田がオースを選ぶことは可能性のひとつとして考慮にいれていたようで、《ドルイドの誓い》登場にも焦りの気配はない。 なにより、飯野は既に”オース対策”を設置できているのだ。飯野の《ファイレクシアの塔》が森田のコンボ完成を許さない。

ファイレクシアの塔

 飯野は、《ドルイドの誓い》の「自分より1体以上多いクリーチャーをコントロールする対戦相手」という誘発条件を満たさせないように動いていく。《ファイレクシアの塔》起動によってトークンを生け贄にマナ加速しつつ、展開を広げていった。一見使いづらそうな起動コストをもつ《ファイレクシアの塔》が、コンボパーツにしてコンボ対策にしてマナ加速という三面六臂の活躍をみせつける。

 嵐の前の静けさをもつ3ターン目は互いにセットランドのみで過ごしての、4ターン目。飯野が《禁忌の果樹園》セット後、《陰謀団式療法》を唱えるところから再びゲームの時計の針が動き出す。

 森田の盤面にまず1/1スピリット・トークンが生み出された。《禁忌の果樹園》はアンタップインの5色土地とはいえ、トークンを相手に与えるデメリットは通常は看過しがたい。それこそ《ドルイドの誓い》と組み合わせる場合を除き、ヴィンテージにおける採用で実用的なものは少ないようだ。レクターコンボに《陰謀団式療法》自体はつきものだが、この《禁忌の果樹園》となると話は別だ。

 森田目線で、飯野のデッキは「レクターコンボ+オース」という2つのコンボを採用したハイブリッド・デッキだという予想が高まる。

飯野「指定はウィル(《意志の力》)で」。

 飯野が森田のハンドを確認すると《意志の力》こそなかったが手馴れたもので《精神を刻む者、ジェイス》《ドルイドの誓い》《紅蓮破》《グリセルブランド》のハンドを手際よくメモする。これで飯野は情報戦において大きなリードを得た。

 森田はターンをもらって、既に公開している《精神を刻む者、ジェイス》をプレイする。

精神を刻む者、ジェイス

森田「出るのは良いが、”ここ”からが難しいんだよね」

 モダンで解禁になったばかりの青きプレインズ・ウォーカーを着地させると、その能力起動に悩む。飯野の表情と盤面に突き刺すような視線を送り観察を続けながら、森田は宣言した。

森田「ブレインストーム(「0」能力起動)で」

 直前に飯野にハンドをさらされている。加えて、2ターン目の《閃光》のくだりから《アカデミーの学長》が既に飯野のハンドにある可能性が高い。ここで引き込む3枚の内容次第で、森田がこれから取るべき舵の向きも決まるだろう。果たして、結果や如何に。

 その森田の一連の挙動を観察しつづけた飯野も、ここが攻め時と判断したようだ。《アカデミーの学長》をプレイ。通る。この《アカデミーの学長》《陰謀団式療法》のフラッシュバック・コストに充て、《アカデミーの学長》の死亡時誘発型能力が誘発する。通る。飯野が探しだしたエンチャントは、《全知》

陰謀団式療法アカデミーの学長全知

 スタックの順番によって、ここから《陰謀団式療法》の解決が行われる。

飯野「指定は、“レッドエレメンタルブラスト”。」

 飯野は《全知》を直接破壊可能な1マナ・スペルの名前を宣言した。そして森田は一瞬の躊躇いのあと、ハンドを公開した。

 そこには確かに飯野が標的として定めた《紅蓮破》があった。1回目の《陰謀団式療法》解決のときに見ていたカードだ。

 ……しかし、このカードは森田のハンドから墓地への領域移動を果たさない。森田の一言によって、飯野は血の気が引き青ざめた。

森田“パイロ”です」

赤霊破紅蓮破

 《赤霊破》 通称”レブ(REB)”。《紅蓮破》 通称”パイロ”。”おおむね”似たような挙動を持つ異なる2つのカードが、レガシー以下のフォーマットでは存在した。

飯野「やっちゃった」

 飯野の、率直にして、悲痛な感想。

 勘違い。思い込み。言い間違い。いずれにしても飯野の宣言は間違いなく《赤霊破》を意味する”レッドエレメンタルブラスト”であり、森田のハンドにその名前を持つカードはない以上、《陰謀団式療法》《紅蓮破》を捨てさせることはできない。普段であれば絶対とも言えるレベルで起こり得ないようなミスを招いてしまう。「神決定戦」という大一番の舞台の重圧は、その絶対という保障をいとも簡単にかき消してしまっていたようだ。

飯野 彬

 加えて、飯野のハンドに《全知》から即座にゲームを決められるカードはないようだ。森田のフィニッシャーを無力化する《圧倒的輝き》を設置するに留まる。

 ターンが渡され、マナが起きると森田はアップキープに《吸血の教示者》をプレイしてドローを変換したあと、ハンドに残った《紅蓮破》《全知》を破壊した。その後《精神を刻む者、ジェイス》の「+2」能力で飯野のデッキトップを確定させる。

 飯野が引かされたカードは、《引き裂かれし永劫、エムラクール》《全知》亡き今、通常プレイから登場するには程遠い量しかマナ基盤は築かれていない。そのままハンドの《陰謀団式療法》を撃つと、一度は《精神的つまづき》されるも、フラッシュバック・コストのためのトークンは毎ターン・森田の側から供給されている。フラッシュバック・プレイは通り、再び飯野は《意志の力》を宣言した。公開は《アーリン・コード》《Time Walk》《精神的つまづき》《グリセルブランド》だ。

 このターン、《ファイレクシアの塔》起動と《陰謀団式療法》のフラッシュバック・コストで、自らがコントロールするスピリット・トークンを2体減らして盤面を空とした飯野。対して森田の盤面にはスピリット・トークン2体がいるが、《精神を刻む者、ジェイス》の「-1」能力で能動的に減らせたのは1体だけだ。

 《ドルイドの誓い》は「自分より1体以上多いクリーチャーをコントロールする対戦相手」がいるプレイヤーのアップキープに誘発する。それは《ドルイドの誓い》のコントローラーが誰かを問わない、プレイヤー全員に影響するものであった。その為、互いにトークンを”押し付け続け、減らし続ける”という一見マジックの常とは真逆の行為を続けていた2人。《ドルイドの誓い》によるチェック・タイミングでは初めてトークンの量に差がつくこととなった。

陰謀団式療法ファイレクシアの塔

 飯野が森田の《ドルイドの誓い》を自らのアップキープに誘発させ、ライブラリーを捲り始めるもののしばらくクリーチャーが姿を現さない。その過程で《ドラゴン変化》が落ちると、森田は「急所が落ちた気がするな」と呟いた。《圧倒的輝き》《ドラゴン変化》はどちらも対戦相手のクリーチャーによる勝ち筋を完封する組み合わせだが、《アカデミーの学長》のサーチ領域はライブラリーに限定されているため、墓地に落ちた《ドラゴン変化》はその選択肢から除外される。やがてライブラリーの捲りは《アカデミーの学長》に辿りつくのだが……

森田「残りはバーゲン(《ヨーグモスの取り引き》)だけだよね」。

 森田はここまでの流れで、飯野のデッキリストの大半を読み取っていたようだ。《ドラゴン変化》というキーパーツが落ちたことで、強烈とはいえそれ1枚ではゲームを決めない《ヨーグモスの取り引き》しか繋ぐ先がなさそうという予測を立てていた。

  事実、飯野は《アカデミーの学長》《ファイレクシアの塔》で生け贄に捧げると、能力によって《ヨーグモスの取り引き》設置へと繋げた。勿論これ1枚ではゲームを決められないとはいえ、《ヨーグモスの取り引き》はあの《グリセルブランド》と同効率かつ、より小回りの利く最上級のドローエンジンだ。

ヨーグモスの取り引き

飯野「1点ペイします」「1点ペイします」「1点ペイします」……

 飯野が1枚ずつ内容をしっかり精査しながらドローを進めていく。ここまででほとんど戦闘がなかったため、ライフはまだ十分量ある。

森田「なにか繋がったら、負けやね」

  少しずつ、ゆっくり、少しずつ、ゆっくりハンドを充填する飯野を見つめ、自分でない”何か”に祈るしかない神、森田。

  そうして7点を支払い7枚のドローを終えた飯野は一旦カードを引く動きを止めた。《ギタクシア派の調査》で森田のハンドを確認する。そこで取りうるリアクションが《精神的つまづき》のみであることを確認したあと飯野が唱えたのは……《実物提示教育》

  • 飯野 彬
  • 「レクターコンボ」
  • 第10期ヴィンテージ神決定戦

  《アカデミーの学長》《ドルイドの誓い》でマナを踏み倒してライブラリーから打ち出す予定の大物たちがハンドに来たとき、直接戦場に送り込むための《実物提示教育》も採用されている。言うなれば飯野のデッキは「レクターコンボ+オース+ショウテル」のトリプルコンボだ。

アカデミーの学長ドルイドの誓い実物提示教育

  そうして飯野は、先ほど無駄牌として引き込んでいた《引き裂かれし永劫、エムラクール》を着地させる。先の《陰謀団式療法》での確認によって森田が出せるパーマネントを持っていないことは確認済みでの上だ。

  この《引き裂かれし永劫、エムラクール》は唱えられていないために誘発型能力による追加ターンは得られないが、飯野は続けて《Time Walk》を唱えて”自前”で追加ターンを用意する。

  召還酔いが解かれ、滅殺の女神が目を覚ます。ゲートウォッチらの活躍によって今は月に封印されている恐ろしき女神が覚醒の咆哮をあげる直前、森田は盤面を片付けた。

森田 0-1 飯野

Game 2

森田「参りましたねえ」

  Game 1を落とした森田。飯野の持ち込んだ「レクターコンボ+オース+ショウテル」という形は、森田からしてみればほとんど想定していなかったようだ。その上でプロツアー決勝ラウンドに準拠するBo5(3ゲーム先取制)の性質として、メインボードに変更なくGame 2が開始する。

  先手を取った森田が1ターン目・《Mox Sapphire》《Tropical Island》から《森の知恵》を張る。Game 1のレガシーチックなアクションと異なり、パワー9も織り交ぜたヴィンテージらしさ溢れる動きだ。

  飯野も《禁忌の果樹園》《Mox Pearl》プレイから《陰謀団式療法》《精神的つまづき》を指定する。2点のライフというごくごくわずかなリソースと引き換えにあらゆる1マナ呪文を打ち消す《精神的つまづき》もまた、レガシーで許されなかったカードの1つだ。

  森田は《意志の力》《アーリン・コード》《ドルイドの誓い》、そして《Ancestral Recall》のハンドを開いた。森田は《森の知恵》で4点を支払い2枚ドロー。《Ancestral Recall》プレイで3枚ドロー。《思案》プレイ(シャッフル)で1枚ドロー。2ターン目にして合計6枚のカードをハンドに加えて、一気に内容を刷新した。

森の知恵Ancestral Recall思案

  返すターン、飯野はアップキープ・《吸血の教示者》でドローを確定させたかったが「だめです。」と、森田も”これを探していた”とばかりに6枚のうちにあった《精神的つまづき》を合わせる。飯野は続くメインフェイズで《禁忌の果樹園》2枚目を置いて《思案》を唱えるが、欲しいものにはたどり着かなかったようでシャッフルが入る。

  森田は《森の知恵》で1ドローしたあと、《ダク・フェイデン》を着地させる。「-2」能力で《Mox Pearl》のコントロールを得て、飯野のマナ基盤・行動回数へプレッシャーをかけていく。飯野は劣勢を打開するため《商人の巻物》を唱えるが、森田が《Mana Drain》を合わせると、ターンを終えるしかない。

  森田がこの《Mana Drain》《Black Lotus》起動の爆発的マナ加速から唱えたのは……《グリセルブランド》

グリセルブランド

  最速のフォーマットのイメージも強いヴィンテージだが、一時的なマナ加速のタイミングが合致すれば(黒)(黒)(黒)(黒)を含む8マナを生み出すことも容易なようだ。

  飯野は未だ挫けず《神秘の教示者》を唱えるが森田の《狼狽の嵐》が合う。そのまま飯野はメインで肝要の《精神を刻む者、ジェイス》を通して《グリセルブランド》のバウンスにこそ成功するが、2枚の《禁忌の果樹園》を存分に使い込んだ結果として森田の盤面には既に計7体のスピリットトークンが送り込まれていた。

  森田は《時を越えた探索》《ダク・フェイデン》の「+1」能力でハンドにカウンターを貯めきった。万全の状態から《精神を刻む者、ジェイス》をプレイしての「+2」能力で飯野のライブラリー・トップを覗き込みはじめると……

飯野「投了です」

  飯野はこのロック状態から逃げ出せる手立てがないことを察し、畳んだ。

森田 1-1 飯野

  痛み分けで終えたメイン2戦。サイド後は大きく変形し合うこととなる。

  「同型だけはやりたくなかった。なにをやれば良いんだ」とサイドボーディングに悩む森田。特に今回の「レクターコンボ+オース+ショウテル」型に関しては、対戦経験がほとんどないと話す。挑戦者の意図を見抜き、デッキを予想し、キープを合わせてきたことで神の座を守り続けた森田の、珍しい表情だ。

  ガラリと性質を変えて、互いに相手の有利になる可能性が少なからずある《ドルイドの誓い》を完全にサイドアウトしてGame 3を迎える。かなり厚めにカウンターをとる森田と、”カウンター殺し”の《すべてを護るもの、母聖樹》をインした飯野。変形後のデッキとしてはそれぞれ「PWコントロール」と「レクターコンボ+ショウテル」という形だ。(森田側は飯野ほど重いカードを積んでいないこともあり、《実物提示教育》を採用していない。)

Game 3

  飯野は1マリガン。マナソース4枚と《精神的つまづき》、そして《吸血の教示者》というハンドだ。「やってみるかあ」と決して乗り気ではないものの、ハンドが弱いと呼ぶには《吸血の教示者》というカードはあまりに汎用的だ。ゲーム開始前の占術でトップに《陰謀団式療法》を置いて、《Underground Sea》をセット・エンドする。

  森田は《紅蓮破》2枚を含むカウンター・ハンドをキープしている。《Volcanic Island》セットから《トーモッドの墓所》を置いて墓地を牽制した。

トーモッドの墓所

  《アカデミーの学長》のサーチは死亡時に誘発する能力だが、死亡後さらに墓地から追放領域へ移動させることで能力が解決する。墓地対策のうち、《トーモッドの墓所》のようにカードを墓地から追放へ領域変更させるような類のものであれば、制することが可能だ。

  森田の動きを見てから《吸血の教示者》を打った飯野だが、これは裏目となってマナを立てた森田の《狼狽の嵐》が合わさった。予定が変更され、引いた飯野は変わらなかったデッキトップから《陰謀団式療法》を引いて唱える。

  指定は「ウィル(《意志の力》)」。何度も繰り返し指定される最強のピッチ・カウンターだ。それだけコンボを通すときにその有無が重要となる。今回も打ち落とせはしなかったものの《紅蓮破》2枚、《業火のタイタン》《精神を刻む者、ジェイス》《禁忌の果樹園》2枚のハンドを確認して、ゲームプランをじっくりと立ててゆく飯野。

  ここからはしばらく互いにセットランド・ゴーを続けたが、飯野が4ターン目に《すべてを護るもの、母聖樹》を置くと、森田も《禁忌の果樹園》2枚からトークン2体を送りつつ《精神を刻む者、ジェイス》をプレイする。《すべてを護るもの、母聖樹》が着地したことでカウンターの効能がここから著しく落ちることも踏まえて、「0」能力を起動してハンドを整えていった。

  飯野はこのトークン2体の攻撃で《精神を刻む者、ジェイス》の忠誠値を1に落としてから、《実物提示教育》を打ち込む。

  森田が戦場に出したのは、初手から抱える《業火のタイタン》だ。

業火のタイタン

  この《業火のタイタン》という盤面制圧力を頼って「オース」に組み込んだ形を特に「インフェルノ・オース」と呼ぶ。制圧力もさることながら2回の攻撃で対戦相手を落とせるパンチ力もまた、魅力の1つだろう。

  もちろん既にハンデスによって《業火のタイタン》の存在を知っていた飯野が、それでも《実物提示教育》を打つと判断したことには理由がある。自らが繰り出すパーマネントが、より強いと踏んだからだ。

グリセルブランド

  最恐の悪魔《グリセルブランド》が再び戦場に君臨した。今度は飯野の配下として。この悪魔の真骨頂となる能力起動までに、飯野のライフは勢い良く削れていっていた。

  《すべてを護るもの、母聖樹》マナ能力で2点払いによってライフ18。森田の《業火のタイタン》がトークン2体と飯野に1点ずつ飛ばして、ライフ17。能力起動で7点支払いライフ10。見る見るうちにライフは減るが、カードは増えていく。

  そして……飯野は《Time Walk》を唱えた。これが通れば《グリセルブランド》が攻撃に転じ、森田の《精神を刻む者、ジェイス》を落とせる。《業火のタイタン》のパンプアップ能力でも耐えられるライフも同時に取り戻すことで磐石になるかと思われたが。

  森田は、《意志の力》を持っていた。もちろんピッチ・コストとして支払う為の青いカードも。

森田 侑

  この《Time Walk》を通せばおおむね勝てるが、通せなければ負ける。それが飯野の現況であった。ターンを返せば生き残った《精神を刻む者、ジェイス》《グリセルブランド》はバウンスされ、《業火のタイタン》の攻撃でライフ10は一撃で落ちる。

  飯野もまたマナが寝ている以上、この《意志の力》に対抗して打ち消せるカードは《意志の力》のみだ。ハンドに《意志の力》は……無い。しかし、もう一度《グリセルブランド》によって7枚を引くライフは残っていた。

  熟考の末に7点支払い、7ドロー。ライフを3にした。そして念願の《意志の力》を見つけ出した。ピッチ・コストを支払い、ライフ2。

  飯野は一挙に18点を削った結果、《グリセルブランド》が生き残った状態で《Time Walk》が解決した。そして追加ターンによって飯野の戦線にも《精神を刻む者、ジェイス》が加わる。「-1」能力で《業火のタイタン》をハンドへ返してから《グリセルブランド》でアタックを決めると、森田の逆転の手立ては喪失した。

森田 1-2 飯野

  満タンのライフから始まった飯野のコンボ・スタートだったが、結果を見れば崖っぷちまでコストとして支払っていた。そして《意志の力》打ち合いが終わったあとの飯野の残りライフ2という数字を、誰よりも悔しそうに見つめたのは森田だ。《すべてを護るもの、母聖樹》のバックアップを受けた《実物提示教育》が解決され、《業火のタイタン》を着地させたとき。3点の割り振りをトークン2体とプレイヤーの3ヶ所1点ずつではなく、プレイヤーへ3点としていれば、この”残りライフ2″という残り方はしなかったはずであった。

  2回目の《グリセルブランド》起動でライフは1になり、《意志の力》が打てない為、飯野は別案を考慮しなければならなかった。ここまでの道筋をあの《実物提示教育》解決の地点で看破していれば、プレイヤー3点という選択肢もあったはずだと考えていた。少なくとも今と同様の負け方にはならなかったはずだと省みていた。

  「ミスったなあ」と、ハッキリ漏らす森田。

  傍席からの結果論で言えばプレイヤー3点を選んでいた(トークンを残していた)場合、《グリセルブランド》1度目の能力解決後に飯野の行動は変わったはずだ。生き残ったトークンが《陰謀団式療法》のフラッシュバック・コストに当てられ、そこで《意志の力》が落とされるという道筋があった。よってこの《Time Walk》はいずれにしても通らない算段が高かった。実際に《業火のタイタン》が着地した際にプレイヤー3点を思い描けていたとしても、墓地にある《陰謀団式療法》の存在を熟慮すれば選択はしなかった可能性が高いことになるが、選択したかどうかと思い描けていたかどうかは別の話だと言わんばかりに、森田は悔やんでいた。

  (お互いサイドin out変更なし)

Game 4

  その悔やみにのしかかるように、ダブル・マリガンに追いやられた森田。更にノーランド・《Mox Sapphire》からの《思案》《精神的つまづき》される。2ターン目はメインに《渦まく知識》から入って、なんとか1枚目の土地である《禁忌の果樹園》にたどり着いた。

  飯野は1ターン目《禁忌の果樹園》から《神秘の教示者》《閃光》をサーチ。2ターン目に続けざまにその《閃光》を撃つも、これは《意志の力》される。

  ダブル・マリガンとピッチ・コスト支払いを合わせて森田のハンドは急速に枯れていっていたが、《Demonic Tutor》を経て次ターン《森の知恵》に繋げるとライフと引き換えに急速にハンドを回復させてゆく。《トーモッドの墓所》も設置して、防御姿勢を固めていった。

  飯野も2ターン目以降はしばらく静かな立ち回りだったが4ターン目には《商人の巻物》から《Ancestral Recall》をサーチ、そのままプレイしてドローを稼いでゆく。

Merchant_Recall

  《Ancestral Recall》で稼がれたハンド・リソースが活きる前の最後の正念場と踏んだ森田は《森の知恵》で8点を支払い、《ダク・フェイデン》もプレイして「+1」能力でルーティングしてゆく。ハンドの突貫工事で攻防の準備を推し進めていった。

  飯野は、体勢を勢い良く立て直しつつある森田が完全に立ち上がる前に《ヨーグモスの意志》という強烈なパンチを浴びせる。カウンターこそないが、《トーモッドの墓所》起動で実質《ヨーグモスの意志》不発として難を逃れた森田。しかし飯野が続けざまに打った《Time Walk》を防ぐ手段はなかった。

  《Time Walk》を通してから唱えた《陰謀団式療法》で開かれた森田のハンドのなかにはカウンターはない。飯野がこれからもらう追加ターンでの《アカデミーの学長》プレイと《陰謀団式療法》フラッシュバック・プレイのコンボを止める手立てが、確実にないということであった。

※編注:正しい挙動としては、既にこのターン《ヨーグモスの意志》が解決しているため《Time Walk》《陰謀団式療法》は追放されますが、ジャッジ・プレイヤーともに気づかなかったため追放されずにゲームを進行してしまいました。混乱を招いてしまい誠に申し訳ございません。

  飯野はレクターコンボを揃え、エンチャントをサーチするところまで一気に解決した。《全知》が着地し、《陰謀団式療法》フラッシュバックの指定で森田のハンドから《精神を刻む者、ジェイス》を落として《時を越えた探索》を唱える。

時を越えた探索

  エンチャント、クリーチャーそのものは勿論、ドロー、チューター(サーチカード)、そしてプレインズウォーカー。およそ20枚近くはあろうかという、当たりのカード。もしくは当たりに繋がるカード。《時を越えた探索》の「ライブラリー上から7枚のうちの2枚」という数は、それらを見つけ出しアクセスに至るには充分なサーチ範囲・サーチ枚数であった。

  そして7枚のうちから2枚を選び、飯野が口にした宣言は……

飯野「(ターン)エンド」

  飯野、動けず。

  これに誰より驚いたのは、「エンド!?」と口をついてしまった森田だ。《時を越えた探索》を唱られたときには存在しえないと思っていた自分のターンが始まる。《森の知恵》で4点のライフを払い、ライフを5にして森田は解決策を探しに行く。《ダク・フェイデン》の「+1」能力も起動。ライフをガツガツと支払いながらの前進を続ける突貫工事を完成させ、飯野が何かを引く前に動けるようになりたい一心だ。残念ながら、まだアクションは揃わないようだが。

飯野「エンド」

  しかし、その様子を対面から観察を続ける飯野の不幸も、まだ続く。ため息のような飯野のドロー・ゴーの宣言。さらにもう1ターンが森田に明け渡された。

  度重なる《森の知恵》の追加ドローによって既にライフ5の森田。「ライフ1にして《意志の力》が打てなくなるのは(得策では)ないな」と2枚を戻す。《ダク・フェイデン》の「+1」能力を起動したあとに、たっぷり蓄えられた墓地を「探査」コストに充てつつ《時を越えた探索》をプレイ。これには飯野が自身の《時を越えた探索》でハンドに加えていた《意志の力》でカウンターする。

  こうして一見すると飯野の”トップデッキ(解決策)待ち”のよう停滞戦況にもみえるが、《全知》を設置するまでに飯野が《禁忌の果樹園》で森田へ押し付けていたトークンは3体。両者ともにアクションがまま取れていない間に、このトークンたちは飯野のライフを毎ターン3点ずつを確実に蝕んでいた。

  飯野の残りライフは、もう7だ。動けないターンが長引いた結果、飯野のライフは黄色信号を灯し始めた。そうそう猶予もないなか、ここで飯野が引き込んだのは……《ドラゴン変化》

ドラゴン変化

  Game 1でも森田が口にしたように、森田のデッキに対して急所を攻められるエンチャントだ。《禁忌の果樹園》のトークン(と《業火のタイタン》)の攻撃が止まる。森田にとっての貴重な勝ち筋の1つであるプレインズウォーカーたちが毎ターンの5点火力で沈んでいく。そしてこの5点火力は直接ゲームを終わらせる大砲にもなるというものだ。自らの体を強靭なドラゴンへ変質させる結界呪文が、《全知》によってマナコストを支払うことなく唱えられた。

  不意に訪れた森田にとってのラスト・ターン。このターン中に《ドラゴン変化》を対処しなければ、返しのターンのアップキープで予約されている敗北を打ち消せない。

  そんな都合の良いカードを森田は《森の知恵》で見るライブラリー上3枚のうちで探し出したいが……見つからない。3枚のうちにあった《紅蓮破》では《全知》と違って、赤い《ドラゴン変化》は破壊できないのだ。一応、ライフを温存するためこの《紅蓮破》を含む2枚をライブラリーに戻した。

  メイン・フェイズに入り、《ダク・フェイデン》の上に置かれたダイスに手をかける。計4度目の「+1」能力起動を宣言しようとしたとき……森田は、気づいた。思い出した。

  《ダク・フェイデン》にはハンドをルーティングさせる「+1」能力とアーティファクトを奪う「-2」能力の他にもう1つ、能力があることを。通称、奥義と呼ばれる大マイナス能力があることを。

  大マイナス能力は《精神を刻む者、ジェイス》のように実質勝ちというような能力から、《戦場の詩人、ファートリ》のように後続を援護するようなものまで多彩だ。《ダク・フェイデン》の奥義は「あなたがパーマネント1つ以上対象とする呪文を1つ唱えるたび、それらのパーマネントのコントロールを得る。」を持つ紋章を得るというもの。

ダク・フェイデンダク・フェイデン紋章

  飯野が有効牌をなにも引かなかった2ターンを挟んだ結果、《ダク・フェイデン》の忠誠値はいつのまにか6となっていた。そしてその数値は《ダク・フェイデン》の大マイナス能力の起動コストと一致する。

  森田のこの気付きが、《森の知恵》の解決の前であれば、全ては変わっていた。しかし時は遡らない。

  Game 1の名前間違いのときに《赤霊破》と異なり、《紅蓮破》はあらゆるパーマネントを対象にできること”を森田が思い出していれば。あるいは《ダク・フェイデン》の奥義のコストが「-6」であること”を、数秒前に思い出していれば。

  おそらくどちらかに思い至れば、もう片方を紐づいて思い出せたことだろう。《森の知恵》《紅蓮破》を戻さなかったことだろう。そして《ダク・フェイデン》の大マイナス能力起動から、《紅蓮破》を唱えて《ドラゴン変化》を対象に取り、奇跡の逆転・大勝利へと繋がったことだろう。

  しかし、神、森田をして時は巻き戻せない。森田は《ダク・フェイデン》の「-6」能力の起動を宣言し紋章を得るも、《ドラゴン変化》を対象にとれる呪文を、その手には持っていない。

  ターンが飯野に渡ると、神の身をも焼き焦がすドラゴンの火炎息吹きが森田のライフを奪い去った。

森田 1-3 飯野


森田「使い慣れないと、こうなるよね。2回ミスしたらダメだなあ」

  いずれも白熱した全4戦を終えた森田は、最後の《紅蓮破》を戻したことと、Game 3の《業火のタイタン》のくだりが印象深く残ったようだ。

  飯野「レブ(《赤霊破》)とパイロ(《紅蓮破》)を間違えたときは終わったと思った」

  飯野はやはりGame 1の宣言間違いが真っ先に脳裏にフラッシュバックしていたようだ。

  この《紅蓮破》《赤霊破》のわずかな違いが、Game 1とGame 4で劇的に作用することになった。”やりたいことをやるゲーム”、時に”大雑把なコンボゲー”とも評されるヴィンテージ・フォーマットにおいて、ライフレースに勤しみテキストのわずかな違いで大きく戦況がうごめく今戦は、なによりマジック的であった。

飯野「オース・ミラーは結構ありえると思っていた。そうであれば《陰謀団式療法》がある分、有利に動けるかと」

  4戦を振り返って、飯野はデッキ選択の理由を語った。事実、《陰謀団式療法》《ファイレクシアの塔》が活躍し続けたマッチアップとなった。直前の《陰謀団式療法》による前方確認では森田が持ち合わせていなかった《意志の力》《精神的つまづき》がたった1ターンの経過だけで度々飛んできていたのは、ドローエンジンの強力なヴィンテージらしさでもあるだろう。

飯野「インフェルノ・オースには《ドラゴン変化》が強いです。設置したら4ターン後に勝てる」

  《業火のタイタン》が数枚採用されている「インフェルノ・オース」型であれば、《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》を主体にした型の「オース」に比べて《ドラゴン変化》の効き目は高いようだ。飯野はその確信を以って「レクターコンボ+オース+ショウテル」を持ち込んできていた。この予測力・対応力は森田に決して劣らぬ、上回りさえするものだという証左であった。

飯野「でもやっぱり《時を越えた探索》で本当になにもなかった(《意志の力》《精神的つまづき》と土地5枚)のが、一番印象的。テストプレイでも《全知》《時を越えた探索》は勝ちパターンで、ゲーム決まらなかったことは、なかったんだけど」

  森田も、そして飯野自身も驚きのあった《全知》からの《時を越えた探索》の後の、ターン・エンド宣言。その結果、もしかするとゲームの勝敗は逆となっていたほどに追い詰められた。

森田「飯野さんなら安心して後を任せられる」

  ……あらかたの感想戦も終わり、長きに渡る神の座を降りた先代神、森田が飯野に託した一言。それは全幅の信頼を飯野に置いた一言であった。

飯野「初代が偉大すぎるので、二代目がつとまるか不安ですよ」

  長時間に渡る白熱した接戦によって不敗神を討ち倒したばかりの新たな神、飯野。

  対戦相手として先代神として、森田への敬意を決して忘れることなく最初の一歩を踏み出した。

第10期モヴィンテージ神、飯野 彬

 第10期ヴィンテージ神決定戦、勝者は飯野 彬!

 おめでとう!!

  ドミナリアから始まったマジックの物語がミラディンへ続いたように。ヴィンテージ神の座も、永きに渡る森田の時代から飯野へと引き継がれた。

  さあ、ヴィンテージ新時代の幕開けだ!

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