こんにちは。Hopesの浦瀬です。
今回は、3/11のMOPTQを突破することのできた「緑白機体」について紹介しようと思います。
これは自分の調整仲間であるryuumeiこと矢嶋くんが作ってくれたリストで、ryuumeiは自分がMOCS最終予選を抜けたときのメイン《海の要求》4枚入りマーフォークを作ったり、グランプリ・京都2017二日目PTQでは《ラムナプの遺跡》の発売初週にほぼ完成形のラムナプ・レッドを持ち込んでいたりと、抜群の構築センスを持つ友人です。
今回のデッキも製作者はryuumeiなのですが、二人の連日のskype会議 (二桁時間) を経て彼がたどり着いたリストであること、彼は記事を書く意思がないということで許可ももらったので、デッキのできた経緯含めて解説記事を書きたいと思います。
デッキリストはこちら。
4 《平地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
1 《平穏なる広野》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《シェフェトの砂丘》
-土地 (25)- 1 《聖なる猫》
4 《典雅な襲撃者》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《翡翠光のレインジャー》
-クリーチャー(13)-
正直、見た目すごく弱そうだと思います。自分も最初はそう思いました。長いので、デッキだけ知りたい人は2節から読んでください。
■ 1. いかにしてこのリストに至ったのか
いつものようにMagic Onlineでレガシーキューブをエンジョイしていたら、ryuumeiからこんなリストが送られてきました。
3 《森》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《シェフェトの砂丘》
-土地 (24)- 4 《典雅な襲撃者》
4 《立て直しのケンラ》
4 《マーフォークの枝渡り》
-クリーチャー(12)-
この時点では全く惹かれることはなく、「ドラフトデッキか?」「サイド適当すぎ」「俺はGP京都モダン担当だぞ」と適当に流してキューブを続けます。
しかしリストは急速に洗練されていき、ryuumeiがスタンダードリーグで5-0する様子をSkypeで後ろから見て、ようやく試してみることを決意。すると……。
2 《森》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《シェフェトの砂丘》
-土地 (24)- 4 《空渡りの野心家》
1 《短角獣の歩哨》
4 《典雅な襲撃者》
4 《立て直しのケンラ》
4 《ジャングル生まれの開拓者》
-クリーチャー(17)-
あっさり5-0しました。
デッキの感想は、だいたい以下のようなもの。
一方欠点もあり……
以上踏まえ少し調整を加え、欠点を根本的に解決できている訳ではないもののMOPTQ前日にはこのようなリストに (ちなみにほぼ同じリストがMOPTQで7-2しており、決して悪いデッキではありません)。
2 《森》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《シェフェトの砂丘》
-土地 (24)- 4 《空渡りの野心家》
1 《聖なる猫》
4 《典雅な襲撃者》
4 《立て直しのケンラ》
4 《ジャングル生まれの開拓者》
-クリーチャー(17)-
しかし、ここで再びryuumeiから連絡が。「毎回機体サイドインするなら、メインで良くない?ってことでこうなった」
3 《平地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
2 《平穏なる広野》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《シェフェトの砂丘》
1 《死者の砂丘》
-土地 (25)- 1 《聖なる猫》
4 《典雅な襲撃者》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《翡翠光のレインジャー》
-クリーチャー(13)-
もともと単体のカードパワーの低いシナジーデッキなのにシナジー薄くしているように見えて初見こそ懐疑的でしたが、通話すること数時間。
と説得され、そこまで言うならと騙されたつもりで (土地を微調整して) リーグにジョイン。流れるように5-0。冒頭のデッキが完成しました。
■ 2. 採用カード解説
以下、採用カードごとに説明していきます。
《旗幟+鮮明》《典雅な襲撃者》
デッキの軸その1。現代に蘇った《強大化》+《ティムールの激闘》。
特に《旗幟+鮮明》はスタンダードで最も過小評価されていたカードです。個人的には《スカラベの神》《熱烈の神ハゾレト》と並べても遜色ないパワーカードと思います。
このデッキは基本的に、「いかに《旗幟+鮮明》を通すか」というのを考え続けるデッキになります。当然警戒されるため、他の手段でプレッシャーをかけることが必要になるわけですが、それが後述の「機体」たちです。
《霊気圏の収集艇》《領事の旗艦、スカイソブリン》
デッキの軸その2。実質《再燃するフェニックス》と《栄光をもたらすもの》。環境的に《削剥》の枚数が減っているのが追い風です。トークンの群れで地上を止めて上から殴るという戦略が単純に強く、《霊気圏の収集艇》の絆魂や《旗幟+鮮明》という必殺技があるため、ダメージレースで負けることはまずありません。
気を付けるべきは、除去される可能性がある盤面で安易に「搭乗」しないこと。デッキのほかの部分は全て疑似除去耐性があるので、相手は虎視眈々と機体を除去する機会を窺っています。
枚数が多いように見えるかもしれませんが、機体なしではひたすら細いデッキなので、《霊気圏の収集艇》は3枚までなら引いて嬉しいです。《領事の旗艦、スカイソブリン》には《スカラベの神》理論が成り立ちます (《スカラベの神》理論=対処されなければ勝つカードは被っても問題ない)。
《聖なる猫》《軍団の上陸》《霊気装置の展示》《スラムの巧技》
トークンスペルたち。《旗幟+鮮明》の威力をあげるためと、機体に「搭乗」するために必要です。一見貧弱なカードたちに見えますが、「単体除去耐性」という一点においてトークンに勝るものはありません。《軍団の上陸》は被ったときの弱さを気にして《聖なる猫》と散らしてありますが、4ターン目《領事の旗艦、スカイソブリン》のドブンは強力です。
《スラムの巧技》は、テンポの取り方だけ見ればスタンダード界の《血編み髪のエルフ》です。
注意点として、安易にチャンプブロックしないこと。《旗幟+鮮明》《シェフェトの砂丘》《軍団の上陸》の変身と、頭数が大切になってきます。相打ちすら嫌って《機知の勇者》相手に殴らないこともあります。
《マーフォークの枝渡り》《翡翠光のレインジャー》
「探検」クリーチャーたち。《領事の旗艦、スカイソブリン》をメインに採用するにあたって、(1) 確実に5マナまで伸ばす (2) 搭乗要員 として採用となりました。トークン同様除去されても気にならないのが嬉しいところ。たまに《典雅な襲撃者》《聖なる猫》を連れてくることもあります。
《ハシェプのオアシス》《シェフェトの砂丘》
8枚という限界数まで積まれた砂漠土地。《シェフェトの砂丘》のトークン戦略での強さは説明不要かと思いますが、特筆すべきは《ハシェプのオアシス》。基本的にダメージレースを行うデッキなので、《霊気圏の収集艇》に使って絆魂6点という展開がよく起こります。トータル起動回数はたぶん《ハシェプのオアシス》の方が多いです。
また、土地の置き方にはそれなりに気を遣います。情報の秘匿・《廃墟の地》ケアという点で砂漠は最後に置くのが定石ですが、トップした《シェフェトの砂丘》を起動するのに本当は手札の《ハシェプのオアシス》をコストにしたかったのに……という展開も慣れないうちはしばしば。常に受けを考えておきましょう。
サイドボード: 《不可解な終焉》《厳粛》
ほぼ対《巻きつき蛇》デッキ専用枠。メインボードで《巻きつき蛇》に触る手段が《領事の旗艦、スカイソブリン》のみ、クリーチャー陣は《歩行バリスタ》で壊滅と、デッキの構造上メインは逆立ちしても勝てません。サイドボード後が本番になります。実際、MOPTQ決勝ではスゥルタイ《巻きつき蛇》と当たりましたが、2本目《厳粛》で取り、3本目2、3ターン目《不可解な終焉》連打で (相手の土地事故に助けられ) 勝利をもぎ取りました。
マイナーどころでいえば、《不可解な終焉》は青白オーラにもサイドインします。吸血鬼にも《軍団の副官》を除去するために入れたくなりますが、最後のターンに出てくることが多いためグッと我慢してメインボードを優先した方が良いです。
サイドボード: 《殺戮の暴君》
対青黒コントロール専用枠。コントロールには元々有利であることを考えて、2枚は要らなかったかもしれません。その場合取りたいカードは《厳粛》の3枚目です。
サイドボード: 《アゾカンの射手》
同型最強。トークンを減らしつつ《霊気圏の収集艇》を受け止めるナイスガイ。赤単/赤黒にもサイドインします。タフネス1がたくさんいて、かつ1/4到達というボディに意味があるマッチアップで有効です (なので青黒/グリクシスミッドレンジには入れません)。吸血鬼相手は一見やりそうですが《栄光の頌歌》効果1枚で機能しなくなるので入れないように。
サイドボード: 《打ち壊すブロントドン》
主な役割は対吸血鬼と対《王神の贈り物》デッキ。最近見ないですが《選定された行進》デッキにも○。その他、単純に3/4というサイズを評価して青黒コントロールや《巻きつき蛇》デッキ相手にもサイドインします。たまに《奔流の機械巨人》や《歩行バリスタ》を割ります。
《帰化》との比較ですが、吸血鬼にはブロッカーとして、《王神の贈り物》デッキにはアタッカーとして優秀、かつどちらのデッキもそれほど除去を撃ってこないので、マナベースが許すなら《打ち壊すブロントドン》一択だと思います。
枚数は少し多く感じるかもしれませんが、吸血鬼・《王神の贈り物》ともに苦手寄りのマッチアップのため、むしろ4枚目があってもいいくらいです。
サイドボード: 《排斥》
その汎用性から幅広いマッチアップでサイドインしますが、特に青黒/グリクシス ミッドレンジ相手に重要です。サイド後は《スカラベの神》に付き合わざるをえない展開が多くなるので、撃って勝つとき以外はなるべく《スカラベの神》まで温存しましょう。
■ 3. 各マッチアップ解説
以下各マッチアップでのプランを簡単に述べます。定型文ですが、サイドインアウトはふんわりです。
vs. 青黒コントロール 相性:有利
メインボードは基本的に全体除去が入っていないので、トークンを横に広げて殴っていけば特に苦労せず勝てます。相手が我慢できずに《スカラベの神》を出してきた返しに《旗幟+鮮明》で勝つのが理想です。
サイドボードでは全体除去が2枚程度入ってきます。《ヴラスカの侮辱》を構えられているターンでは第一メインでスペルをキャストして、カウンターされたら機体で殴り、解決されたらトークンで殴りましょう。《領事の旗艦、スカイソブリン》は一見役立たずに見えますが、《禁制品の黒幕》も入ってきて地上が止まりやすく、単純に巨大な飛行クリーチャーとして有効なため1~2枚は残した方が良いです。逆に《旗幟+鮮明》は本当に撃つチャンスがないので残してもせいぜい1枚です。
vs. 青黒/グリクシス ミッドレンジ 相性:やや有利
メイン・サイドともやることは変わりません。青黒2色だと3マナ域までのタフネスがほぼ1なのでトークンの攻撃が通りやすく、グリクシスには《廃墟の地》がないので《軍団の上陸》の変身が有効です。《光袖会の収集者》にドローされることに焦るかもしれませんが、ブロッカーにもならずダメージレース的にはむしろ歓迎です。
負け筋はやはり《スカラベの神》です。とはいえ《領事の旗艦、スカイソブリン》で空からなんとかなることも結構あります。
vs. 赤系アグロ (赤単・赤黒) 相性:有利
メインボードは相手のぶん回り以外ではあまり負けません。トークンスペルが相手のクリーチャー陣をがっちり受け止めます。《旗幟+鮮明》を《霊気圏の収集艇》か吸血鬼トークンに撃ちこむのがメインプランになります。
注意すべきは守り過ぎないこと。タイトなレースになることが多いため、細かいチャンスに入れられる1点2点を大切にしましょう。序盤はこちらが受けに回ることは確かですが、《ボーマットの急使》が走ってくる可能性をケアするより、確実な1点を取るのがベターです。
サイド後は相手にミッドレンジプランを取られることが多いです。《霊気圏の収集艇》で《再燃するフェニックス》《栄光をもたらすもの》を止めつつ、横に広げて《旗幟+鮮明》で勝ちましょう。ただし、このプランは相手が《焼けつく双陽》を撃ってこないことを前提にしています。今後のリストの変化次第では厳しくなってくるかもしれません。
vs. 白黒吸血鬼 相性:やや不利
トークン対決で《栄光の頌歌》8枚体制の相手に勝ち目はないので、機体で頑張ります。メインボードは厳しめで、都合よく《旗幟+鮮明》を決めるか、《軍団の副官》を《領事の旗艦、スカイソブリン》で落とすのが勝ち筋になります。
サイド後は1マナ域と《霊気装置の展示》を減らし、《打ち壊すブロントドン》《排斥》が入るので悪くありません。
vs. スゥルタイ《巻きつき蛇》 相性:最悪
サイドアウトするのは《軍団の上陸》《霊気装置の展示》《旗幟+鮮明》あたり。正直相性最悪のため、諦めて他のデッキにサイド枠を回すのもありだと思っています。
vs. 青白《王神の贈り物》 相性:五分
お互い干渉手段が少ないため、メインはどちらが早くコンボを決めるかのゲームになります。サイド後は1マナ域を抜いて《打ち壊すブロントドン》《排斥》を入れます。
■ 4. 終わりに
ここまで褒めてきた緑白機体ですが、実際の勝因はいわゆる「わからん殺し」が大きかったと思います。デッキパワーは決して高くないため、適切なサイドボードや《旗幟+鮮明》のケアが広まるとどうなるかわかりません。とはいえまだまだ未開拓なカラーリングなので、ぜひ手に取って試してみてください。
今回権利を取ったのはプロツアー『ドミナリア』で、プロツアー『カラデシュ』以来、約2年ぶりのプロツアーとなります。タイトルにある「レベルプロへの道」的には踏ん張りどころなので、なんとか頑張りたいと思います。
それではまた次回の記事で。
浦瀬