Translated by Daijiro Ueno
(掲載日 2018/03/27)
どのフォーマットも全て同じペースで進化し続けるわけじゃない。スタンダードのメタ推移は早いが、レガシーの環境の変化は遅いことは周知の事実だ。しかしながら長年のプレイの結果、ついにこいつがレガシーにおける一番のぶっ壊れだと主張するようになったんだ。
この小さなエルフはおそらくMTG最強のクリーチャーだ。そしてレガシー全体を歪ませる程の力を持っている。偉大なプレイヤー達はこいつが禁止されるべきだと訴えているし、またこれは至極当然の意見だと思うが、グリクシス・デルバーはこいつのおかげでレガシーのベストデッキとなっているんだ。じゃあ《死儀礼のシャーマン》がレガシーでどんな役目を果たしているか考えてみよう。
より重いカードをプレイできる
色マナが出るおかげでデッキが安定する
《不毛の大地》の存在により、伝統的にレガシーにおいては色を増やすことにはリスクが伴う。《不毛の大地》はレガシーの中心的存在だし、依然最も使われているカードの一つなのは間違いないが、強化版《極楽鳥》とでも言うべきこのカードの前ではその影響力は弱体化する。
《死儀礼》のおかげで、環境には《コラガンの命令》や《トレストの使者、レオヴォルド》入りの3~4色コントロールが多く存在する。《死儀礼のシャーマン》の登場前には、《不毛の大地》 入りのデッキに対して4色デッキを使うことは自動的な敗北を意味していた。今やそんなことはないのだ。
《死儀礼》はマナ加速としても使えるので、重いカードを早い段階で繰り出すことも可能にする。《トレストの使者、レオヴォルド》や《真の名の宿敵》みたいなカードは2ターン目に出てくることでより強力なカードに化けるんだ。
ドロースペルとフェッチランドをより良いものへ
《意志の力》採用数の増加
《渦まく知識》や《思案》のようなドロースペルはテンポと引き換えに手札の質を高める。これらのカードはテンポ勝負のマッチアップにおいてはあまり効果的ではない。失ったテンポを取り戻すことができないからだ。《死儀礼》はこれらのテンポロスを補うのに適している。「青いフェアデッキ vs. 青くないフェアデッキ」みたいなマッチアップを青いデッキ側有利に傾かせてくれるんだ。《死儀礼》はこういったマッチアップで効果的な《真の名の宿敵》みたいなカードのキャストを容易にしてくれる役割も持っているね。
当然の結果として、フェアデッキ対決においてテンポロスを補う《死儀礼》は、青いカードの使用を肯定する。これは言いかえると《意志の力》 の採用数を増加させることを意味するんだ。
フェッチランドは《死儀礼のシャーマン》及びドロースペル両方と相性が良い。《死儀礼》は墓地に土地が必要だし、フェッチランドによるシャッフルは《渦まく知識》や《思案》の効果をより高める。
フェアデッキのミラーマッチでのアドバンテージ
《死儀礼》抜きでフェアデッキが成立しないわけではないが、《死儀礼》があるデッキとないデッキでは、後者は大きなディスアドバンテージを被っている。最も分かりやすい例がグリクシス・デルバー対ティムール・デルバーだ。このマッチアップではアンタップ状態の《死儀礼のシャーマン》がいるだけで、グリクシス側は思い通りに試合を進められる。マナディナイアル系のデッキは特にこの恩恵を受ける。もし相手に《死儀礼》の様なマナクリーチャーがいれば、《もみ消し》の様なカードはかなり弱くなってしまうからね。
環境から駆逐されるデッキ達
勝ちあがっている卓で白緑マーベリックやジャンドを見かけることがほとんどないのは事実だ。以前と比べてメタゲームに占める割合が減ったデッキはたくさんある。
ANTやデス&タックスのようなデッキは環境で一定の存在感を見せていたが、今はその数を減らしている。「デスタクマスター」のトーマス・ エネヴォルドセン/Thomas Enevoldsenでさえ、直近のグランプリ・マドリード2018でデスタクを捨てて4色レオヴォルドを選択した。かつての獲物達を失ったANT使い達もまた負け舟に乗ることを止めた。《死儀礼》+カウンター呪文デッキに何度も苦しめられることになるからだ。
《死儀礼》は墓地を利用するデッキ相手にも大きな効果を発揮する。皆がメインデッキに墓地対策を積んでいるというのにドレッジを使うなんて理想的とは言いがたいね。
では結局どんなデッキが解答となるのか?《死儀礼》ミラーを延々と続ける他ないのだろうか?
《死儀礼》デッキを獲物とするデッキには居場所がある
メタゲームは《死儀礼》と青いカードのセットを用いたデッキ中心に回っている。このことはこれらのデッキに対抗するデッキが隆盛するきっかけを作った。一例としてターボデプスは新しい戦力を獲得したわけではないが、《死儀礼》デッキに対して素晴らしい解答を持ち合わせている。
こちらがサンプルのデッキリストだ。
1 《森》
3 《Bayou》
4 《新緑の地下墓地》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
1 《ボジューカの沼》
1 《セジーリのステップ》
4 《演劇の舞台》
4 《暗黒の深部》
1 《幽霊街》
-土地 (23)- 3 《森を護る者》
4 《吸血鬼の呪詛術士》
4 《Elvish Spirit Guide》
-クリーチャー (11)-
2 《外科的摘出》
2 《アメジストのとげ》
2 《消耗の儀式》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《カラカス》
1 《ミシュラの工廠》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《森の知恵》
-サイドボード (15)-
もう一つの《死儀礼》デッキ攻略法はマナベースを攻めることだ。全ての《死儀礼》デッキに共通して言えることは、フェッチランドを多用する必要があるということだ。そしてこれは《血染めの月》が効果的だということを意味する。
赤単プリズン
赤単プリズンはグランプリ・マドリード2018で隆盛したデッキで、トップ4に2人を送り込んだ。これから良く見るデッキになるんじゃないかと思う。環境のベストデッキを駆逐できるからね。
こちらがアレサンドロ・リッピ/Alessandro Lippiが持ち込んだデッキリストだ。
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 4 《猿人の指導霊》
4 《月の大魔術師》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー (14)-
デッキの動きは伝統的なプリズンデッキと言える。すなわち、相手の動きを拘束するカードが最も重要な役割を果たす。これは相手のデッキ次第ではかなり厳しい戦いを強いられることを意味する。マッチアップ依存性が高いということだ。赤単プリズンにとって都合が良いことに、ほとんどのTier1デッキは1ターン目の《血染めの月》に対して何もできないし、そして追加の《月の大魔術師》により実質的に8枚の《血染めの月》を採用することができるんだ。
マナ基盤はとても愚直で、8枚の2マナランドと《金属モックス》 、そして《猿人の指導霊》といった具合だ。計16枚のマナ加速のおかげで序盤からより多くのマナを生み出すことができる。このデッキのゴールは可能な限り素早く妨害手段を設置することなので、マナ加速を序盤に惜しみなく使うことが求められる。
素早く設置された《虚空の杯》か《血染めの月》は相手のゲームプランを崩すことができる一方、こちら側にカードアドバンテージ面で不利をもたらすことにも繋がる。《反逆の先導者、チャンドラ》は相手にとって最も脅威となる存在で、失ったカードアドバンテージを取り戻すとともに奥義に向けてプレッシャーをかけることもできる。
《ゴブリンの熟練扇動者》、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》、そして《熱烈の神ハゾレト》はリッピが採用した勝ち手段で、《グルマグのアンコウ》みたいなカード相手への最高の解答となる《罠の橋》設置後にも有効であることが重要だ。1/1トークン達はターンが返ってくると攻撃に参加でき、ハゾレトは戦闘に参加しなくてもダメージを与えることができる。《ゴブリンの熟練扇動者》と《罠の橋》両方が戦場に展開されている場合、《ゴブリンの熟練扇動者》の弱点を補うことができる点にも注目だ。戦闘の前に自分の手札を空にしておけば、小さなゴブリントークン達を相手のブロッカーに差し出さずに済むんだ。
マナ加速に加えて勝ち手段と妨害手段を用意しなければならないため、その他のスペルに割けるスペースはあまりない。しかしながら、このリストでは《焦熱の合流点》を採用することにしたようだ。モダンで使えないセットに入っているカードなので、プレイヤー達の多くはこのカードとその対処法について知っているわけじゃない。でも俺の意見ではこいつは空きスロットを埋めるだけの価値がある。
このデッキは序盤に戦場をクリーチャーで埋め尽くす《若き紅蓮術士》やエルフデッキ全般に弱い。そこで《焦熱の合流点》がこの弱点を潰してくれる。モードがたくさんあるのは良いことで、死に札をたくさん抱える余裕はどこにもないからだ。多人数戦では特にね。序盤で《ゴブリンの熟練扇動者》を展開してからの6点ダメージは相手が妨害手段から抜け出す前に速やかにゲームを終わらせてくれる。
サイドボードは主にヘイトカードと追加の干渉手段である2枚の《削剥》で構成されている。 《瘡蓋族の狂戦士》 は赤単プリズン以外では見ることのないカードだが、コンボに対しての解答として最もポピュラーな選択肢だ。
ほとんどのマッチアップで機能しないカード達が発生するため、サイドボーディングは比較的簡単だ。それに、悪いカードが1枚もないような状況だとしたら、多分サイドボードなしでも相性はかなり良いと言えるしな!
読んでくれてありがとう。
ハビエル・ドミンゲス