スタンダードで《モックス・アンバー》を使いこなそう

Marc Tobiasch

Translated by Kazuki Watanabe

モックス・アンバー

『ドミナリア』で登場した《モックス・アンバー》は、計り知れないほど大きな力を秘めている。このカードは《オパールのモックス》や、こういったカードの原点であるパワー9のような、モダン、さらにはヴィンテージでお馴染みのカードたちを彷彿とさせる。

オパールのモックスMox Sapphire

召喚酔いに悩まされることなくタップしてマナを出せる、0マナのアーティファクト……これはマジックというゲームにおいて最も壊れたものの1つだよね。マナを踏み倒して、どんなことでも可能にしてくれるんだ。

2つの制約

さて、今回登場した《モックス・アンバー》は、それを防ぐために2つの制約を課されている。

まず1つ目の比較的軽い制約を見ていこう。それは伝説のアーティファクトであること

レジェンド・ルールによって、2枚目の《モックス・アンバー》は、最悪の場合《水蓮の花びら》になってしまう。でも、これはちょっとした欠点に過ぎない。モダンで最も強いカードの1枚である《オパールのモックス》も同じ様な欠点を持っているけれど、誰もこの点を気にしていないよね。4枚フル採用せずに2,3枚にして、この欠点を少し軽減しようとすることもできるんだ。アドバンテージを少しずつ稼ぐようなデッキで、一定数以上のマナを確実に用意しておきたいと考えるならば、この方法も悪くないと思うよ。

そして2つ目の制約は、自分がコントロールしている伝説のクリーチャーとプレインズウォーカー(今はもうみんな伝説になったね)の中の”好きな色1色”のマナしか出せないこと。残念だけど、《ギラプールの希望》《キランの真意号》《ウルザの後継、カーン》をコントロールしていてもマナを生み出せないんだ。

ギラプールの希望キランの真意号ウルザの後継、カーン

こちらの制約の方が重いけれど、このカードを面白い1枚にしている要素でもある。もしもこの制約がなければ、みんな自分のデッキに4枚詰め込もうとするよね? とにかく、《モックス・アンバー》を使ったデッキを作るには、こういった制約を考慮しなければならないんだ。デッキビルダーの血が騒いで仕方がないよ。

3つの利点

さて、《モックス・アンバー》がもたらしてくれる利点は、大きく分けて3つある。1つ目は誰でも分かる要素で、土地を置くことなく、マナ加速ができること。低コストの伝説のパーマネントがある場合は特に重要で、1ターン早く、強力な呪文に繋げることができるわけだ

スタンダードではほとんどのデッキが5マナ、もしくは6マナをマナカーブの頂点としていてるから、《モックス・アンバー》があれば、3マナまでの伝説のパーマネントが興味深い存在になる。なぜならば、3ターン目までに伝説のパーマネントをプレイして、次のターンも土地を置けば、5マナ域の強力な呪文を《モックス・アンバー》を利用して4ターン目に唱えられるんだ。

この伝説のパーマネントは低マナであればあるほど良い。2マナ、可能であれば1マナならば、より早い段階でマナカーブを前倒しにできるわけだからね。

造命の賢者、オビア・パースリー

スタンダードで使える1マナの伝説のクリーチャーは、たった1枚しかない。それは《造命の賢者、オビア・パースリー》だ。長いのは名前だけじゃなくて、その能力もだね。そして、《ボーマットの急使》《狂信的扇動者》だらけの世界では、”2″というタフネスがこのカードの価値を高めているんだ。

2マナ域には、まともな選択肢がたくさんある。スタンダードで使用できそうなのは、以下のカードだ。

反復の学部長、ナバン航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴシッセイの後裔、シャナ

3マナになれば、さらに選択肢は広がるよ。プレインズウォーカーも候補に入ってくるからね。特に面白そうなのは、この辺りかな。

試練に臨むギデオンサヒーリ・ライピア・ナラー 自然に仕える者、ニッサ狡猾な漂流者、ジェイス

これらのカードを挙げた理由を説明しておこう。特にクリーチャーに関して興味深いのは、リストアップしたカード同士がうまく噛み合ってくれることなんだ。たしかに、伝説のクリーチャーを1体プレイできれば、問題なく《モックス・アンバー》を起動できるようになる。でも、どれか1種類では頼りない。つまり、デッキを構築する際に優先すべきは、異なる種類の伝説のパーマネントを1つのデッキに詰め込むことなんだ。

反復の学部長、ナバン遵法長、バラル燃えがらの風、エイデリズ

例えば《反復の学部長、ナバン》《遵法長、バラル》《燃えがらの風、エイデリズ》はすべてウィザードだから、ウィザードを軸としたテンポ重視のデッキが良いかもしれないね。《モックス・アンバー》はテンポを活かすゲームを繰り広げる上で最善のカードだから、この方向でデッキを調整していくのは実に面白そうだ。

上級建設官、スラム炎の番人、ヴァルダーク模範となる者、ダニサ・キャパシェン

《上級建設官、スラム》《炎の番人、ヴァルダーク》《模範となる者、ダニサ・キャパシェン》は、どれもエンチャント・オーラ、そして装備品とうまく噛み合ってくれる。

養育者、マーウィンピーマの改革派、リシュカー不屈の神ロナス

《養育者、マーウィン》《ピーマの改革派、リシュカー》は共にエルフだ。+1/+1カウンターを乗せる能力と、カウンターの乗ったクリーチャー自身がマナを生み出せるようになる能力の相性はとにかく良くて、ランプデッキを組めそうだ。《不屈の神ロナス》というマナの注ぎ込み先もあるからね。

狡猾な漂流者、ジェイスピア・ナラー

その他で言及しておくとすれば、《遵法長、バラル》《狡猾な漂流者、ジェイス》《ピア・ナラー》は2枚目以降の《モックス・アンバー》を捨てたり、生け贄にしたりして利用できることかな。

さて、《モックス・アンバー》によってマナ加速ができるという利点はこれまでにして、「伝説」を唱えたターンに追加の1マナを得られる、という2番目の利点を見てみよう。たとえば、こんな場面を想像してみて欲しい。

もしくは、以下のような展開だね。

忘れないように書いておくと、大切なのは《モックス・アンバー》から唱えることだ。相手がマナを用意してある状態で伝説のクリーチャーを先に出して、《モックス・アンバー》を唱えたスタックで除去されてしまい、《モックス・アンバー》を起動できない、ということ事態を避けられるからね。

そして3番目の利点は《モックス・アンバー》が土地ではないこと。そのため果敢を誘発させることもできるし、「歴史的」の1つとして数えることもできるんだ。この「歴史的」の部分はとても良くて、《モックス・アンバー》があることで「デッキにもっと『歴史的』を入れてみようかな?」という考えに至るんだ。

ウェザーライトの艦長、ジョイラ祖神の使徒、テシャール

結果を残せそうなのは《ウェザーライトの艦長、ジョイラ》《祖神の使徒、テシャール》かな。《モックス・アンバー》が手札にあれば、こういったクリーチャーをプレイしてすぐにアドバンテージを得ることができる。4マナをクリーチャーに投じたのに、何の成果も得られない内に簡単に除去されてしまったら、どんなにリターンが大きくても悲しくなってしまうよね。《モックス・アンバー》があれば、この問題を完璧に回避できるわけだ。《モックス・アンバー》自身がアーティファクトであることもポイントだよ。たとえば、《ウルザの後継、カーン》や、《ランプのジン、ザヒード》のようなカードがあるからね。

果敢に注目すると、こんな展開が考えられる。

もしくは、あの「マジカルクリスマスランド」みたいに、3ターンキルを披露することもできるよ

デッキは、こんな感じになるだろうね。

それから、《上級建設官、スラム》とエンチャント・オーラ、そして装備品を軸にしたデッキは、こんな形になるよ。

この2つのデッキには低マナの伝説のクリーチャーが8~10体入っているんだけど、これが《モックス・アンバー》を確実に使いこなす上で必要な数なんだ。最初のデッキは、戦場に2枚目の《モックス・アンバー》を追加して《水蓮の花びら》みたいに使ったり、果敢を0マナで誘発させたりできるし、《ピア・ナラー》が能力を起動するための生け贄にもなってくれる。2個目のデッキでは、2枚目の《モックス・アンバー》《水蓮の花びら》のような使い方しかできそうにないけど、このデッキにはマナの使いどころがいくらでもあるから、あまり大きな問題にはならないと思うよ。

それからもう一点。この2つのデッキには1マナの呪文がたくさん入っているから、伝説のクリーチャーがある状態ならば《モックス・アンバー》をプレイして、すぐに呪文を唱えることができるんだ。そうでなければ、単純に1マナが余って無駄にしてしまうだけだからね。

まとめ -デッキを構築してみよう!-

もしも君が《モックス・アンバー》を使いこなしたいと考えるならば、記事の最初の方で言及したことを含めて、様々な点を考慮する必要がある。僕も「使いこなしたい!」と考えている一人で、プロツアー『ドミナリア』に向けていろいろと試しているところだけど、改良の余地がまだまだ残されていると思っているよ。

さあ、デッキビルダーの仕事の時間だ。楽しみながら、デッキを構築してみよう!

マルク・トビアシュ

この記事内で掲載されたカード

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