皆さんこんにちは。
『ドミナリア』がリリースされ、アメリカではSCGO Atlanta、日本国内でもBIG MAGIC Open Vol.10、Magic OnlineでもスタンダードのPTQと、オンライン、リアル問わずに各地で大規模なイベントが開催されスタンダード好きにとっては充実した週末でした。
『ドミナリア』が環境に与えた影響は大きく、各イベントで『ドミナリア』のカードを多数取り入れたデッキが結果を残していました。今回の連載ではSCGO Atlanta、BIG MAGIC Open Vol.10、そしてMO Standard PTQの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Atlanta
ドミナリアの英雄が新環境を制する
2018年04月28日-29日
- 1位 UW Control
- 2位 RB Aggro
- 3位 Sultai Constrictor
- 4位 RB Aggro
- 5位 RB Vehicles
- 6位 Mono-Red Aggro
- 7位 UW Control
- 8位 Mono-Red Aggro
Jonathan Job, Brian Basoco, Rudy Briksza
トップ8のデッキリストはこちら
チーム構築戦で開催されたSCGO Atlanta。前評判通り『ドミナリア』の与えた影響は大きく、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を始めとする新戦力を獲得し大幅に強化されたUW Controlや、《ウルザの後継、カーン》という新たな脅威を得たBR Vehiclesなどが見られました。
環境初期ということでアグロデッキが多く勝ち残っており、RBやMono-Redも勝ち残っています。《ゴブリンの鎖回し》のように『ドミナリア』からの収穫もあり、新環境でも人気が出そうなデッキです。
SCGO Atlanta デッキ紹介
「UW Control」
UW Control
2 《一瞬》
1 《否認》
4 《不許可》
4 《天才の片鱗》
4 《残骸の漂着》
2 《燻蒸》
2 《暗記+記憶》
3 《封じ込め》
1 《アズカンタの探索》
2 《排斥》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (31)-
3 《否認》
3 《俗物の放棄》
2 《ウルザの後継、カーン》
1 《ジェイスの敗北》
1 《封じ込め》
1 《排斥》
1 《イクサランの束縛》
-サイドボード (15)-
『ドミナリア』加入後の環境は、マナクリーチャーである《ラノワールのエルフ》の再録を始め、《ゴブリンの鎖回し》、《シッセイの後裔、シャナ》、《鉄葉のチャンピオン》など低マナの優秀なクリーチャーが多数加入するため、環境初期はMono-RedやMono-Green、RB、GWといったアグロデッキの人気が出るだろう、と予想されていました。
こういったクリーチャーが並ぶ環境ではスイーパーとドロースペル、強力なフィニッシャーを搭載したコントロールが強くなります。現環境には《燻蒸》というスイーパーが存在し、インスタントスピードで相手の攻撃クリーチャーを一掃する《残骸の漂着》もあるので速攻クリーチャーを処理しやすくなっています。
クリーチャーが強い現環境ではコントロールもフィニッシャーとして《奔流の機械巨人》や《スカラベの神》、《黎明をもたらす者ライラ》といった強力なクリーチャーを採用しているので、《本質の散乱》が優秀なカウンターとして活躍します。
☆注目ポイント
《封じ込め》はUW Controlにとって最も欲しかった2マナのインスタント除去です。《地揺すりのケンラ》、《屑鉄場のたかり屋》、《再燃するフェニックス》といった墓地から復活してくるクリーチャーが多数存在する現環境では、追放というテキストが大きな意味を持ちます。
サイドに採用されている追加のフィニッシャーは、現代に蘇った 《悪斬の天使》である《黎明をもたらす者ライラ》です。アグロデッキにとって脅威になり、相手はこのデッキに対してあまり有効とは言えない単体除去を、このクリーチャーを対策するためだけに残すことを強いられそうです。飛行持ちのパワー5はコントロールやミッドレンジのプレインズウォーカーに対しても有効な対抗手段で、無色の4マナで様々なデッキに採用されている《ウルザの後継、カーン》に対しても有効です。
UW Controlの新戦力を語る上で、このカードを忘れるわけにはいきません。《ドミナリアの英雄、テフェリー》は5マナですが、キャストして「+1」能力を起動することでターン終了時に土地を2枚アンタップできるので隙が小さく、《封じ込め》によってプレインズウォーカーを守ったり、カウンターによって相手の反撃を潰したりできます。
相手の土地でないパーマネントをライブラリーにバウンスする「-3」能力もUW Controlにとって本来対策が困難であったプレインズウォーカーや、《スカラベの神》などに触ることができます。《廃墟の地》などでシャッフルしたり、《イプヌの細流》でライブラリーを削ったりすれば実質除去として機能します。コントロールミラーでは、アドバンテージを取りつつ奥義を狙う動きが脅威となります。
BIG MAGIC Open Vol.10
殿堂プレイヤーが新環境最初のスタンダードを制覇
2018年04月28日-29日
- 1位 UR Gift
- 2位 BR Aggro
- 3位 WU Gift
- 4位 BR Aggro
- 5位 WU Gift
- 6位 UB Aggro
- 7位 Esper Control
- 8位 Mono-Green Aggro
三原 槙仁
トップ16のデッキリストはこちら
アメリカではSCGO Atlantaが開催されていましたが、SCGがスポンサーするBIG MAGIC Open Vol.10が日本国内でも開催されています。
豪華な賞金が用意され、プロも多く参加していたイベントになりました。プレイオフには今大会で見事に優勝を収めた殿堂プレイヤーの三原 槙仁選手や、Hareruya Prosの高橋 優太選手といった強豪プレイヤーの姿が見られ、非常にハイレベルなイベントだったことが分かります。
BIG MAGIC Open Vol.10 デッキ紹介
「UB Aggro」
UB Aggro
《戦慄の影》はプレビューが公開された時期から、あの《ナントゥーコの影》を彷彿させるクリーチャーとして話題になっていました。その色拘束の強さからどのデッキにも手放しで採用できるクリーチャーではありませんが、どうにかしてこのクリーチャーを採用したデッキを組みたいと考えた方も多かったと思われます。
Hareruya Prosのメンバーである高橋 優太選手はこの《戦慄の影》を使ったデッキを完成させ、見事にトップ8に入賞を果たしました。
このデッキに行きついた詳しい経緯、カードチョイスについては高橋選手本人の記事も掲載されています。
☆注目ポイント
《光袖会の収集者》はSultai Constrictorのような黒いアグロやミッドレンジでは大抵採用されている環境最高の2マナクリーチャーの1体です。生き残ればアドバンテージを提供し続けるので、相手にとってはマスト除去のクリーチャーです。
《才気ある霊基体》は、環境初期に人気が出る傾向にある赤系のアグロに対して特に有効なクリーチャーです。
《戦慄の影》は3マナパワー3でパンプアップ能力持ちという驚異のコストパフォーマンスを持ち、除去されずに生き残ればこれ1体で戦場を制圧することが可能です。高橋選手のトップ8プロフィールによれば、大会中《黎明をもたらす者ライラ》でチャンプブロックされたゲームもあったそうで、このクリーチャーがどれほど脅威になるかが伝わってきます。
サイドに忍ばせてある《悪意の騎士》は書いてあることの全てが白いデッキにとって悪夢そのもので、UW Controlはもちろん、白系のアグロに対しても有効です。プロテクションではない点に注意は必要ですが、白いデッキが相手ならば大抵の場合はパワー3先制攻撃になります。《黎明をもたらす者ライラ》のような例外はありますが、戦闘で負けることは少なくなるでしょう。
各種打ち消し、《ウルザの後継、カーン》や《アルゲールの断血》といったクリーチャーでないアドバンテージ獲得手段を採用しているので、SCGO Atlantaで結果を残したUW Controlとも互角以上に渡り合えそうです。
MO Standard PTQ
新カードを多数搭載したGW Midrangeがプロツアーの権利を獲得
2018年04月29日
- 1位 GW Midrange
- 2位 BW Historic
- 3位 UW Flash
- 4位 Mono-Green Aggro
- 5位 Mono-Green Aggro
- 6位 UW Control
- 7位 BG Constrictor
- 8位 Bant Midrange
トップ8のデッキリストはこちら
Magic Onlineでは、新環境のスタンダードでPTQが開催されました。SCGO Atlantaでもチームの優勝に貢献したUW Controlの他にも、マナクリーチャーである《ラノワールのエルフ》が再録され、デッキのスピードが上昇した緑系のミッドレンジやアグロが多数見られます。
その中でも権利を勝ち取ったGW Midrangeにはフィニッシャーの《黎明をもたらす者ライラ》やプレインズウォーカーの《ウルザの後継、カーン》、除去の《封じ込め》といった『ドミナリア』のカードが多数採用されています。2色ながらアドバンテージ、フィニッシャー、除去が揃っている要注目のデッキです。
MO Standard PTQ デッキ紹介
「GW Midrange」「Mono-Green Aggro」「UW Flash」
GW Midrange
5 《平地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
2 《霊気拠点》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ラノワールのエルフ》
3 《シッセイの後裔、シャナ》
4 《マーフォークの枝渡り》
3 《打ち壊すブロントドン》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
1 《豊潤の声、シャライ》
3 《黎明をもたらす者ライラ》
-クリーチャー (24)-
予想通りではありますが、《ラノワールのエルフ》の再録によって緑系のミッドレンジが再び上位で見られるようになりました。今回PTQを突破したGWは《黎明をもたらす者ライラ》をメインから採用したミッドレンジで、《ラノワールのエルフ》や《ピーマの改革派、リシュカー》によって最速3ターン目に唱えることができます。
除去の《封じ込め》や、多くのデッキで採用されている無色のプレインズウォーカーである《ウルザの後継、カーン》など新カードが多数見られ、競技レベルの高いオンラインのPTQを抜けた要注目のデッキです。
☆注目ポイント
UW Controlのような白いデッキの多くに採用されている現代版《悪斬の天使》である《黎明をもたらす者ライラ》は、マナクリーチャーを利用することで3,4ターン目に場に出すことができます。《ヴラスカの侮辱》のような除去は気になりますが、タフネスが5と固いので《削剥》や《栄光をもたらすもの》の誘発能力に耐性があるため、戦場に残りやすいカードです。
さらに、このデッキには《顕在的防御》 と《豊潤の声、シャライ》が採用されています。《豊潤の声、シャライ》は《黎明をもたらす者ライラ》を含めた自軍のクリーチャー、プレインズウォーカーを除去から守り、《黎明をもたらす者ライラ》が《豊潤の声、シャライ》を強化するというチームワークによって戦場を支配します。《豊潤の声、シャライ》の+1/+1カウンターを自軍のクリーチャーに乗せる能力は、《歩行バリスタ》ともシナジーがあります。
このデッキの2マナ域のクリーチャーとして採用されている《シッセイの後裔、シャナ》は、1ターン目に《ラノワールのエルフ》からスタートできない場合でも、軽い除去耐性のあるクロックとして活躍します。このタイプのデッキにありがちなマナクリーチャーから動き出せずにちぐはぐな展開になる、といったことが少なくなります。
《ウルザの後継、カーン》はカードアドバンテージ獲得エンジンです。相手にとって脅威となるプレインズウォーカーで、クリーチャー除去やスイーパーの対象とならず、UW Controlとの相性が改善されています。
《霊気圏の収集艇》や《宝物の地図》、サイドの《造命師の動物記》といったアーティファクトも採用されているので、「-2」能力から《構築物》・トークンを生み出すという選択肢もあります。頻繁に使う能力ではありませんが、除去やスイーパーを多用するコントロールとのマッチアップでは、相手やプレインズウォーカーに対するクロックを追加する必要も出てくるので、覚えておきたいところです。
Mono-Green Aggro
4 《ハシェプのオアシス》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (24)- 3 《歩行バリスタ》
4 《緑地帯の暴れ者》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《鉄葉のチャンピオン》
3 《翡翠光のレインジャー》
1 《不屈の神ロナス》
1 《新緑の機械巨人》
3 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (27)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《捕食》
2 《造命師の動物記》
1 《高木背の踏みつけ》
1 《英雄的介入》
1 《垂直落下》
1 《沈黙の墓石》
1 《不滅の太陽》
1 《生命の力、ニッサ》
-サイドボード (15)-
《ラノワールのエルフ》を採用した緑のデッキは、GWだけではありませんでした。色拘束は強いものの3マナ5/4というサイズに加えて回避能力も付いている《鉄葉のチャンピオン》を得たMono-Green Aggroも結果を残しています。
BIG MAGIC Open Vol.10でも入賞していたデッキで、《ラノワールのエルフ》のマナ加速からクリーチャーを場に出してビートダウンしていく、というシンプルなデッキですが、クリーチャーの質が高いため非常に強力な戦略です。今大会では2名のプレイヤーをプレイオフに輩出しています。
クリーチャーの質とサイズで勝るため、Mono-Red Aggroなどには強いのですが、スイーパーや除去、カウンターを搭載したUW Controlは苦手なマッチとなりそうです。
☆注目ポイント
《鉄葉のチャンピオン》は《ラノワールのエルフ》経由で2ターン目から戦場に出すことが可能です。パワー5でチャンプブロックも許しません。さらに《原初の飢え、ガルタ》のコストダウンにも貢献するクリーチャーで、このデッキならば4ターン目ぐらいには《原初の飢え、ガルタ》をキャストできそうです。
緑のクリーチャーの多くはコストが軽く、他の色に比べてサイズで勝る代わりに除去耐性がないので《顕在的防御》で守っていきます。クリーチャーを強化しつつ、単体除去をわずか1マナで弾くので、緑系のアグロを相手にする際は留意しておいた方が良さそうです。
緑単色なので相手のクリーチャーに触り難い点は弱点となりますが、《歩行バリスタ》や《領事の旗艦、スカイソブリン》がある程度まではカバーしてくれます。回避能力を持つ《霊気圏の収集艇》や《キランの真意号》もあるので、ロングゲームにもそこそこ対応可能です。
また、白いデッキの多くが採用している《黎明をもたらす者ライラ》対策に《垂直落下》がサイドに取られています。
UW Flash
歴史的な呪文(アーティファクトと伝説と英雄譚)をインスタントスピードでキャストできるようになる《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》を軸にしたUW Flash。
典型的なUW Controlのように相手のクロックを処理し、アドバンテージを取りながらゲームをコントロールしていきますが、《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》の能力で《歩行バリスタ》のようなクロックをインスタントスピードで展開することも可能です。
☆注目ポイント
《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》によって、メインに採用されているすべての土地でないカードがインスタントスピードでキャストできます。歴史的な呪文には伝説も含まれるので、あの《黎明をもたらす者ライラ》も瞬速で唱えることができるようになっています。
アーティファクトにも瞬速が付くので《歩行バリスタ》もインスタントスピードの除去兼本体火力として使えます。《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》自身が瞬速持ちなのもポイントで、Michaiのリストでは2枚のみ採用されていますが、デッキのキーとなるカードなので3枚以上の採用も試したいところです。
《暗記+記憶》、《天才の片鱗》、《残骸の漂着》といったインスタントスペルを構える動きは隙が少なく、質の高いカードが揃っていることも魅力です。UW Controlの新たなアドバンテージ獲得手段兼フィニッシャーで、新たに環境を定義するカードの1枚とされている《ドミナリアの英雄、テフェリー》もしっかり採用されています。
また、このリストでは採用が見送られていますが、SCG Classics Atlantaで準優勝していたリストには、プレビューでも話題となっていた2マナの瞬速マーフォーク・ウイザード・クリーチャーで、ETB能力でターン終了まで対象のクリーチャーをタップして能力を失わせる《マーフォークのペテン師》、白いアグロデッキの定番のカードとして定着している《ベナリア史》、ウイザード・クリーチャーをコントロールしていると《対抗呪文》となる《魔術師の反駁》も採用されていて、さらにUW Flash戦略に特化しています。このタイプのデッキが好きな方はトライしてみることをおすすめします。
総括
最近のセットの中ではプレビューの段階から大きな話題になっていた『ドミナリア』は、我々の期待を決して裏切ることがなく、環境を激変させるほどのインパクトで、各イベントで新デッキが披露されていました。
まだまだ1週目ですが、今までのスタンダードの環境と大きく異なり、ローテーションや禁止カードなしでこれほどまでの変化を見せたことはあまりなく、開発側の本気度が伝わってきます。プロツアー『ドミナリア』までにどのように環境が進化していくのか楽しみです。
以上USA Standard Express vol.121でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!