USA Standard Express vol.47 -GP上海 etc.-

Kenta Hiroki


みなさんこんにちは!

スタンダードで競われ、多数の日本人プレイヤーも参加したGP上海は日本人プロプレイヤーの市川 ユウキ選手の優勝で幕を閉じました。また惜しくもトップ8は逃したものの、殿堂プレイヤーの三原 槙仁選手や渡辺 雄也選手を初めとした多くの日本人プレイヤーが上位に残りました。

さて、今回の記事ではそのGP上海と、同週末に開催されていたSCGO Dallas、先週末に開催されたSCG Premier IQ Worcesterの結果を見ていきたいと思います。



GP上海 トップ8 ~市川ユウキ選手が念願のGP初のタイトル獲得!~

2015年5月17日

市川ユウキ


1位 Abzan Megamorph/白黒緑ビートダウン
2位 RG Dragons/赤緑ビートダウン
3位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
4位 GR Devotion/緑信心
5位 GR Devotion/緑信心
6位 RG Dragons/赤緑ビートダウン
7位 GR Devotion/緑信心
8位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン

《龍王オジュタイ》が支配していたのも過去の話で、GP上海でも青いデッキは上位では見当たらず、代わりに《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》のエンジンを駆使した緑デッキが多く勝ち残りました。

上位のデッキの多くが飛行クリーチャーや追放除去といった、《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》によるカードアドバンテージに対抗する手段を用意していたのが印象的です。



GP上海 デッキ解説

「Abzan Megamorph」「RG Dragons」「GR Devotion」



市川 ユウキ「Abzan Megamorph」
GP上海2015 (1位)

2 《森》
2 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
4 《疾病の神殿》
3 《静寂の神殿》
4 《ラノワールの荒原》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(24)-

4 《棲み家の防御者》
4 《サテュロスの道探し》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《死霧の猛禽》
4 《包囲サイ》
2 《黄金牙、タシグル》

-クリーチャー(22)-
4 《思考囲い》
4 《アブザンの魔除け》
2 《英雄の破滅》
2 《命運の核心》
3 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(15)-
3 《アラシンの僧侶》
3 《究極の価格》
3 《悲哀まみれ》
2 《ドロモカの命令》
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》
1 《強迫》
1 《真面目な訪問者、ソリン》

-サイドボード(15)-
hareruya



プロツアー、GPなど多くのプレミアイベントで結果を残し続けている日本人プロプレイヤーの市川ユウキ選手は意外にも今大会がGP個人戦初タイトルでした。

従来のAbzan Midrangeに《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》のコンビを採用した型で、地上クリーチャー中心のデッキに強い《太陽の勇者、エルズペス》もしっかり採用されています。



☆注目ポイント

このデッキに採用されている《サテュロスの道探し》は墓地を肥やすことで《棲み家の防御者》の回収対象の選択肢を広げるとともに《死霧の猛禽》を墓地に落としアドバンテージ獲得に寄与するクリーチャーです。さらにアグロデッキに対しては時間稼ぎのためのチャンプブロッカーにもなり、最近流行りの布告系の除去に対しても耐性がつきます。

また、3ターン目《黄金牙、タシグル》のキャストを助け、《黄金牙、タシグル》自身も起動能力により墓地を肥やすことが可能です。

メインから2枚採用された《命運の核心》はEsper Dragonsなどに採用されている《龍王オジュタイ》やRG Dragons、Mardu Dragonsなどの《嵐の息吹のドラゴン》《雷破の執政》に対する回答になります。

今までのAbzan Midrangeよりもクリーチャーが多めに採られているため《ドロモカの命令》も使いやすくなっています。
エンジンにスペースを割いているためメインの軽い除去は少なめで、速攻持ちで飛行クリーチャーの《嵐の息吹のドラゴン》などで攻めてくるRG Dragonsや素早くライフを攻めてくるMono Redなどとの相性は少し悪くなっているようです。そのためサイドには《究極の価格》《アラシンの僧侶》など対策が多めに積まれています。

死霧の猛禽棲み家の防御者サテュロスの道探し





Devsharan Singh「RG Dragons」
GP上海2015 (2位)

6 《山》
5 《森》
4 《樹木茂る山麓》
4 《奔放の神殿》
1 《岩だらけの高地》
2 《マナの合流点》
1 《精霊龍の安息地》

-土地(23)-

4 《エルフの神秘家》
4 《爪鳴らしの神秘家》
2 《棲み家の防御者》
4 《加護のサテュロス》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《雷破の執政》
2 《灰雲のフェニックス》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(28)-
3 《龍詞の咆哮》
3 《弧状の稲妻》
3 《火口の爪》

-呪文(9)-
3 《焙り焼き》
2 《スズメバチの巣》
2 《神々の憤怒》
2 《前哨地の包囲》
2 《歓楽者ゼナゴス》
2 《龍語りのサルカン》
1 《灰雲のフェニックス》
1 《龍詞の咆哮》

-サイドボード(15)-
hareruya



RG Dragonsは《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》のコンビを採用した緑ミッドレンジデッキに対して 《嵐の息吹のドラゴン》《雷破の執政》といった飛行を持つ脅威を多く採用したデッキです。
苦手とするEsper Dragonsも減少傾向にあり、最近また上位でよく見られるようになってきました。



☆注目ポイント

《嵐の息吹のドラゴン》《雷破の執政》の他にも、追加の空からの攻撃手段として《灰雲のフェニックス》が採用されています。
また、サイドに忍ばせてある《神々の憤怒》からも《死霧の猛禽》を意識していたことがうかがえます。

嵐の息吹のドラゴン雷破の執政神々の憤怒





Hu Jin「GR Devotion」
GP上海2015 (4位)

9 《森》
1 《山》
4 《樹木茂る山麓》
4 《奔放の神殿》
1 《岩だらけの高地》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
1 《精霊龍の安息地》

-土地(24)-

4 《エルフの神秘家》
4 《森の女人像》
3 《爪鳴らしの神秘家》
3 《起源のハイドラ》
2 《棲み家の防御者》
3 《クルフィックスの狩猟者》
3 《死霧の猛禽》
3 《世界を喰らう者、ポルクラノス》
4 《囁きの森の精霊》
3 《龍王アタルカ》
1 《女王スズメバチ》

-クリーチャー(33)-
2 《歓楽者ゼナゴス》
1 《精霊龍、ウギン》

-呪文(3)-
4 《ナイレアの信奉者》
2 《スズメバチの巣》
2 《灰雲のフェニックス》
2 《垂直落下》
1 《棲み家の防御者》
1 《高木の巨人》
1 《タルキールの龍の玉座》
1 《歓楽者ゼナゴス》
1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
hareruya



緑信心はAbzanなど緑ミッドレンジに対して膨大なマナを生み出す《ニクスの祭殿、ニクソス》から《起源のハイドラ》《女王スズメバチ》《精霊龍、ウギン》《龍王アタルカ》など爆発力とカードパワーで勝ります。


☆注目ポイント

アドバンテージ源となる《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》のコンビはこのデッキが苦手とするEsper Dragonsとのマッチアップで特に活躍します。

《龍王アタルカ》は緑信心に赤を足す理由の一つで、クリーチャーデッキに対してはこれ1枚で盤面を制圧できます。自身も8/8飛行トランプルとフィニッシャーとして申し分ない性能です。
《灰雲のフェニックス》は飛行持ちで除去耐性もあるためEsper Dragonsや他の緑デッキに強く、やや起動コストが重いものの変異持ちなので《死霧の猛禽》を墓地から復活させる手段としても使えます。

ニクスの祭殿、ニクソス起源のハイドラ龍王アタルカ




SCGO Dallas トップ8 ~RG DragonがAbzanに勝利~

2015年5月17日

Nathan Fabilenia

1位 RG Dragons/赤緑ビートダウン
2位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン
3位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
4位 Atarka Red/赤単
5位 Mardu Dragons/白黒赤ビートダウン
6位 GW Megamorph/緑白ビートダウン
7位 Esper Dragons/白青黒コントロール
8位 Mono Red/赤単

GP上海でも2名のプレイヤーをプレイオフに輩出したRG Dragonsは、SCGO DallasでもトップメタのAbzan Midrangeに勝利し、優勝する活躍を見せました。
Dallasでは緑ミッドレンジが支配していたGP上海のメタと少々異なり、Esper DragonsやAtarka Redなども見られました。


SCG Premier IQ Worcester トップ8
~Abzan Aggroがまたも勝利~


2015年5月24日

Mccarthy, John


1位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
2位 Mono Red/赤単
3位 GR Devotion
4位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン
5位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン
6位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
7位 Bant Megamorph/白青緑ビートダウン
8位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン

ほぼ毎回必ずと言っていい程上位で見かけるAbzan Aggro。
MO上で開催された大きな大会であるMOCSでも、SCGの有名プレイヤーGerry Thompsonが同デッキを使用し優勝したことでさらに人気が増したようです。



SCG Premier IQ Worcester デッキ解説

「Abzan Aggro」「Mono Red」



John McCarthy「Abzan Aggro」
SCG Premier IQ Worcester (1位)

2 《森》
2 《平地》
4 《砂草原の城塞》
3 《疾病の神殿》
2 《静寂の神殿》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《コイロスの洞窟》
3 《ラノワールの荒原》
1 《マナの合流点》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(26)-

3 《始まりの木の管理人》
4 《羊毛鬣のライオン》
4 《ラクシャーサの死与え》
3 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
2 《責め苦の伝令》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》

-クリーチャー(22)-
2 《思考囲い》
2 《ドロモカの命令》
1 《勇敢な姿勢》
3 《アブザンの魔除け》
2 《英雄の破滅》
1 《残忍な切断》
1 《真面目な訪問者、ソリン》

-呪文(12)-
3 《胆汁病》
3 《究極の価格》
2 《思考囲い》
2 《自傷疵》
1 《悪行の大悪鬼》
1 《強迫》
1 《異端の輝き》
1 《悲哀まみれ》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード(15)-
hareruya



コンスタントに入賞を続けているAbzan Aggro。GP上海でも優勝こそ逃したもののトップ4に入賞、今大会でも優勝者も含めてトップ8に3名の入賞者を輩出する活躍を見せました。


☆注目ポイント

《風番いのロック》は強襲の条件を満たせば一度に3/4飛行クリーチャーを2体展開でき、《死霧の猛禽》などで地上の守りを固められても空からプレッシャーをかけられる、テンポ面でもカードアドバンテージの面でも優秀なクリーチャーです。
パワーが3なこともあり、環境最強のフィニッシャーとされている《太陽の勇者、エルズペス》の-3能力で落ちず、トークンを飛び越えてアタックできるのが強みです。

追加の飛行クリーチャーとして《責め苦の伝令》も採用されています。授与で他のクリーチャーを強化しつつ飛行を与えることが可能で、相手の《死霧の猛禽》《太陽の勇者、エルズペス》から生み出される兵士トークンで立ち往生することも少なくなりそうです。
《先頭に立つもの、アナフェンザ》は元々優れたマナレシオのクリーチャーとしてデッキの主戦力でしたが、最近は《死霧の猛禽》対策も兼ねます。

風番いのロック責め苦の伝令先頭に立つもの、アナフェンザ





Greg Lanzillotta「Mono Red」
SCG Premier IQ Worcester (2位)

21 《山》
1 《精霊龍の安息地》

-土地(22)-

4 《僧院の速槍》
3 《鐘突きのズルゴ》
2 《稲妻の狂戦士》
4 《大歓楽の幻霊》
4 《炎跡のフェニックス》
4 《雷破の執政》
1 《ゴブリンの踵裂き》

-クリーチャー(22)-
4 《乱撃斬》
3 《タイタンの力》
4 《稲妻の一撃》
4 《かき立てる炎》
2 《前哨地の包囲》

-呪文(17)-
4 《引き裂く流弾》
4 《焙り焼き》
3 《灼熱の血》
2 《洗い流す砂》
2 《弧状の稲妻》

-サイドボード(15)-
hareruya



赤単色のアグロデッキですが、軽いクリーチャーを一度に多数展開して速攻でライフを攻める従来の赤単と異なり飛行クリーチャーが多めです。
これにより《クルフィックスの狩猟者》のようなタフネスの高いクリーチャーや、多くのAbzan Midrangeがサイドから投入してくる《アラシンの僧侶》で止まらないような構成になっています。


☆注目ポイント

飛行を持つ《炎跡のフェニックス》《雷破の執政》を軸に、安定したクロックを刻むことが可能です。《雷破の執政》の4/4というサイズは《炎跡のフェニックス》の獰猛条件を達成し、このデッキによくサイドインされる《悲哀まみれ》でも死にません。
相手に従来の赤単アグロとは異なる対策を要求する、環境に合わせてよく調整されたデッキです。

サイドボードは全て異なる性質の除去スペルで占められています。クリーチャー保護スペルで妨害されてしまうことがあるものの、カウンターされない上1マナと軽く、Heroicに対して有効な《引き裂く流弾》、同系に対して特に強さを発揮する《灼熱の血》、タフネス4以上の大型クリーチャー対策の《焙り焼き》《洗い流す砂》が見られます。

炎跡のフェニックス雷破の執政焙り焼き




総括

GP上海の結果から現在のスタンダードの環境は《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》ありきの環境で、Abzanは環境の変化に柔軟に合わせてトップメタに留まり続けています。
前シーズンでAbzan系に強かった《エレボスの鞭》を使ったデッキも《ドロモカの命令》のようなエンチャント対策がメインから採用されている環境では難しいようです。このままMegamorphエンジンを採用したデッキが結果を残し続けるのか今後の動向からも目が離せません。

以上USA Standard Express vol.47でした。

来週末にはSCG Invitational Columbusが開催されます。筆者も参加予定です。上位に勝ち残れるようベストを尽くしていきたいと思います。
次回の記事ではそのSCG Invitational Columbusの結果を中心にカバーしていく予定です。

それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/index.php
『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』
http://mtg-jp.com/


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