USA Standard Express vol.75 -GP台北 etc.-

Kenta Hiroki



 みなさんこんにちは。

 新セットの『異界月』のプレビューが開始され新たなエムラクールである《Emrakul, the Promised End》や新メカニックの「合体」カードなどが公開されています。今から楽しみですね。




 環境もいよいよ終盤を迎え、この環境のスタンダードもあとわずかとなりました。今回は【グランプリ・台北2016】【グランプリ・ピッツバーグ2016】の結果を見ていきたいと思います。



グランプリ・台北2016 トップ8
~Bant Companyが遂にGW Tokensにリベンジを果たす~


2016年6月25-26日

市川 ユウキ
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】より引用させていただきました。


1位 Bant Company
2位 GW Tokens
3位 Bant Company
4位 Bant Company
5位 Bant Company
6位 GW Tokens
7位 RG Ramp
8位 Bant Humans

トップ8のデッキリストは【こちら】

 7位のRG Rampを除いて全ての入賞デッキが緑白のカラーコンビネーションというプレイオフで、Bant HumansとBant Companyと合わせるとトップ8の半数以上が《集合した中隊》デッキでした。

 決勝戦はGW Tokens対Bant Companyと奇しくも【プロツアー『イニストラードを覆う影』】と同様のマッチで、PTではGW Tokensの圧倒的とも言える勝利に終わりましたが今大会ではBant Companyが見事に勝利し優勝を飾りました。



グランプリ・台北2016 デッキ紹介

「Bant Company」「RG Ramp」



Yuuki Ichikawa「Bant Company」
グランプリ・台北2016(1位)

4 《森》
3 《平地》
1 《島》
1 《荒地》
4 《大草原の川》
3 《梢の眺望》
4 《進化する未開地》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《伐採地の滝》

-土地 (26)-

4 《薄暮見の徴募兵》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《森の代言者》
4 《反射魔道士》
4 《不屈の追跡者》
3 《変位エルドラージ》
2 《巨森の予見者、ニッサ》

-クリーチャー (25)-
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》
1 《オジュタイの命令》

-呪文 (9)-
4 《ラムホルトの平和主義者》
3 《否認》
3 《悲劇的な傲慢》
2 《石の宣告》
2 《オジュタイの命令》
1 《巨森の予見者、ニッサ》

-サイドボード (15)-
hareruya



 昨年の【グランプリ・上海2015】に続いて2つ目のトロフィーを獲得した市川選手。カバレージの【インタビュー】によればマジックオンラインでの勝率の高さからこのBant Companyを選択したそうです。

 Bant Companyは環境初期からSCG Openで優勝するというポテンシャルの高さを見せ、その直後に開催された【プロツアー『イニストラードを覆う影』】でも準優勝という好成績を収めています。


変位エルドラージ不屈の追跡者


 その後はプロツアーで優勝を果たしたGW Tokensの陰に隠れがちでしたが、《反射魔道士》とのシナジーが強力な《変位エルドラージ》や、カードアドバンテージを稼げる《不屈の追跡者》といったクリーチャーを最大限に活かすことによって環境の上位に留まり続けています。


☆注目ポイント

 BBD(Brian, Braun-Duin)が【グランプリ・コスタリカ2016】で使用しトップ8に入賞していたリストと75枚同じ構成であることからもこのデッキの完成度の高さが分かります。《ヴリンの神童、ジェイス》《薄暮見の徴募兵》《不屈の追跡者》《巨森の予見者、ニッサ》《変位エルドラージ》といったクリーチャーがアドバンテージ獲得に貢献し、コストの軽さから序盤~中盤にかけてのアクションに困ることはありません。


ヴリンの神童、ジェイス薄暮見の徴募兵


 《不屈の追跡者》《巨森の予見者、ニッサ》テンポを犠牲にすることなくアドバンテージを稼げる優秀なクリーチャーで、このデッキのキーであると同時にスタンダードでも最高のカードの1枚である《集合した中隊》と共にこのデッキのロングゲームにおける強さを支えます。

 《変位エルドラージ》はトークンクリーチャーや《搭載歩行機械》をちらつかせることによって実質除去のように機能するのでGW Tokensに対して強く、GW Tokensはクリーチャー除去が少ないことも手伝ってシステムクリーチャーが生き残りやすく、GW Tokensとの相性の改善のキーとなったクリーチャーです。


巨森の予見者、ニッサ集合した中隊





Mingrerk Setsompop「RG Ramp」
グランプリ・台北2016(7位)

10 《森》
2 《山》
1 《荒地》
3 《燃えがらの林間地》
1 《獲物道》
4 《ウギンの聖域》
4 《見捨てられた神々の神殿》

-土地 (25)-

3 《森の代言者》
3 《龍王アタルカ》
3 《世界を壊すもの》
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (12)-
4 《コジレックの帰還》
4 《ニッサの巡礼》
4 《爆発的植生》
1 《ニッサの復興》
4 《ニッサの誓い》
2 《面晶体の記録庫》
4 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文 (23)-
4 《難題の予見者》
3 《ジャディの横枝》
3 《不屈の追跡者》
2 《次元の歪曲》
2 《歪める嘆き》
1 《ガイアの復讐者》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会のプレイオフで唯一白を使わないデッキだった緑赤のエルドラージランプ。他のデッキと異なる軸から攻めるデッキなのでコントロールに強く、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《龍王アタルカ》といったパワフルなフィニッシャーを採用しているのでロングゲームにおいて他のミッドレンジを圧倒します。

 除去も採用していますが、土地を伸ばすことに集中することになる序盤を押し切られると弱く、WR Humansのようなアグロデッキは苦手とします。


☆注目ポイント

 マナ加速を利用することで早い段階でキャストされる《龍王アタルカ》などはGW TokensやBant Companyといったミッドレンジにとって脅威となります。

 《世界を壊すもの》は土地破壊がコントロールに対して特に強く、《搭載歩行機械》やエンチャントをメインから対処できるのも魅力です。5/7到達というサイズを突破するのは難しく、7マナというマナコストは《コジレックの帰還》の能力を誘発させられるので相手の戦場を一掃しつつフィニッシャーを戦場に出すことを可能にします。


龍王アタルカ世界を壊すものコジレックの帰還


 《森の代言者》はこのデッキが苦戦する序盤を凌ぎつつ、中盤以降はクロックとしても活躍します。フィニッシャー以外のクリーチャーを増やすことで《反射魔道士》に少し弱くなるというリスクもありますが、Humansなどアグロデッキとの相性がわずかに改善されます。


森の代言者


 相手の除去が減らされる傾向にあるサイド後のゲームに備えて《不屈の追跡者》《難題の予見者》といった追加のクリーチャーがサイドに採用されています。《不屈の追跡者》はマナが余りがちなこのデッキのマナを有効活用しつつカードアドバンテージを稼ぐので、フィニッシャーを中々引き当てられないといったこのデッキの弱点をカバーします。

 《ガイアの復讐者》は打ち消されない能力に速攻、除去耐性の高さでコントロールに対する切り札となります。


難題の予見者ガイアの復讐者




グランプリ・ピッツバーグ2016 トップ8
~環境はGW TokensとBantの2強~


2016年6月25-26日

Evan Petre
※画像は【MAGIC: THE GATHERING 英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。


1位 GW Tokens
2位 Bant Humans
3位 GW Tokens
4位 Bant Company
5位 Bant Humans
6位 GW Tokens
7位 Bant Humans
8位 Sultai Midrange

トップ8のデッキリストは【こちら】

 【グランプリ・台北2016】でも優勝も含めてプレイオフの半数を占めたBant Company/Humansはアメリカでもプレイオフの半数を占めるという安定した強さを見せました。

 しかし優勝は現環境最高のデッキとしてGPやSCG Tourで結果を残し続けているGW Tokensでした。GW Tokensは優勝者を含めてプレイオフに3名送り込むという活躍を見せ、【グランプリ・台北2016】と同様に【グランプリ・ピッツバーグ2016】でも8位入賞のSultai Midrangeを除いたすべての入賞デッキが緑と白を使ったデッキでした。



グランプリ・ピッツバーグ2016 デッキ紹介

「GW Tokens」「Sultai Midrange」



Evan Petre「GW Tokens」
グランプリ・ピッツバーグ2016(1位)

8 《森》
7 《平地》
4 《梢の眺望》
4 《要塞化した村》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (25)-

4 《搭載歩行機械》
4 《森の代言者》
3 《ラムホルトの平和主義者》
1 《棲み家の防御者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
4 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (17)-
4 《ドロモカの命令》
2 《悲劇的な傲慢》
3 《ニッサの誓い》
1 《進化の飛躍》
4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (18)-
3 《死霧の猛禽》
2 《棲み家の防御者》
2 《狩猟の統率者、スーラク》
2 《石の宣告》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《優雅な鷺、シガルダ》
1 《神聖なる月光》
1 《悲劇的な傲慢》
1 《グリフの加護》
1 《停滞の罠》

-サイドボード (15)-
hareruya




Steve Rubin「GW Tokens」
グランプリ・ピッツバーグ2016(3位)

10 《森》
8 《平地》
4 《梢の眺望》
4 《要塞化した村》

-土地 (26)-

4 《搭載歩行機械》
4 《森の代言者》
2 《棲み家の防御者》
3 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (13)-
4 《ドロモカの命令》
1 《石の宣告》
2 《悲劇的な傲慢》
4 《ニッサの誓い》
2 《進化の飛躍》
4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (21)-
3 《ラムホルトの平和主義者》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《狩猟の統率者、スーラク》
2 《保護者、リンヴァーラ》
2 《石の宣告》
2 《隔離の場》
1 《棲み家の防御者》
1 《次元の激高》

-サイドボード (15)-
hareruya



 【グランプリ・台北2016】ではBant Companyに優勝は譲ったものの今大会の優勝で【グランプリ・ミネアポリス2016】【グランプリ・マンチェスター2016】【グランプリ・コスタリカ2016】に続いての優勝と王者の貫禄を見せます。

 今回は優勝者のEvan PetreとGW Tokensで【プロツアー『イニストラードを覆う影』】を見事に制したSteve Rubinのリストを見ていきたいと思います。


☆注目ポイント

 両者のリストの共通点はメインから搭載された《悲劇的な傲慢》です。《悲劇的な傲慢》はサイドに忍ばせてあることが多く、Bant CompanyやHumansなどとのマッチアップで劣勢時において逆転する切り札になるカードで、メインから採用することでそれらのマッチアップで優位を築くことに成功しています。


悲劇的な傲慢


 《巨森の予見者、ニッサ》も最近GW Tokensのリストで良く見られるようになったカードで、サイド後のゲームで《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》と入れ替えられます。

 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》はゲーム後半において影響力が小さく、後半に手札に来てもあまり嬉しいカードではないためミラーマッチではあまり強いカードとは言えません。

 対して《巨森の予見者、ニッサ》はこのデッキに必要な4枚目以降の土地を確保しつつカードアドバンテージを提供し、ロングゲームにおいては手札に来た直後に「変身」させることも可能です。《悲劇的な傲慢》《次元の激高》といったスイーパーとの相性も良好で、トークン戦略からコントロールにシフトすることによってトークン戦略対策である《悪性の疫病》にも引っかかりにくくなります。


巨森の予見者、ニッサゼンディカーの代弁者、ニッサ


 ランプに対する追加のクロックとして《狩猟の統率者、スーラク》も採用されています。このデッキなら「圧倒」の条件を満たすのも容易で、4マナパワー5・速攻というマナレシオの高いクリーチャーとして活躍が期待できます。

 サイドボード後はコントロールミラーのような戦いになるミラーマッチで優位を得るためか、Evanはサイドに《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》の「大変異」エンジンとクリーチャーに回避能力を与える《グリフの加護》が採用されています。


狩猟の統率者、スーラクグリフの加護


 Steve Rubinのリストは《ラムホルトの平和主義者》がメインから外され《棲み家の防御者》《進化の飛躍》が多めに採用されているなど、よりアドバンテージを意識した構成になっています。《棲み家の防御者》はコントロール寄りにシフトしたGW Tokensにフィットしており回避能力も相手のプレインズウォーカーへの攻撃を通しやすくします。

 《次元の激高》はクリーチャーを残さず一掃できる分HumansやBant Humansに対しては《悲劇的な傲慢》よりも優れています。しかしミラーマッチでは《悲劇的な傲慢》に軍配が上がるので、その辺のチョイスはメタ次第となります。


進化の飛躍次元の激高





Aleksa Telarov「Sultai Midrange」
グランプリ・ピッツバーグ2016(8位)

5 《森》
5 《沼》
1 《島》
4 《進化する未開地》
4 《風切る泥沼》
4 《ラノワールの荒原》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《伐採地の滝》

-土地 (26)-

4 《森の代言者》
2 《棲み家の防御者》
4 《不屈の追跡者》
3 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《ギトラグの怪物》
2 《龍王シルムガル》

-クリーチャー (19)-
4 《究極の価格》
2 《闇の掌握》
3 《破滅の道》
3 《衰滅》
3 《ニッサの誓い》

-呪文 (15)-
4 《死霧の猛禽》
3 《強迫》
2 《棲み家の防御者》
2 《死の重み》
2 《悪性の疫病》
1 《破滅の道》
1 《衰滅》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会のプレイオフ進出デッキの中で唯一白を使わなかったデッキで、緑黒タッチ青のミッドレンジです。優秀なクリーチャーやスペルを集めたグッドスタッフデッキで《龍王シルムガル》をメインから採用しているのでプレインズウォーカーに頼ったGW TokensやBW Controlに強い戦略になります。


☆注目ポイント

 《棲み家の防御者》《不屈の追跡者》《巨森の予見者、ニッサ》《ギトラグの怪物》《ゲトの裏切り者、カリタス》といったアドバンテージを取る手段が豊富で、相手のプレインズウォーカーを奪い取る《龍王シルムガル》の存在もあり、他のミッドレンジに強い構成です。特に除去の少ないGW Tokensに強く、このクリーチャーを《ドロモカの命令》で対処するのは困難を極めます。


棲み家の防御者ギトラグの怪物龍王シルムガル


 《森の代言者》の恩恵で普段はサイズが小さい《風切る泥沼》も中盤以降はフィニッシャーとしても十分活躍する強さとなります。《ギトラグの怪物》《不屈の追跡者》とのシナジーもありアドバンテージを稼いでくれそうです。

 サイドにはコントロールや消耗戦に強い《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》の「大変異」エンジンが忍ばせてあるなどアドバンテージを稼ぐ戦略にフォーカスしていることが分かります。


風切る泥沼死霧の猛禽




総括

 【グランプリ・台北2016】【グランプリ・ピッツバーグ2016】の2つのGPの結果を見ていきましたが、現在のスタンダードはGW TokensとBant Company/Humansの2強です。

 特に緑はカードアドバンテージを獲得する手段が豊富で《不屈の追跡者》《巨森の予見者、ニッサ》《集合した中隊》といったカードは展開を遅らせることなくアドバンテージを提供し、白も軽いクリーチャー、除去、フィニッシャー、プレインズウォーカーと揃っており、緑白の色の組み合わせが現在の環境では最高の組み合わせなのは明確です。


不屈の追跡者巨森の予見者、ニッサ集合した中隊


 次点に除去コントロールのBW Controlといったところで、赤と青はWR HumansやBantといったサポートカラーとしての役割に落ち着いています。『異界月』がリリースされるまでの間はグランプリなど現環境での大きな大会はありませんが、プロツアー予備予選やSCG関連のイベントなど現環境でのスタンダードはもうしばらく続きます。

 以上USA Standard Express vol.75でした。

 それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!



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