みなさんこんにちは。
いよいよ【The Last Sun 2015】が来週末に開催されます。アメリカでは今週末にSCG Invitational Las Vegasが開催されるためスタンダードは現在、最も注目されているフォーマットの一つです。
さて、今回の記事では先週末にアメリカで開催された二つの大規模なスタンダードのイベントである【SCGO Denver】と【TCGplayer MaxPoint Championship】の結果を見ていきたいと思います。
SCGO Denver トップ8
~Jeskaiの復権とスタンダード版のEsper Mentor~
2015年12月6日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Esper Tokens
2位 Atarka Red
3位 5C Bring to Light
4位 Jeskai Black
5位 Abzan Aggro
6位 Jeskai Black
7位 4C Lally
8位 Atarka Red
トップ8のデッキリストは【こちら】
【GP神戸】でも優勝を収めていたAtarka Redは今大会でも準優勝と言う好成績を収めています。
赤系のアグロの隆盛により、低コストのインスタント除去にアクセスできるJeskaiも復権を果たしました。Abzanは【GP神戸】と同様に母数の多さに反してトップ8にはわずか1名で、その1名も準々決勝で敗退しています。
SCGO Denver デッキ紹介
「Esper Tokens」「Jeskai Black」「Atarka Red」
2 《平地》 2 《沼》 1 《島》 2 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《コイロスの洞窟》 4 《乱脈な気孔》 -土地(25)- 4 《道の探求者》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《僧院の導師》 2 《龍王オジュタイ》 -クリーチャー(14)- |
4 《強迫》 1 《究極の価格》 1 《破滅の道》 1 《完全なる終わり》 2 《残忍な切断》 2 《宝船の巡航》 4 《絹包み》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(21)- |
2 《層雲の踊り手》 2 《正義のうねり》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《自傷疵》 2 《無限の抹消》 1 《払拭》 1 《究極の価格》 1 《衰滅》 1 《次元の激高》 1 《見えざるものの熟達》 -サイドボード(15)- |
今大会見事に優勝を収めたVikram Kudvaは【GP神戸】でもトップ4入賞を収めていたEsper Mentorと同様のデッキを選択しています。SCGの分類ではEsper Tokensとなっていますが、トークンと言っても実際にトークンを生み出すのは《僧院の導師》をはじめとした数枚のみで、基本は《ヴリンの神童、ジェイス》、《僧院の導師》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を軸にしたアグロ・コントロールです。
☆注目ポイント
メインから採用されている《僧院の導師》はレガシー、モダンではすでに第一線級の活躍をしているクリーチャーです。除去されずにターンが戻ってくればレガシーなどと同様にトークンを展開し、速やかにゲームを終わらせることが可能です。
特に元のサイズが2/2なので《アブザンの魔除け》で除去されにくく、Abzan Aggroとのマッチアップでは特に強さを発揮しそうです。また、クロックを展開するのでエルドラージ系に対しても強いクリーチャーです。
除去されやすいという不安要素も相手はほとんどの場合最初に出てくる《ヴリンの神童、ジェイス》に除去を使われることが予想されるので、生き残る確率も高そうです。メインの4枚の《強迫》は軽いスペルなため《僧院の導師》と相性がよいのはもちろんのこと、《龍王オジュタイ》でアタックにいくための安全確認も兼ね、相手の抱えている除去スペルを落とすことができます。
デッキの原型の製作者であり、【GP神戸】でもトップ4に入賞した高尾 翔太選手の【解説記事】でこのデッキの詳しい挙動が解説されているので、あわせてご覧ください。
3 《山》 1 《平地》 1 《島》 2 《大草原の川》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《吹きさらしの荒野》 2 《神秘の僧院》 -土地(24)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《道の探求者》 4 《カマキリの乗り手》 2 《僧院の導師》 -クリーチャー(13)- |
4 《焦熱の衝動》 2 《強迫》 1 《払拭》 1 《勇敢な姿勢》 1 《予期》 4 《はじける破滅》 2 《コラガンの命令》 2 《オジュタイの命令》 1 《完全なる終わり》 3 《宝船の巡航》 2 《時を越えた探索》 -呪文(23)- |
3 《アラシンの僧侶》 3 《否認》 2 《正義のうねり》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《竜使いののけ者》 1 《勇敢な姿勢》 1 《焙り焼き》 1 《忘れられた運命》 1 《悪性の疫病》 -サイドボード(15)- |
2 《山》 1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 2 《大草原の川》 2 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 3 《溢れかえる岸辺》 3 《神秘の僧院》 2 《乱脈な気孔》 -土地(26)- 1 《竜使いののけ者》 4 《魂火の大導師》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(9)- |
4 《焦熱の衝動》 2 《強迫》 2 《焙り焼き》 4 《はじける破滅》 2 《苦い真理》 2 《コラガンの命令》 3 《オジュタイの命令》 2 《完全なる終わり》 2 《残忍な切断》 2 《宝船の巡航》 -呪文(25)- |
3 《無限の抹消》 2 《アラシンの僧侶》 2 《払拭》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《光輝の炎》 2 《見えざるものの熟達》 1 《消去》 1 《否認》 -サイドボード(15)- |
Atarka Redのような赤いアグロデッキの活躍によりそれらのデッキと相性の良いJeskaiが復権してきました。Zach MandelblattはEsperのところでも解説した《僧院の導師》をメインから採用しており、Todd Andersonのリストは《カマキリの乗り手》が抜けてコントロール寄りの構成となっています。
☆Zach Mandelblattの注目ポイント
《時を越えた探索》が2枚にまで抑えられ《宝船の巡航》が追加の「探査」スペルとして採用されています。《僧院の導師》の強さを最大限に引き出すために手数を増やせる《宝船の巡航》の方がデッキの方向性にマッチしています。
《道の探求者》が《魂火の大導師》よりも優先して採用されているのも興味深いところです。《魂火の大導師》の方が中盤以降のアドバンテージにおいて優れていますが、《道の探求者》は果敢により相手のクリーチャーを除去しつつサイズアップできるのでAtarka RedやRG Landfallなどのアグロに対して強いクリーチャーです。
メイン、サイドに1枚ずつ採用されている《勇敢な姿勢》は《包囲サイ》などJeskaiにとって対処が困難な高タフネスのクリーチャー対策の他にも、《僧院の導師》を除去から守る手段としても使えます。Esper Mentorと同様にメインから採用されている《強迫》も《僧院の導師》と相性も良く、相手の除去や《オジュタイの命令》を落とすことで安全を確保します。
☆Todd Andersonの注目ポイント
Toddのリストは《カマキリの乗り手》《時を越えた探索》といったJeskaiの定番のカードは不採用で《宝船の巡航》《コラガンの命令》《オジュタイの命令》《苦い真理》といったスペルが採用されており、アドバンテージを重視したコントロール寄りの構成に仕上がっています。
《苦い真理》は「探査」に頼らずに3マナでドロー3と《宝船の巡航》と同様の効果が得られます。除去も多く《焙り焼き》《完全なる終わり》《残忍な切断》がそれぞれ2枚ずつ採られているため、《包囲サイ》を初めとした高タフネスのクリーチャー対策も完璧です。
サイドにはEsper Controlなどコントロールとのマッチアップ用に《見えざるものの熟達》、エルドラージやRallyなど特定のクリーチャーに頼ったデッキ対策に《無限の抹消》が3枚と多めに積まれています。どちらもJeskaiの苦手とするマッチアップなので徹底した対策を取っているようです。
6 《山》 1 《森》 3 《燃えがらの林間地》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 3 《吹きさらしの荒野》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 1 《稲妻の狂戦士》 4 《ケラル砦の修道院長》 4 《マキンディの滑り駆け》 -クリーチャー(16)- |
4 《タイタンの力》 4 《乱撃斬》 4 《ドラゴンの餌》 4 《アタルカの命令》 3 《ティムールの激闘》 4 《強大化》 -呪文(23)- |
4 《焙り焼き》 3 《引き裂く流弾》 2 《カラデシュの火、チャンドラ》 2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 2 《わめき騒ぐマンドリル》 2 《焦熱の衝動》 -サイドボード(15)- |
【GP神戸】でも優勝を収め、今大会でも惜しくも優勝は逃したものの準優勝と言う好成績を残したAtarka Red。Lee Marinoはいくつか異なる調整を加えていました。
☆注目ポイント
まず特徴的なのがメインから4枚採用された《マキンディの滑り駆け》です。このデッキに良く採用されている《軍族童の突発》や《焦熱の衝動》などよりも優先して採用されており、土地の枚数もそれほど多くないため、安定して「上陸」を誘発させるのは難しそうですが、素でトランプルの2マナ域のクロックで《タイタンの力》《強大化》といった強化スペルと相性の良いクリーチャーです。
サイドには《わめき騒ぐマンドリル》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》といったこのデッキの本来の戦略から少し異なる軸のクリーチャーが見られます。サイド後は強化スペルによるコンボを減らすため単体でも十分な強さを持つクリーチャーが必要になります。
特に《ピア・ナラーとキラン・ナラー》はこちらの強化スペルによるコンボを警戒して追加の単体除去を入れてきた相手に対してアドバンテージが取れ、《軍族童の突発》と異なり《強迫》で落ちないのも強みです。
《わめき騒ぐマンドリル》はトランプル持ちなので残してある強化スペルとの相性も良く、サイズも4/4と火力系のスペルで落ちないのでJeskaiや同系との対戦で活躍が期待できます。
TCGplayer MaxPoint Championship トップ8
~大規模な賞金イベントの上位はAbzan、Lally祭り~
2015年12月6日
※画像は【TCGplayer.com】より引用させていただきました。 |
1位 Abzan Aggro
2位 4C Lally
3位 4C Lally
4位 Abzan Aggro
5位 4C Lally
6位 Mardu Midrange
7位 RG Aggro
8位 Abzan Aggro
トップ8のデッキリストは【こちら】
アメリカ・ウィスコンシン州の都市ミルウォーキーで賞金総額50000ドルの招待制の大会である【TCGplayer MaxPoint Championship】が開催されました。
アメリカ各地で行われているTCGplayer MaxPoint Seriesで優秀な成績を収めることで手に入るMaxPoint Tokensを20ポイント保持したプレイヤーが参加できる大会です。今大会で上位を支配したのは現環境のトップメタデッキのAbzan Aggroと4C Lallyでそれぞれ3名ずつの入賞者を輩出しました。
TCGplayer MaxPoint Championship デッキ紹介
「Abzan Aggro」
2 《平地》 2 《森》 2 《梢の眺望》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 4 《乱脈な気孔》 2 《ラノワールの荒原》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 2 《荒野の後継者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(20)- |
2 《ドロモカの命令》 4 《アブザンの魔除け》 2 《残忍な切断》 2 《絹包み》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(14)- |
3 《強迫》 3 《自傷疵》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 2 《湧き上がる瘴気》 1 《風番いのロック》 1 《苦い真理》 1 《絹包み》 -サイドボード(15)- |
パワーカードを多数擁するAbzan Aggroは現環境で最も人気のあるデッキで、勝率も安定しています。
デッキのバリエーションも豊富で、カウンターのために青を足したAbzan Blueや除去のバリエーションのために赤を足したAbzan Redなども見られますが、今大会見事に優勝を飾ったリストは純正Abzanでした。【TCGplayersのライター】でもあるAdam Yurchickによって、長丁場の大会ではデッキの動きが安定した3色のバージョンがベストだということが証明されました。
☆注目ポイント
デッキとしては【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】の時点で完成されており、リストに大きな変化は見られませんが除去の種類が若干変化しているのと、サイドが現在のメタに合わせて調整されています。また、最近は同系を意識して《搭載歩行機械》だったスペースが《荒野の後継者》が採用されています。
《ドロモカの命令》の枚数が減らされ、その枠に《絹包み》が採用されています。エンチャント対策が少なめなこともあり、《ヴリンの神童、ジェイス》を初めとした環境の主力クリーチャーをわずか2マナで追放できる優秀な除去です。主に序盤に出てくる軽い低パワーのクリーチャーには《アブザンの魔除け》で触ることができず、《残忍な切断》も間に合わないことが多いので重要です。
サイドの《湧き上がる瘴気》は最近見かけるようになったカードで、主にトークン系のデッキに対してサイドインされるカードです。かつての《悲哀まみれ》より1マナ重く、同じマナ域には《衰滅》がありますが、色拘束が薄く「覚醒」付きの呪文なので後半必要のない場面で引いても完全に死に札にならない所が利点です。
JeskaiやEsperでも見られるようになった黒いドロースペルの《苦い真理》はAbzanにも採用されるようになりました。Abzanカラーでもキャストできる《宝船の巡航》として、主にEsper Dragonsのようなコントロールデッキに対して追加のアドバンテージ源としてサイドインされます。
ボーナストピック
一部の方は既にご存知だと思いますが、筆者は現在【晴れる屋成田店】で2月までスタッフとして短期勤務させていただいております。もし成田店でお会いすることがあればよろしくお願いいたします。
先月末には晴れる屋成田店の開店一周年を記念するイベントである晴れる屋成田店一周年記念スタンダードに立ち会うことができました。成田店の常連さんを中心とした終始アットホームな雰囲気の大会でした。
【成田店一周年】店主齋藤より、改めてお客様へ感謝のご挨拶と、ご来店いただいた皆様に「おやつ」が進呈されました!私も一つもらいましたが、絶品でした!「ぴーなっつ最中」、成田にお越しの際はぜひご賞味あれ!(伊藤航) pic.twitter.com/cqssLMR2ZG
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2015, 11月 29
今回の記事のおまけとして、この一周年記念で見事優勝を収めたデッキの解説をしていきたいと思います。
11 《森》 4 《山》 4 《ウギンの聖域》 4 《見捨てられた神々の神殿》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《爪鳴らしの神秘家》 2 《龍王アタルカ》 4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(14)- |
4 《森の占術》 4 《ニッサの巡礼》 4 《爆発的植生》 2 《ニッサの復興》 3 《面晶体の記録庫》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文(21)- |
4 《ジャディの横枝》 4 《焙り焼き》 2 《引き裂く流弾》 2 《カル・シスマの風》 2 《光輝の炎》 1 《虚空の選別者》 -サイドボード(15)- |
今大会見事に優勝を収めたUzawa Yuyaさんは成田店の常連のお客様の1人で、《龍王アタルカ》が好きなカードだそうです。緑赤の2色のエルドラージランプデッキでマナを伸ばして《龍王アタルカ》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《精霊龍、ウギン》といったパワーカードで圧倒します。
構成上Abzan Aggroのような中速デッキに強く、Atarka Redのような速いデッキを苦手とします。
☆注目ポイント
マナ加速に《爪鳴らしの神秘家》も加えることで安定して赤マナを確保し、3ターン目に《爆発的植生》や《面晶体の記録庫》、最速4ターン目に《龍王アタルカ》を出すことが可能です。サイドの《カル・シスマの風》はFog系のスペルで、このタイプのデッキが苦手とするアグロデッキ対策になります。
追加のエルドラージクリーチャーである《虚空の選別者》は相手のスペルとブロックを制限するクリーチャーで、点数で見たマナコストが”偶数”の呪文を封じるので《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《精霊龍、ウギン》といったカードを先に出した方が有利になりやすい同系において切り札になります。
総括
Atarka Redのような赤いアグロデッキが再び上位で見られるようになったため、それらに有利が付くJeskai系の復権が見られます。Abzan Aggroは相変わらずの人気で、SCGO Denverではトップ8にわずか1名でしたが、【TCGplayer MaxPoint Championship】では優勝者も含めてトップ8に3名のプレイヤーを輩出しました。
優秀なクリーチャーに、豊富な除去とハンデスも含めた妨害スペル、カードアドバンテージ獲得手段と揃っているため、Abzan相手に消耗戦を挑むのは困難を極めます。今週末に開催されるSCG Invitational Las VegasでもAbzan Aggroが一番人気になることが予想されます。
以上USA Standard Express vol.61でした。次回の記事ではSCG Invitational Las Vegasと【The Last Sun 2015】の入賞デッキの解説を予定しています。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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