みなさんこんにちは!
【プロツアー『マジック・オリジン』】も終了し一段落ついた感もありますが、2015-2016シーズンが幕を切り、プロツアー予備予選もスタンダードシーズンに突入しました。
さて、今回の記事では【SCG Premier IQ Washington DC】と【GP San Diego】、【GP London】の結果を見ていきたいと思います。
SCG Premier IQ Washington DC トップ8
~SCGのライターのTodd AndersonがBant Heroicで優勝~
2015年8月9日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Bant Heroic/白青英雄
2位 UR Thopters/魂込めビートダウン
3位 Mono Red/赤単
4位 Abzan Delve/白黒緑ビートダウン
5位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
6位 Abzan Constellation/エンチャントレス
7位 Abzan Rally/先祖の結集コンボ
8位 Mono Red/赤単
プロツアーでも活躍したMono RedやUR Thoptersが入賞する中、Bant Heroicが見事に優勝を収めました。
今大会を制したのは、【SCGのサイト】でプレミア記事のライターとしても活動しているTodd Andersonです。
SCG Premier IQ Washington DC デッキ紹介
「Bant Heroic」
3 《平地》 1 《島》 1 《森》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《マナの合流点》 3 《啓蒙の神殿》 2 《豊潤の神殿》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(22)- 3 《搭載歩行機械》 4 《恩寵の重装歩兵》 2 《ラゴンナ団の先駆者》 4 《イロアスの英雄》 4 《道の探求者》 -クリーチャー(17)- |
4 《果敢な一撃》 4 《神々の思し召し》 1 《トリトンの戦術》 4 《ドロモカの命令》 2 《勇敢な姿勢》 2 《宝船の巡航》 4 《タッサの試練》 -呪文(21)- |
3 《液態化》 2 《ヘリオッドの試練》 1 《島》 1 《ラゴンナ団の先駆者》 1 《層雲の踊り手》 1 《僧院の導師》 1 《消去》 1 《勇敢な姿勢》 1 《存在の破棄》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《宝船の巡航》 -サイドボード(15)- |
プロツアーでも活躍していたMono RedとUR Thoptorの両方のデッキに有効な《ドロモカの命令》をメインからフル搭載したBant Heroicは今大会では大正解だったようです。
Heroicクリーチャーとのシナジーもあるため、《ドロモカの命令》を最も有効に使えるデッキの一つです。
クリーチャーのサイズを強化していく戦略上、Abzan Controlなどが使うマイナス修正のスイーパーの《衰滅》に耐性があるのも強みです。
☆注目ポイント
前環境とあまり変化のない印象だったHeroicでしたが、Todd Andersonは《搭載歩行機械》を新戦力として採用しています。
《搭載歩行機械》は《タッサの試練》とのシナジーもあり、このデッキの方向性にもフィットしています。すでに「+1/+1」カウンターが乗っている状態の《搭載歩行機械》なら試練を達成することも容易で、たとえ除去されたとしても飛行機械トークンが残ります。
《ドロモカの命令》との相性も良好で、相手のクリーチャーと格闘しつつ自身のカウンターを蓄積させることが可能です。死亡しても飛行機械トークンでプレッシャーを与え続けることが可能な上に、トークンをばら撒くことによって本来ならこのデッキに有効な布告系の除去の効果も薄くなります。
その布告系の除去の中でも最も強力な《はじける破滅》を使ったMarduなども減少傾向にあるのも追い風です。
GP San Diego トップ8
~プロツアー直後のGPを制した《スフィンクスの後見》~
2015年8月9日
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
1位 UR Mill/ライブラリー破壊
2位 Abzan Constellation/エンチャントレス
3位 Esper Dragons/白青黒コントロール
4位 Abzan Control/白黒緑コントロール
5位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
6位 BR Midrange/黒赤ビートダウン
7位 Jeskai Aggro/白青赤ビートダウン
8位 GW Megamorph/緑白ビートダウン
今大会は【プロツアー『マジック・オリジン』】からわずか1週間後に開催されましたが、早速メタに動きがありました。まず目につくのはプロツアーの上位を支配していたMono RedとUR Thopterがトップ8に不在なことです。
GW Megamorphなど《ドロモカの命令》をメインから採用したデッキが多く上位に勝ち残っており、事前のプロツアーでの活躍によりマークが厳しかったようです。
GP San Diego デッキ紹介
「UR Mill」「GW Megamorph」
5 《山》 4 《島》 1 《血染めのぬかるみ》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《天啓の神殿》 4 《急流の崖》 4 《シヴの浅瀬》 4 《光輝の泉》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(4)- |
4 《マグマの洞察力》 4 《苦しめる声》 2 《眠りへの誘い》 2 《焙り焼き》 4 《神々の憤怒》 2 《圧倒的な波》 4 《宝船の巡航》 1 《時を越えた探索》 4 《スフィンクスの後見》 1 《僧院の包囲》 1 《アルハマレットの書庫》 -呪文(29)- |
4 《焦熱の衝動》 4 《否認》 3 《無効》 1 《分散》 1 《大地の断裂》 1 《圧倒的な波》 1 《氷固め》 -サイドボード(15)- |
Andrew Cuneoが【プロツアー『マジック・オリジン』】に持ち込んだ《スフィンクスの後見》を軸にした青赤コントロールです。
動きも安定しているようで《神々の憤怒》をメインからフル搭載されており、特にMono Redとの相性がよさそうです。
☆注目ポイント
《スフィンクスの後見》によるライブラリーアウトが勝ち手段なため、デッキ全体がこの青いエンチャントを最大限に活かせるように構築されています。
特に《宝船の巡航》、《ヴリンの神童、ジェイス》、《苦しめる声》、《マグマの洞察力》といったドロースペルとのシナジーが強力で、このデッキのドロースペルの多くはドローと同時にディスカードが要求されるため、「探査」や《ヴリンの神童、ジェイス》をPWに変身させるために墓地を肥やすことも可能です。
その他は除去や《眠りへの誘い》など時間を稼ぐ手段でまとめられています。
サイドにフル搭載されている《焦熱の衝動》はMono Redのようなアグロデッキ相手に投入される追加の除去です。このデッキなら「魔巧」達成も容易で、達成後なら《羊毛鬣のライオン》や《カマキリの乗り手》などタフネス3のクリーチャーも除去できるのが魅力です。
タフネスが高い《包囲サイ》などは青赤であるこのデッキにとっては除去手段が限られ脅威なので《氷固め》が対策として採られています。また、流行りのUR Thopter対策に《無効》がサイドに採用されています。
《神々の憤怒》など火力系の除去と、キーカードの《スフィンクスの後見》を同時に対処できる《ドロモカの命令》はこのデッキを使用するうえで最も気をつけなければならないスペルです。UR ThopterやMono Redの隆盛から《ドロモカの命令》を採用したデッキも多くなることも想定していたようで、《否認》がサイドに4枚しっかり採用されています。
8 《森》 6 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《豊潤の神殿》 1 《花咲く砂地》 1 《マナの合流点》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 2 《始まりの木の管理人》 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《棲み家の防御者》 2 《隠れたる龍殺し》 4 《死霧の猛禽》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 3 《加護のサテュロス》 2 《クルフィックスの狩猟者》 -クリーチャー(28)- |
3 《勇敢な姿勢》 3 《ドロモカの命令》 2 《英雄の導師、アジャニ》 -呪文(8)- |
4 《搭載歩行機械》 2 《アラシンの僧侶》 2 《霊気のほころび》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《進化の飛躍》 1 《異端の輝き》 1 《勇敢な姿勢》 1 《ドロモカの命令》 -サイドボード(15)- |
今大会入賞を収めたLoren EakinsのGW MegamorphはBrian Kiblerが【プロツアー『マジック・オリジン』】に持ち込んだデッキで、スタンダード部門を9-1という優秀な成績を収めていました。
《ドロモカの命令》を使っているデッキでブロッカーになるクリーチャーを多数採用しており、サイドの《アラシンの僧侶》もあるので特にMono Redに強い構成です。
UR Thopterに対しても《ドロモカの命令》やサイドの《霊気のほころび》のおかげで相性がいいと言えます。また、2色なためAbzanよりも安定した動きが期待できます。
☆注目ポイント
マナ加速に《エルフの神秘家》が採用されているので《クルフィックスの狩猟者》や《巨森の予見者、ニッサ》、「変異」クリーチャーなど3マナのクリーチャーを2ターン目に出すことができ、爆発力で勝ります。
《加護のサテュロス》は瞬速を持つため《ドロモカの命令》や《勇敢な姿勢》といったインスタントスペルを構えながら相手が何もしてこなかった場合は《加護のサテュロス》をキャストと、ターンを無駄にすることなく展開することができます。
中盤以降のゲームではPWに変身する《巨森の予見者、ニッサ》やPWの《英雄の導師、アジャニ》などがあるのでロングゲームにも強くなっています。
サイドボードには『マジック・オリジン』の新カードが数種類見られます。《搭載歩行機械》はスタンダードの多くのデッキで採用されており、現在のスタンダードの環境を定義するクリーチャーとなりました。
《進化の飛躍》はクリーチャーをサクリファイスすることで新たなクリーチャーを手札に加えることができます。このエンチャントは墓地から復活できる《死霧の猛禽》や墓地に送られた際にトークンを残していく《搭載歩行機械》とのシナジーがあり、トークンもサクリファイスすることでデッキ内の他のクリーチャーに変換できるのでアドバンテージを稼げます。
《悲劇的な傲慢》はこのデッキにとって相性の悪いマッチアップの一つとされているGR Devotionとのマッチアップで役に立つカードで、相手の場に貧弱なマナクリーチャー1体を残しつつ自分は強力なクリーチャーを残す、といった運用法が主になりそうです。
GP London トップ8
~《搭載歩行機械》入りのAbzanがワンツーフィニッシュ~
2015年8月16日
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
1位 Hangarback Abzan/白黒緑ビートダウン
2位 Hangarback Abzan/白黒緑ビートダウン
3位 Jeskai Aggro/白青赤ビートダウン
4位 GW Megamorph/緑白ビートダウン
5位 Hangarback Abzan/白黒緑ビートダウン
6位 Abzan Control/白黒緑コントロール
7位 Hangarback Abzan/白黒緑ビートダウン
8位 RG Dragons/赤緑ビートダウン
Londonで開催されたSCG主催のGPのトップ8の半数が 《搭載歩行機械》を搭載したAbzan Aggroという結果になり、優勝を収めたのもHangarback Abzanでした。従来の型のAbzan Controlも2日目のメタの19パーセント以上を占め、トップ8にも1人勝ち残っています。
逆にプロツアーで活躍していたMono RedやUR Thopterはやはり今大会でも強く意識されていたようで、メインから《ドロモカの命令》などの対策カードを積んだデッキが多く勝ちきれなかったようです。
GP London デッキ紹介
「Hangarback Abzan」「Jeskai Aggro」
3 《森》 2 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 4 《疾病の神殿》 3 《コイロスの洞窟》 3 《ラノワールの荒原》 1 《マナの合流点》 1 《静寂の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(26)- 4 《搭載歩行機械》 1 《始まりの木の管理人》 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 -クリーチャー(21)- |
4 《ドロモカの命令》 2 《究極の価格》 4 《アブザンの魔除け》 1 《英雄の破滅》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《英雄の導師、アジャニ》 -呪文(13)- |
4 《思考囲い》 2 《自傷疵》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 1 《アラシンの僧侶》 1 《黄金牙、タシグル》 1 《異端の輝き》 1 《正義のうねり》 1 《究極の価格》 -サイドボード(15)- |
《衰滅》がメインから採用されるようになりしばらく見られなかったAbzan Aggroでしたが、プロツアーの影響で環境は《衰滅》メインのAbzan MidrangeからUR ThopterやMono Redなどへシフトしていきました。軽い優秀なクリーチャーを多数採用しUR ThopterやMono Redに対する回答となる《ドロモカの命令》を活用しやすいため、Abzan Aggroにも再びチャンスがやってきたようです。
《搭載歩行機械》をメインから4枚採用した新しい形のAbzan AggroでSCGのライターのBrian Braun-Duin (BBD)が【プレミア記事で挙げていたリスト】を参考にしたようです。
☆注目ポイント
《搭載歩行機械》はこのデッキでも《アブザンの魔除け》、《ドロモカの命令》、《先頭に立つもの、アナフェンザ》、《英雄の導師、アジャニ》といったカウンターを乗せるカードとのシナジーがあり、死亡した際にトークンを残すのでスイーパーの《衰滅》にも耐性ができました。その《衰滅》や《死霧の猛禽》、《乱撃斬》などにより現在のメタではイマイチ強さを発揮し切れていなかった《ラクシャーサの死与え》に代わって採用されています。
サイドの《悲劇的な傲慢》は今大会のトップ8に入賞を収めたRG Dragonsを除いた全てのデッキで採用されていました。GW Megamorphの解説でも書いたように、GR Devotionとのマッチアップで相手のクリーチャーを1体残して一掃することが可能で、圧倒的に不利な状況でも逆転のチャンスを作れるというのがこのカードの採用率の高さの理由の一つだと思われます。
今まで何度もお話したように《ドロモカの命令》はエンチャントが多く存在する現在のスタンダードのメタではメインから問題なく4枚入るスペルです。クリーチャーをあまり採用していないコントロールに対しては弱いとされているスペルですが、現在のメタではUB Controlのようなデッキは比較的少数で、現在最もポピュラーなコントロールはエンチャントである《スフィンクスの後見》を軸にしたUR Millなので無駄になる場面は少ないと言えます。
2 《平地》 2 《島》 1 《山》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《神秘の僧院》 3 《天啓の神殿》 3 《凱旋の神殿》 3 《戦場の鍛冶場》 3 《シヴの浅瀬》 -土地(25)- 4 《魂火の大導師》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《カマキリの乗り手》 3 《ゴブリンの熟練扇動者》 2 《嵐の息吹のドラゴン》 -クリーチャー(17)- |
3 《乱撃斬》 3 《勇敢な姿勢》 3 《稲妻の一撃》 1 《焙り焼き》 1 《ジェスカイの魔除け》 3 《オジュタイの命令》 2 《かき立てる炎》 2 《時を越えた探索》 -呪文(18)- |
3 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《アラシンの僧侶》 2 《存在の破棄》 2 《神々の憤怒》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
Jeskaiカラーのアグロコントロールデッキ。白、赤、青の3色から軽い優秀なクリーチャーを火力などの効率的なスペルでサポートしていく戦略で『マジック・オリジン』から加入した《ヴリンの神童、ジェイス》や《悲劇的な傲慢》によって強化されました。
☆注目ポイント
《ヴリンの神童、ジェイス》が除去されずに生き残れば反転させることは容易で、PWに「変身」後は「-3」能力で火力の《稲妻の一撃》などを再利用することでアドバンテージを稼ぐことができます。
特に《オジュタイの命令》とのシナジーが強力で、たとえ除去されたとしても相手のクリーチャーをカウンターしつつ《ヴリンの神童、ジェイス》をリアニメイトするといったことができ、隙がありません。返しのターンには《ヴリンの神童、ジェイス》の能力を起動して「変身」させることもできます。
《オジュタイの命令》は《ヴリンの神童、ジェイス》だけでなく、マナはかかりますがスペルに「バイバック」を付与する《魂火の大導師》との組み合わせも強力です。特にマナが余る中盤以降のゲームで使いまわしてアドバンテージを得ることができます。
《ヴリンの神童、ジェイス》や《魂火の大導師》など対戦相手にとってマスト除去クリーチャーが多いので、《ゴブリンの熟練扇動者》も相対的に生き残りやすくなります。
《嵐の息吹のドラゴン》は《アブザンの魔除け》や《ドロモカの命令》、《勇敢な姿勢》といった白い除去を多用するGW MegamorphやAbzan Aggroが多い現在のメタでは頼れるフィニッシャーとして活躍が期待できそうです。
総括
現環境でのスタンダードも残すところあとわずかとなりましたが、SCG Premier IQ CharlotteやSCG Invitational New Jerseyなどスタンダードの大会が毎週のように開催されるのでこの環境でのスタンダードはまだまだ続きます。
赤いデッキとUR Thopterが活躍した【プロツアー『マジック・オリジン』】から数週間という短い期間に2つのGPが行われ、【GP San Diego】ではUR Millが、そして先週末に開催された【GP London】では《搭載歩行機械》を採用したAbzan Aggroが優勝を収めるなどメタも目まぐるしく変化していきました。
積極的に攻める手段と効率的な妨害手段を持ち合わせたAbzan Aggroはメタに応じてフレキシブルにチューンアップできるデッキなので、Abzanの天下はローテーションまで続きそうです。
以上USA Standard Express vol.53でした。
次回の記事ではSCG Premier IQ CharlotteとSCG Invitational New Jersey、SCGO New Jerseyの結果をカバーしていく予定です。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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