皆さんこんにちは。
先週末は日本最強構築王を決定する招待制のビッグイベント、The Finals 2017 が開催されました。賞金総額250万と豪華で、招待制のイベントだけあってプロも多数参戦する強豪ぞろいのイベントとなりました。優勝を飾ったのは、マジック・プロツアー殿堂プレイヤーでHareruya Prosのメンバーでもある津村 健志選手でした。
さて、今回の連載ではThe Finals 2017と第10期スタンダード神挑戦者決定戦の入賞デッキを見ていきます。
The Finals 2017
解明された環境、エネルギーとRamunap Redの2強
2017年12月16日
- 1位 4C Energy
- 2位 Desert Red
- 3位 Ramunap Red
- 4位 Temur Energy
- 5位 Ramunap Red
- 6位 Ramunap Red
- 7位 Temur Energy
- 8位 Ramunap Red
津村 健志
トップ8のデッキリストはこちら
The Finalsは、かつて日本国内で毎年年末に開催された構築王者を決める大会で、豪華な賞金制度がありプロも多く参加するレベルの高いイベントでした。この大会で結果を残したことをきっかけにより大きな舞台に羽ばたいていったプレイヤーも多く、2011年に終了して以来復活が望まれてきました。
スタンダードで競われた今大会では、予想通りTemur(4C) EnergyとRamunap Redの2強で、強豪プレイヤーが参加する招待制のイベントらしい結果となりました。
The Finals 2017 デッキ紹介
「4C Energy」「Ramunap Red」
4C Energy
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
2 《隠れた茂み》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
4 《尖塔断の運河》
3 《根縛りの岩山》
-土地(23)- 4 《導路の召使い》
4 《牙長獣の仔》
4 《ならず者の精製屋》
4 《つむじ風の巨匠》
3 《逆毛ハイドラ》
3 《スカラベの神》
-クリーチャー(22)-
3 《否認》
2 《多面相の侍臣》
1 《マグマのしぶき》
1 《人工物への興味》
1 《至高の意志》
1 《アズカンタの探索》
1 《野望のカルトーシュ》
1 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《王神、ニコル・ボーラス》
-サイドボード(15)-
現環境の安定した戦略として、多くの強豪プレイヤーがこぞって選択していました。
アメリカでは純正のTemur Energyがポピュラーで結果を残していますが、日本国内では4色バージョンを選択するプレイヤーが多い印象です。
黒をタッチする理由は、3色型との同型戦において強い《スカラベの神》や《秘宝探究者、ヴラスカ》などのカードを採用するためですが、マナ基盤とミッドレンジ同型のために遅めの構成にシフトしている分、Ramunap Redとのマッチアップに不利が付きます。
☆注目ポイント
ミラーマッチにおいて《スカラベの神》は対策が難しいこともありキーカードとなります。これに対するベストとされているアンサーは《慮外な押収》になりますが、奪われた後に《スカラベの神》を除去することで能力によって手元に戻るため、再びゲームを掌握することができます。Abzan Tokensのように横に並ぶ戦略以外には、どのマッチアップでも強いカードなので2枚採用されているリストが多くありますが、津村選手はさらに1枚追加しています。決勝戦での活躍からも正解だったようです。
Ramunap Redの《熱烈の神ハゾレト》に対する解答にもなる《慮外な押収》ですが、受動的で《逆毛ハイドラ》やプレインズウォーカーなどに対しては効果が望めないこともあり、追加の《スカラベの神》や土地を優先しているようです。
SCGなど日本国外のリストでは土地22枚のリストが多く見られますが、日本国内では23枚目の土地を採用しているリストも多く見られます。特に4色バージョンは《スカラベの神》のように余ったマナを有効活用する手段があり、6マナの《秘宝探究者、ヴラスカ》や最近は《王神、ニコル・ボーラス》など高マナのプレインズウォーカーも採用しているため、純正よりもフラッドすることが少なくなっています。
《アズカンタの探索》は、渡辺 雄也選手がグランプリ・上海2017で入賞していたリストでも採用していたカードで、軽いアドバンテージエンジンとしてミラーマッチやコントロールとのマッチアップで活躍します。《野望のカルトーシュ》は、Ramunap Redに対して《ボーマットの急使》や《地揺すりのケンラ》を除去しつつクリーチャーを強化し、さらに絆魂を付与できるためダメージレースでも優位に立てます。特に除去耐性がある《逆毛ハイドラ》に付けることができれば、止めることは困難でしょう。
Ramunap Red
4 《ラムナプの遺跡》
4 《陽焼けした砂漠》
-土地(24)- 4 《ボーマットの急使》
4 《損魂魔道士》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《暴れ回るフェロキドン》
4 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー(23)-
エネルギーと並んで現環境の上位で最も多く見られるのがRamunap Redです。
Ramunap Redと言っても通常のRamunap Redだけでなく、エネルギー系とのマッチアップ用にミッドレンジ寄りの構成され、《熱烈の神ハゾレト》の枚数を減らし砂漠土地を多めに搭載したDesert Redなど異なるバリエーションが存在します。
☆注目ポイント
今大会で上位入賞したリストの多くは、エネルギー系を意識して《アン一門の壊し屋》よりも《暴れ回るフェロキドン》を優先していました。《暴れ回るフェロキドン》の影響下ではTemur Energy側は《つむじ風の巨匠》でトークンをだしづらくなり、威迫持ちなのでアタッカーとしても優秀です。
松本 郁弥選手のリストは《暴力の激励》がメインから採用されています。Temur Energyのブロッカーを突破する助けになり、《損魂魔道士》や《熱烈の神ハゾレト》といったクリーチャーを対象にして相手の戦線を崩しにいきましょう。
サイドインされる《チャンドラの敗北》対策と、Temur Energyとのマッチアップで横に並べる戦略を強化するために多くのリストが《ピア・ナラー》をサイドに採用しています。強化可能な飛行クリーチャーで中盤以降余ったマナを活用する手段になり、アドバンテージも採れる優秀なクリーチャーです。《熱烈の神ハゾレト》、《反逆の先導者、チャンドラ》、《栄光をもたらすもの》といったパワーカードが採用され、特に《熱烈の神ハゾレト》の起動能力によってマナフラッドにも強く、序盤から終盤まで勝負ができるのが現在のRamunap Redです。
第10期スタンダード神挑戦者決定戦
Ramunap Redのエキスパートが神への挑戦権を獲得
2017年12月17日
- 1位 Ramunap Red
- 2位 Pummeler Aggro
- 3位 Ramunap Red
- 4位 Grixis Control
- 5位 4C Energy
- 6位 4C Energy
- 7位 4C Energy
- 8位 Ramunap Red
光安 祐樹
トップ8のデッキリストはこちら
235名の参加者が集った第10期スタンダード神挑戦者決定戦は、The Finals 2017と同様にTemur EnergyとRamunap Redが多数上位に残る結果となりました。
今大会準優勝を果たしたPummeler AggroやGrixis Controlといった異なるデッキも見られました。Temur EnergyやRamunap Redが多い中、異なる戦略で参戦し結果を残していることから要注目です。
第10期スタンダード神挑戦者決定戦
「Pummeler Aggro」「Grixis Control」
Pummeler Aggro
Pummeler Aggroは《牙長獣の仔》や《ならず者の精製屋》といったエネルギーデッキの要素を搭載していますが、《静電気式打撃体》を強化してゲームを決めるというコンボデッキです。
多くのリストは緑青ですが、今大会準優勝という好成績を残した髙野選手は《暴力の激励》など追加の強化スペルのために赤を足しています。
☆注目ポイント
Ramunap Redにも採用されている強力なスペルである《暴力の激励》のために赤をタッチしており、《チャンドラの敗北》や《蓄霊稲妻》といった除去、追加の勝ち手段、アドバンテージ源として《つむじ風の巨匠》にアクセスできるようになり、コンボに依存することが少なくなりました。《投げ飛ばし》は興味深いアプローチで、戦闘することなく強化した《静電気式打撃体》を相手に投げることで勝つことができます。
赤を足したことにより、強化スペルや除去を使えるようになったのでソーサリーである《気宇壮大》の採用は見送られています。インスタントの《暴力の激励》は必要なら2体のクリーチャーを強化できるので、戦線を突破しやすくなります。トランプルが付くため、《静電気式打撃体》でアタックして相手のリアクションを見て《暴力の激励》で強化、エネルギーを使ってさらに強化することによってゲームを終わらせることができるのです。
《顕在的防御》や各種カウンターによって相手の除去から《静電気式打撃体》などのクロックを保護していきます。エネルギーを消費することで除去耐性が付けられる《逆毛ハイドラ》も強化スペルと相性が良く、《暴力の激励》や《知識のカルトーシュ》によってダメージも通しやすくなります。
Grixis Control
今大会の上位で最も特徴的なデッキの一つだったのが田中選手のGrixis Control。
《奔流の機械巨人》、《スカラベの神》、そして《王神、ニコル・ボーラス》をフィニッシャーにカウンター、除去、カードドローでまとめられたクラシックなコントロールデッキです。
豊富な除去と軽いカウンターでTemur EnergyとRamunap Redの海を渡り、プレイオフに進出していたことからも注目に値するデッキです。
☆注目ポイント
青黒コントロールと異なる点は、赤を足したことによる軽いインスタント除去の豊富な選択肢です。《蓄霊稲妻》や《削剥》、《焦熱の連続砲撃》など豊富な除去にアクセス可能で、Ramunap Redなどアグロデッキとの相性が緩和されています。特にサイドの《焦熱の連続砲撃》は、現在の主要なクリーチャーに海賊が少ないので《コジレックの帰還》のように使っていくことが可能です。
パーミッションコントロールのように、カウンターや除去で凌ぎつつ《奔流の機械巨人》をキャストしてアドバンテージを取りつつクロックをかけたり、《破滅の刻》でスイープした後に《王神、ニコル・ボーラス》を展開したりと古典的なコントロールと異なり、相手の脅威を捌きつつ即座に攻めに転じることができるのが特徴です。
サイドには《禁制品の黒幕》や《巧射艦隊の追跡者》といった追加のクリーチャーが多数見られます。このデッキの《禁制品の黒幕》は占術による恩恵はほぼ皆無で、Ramunap Redの序盤の猛攻を減速させるために使われています。《巧射艦隊の追跡者》は《王神の贈り物》や《スカラベの神》対策で「探検」は確実性に欠けますがアドバンテージ源となり、サイズは小さいもののコストが軽いのでコントロールミラーでも使えそうです。
総括
環境は相変わらずTemur EnergyとRamunap Redの2強で、大きなイベントではそれ以外のデッキはほとんど見られないのが現状です。
前回の連載でもお話ししたように、エネルギーカウンターというメカニック自体がこれといった有効な対策法がなく、対策するのなら使ってしまおうというのが現状です。対抗馬とされているRamunap Redも《熱烈の神ハゾレト》や《反逆の先導者、チャンドラ》などの恩恵でロングゲームにも強く、以前のようにサイドボードで除去やライフゲイン、クリーチャーのサイズや質で容易に対策していくことが難しくなっており、コントロールに対して強いため現在のTemur(4C)かRamunap Redといった環境の要因となっています。来月リリース予定の『イクサランの相克』の加入によるシェイクアップが理想ですが、何かしらのテコ入れが必要になってくるかもしれません。
以上USA Standard Express vol.112でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!