みなさんこんにちは。
『霊気紛争』がリリースされて2週間が経ち、いよいよ【プロツアー『霊気紛争』】が開催されます。新セット『霊気紛争』の加入に加えて、スタンダードの環境を定義していた《約束された終末、エムラクール》《密輸人の回転翼機》《反射魔道士》が禁止カードに指定されたことにより、環境はどのような変化を遂げたのでしょうか?
今回の連載では【SCGO Columbus】と【SCGO Richmond】の結果を見ていきたいと思います。
SCGO Columbus トップ8
~緑デッキが上位を独占~
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 BG Delirium
2位 BG Aggro
3位 BG Aggro
4位 GW Tokens
5位 4C Saheeli
6位 4C Saheeli
7位 Jeskai Saheeli
8位 Mardu Vehicles
トップ8のデッキリストは【こちら】
『霊気紛争』リリース直後に開催されたSCGO Columbusは予想通りSaheeli コンボやGW Tokens、GB Aggroなどが多数見られましたが準決勝まで勝ち残ったのは全て緑絡みのデッキで、特に緑黒の強さが目立ちました。
『霊気紛争』リリース前から話題になっていた《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》コンボを搭載したデッキはJeskai Control型や4色バージョンなど多数のスタイルが見られ、プレイオフに3名のプレイヤーを送り込むなど前評判通りの強さを見せました。しかし、仮想敵が定まっていない新環境ではプロアクティブな戦略が成功する傾向にありGW TokensやBG Aggroなどは環境初期のデッキ選択としては最適なチョイスだったようです。
禁止改定と新セットのリリースによって全く未開の環境であったスタンダードの大会で優勝を飾ったのは新カードを多数採用したBG Deliriumでした。
SCGO Columbusデッキ紹介
「BG Delirium」「GW Tokens」「Four-Color Saheeli」
7 《沼》 6 《森》 2 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 3 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《不屈の追跡者》 4 《精神壊しの悪魔》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (25)- |
3 《ウルヴェンワルド横断》 2 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 2 《破滅の道》 1 《餌食》 -呪文 (12)- |
3 《失われた遺産》 3 《ヤヘンニの巧技》 2 《自然のままに》 2 《餌食》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《害悪の機械巨人》 1 《生命の力、ニッサ》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
フィニッシャーの《約束された終末、エムラクール》の退場に伴い《墓後家蜘蛛、イシュカナ》もわずか1枚にまで減量され、サイドに落とされるなど「昂揚」 の要素も薄くなり、BG Deliriumはアグロ寄りにシフトしていきました。
《歩行バリスタ》や《ピーマの改革派、リシュカー》《巻きつき蛇》《致命的な一押し》など『霊気紛争』のカードが多数採用されており、『霊気紛争』の加入と禁止改定により生まれた全く新しいデッキと言えます。
《巻きつき蛇》という新たな2マナ域のクリーチャーの登場により緑黒というアーキタイプに爆発力が加わり、よりアグレッシブなスタイルになりました。緑白など他のクリーチャーデッキをサイズで圧倒します。
また、《反射魔道士》の退場により《残忍な剥ぎ取り》や《精神壊しの悪魔》といった瞬速を持たないクリーチャーも本来の強さを発揮できるようになりました。
《精神壊しの悪魔》はアーティファクトクリーチャーをトータルで8枚採用しているこのデッキでは「昂揚」を達成させやすく、ペナルティーはほぼ無いに等しいと言えます。パワー4の飛行は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《サヒーリ・ライ》といった相手のプレインズウォーカーにプレッシャーをかけ、GW Tokensなどに特に強いクリーチャーです。
今回の禁止改定により評価が上がったのは《新緑の機械巨人》です。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》に代わる5マナ域のクリーチャー枠に採用された緑の機械巨人は自軍のクリーチャーに4つの「+1/+1」カウンターを割り振ることが可能で、《巻きつき蛇》や《歩行バリスタ》との組み合わせが強力です。
せっかく強化したクリーチャーが《反射魔道士》でバウンスされる心配も無くなり、現環境で最も使われている除去スペルである《闇の掌握》や《蓄霊稲妻》にも耐性ができるのも強みです。
《歩行バリスタ》はあの《搭載歩行機械》を彷彿させるクリーチャーで、今大会で最も注目を集めたカードの1枚です。《搭載歩行機械》のように手軽に自身を強化できないので、一見するとそこまで強そうに見えませんが、除去にも本体火力にもなりプレインズウォーカー対策になり、話題の《サヒーリ・ライ》コンボに対しても有効です。
先ほどの《巻きつき蛇》や《新緑の機械巨人》との組み合わせが強力で、ゲームを一気に終わらせるほどのインパクトがあります。このデッキ相手に除去を使う場合、《歩行バリスタ》と《巻きつき蛇》を優先的に対処していきたいところです。能力の性質上《致命的な一押し》を「紛争」でキャストする手軽な手段となり墓地にクリーチャーとアーティファクトの2種類のカードが加えられるので「昂揚」の条件を満たすことにも貢献するので今後もよく見かけるクリーチャーとなりそうです。
《ピーマの改革派、リシュカー》も今大会で多数の緑デッキで採用されていたクリーチャーで、このデッキでは2ターン目《歩行バリスタ》 or 《巻きつき蛇》、3ターン目《ピーマの改革派、リシュカー》という動きが強く、そのため緑黒系のデッキで特に強さを発揮するクリーチャーです。
《餌食》はインスタントスピードのプレインズウォーカー除去になるので《サヒーリ・ライ》コンボ対策にもなり、サイド後は《失われた遺産》と共に投入されます。
8 《森》 8 《平地》 4 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《スレイベンの検査官》 3 《ラムホルトの平和主義者》 3 《森の代言者》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 3 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (15)- |
4 《ニッサの誓い》 2 《領事の権限》 3 《停滞の罠》 3 《キランの真意号》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (20)- |
2 《自然のままに》 2 《神聖な協力》 2 《スラムの巧技》 2 《不撓のアジャニ》 1 《ラムホルトの平和主義者》 1 《異端聖戦士、サリア》 1 《断片化》 1 《英雄的介入》 1 《燻蒸》 1 《隔離の場》 1 《停滞の罠》 -サイドボード (15)- |
惜しくも緑黒に敗れはしたものの、今大会で人気があり、多数のトップ32以上の入賞者を出した緑白も無視できません。プレインズウォーカーを多数搭載したミッドレンジ寄りの構成で《密輸人の回転翼機》と《反射魔道士》の退場によりプレインズウォーカーを守りやすくなり、クリーチャー除去にも耐性がありコントロールにも強い構成です。
《キランの真意号》は《密輸人の回転翼機》と異なり、「搭乗3」なので《スレイベンの検査官》を登場させることは不可能ですが、プレインズウォーカーの忠誠カウンターをコストにクリーチャー化させることもできるのでプレインズウォーカーを守りやすくなります。
《キランの真意号》との相性の良さと《ピーマの改革派、リシュカー》による強化で、《ラムホルトの平和主義者》は以前よりも価値が上がりました。
緑白という構成上除去が薄いため《サヒーリ・ライ》コンボ対策に《領事の権限》がメインから採用されています。
今回のリストには不採用ですが緑黒でも採用されている《歩行バリスタ》はこのデッキでもお勧めです。
5 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《平地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 3 《感動的な眺望所》 1 《伐採地の滝》 1 《尖塔断の運河》 1 《さまよう噴気孔》 -土地 (22)- 4 《導路の召使い》 2 《ナーナムの改革派》 1 《巡礼者の目》 4 《守護フェリダー》 1 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (12)- |
2 《ウルヴェンワルド横断》 3 《蓄霊稲妻》 2 《否認》 4 《ニッサの誓い》 3 《チャンドラの誓い》 2 《ジェイスの誓い》 1 《テラリオン》 4 《サヒーリ・ライ》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《生命の力、ニッサ》 -呪文 (26)- |
2 《払拭》 2 《ショック》 2 《自然のままに》 2 《光輝の炎》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《グレムリン解放》 1 《発生の器》 1 《発火器具》 1 《先駆ける者、ナヒリ》 -サイドボード (15)- |
4 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《平地》 2 《進化する未開地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 3 《感動的な眺望所》 1 《尖塔断の運河》 -土地 (21)- 4 《導路の召使い》 1 《守られた霊気泥棒》 4 《ならず者の精製屋》 4 《呪文捕らえ》 1 《つむじ風の巨匠》 4 《守護フェリダー》 2 《雲先案内人》 -クリーチャー (20)- |
3 《霊気との調和》 2 《ショック》 4 《蓄霊稲妻》 2 《予言のプリズム》 4 《ニッサの誓い》 4 《サヒーリ・ライ》 -呪文 (19)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《否認》 2 《払拭》 2 《光輝の炎》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 1 《守られた霊気泥棒》 1 《チャンドラの誓い》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 -サイドボード (15)- |
6マナあれば瞬殺(《守護フェリダー》でアンタップインする土地を対象にして《サヒーリ・ライ》をプレイ)、4ターンキル可能な《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》コンボは優勝こそ逃したものの、3名がプレイオフに進出し、他にも多数の上位入賞者を出し、予想通りの強さを見せました。
Jeskai Controlにコンボを組み込んだバージョンも見られましたが、今大会で最も印象に残ったのは4Cミッドレンジにコンボを搭載したバージョンでした。モダンのTwinがそうであったように色を足すのが容易で、ETB能力持ちのクリーチャーやプレインズウォーカーを使い回すことでアドバンテージを稼ぐミッドレンジ寄りの構成です。
禁止改定により環境が変化し、今まではあまり使われなかったカードも再評価されています。Tyler Hillのリストに採用されている《チャンドラの誓い》と《ジェイスの誓い》がその典型です。《密輸人の回転翼機》が環境に存在していた時はインスタントスピードの除去が優先されましたが、この《チャンドラの誓い》は《守護フェリダー》でちらつかせることで再利用することも可能です。
また、《ジェイスの誓い》はキーカードを探し当てる助けになり、《守護フェリダー》を利用することでアドバンテージが得られます。
《サヒーリ・ライ》以外のプレインズウォーカーであっても、《守護フェリダー》でブリンクすることで忠誠値をリフレッシュしつつ能力をもう1度使用することができるようになり、シナジーがあると言えるでしょう。1/4というサイズはプレインズウォーカーを守る役割も果たします。
Robert Gravesのリストには《雲先案内人》、《ならず者の精製屋》といったETB能力を持つクリーチャーが多数搭載されており、それらを《守護フェリダー》で再利用することでアドバンテージを得る構成です。《ならず者の精製屋》はエネルギーカウンターを2つ得つつカードをドローするETB能力持ちで、エネルギーカウンターは《守られた霊気泥棒》によってさらなるカードアドバンテージに変換されます。
《守護フェリダー》と《サヒーリ・ライ》の両方を探し出せる《ニッサの誓い》は1マナと軽く、このデッキでは《思案》並みのスペルです。《守護フェリダー》とのシナジーもあり、《サヒーリ・ライ》や《先駆ける者、ナヒリ》などプレインズウォーカーをキャストする際は色マナサポートとしても使えるため緑入りの4Cバージョンでは《ジェイスの誓い》よりも優先して採用されます。
このように両プレイヤー共にコンボ以外にも《守護フェリダー》を有効活用する手段を多数搭載しており、コンボを対処されたとしてもミッドレンジとしてロングゲームでも勝負ができるように構築されています。コンボ以外の勝ち手段が豊富でプロアクティブなので《失われた遺産》にも耐性があるのが強みです。
反面、除去や妨害要素が薄めなので《サヒーリ・ライ》コンボミラー、特にJeskai型とのマッチアップでは不安が残ります。
SCGO Richmond トップ8
~Jeskai Saheeli コンボと緑黒の2強~
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Jeskai Saheeli
2位 4C Saheeli
3位 Jeskai Saheeli
4位 Jeskai Control
5位 BG Delirium
6位 Jeskai Saheeli
7位 GB Aggro
8位 BG Delirium
トップ8のデッキリストは【こちら】
プロツアー直前ということで、注目の大会であったSCGO Richmondは上位はSaheeliコンボと緑黒が多数を占めました。《奔流の機械巨人》は今大会で最も使われていたクリーチャーの1つで、コントロールのフィニッシャーとして【プロツアー『カラデシュ』】の決勝でも見られた高スペックなクリーチャーです。
より高いカードパワーを持つフィニッシャーである《約束された終末、エムラクール》の退場により相対的な強さを増し、今大会の上位を支配した《サヒーリ・ライ》コンボにもアドバンテージが取れるコンボ以外のフィニッシャーとしても採用されています。
SCGO Richmond デッキ紹介
「Jeskai Saheeli」
7 《島》 2 《平地》 4 《霊気拠点》 4 《感動的な眺望所》 4 《尖塔断の運河》 2 《鋭い突端》 2 《港町》 1 《さまよう噴気孔》 -土地 (26)- 3 《守護フェリダー》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (6)- |
4 《予期》 4 《蓄霊稲妻》 2 《否認》 2 《鑽火の輝き》 3 《不許可》 4 《天才の片鱗》 2 《燻蒸》 2 《ジェイスの誓い》 4 《サヒーリ・ライ》 1 《先駆ける者、ナヒリ》 -呪文 (28)- |
3 《呪文捕らえ》 3 《払拭》 2 《否認》 2 《光輝の炎》 2 《隔離の場》 1 《保護者、リンヴァーラ》 1 《燻蒸》 1 《先駆ける者、ナヒリ》 -サイドボード (15)- |
Saheeli ComboはSCGO Columbusでは多数の入賞者を出したものの、新環境に入って最初の週末ということもあり、リストが完成しておらず緑黒アグロに勝利を譲りました。
しかし先週末と比べると仮想敵がはっきりとしていた今大会では、SCGO Columbusを制したことで最も人気のあったデッキだった緑黒とのマッチアップ用に調整が施され、見事に優勝を収めました。
《巻きつき蛇》や《新緑の機械巨人》といった強化能力を持ったクリーチャーが主力の緑黒相手には火力系の除去は信頼性に欠けたため、《光輝の炎》や《ショック》が《鑽火の輝き》や《燻蒸》といった確定除去やスイーパーに差し替えられています。
このデッキの対策の代表格である《領事の権限》を張られても、《奔流の機械巨人》が追加のフィニッシャーとしてアドバンテージを稼ぎつつ勝利に導きます。かつてモダンで猛威を振るったSplinter Twinのように、コンボによる脅威を相手に提示しつつ青いコントロールのように振る舞うということが可能です。
今大会で見事に優勝を収めたDylanはメインから《先駆ける者、ナヒリ》を採用しているのでエンチャントにも触れて除去としても機能し、コンボパーツを探し出す助けにもなります。《奔流の機械巨人》や《先駆ける者、ナヒリ》をブリンクしてアドバンテージを稼ぐなど、4Cほどではないもののコンボ以外で《守護フェリダー》を有効活用できるようになります。
スタンダードはモダンと異なり《血清の幻視》のように軽いドロースペルはありませんが、《ジェイスの誓い》はコンボパーツを探しつつハンドの質も高められます。
単体ではそれほど強くない《守護フェリダー》と《サヒーリ・ライ》を活用するためにETB能力持ちのクリーチャーを多数搭載した4色バージョンなど、すでにいくつかのバリエーションが存在し、プロツアーでも人気が出そうなアーキタイプです。
総括
現代版のSplinter Twinと話題になっていた《サヒーリ・ライ》コンボは前評判通りの強さを見せ SCGO Richmondでは見事に優勝を飾りました。SCGO Columbusでも優勝する強さを見せた緑黒も上位に多数輩出する安定したパフォーマンスを見せました。
現在のスタンダードは《サヒーリ・ライ》コンボが頭一つ抜けた強さで、プロツアーでは《サヒーリ・ライ》コンボに打ち勝つデッキが現れるのか要注目です。プロツアーの結果はUSA Standard Expressでもしっかりカバーしていく予定です。
以上、USA Standard Express vol.90でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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