皆さんこんにちは。
『カラデシュ』がリリースされアメリカでは早速新環境のスタンダードのイベントである【SCGO Indianapolis】が開催されました。プロツアー『カラデシュ』が控えているということもあり、注目を集めていました。
今回の連載ではSCGO Indianapolisで上位入賞を収めたデッキを見ていきたいと思います。
SCGO Indianapolis
~新環境はアグロフォーマット。新メカニック機体を活用したWR Aggroが大活躍~
2016年10月1-2日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 WR Vehicles
2位 Grixis Emerge
3位 GB Delirium
4位 RB Aggro
5位 WR Humans
6位 WR Aggro
7位 WR Vehicles
8位 WR Vehicles
トップ8のデッキリストは【こちら】
昨年開催された【SCGO Indianapolis 2015】でもAtraka Redが優勝を収めたように、仮想敵が定まっていない新環境のスタンダードはアグレッシブなデッキが活躍する傾向があります。今大会でもその例に漏れず、WRやBRなどのアグロデッキが結果を残しました。
速いデッキと相性の良い対抗色ファストランドや、クリーチャーを多数搭載した戦略にマッチしている注目の新カードである《密輸人の回転翼機》の存在も、クリーチャーを主体としたアグロ戦略の後押しをしました。特にSCG Tourグラインダーで結成されたTeam Cardhoarderが持ち込んだ新メカニック機体を活用したWR Vehiclesは優勝者も含めてプレイオフに3名のプレイヤーを送り込むという強さを見せました。『異界月』リリース直後に開催された【SCGO Columbus】でも完成度の高いBant Companyを持ち込みチームを勝利に導いたことからも、彼らの選択したデッキは注目を集めていました。
SCGO Indianapolis デッキ紹介
「WR Vehicles」「Grixis Emerge」「RB Aggro」「GW Aggro」「Bant Aggro」
10 《平地》 6 《山》 4 《感動的な眺望所》 4 《鋭い突端》 -土地 (24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《経験豊富な操縦者》 4 《無私の霊魂》 3 《模範操縦士、デパラ》 2 《ピア・ナラー》 -クリーチャー (21)- |
4 《石の宣告》 2 《蓄霊稲妻》 4 《密輸人の回転翼機》 3 《高速警備車》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文 (15)- |
4 《流電砲撃》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 3 《稲妻織り》 2 《断片化》 2 《空鯨捕りの一撃》 -サイドボード (15)- |
SCGのライターで【Team Cardhoarder】の一員であるChris VanMeter(CVM)は、チームメイトと同様のWR Vehiclesを選択し見事に優勝を収めました。彼と同チームに所属しデッキをシェアしていたDevin Koepke、Jacob Baughもプレイオフに進出を果たし、チームのキャプテンのChris Andersenもトップ16入賞を果たしており、デッキの完成度の高さがうかがえます。
赤白の優秀なクリーチャーと 《高速警備車》《密輸人の回転翼機》《領事の旗艦、スカイソブリン》の3種類の機体でビートダウンしていくアグロデッキです。《石の宣告》や《蓄霊稲妻》といった優秀な除去やプレインズウォーカーの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と揃っており、今後のスタンダードの環境を牽引するデッキとなることが予想されます。
☆注目ポイント
《密輸人の回転翼機》は今大会でプレイオフ入賞を収めた全てのデッキでフル搭載されており、現環境のスタンダードを定義するカードと言えます。2マナという軽いコストで3/3飛行、そしてアタック、ブロックに参加することでルーター能力を発動します。「機体」という性質上クリーチャーが必須ですが「搭乗 1」なのでトークンも含めるこのデッキの全てのクリーチャーを搭乗させることが可能です。ルーター能力によって手札の質を高めつつ、ソーサリースピードの除去で対処され難いクロックによってプレッシャーをかける戦略は脅威となります。
《経験豊富な操縦者》はタフネスが低いのがネックとなりますが、「2マナ、パワー3、ETB能力占術2、『搭乗』した際に『機体』を強化する」という中々の高性能で、ドローの質を高めつつクロックをかけられるので、アグレッシブなこのデッキに方向性にもマッチしています。
《模範操縦士、デパラ》は《模範的な造り手》や《経験豊富な操縦者》といったクリーチャーを強化しつつ、「機体」も強化します。2ターン目《密輸人の回転翼機》、3ターン目《模範操縦士、デパラ》と展開し、「搭乗」させてアタックすることで4点のダメージを与えることが可能になります。マナの余る中盤以降のゲームでは《模範操縦士、デパラ》がタップすることによって誘発される能力でもカードアドバンテージを得ることが可能です。タップさせるだけでよいので、「機体」に「搭乗」させるのが主な発動方法となります。
このデッキの強さを支える「機体」は《密輸人の回転翼機》だけではありません。
《高速警備車》はコストも4マナ、「搭乗 2」と《密輸人の回転翼機》と比べるとあまり枚数を入れたいカードではありませんが、5/3、トランプルと高めのパワーと速攻付きで奇襲性も高く、《経験豊富な操縦者》や《模範操縦士、デパラ》を「搭乗」させてパワーをブーストしつつ、相手のライフを大量に削ります。
《領事の旗艦、スカイソブリン》は戦場に出たときか攻撃に参加したときに、クリーチャーかプレインズウォーカーに3点のダメージを与える「機体」で、「搭乗」させる条件は他の「機体」と比べると厳しくなりますが、攻撃時に発動する3点ダメージによってブロッカーを排除することができるので、ダメージも通し易くなります。
《模範的な造り手》は新たな《野生のナカティル》として話題になっていたクリーチャーで、《密輸人の回転翼機》を含めた多数のアーティファクトを採用したこのデッキなら強化の条件を満たすのも容易です。
新環境になり《スレイベンの検査官》の価値もさらに上昇しました。前環境でも手がかり・アーティファクト・トークンのアドバンテージによってBant HumansやMono White Humansなどで採用されていましたが、軽いコストのため《密輸人の回転翼機》の乗り手として最適であり、手がかり・”アーティファクト”・トークンにより《模範的な造り手》の強化にも貢献します。
《無私の霊魂》は《コジレックの帰還》などのスイーパーから自軍のクリーチャーを守ります。《衰滅》の退場によりダメージや破壊系の除去が中心になりつつあるので、相対的な強さが増しています。
サイドに忍ばせてある追加の除去の《空鯨捕りの一撃》は環境に数少ない貴重なインスタント除去でミラーマッチやEmergeなど、様々なデッキとのマッチアップで活躍します。
《断片化》は「機体」の他にも《ドロモカの命令》がローテーション落ちしたことによって使用率が上がりそうな《停滞の罠》や《隔離の場》といったエンチャントも対策できるので、1マナというコストの軽さから、今後もサイドボードのレギュラーとして見られそうです。
現時点で環境最高のカードの一枚である《密輸人の回転翼機》を初めとした新メカニックである「機体」を最大限に活かしたデッキであり、プロツアーでも人気が出そうなアーキタイプです。
2 《島》 3 《山》 1 《沼》 4 《進化する未開地》 4 《燻る湿地》 3 《尖塔断の運河》 3 《窪み渓谷》 3 《ウギンの聖域》 -土地 (23)- 4 《秘蔵の縫合体》 2 《墓所破り》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《憑依された死体》 4 《傲慢な新生子》 4 《老いたる深海鬼》 2 《不憫なグリフ》 -クリーチャー (24)- |
4 《安堵の再会》 3 《コジレックの帰還》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《終わりなき時計》 -呪文 (13)- |
3 《集団的蛮行》 3 《侵襲手術》 2 《膨らんだ意識曲げ》 2 《稲妻の斧》 2 《即時却下》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《コジレックの帰還》 -サイドボード (15)- |
前環境でも結果を残していたEmergeは、予想通り新環境でもSCGO規模の大会で準優勝を収めるという強さを見せました。現環境で最も優秀なスイーパースペルである《コジレックの帰還》を活用できるアーキタイプということで、注目に値するデッキです。
☆注目ポイント
《安堵の再会》はデッキを掘り進めつつ墓地を肥やすことが可能で、追加コストとして《苦しめる声》よりも1枚多くカードを捨てる必要はありますが、2マナで3ドローし、《憑依された死体》や 《秘蔵の縫合体》、《コジレックの帰還》を墓地に落とす手段となります。
《不憫なグリフ》は《コジレックの帰還》の能力を発動させる手段であると同時に、3/4飛行というサイズは《密輸人の回転翼機》を止めるのに最低限の条件を満たしています。
《コジレックの帰還》はインスタントスピードのスイーパーなので、各種「機体」デッキとのマッチアップで重要なカードとなります。誘発能力を発動させれば大抵の赤白や黒赤のクリーチャーを除去することができます。《不憫なグリフ》や《老いたる深海鬼》といった「現出」クリーチャーのおかげで、能力を誘発させることも容易です。
サイド後は《最後の望み、リリアナ》や《集団的蛮行》、《即時却下》などの妨害要素が追加され、Grixis Controlにシフトします。
マナベースにやや不安があるものの、《コジレックの帰還》を使ったデッキを考えている方にお勧めのデッキです。
11 《山》 4 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《凶兆の廃墟》 -土地 (23)- 4 《発明者の見習い》 4 《ボーマットの急使》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《ピア・ナラー》 1 《無謀な奇襲隊》 -クリーチャー (17)- |
4 《焼夷流》 4 《癇しゃく》 4 《無許可の分解》 2 《街の鍵》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《高速警備車》 -呪文 (20)- |
4 《流電砲撃》 4 《精神背信》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《稲妻の斧》 2 《血統の呼び出し》 1 《無謀な奇襲隊》 -サイドボード (15)- |
こちらのRB Aggroは、他のアグロデッキと同様に《密輸人の回転翼機》を活用するために軽いクリーチャーやトークンを生み出す《ピア・ナラー》を多数採用しており、奇襲性が高い《無謀な奇襲隊》も見られます。
☆注目ポイント
《密輸人の回転翼機》のルーター能力は、マッドネススペルの《癇しゃく》とのシナジーもあり《屑鉄場のたかり屋》の能力を利用することでアドバンテージも得られます。
ブロックに参加できないというのがネックとなりますが《屑鉄場のたかり屋》は2マナ、3/2で墓地からの復活能力付きという、優秀なクリーチャーです。
《屑鉄場のたかり屋》や「機体」の恩恵で《無許可の分解》で追加のダメージを与えるのも容易です。《無許可の分解》は《密輸人の回転翼機》を初めとした「機体」に対する回答となります。《屑鉄場のたかり屋》や「機体」の恩恵で、相手の脅威に対処しつつダメージを稼ぐことも比較的容易な点にも注目です。
《ボーマットの急使》は1マナと軽く、《密輸人の回転翼機》に搭乗させるのに適したクリーチャーです。起動能力も手札の消費が速いこのデッキでは「手札を捨てる」というコストもそれほど気にならず、中盤以降は息切れ防止になります。
バトルランドやシャドーランドはアグロデッキと相性の良い土地とは言えず、土地を置く順序には気を付けたいところです。赤白と異なりファストランドがないため、マナベースに若干の不安は残りますが、《屑鉄場のたかり屋》や《ボーマットの急使》などアーティファクトが多く、全体的に色拘束が薄めの構成です。
6 《森》 8 《平地》 4 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 2 《霊気拠点》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《導路の召使い》 4 《森の代言者》 4 《博覧会場の警備員》 2 《不屈の追跡者》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (22)- |
3 《顕在的防御》 2 《永遠の見守り》 4 《密輸人の回転翼機》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (13)- |
3 《自然のままに》 3 《石の宣告》 2 《保護者、リンヴァーラ》 2 《燻蒸》 2 《隔離の場》 2 《生命の力、ニッサ》 1 《不屈の追跡者》 -サイドボード (15)- |
【2016年度の世界王者】のBrian Braun-Duin(BBD)は、今大会ではGW Aggroを選択していました。彼のチームメイトであるBrad Nelsonの製作したデッキで、《密輸人の回転翼機》《新緑の機械巨人》《生命の力、ニッサ》といったカードパワーの高い新カードをフィーチャーしたミッドレンジ寄りのアグロで、旧環境のGW Tokensを彷彿とさせます。惜しくもトップ8には残らなかったものの、デッキをシェアされたTom Rossはトップ16入賞を果たしており、今大会の【デッキテク】でも挙げられています。
☆注目ポイント
+1/+1カウンターを最大4体のクリーチャーに振り分ける《新緑の機械巨人》は、攻守にわたって活躍します。自軍の他のクリーチャーを強化するも良し、5マナ、8/8、トランプルとしても扱っても良し、緑デッキの主力クリーチャーとして今後も様々なデッキで使われるクリーチャーとなりそうです。
エネルギー・カウンターに限りはありますが《導路の召使い》は、3ターン目 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、4ターン目 《新緑の機械巨人》という展開を可能にします。
《放逐する僧侶》と同様の能力を持つ《博覧会場の警備員》は、除去の少ない緑白系のデッキにとって貴重なカードです。除去され易いのがネックとなりますが《顕在的防御》で保護することができます。
《ドロモカの命令》の退場により、クリーチャー全体強化の《永遠の見守り》や、サイドのパーマネント対策のエンチャントである《隔離の場》も使い易くなっています。
緑白のアグロデッキは『カラデシュ』のカードを多数採用したデッキで、前環境で緑白系のミッドレンジを使用していた方にもお勧めです。
5 《森》 4 《平地》 1 《島》 4 《大草原の川》 4 《進化する未開地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 -土地 (26)- 4 《導路の召使い》 4 《森の代言者》 1 《無私の霊魂》 4 《呪文捕らえ》 4 《反射魔道士》 4 《不屈の追跡者》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (25)- |
2 《顕在的防御》 3 《石の宣告》 4 《実地研究者、タミヨウ》 -呪文 (9)- |
3 《否認》 3 《断片化》 2 《首絞め》 2 《高木背の踏みつけ》 2 《儀礼的拒否》 2 《生命の力、ニッサ》 1 《即時却下》 -サイドボード (15)- |
《集合した中隊》がローテーション落ちしたため、Bant Companyというアーキタイプは消滅しましたが《反射魔道士》や《呪文捕らえ》といった優秀なクリーチャーは残っています。したがって、Bant Aggroというアーキタイプ自体が存続することは予想どおりと言えるでしょう。
《集合した中隊》に代わる戦力として《実地研究者、タミヨウ》と多くの緑デッキに採用されている《新緑の機械巨人》がフィーチャーされています。《集合した中隊》の退場に伴い、3マナ以下のクリーチャーを中心に構築する必要が無くなりデッキ構築の自由度が増しています。
☆注目ポイント
環境の速度が上がることを見越していたようで、やや悠長な《薄暮見の徴募兵》の採用が見送られています。代わりにマナ加速として使える《導路の召使い》が採用されており、《実地研究者、タミヨウ》や《新緑の機械巨人》が展開し易くなっています。
《集合した中隊》に代わる4マナ域のカードとしてフル搭載されている《実地研究者、タミヨウ》は、クリーチャーを多数採用したBant Aggroの方向性にマッチしており、「+1」能力でアドバンテージを稼ぎ、「-2」能力で相手のブロッカーをタップして一気に勝負を決めることができます。
多くの緑デッキに採用されているパワーカードである《新緑の機械巨人》は、Bant Aggroのように「クリーチャーを多数搭載したデッキでは4枚採用しない理由がない」と断言できる強さで、クリーチャーを《コジレックの帰還》の射程圏外へと強化します。
《ドロモカの命令》ほどフレキシブルではないものの、《石の宣告》は多くのアグロデッキとのマッチアップにおいて信頼のできる除去として活躍します。
総括
《密輸人の回転翼機》という高性能な「機体」の登場により、クリーチャーデッキが大幅に強化されました。プレインズウォーカーを戦場に出しても、返しのターンに戦場に出たクリーチャーが「搭乗」した《密輸人の回転翼機》によって落とされやすく、ソーサリースピードの除去も信頼性に貧しく、プレインズウォーカーを使ったコントロールにとっては厳しい環境のようです。
《密輸人の回転翼機》がトップ8に入賞を果たした全てのデッキに4枚採用されていましたが、前環境のBant Companyのように「1つのデッキが支配する環境」ではなく、RW Vehicles以外にも、EmergeやDelirium、GW Aggroなど、様々な戦略、デッキが存在します。
多くのデッキでサイドに採用されている《断片化》や《自然のままに》は、今後も「機体」対策に必須カードとなりそうです。
プロツアーまでスタンダードの大規模なイベントは開催されず、SCGO Indianapolisの結果は今回は【トップ64】までリストがアップされているので、一通り目を通してみるのも新しい発見もあり面白そうです。
以上USA Standard Express vol.82でした。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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