USA Standard Express vol.86 -新たに動き出したメタゲーム-

Kenta Hiroki



 みなさんこんにちは。

 先週末から【スタンダード・ショーダウン】も始まり、プレミアイベント以外でもスタンダードが盛り上がっています。SCG Tourでも久々にスタンダードオープンが開催されました。今回の連載では【SCGO Knoxville】の入賞デッキを見ていきたいと思います。



SCGO Knoxville
~最強はGB Deliriumか?~


11/19-20

Brad Nelson
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。


1位 GB Delirium
2位 Jeskai Control
3位 GB Delirium
4位 GB Delirium
5位 GB Delirium
6位 WU Flash
7位 WU Flash
8位 WU Flash


トップ16のデッキリストは【こちら】


 現環境トップメタの一角であるGB Deliriumの優勝で幕を閉じたSCGO Knoxville。プレイオフの半数を占め、ライバルであるWU Flashを破って準決勝にも進出しています。そして、僅差ではありましたが、GB Deliriumが二日目の最大勢力でした。【二日目進出デッキ分布】を見てみると、GB Deliriumが37名、WU Flashが31名と、GBとUWの2強です

 また、惜しくも優勝は逃しましたが今大会準優勝と見事にGBとUWの海を渡ったJeskai Controlには要注目です。


SCGO Knoxville デッキ紹介

「GB Delirium」「Jeskai Control」「WU Flash」「WB Midrange」



Brad Nelson「GB Delirium」
SCGO Knoxville(1位)

7 《森》
7 《沼》
1 《進化する未開地》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》

-土地 (23)-

4 《残忍な剥ぎ取り》
2 《巡礼者の目》
1 《不屈の追跡者》
3 《精神壊しの悪魔》
3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《害悪の機械巨人》
1 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (15)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
4 《闇の掌握》
3 《過去との取り組み》
1 《精神背信》
2 《殺害》
1 《破滅の道》
3 《発生の器》
4 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (22)-
3 《自然のままに》
2 《精神背信》
2 《餌食》
2 《知恵の拝借》
2 《死の重み》
1 《不屈の追跡者》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya



 アメリカのプロでSCGのサイトのコンテンツプロデューサーでもあるBrad Nelsonは、得意のGB Deliriumで見事に優勝を飾りました。GB Deliriumは今大会でも二日目最大勢力で、プレイオフでも半数を占めるなど、環境最強のデッキの一つとされています。ライバルであるWU Flashとのマッチアップは双方の経験値に大きく左右され、どちらが有利とも言えないむずかしいマッチです。現状はカウンターがある分、Aetherworksコンボやコントロールに対して有利なため、Magic OnlineではWU Flashの方が人気があるようです。


約束された終末、エムラクール


 カードパワーが高く、ロングゲームに強いデッキであるため、《約束された終末、エムラクール》を安全にキャストするのがゴールとなります。



☆注目ポイント


残忍な剥ぎ取り


 《残忍な剥ぎ取り》によるビートダウンで墓地を肥やし、「4/4、トランプル」でクロックをかけつつ、効率的なインスタントスピードの除去も採用されているため、WU FlashやWR Vehiclesに対して強く動くことができます。《残忍な剥ぎ取り》のクロックや、ダメージをとおした際の誘発能力(墓地を肥やしつつライブラリートップの調整)は、相手に対処を迫るので特にWU Flashはカウンターのためのマナを空けておくのが難しくなります。結果的に、《精神壊しの悪魔》《墓後家蜘蛛、イシュカナ》といった脅威を着地するお膳立ての役割を果たします。


墓後家蜘蛛、イシュカナ


 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》はWU Flashと同型の両方のマッチでキーとなるクリーチャーで、《約束された終末、エムラクール》まで繋げる時間を稼ぎます。WU Flashとのマッチアップについては前回の記事でも挙げられていますのでご覧ください。


最後の望み、リリアナ餌食


 プレインズウォーカーを直接除去する手段が少ないので、ミラーマッチでは 《最後の望み、リリアナ》がキーとなります。そのため、他のリストでは1枚の採用で済まされていることが多い《餌食》を2枚に増量している調整には好感が持てます。また、《知恵の拝借》はこのデッキが苦手とするコンボ以外にも、ミラーマッチの際にフィニッシャーである《約束された終末、エムラクール》を追放するためにサイドインされます。


精神背信


 《精神背信》はWU Flashと同型両方のマッチで有効なカードなので、メインから採用しても良さそうです。



Bradley Hill「Jeskai Control」
SCGO Knoxville(2位)

4 《島》
6 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《港町》
4 《さまよう噴気孔》
3 《感動的な眺望所》
1 《尖塔断の運河》

-土地 (26)-

4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (4)-
4 《蓄霊稲妻》
3 《予期》
2 《神聖な協力》
2 《鑽火の輝き》
1 《否認》
3 《虚空の粉砕》
1 《風への散乱》
3 《光輝の炎》
4 《天才の片鱗》
2 《革命的拒絶》
1 《燻蒸》
1 《隔離の場》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
1 《秘密の解明者、ジェイス》

-呪文 (27)-
4 《呪文捕らえ》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
2 《粗暴な排除》
2 《即時却下》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《神聖な協力》
1 《否認》
1 《罪人への急襲》

-サイドボード (15)-
hareruya




奔流の機械巨人


 プロツアーでは大活躍だった《奔流の機械巨人》を使った青いコントロールは、扱いの難しさ、そしてその後に人気が出たWU Flashの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を処理することが困難だったこともあり、あまり見られなくなっていました。しかしながら、現環境のように"仮想敵が明らかなメタゲーム"では、コントロールも有効なチョイスとなります。このデッキは、プロツアー準優勝を果たしたJeskaiをベースに、現在の環境に合わせて調整されています。



☆注目ポイント


秘密の解明者、ジェイス奔流の機械巨人先駆ける者、ナヒリ


 《ドビン・バーン》《大天使アヴァシン》が、4枚目の《奔流の機械巨人》《秘密の解明者、ジェイス》《先駆ける者、ナヒリ》に差し替えられているなど、フィニッシャーの枠に大きな変更が加えられています《先駆ける者、ナヒリ》は「機体」を除去できるプレインズウォーカーで、メイン戦では《燻蒸》《光輝の炎》といった限定的な効果のカードを有効碑に変換しつつ、墓地を肥やしながら奥義を発動して《奔流の機械巨人》をサーチしてくることも可能です。そして、その頃には墓地にあるカードの選択肢も豊富になっているでしょう。


革命的拒絶神聖な協力蓄霊稲妻


 《革命的拒絶》《鑽火の輝き》《予期》《神聖な協力》《蓄霊稲妻》といった2マナのインスタントが多数積まれているので、後手でも押されづらくなっています。


呪文捕らえゼンディカーの同盟者、ギデオン


 サイド後は《呪文捕らえ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が加えられ、Jeksai Flashにシフトします。メインのクリーチャーが《奔流の機械巨人》のみであり、相手も除去を減らしてくると思われるので《呪文捕らえ》も生き残りやすく、追加のカウンター兼クロックとして活躍します。



SCGのライター Emma Handyにインタビュー

 SCGのサイトで【毎週記事を執筆しているライター】でありながら、SCG Tourグラインダーとしても活躍をするEmma Handyさんにインタビューしました。今大会では、WU Flashを使用して見事にトップ8入賞を収めました。

 EmmaさんはSCGO Columbusのタイブレーカーによる9位入賞を初め、SCG Classicsや州選手権でトップ8入賞経験があるプレイヤーですが、意外にも今回が初のトップ8でした。



Emma Handy「WU Flash」
SCGO Knoxville(7位)

10 《平地》
6 《島》
4 《大草原の川》
4 《港町》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (25)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《無私の霊魂》
4 《呪文捕らえ》
3 《反射魔道士》
4 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (19)-
2 《革命的拒絶》
1 《石の宣告》
4 《停滞の罠》
1 《永遠の見守り》
4 《密輸人の回転翼機》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (16)-
2 《折れた刃、ギセラ》
2 《断片化》
2 《石の宣告》
2 《呪文萎れ》
2 《秘密の解明者、ジェイス》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《儀礼的拒否》
1 《否認》
1 《風への散乱》
1 《永遠の見守り》

-サイドボード (15)-
hareruya



――今回WU Flashを選択した経緯について聞かせて貰えますか?

Emma: 異なるフォーマット(レガシーとモダン)での連戦が続いており、今大会の準備があまりできていませんでした。今大会直前に、大会に向けて十分な準備が整っていないときに、どうやってデッキをリサーチするかをまとめて、【記事を投稿しました】。実は、記事の中でWU Flashを使うことに決めたことを伝えていたんです。プロアクティブで、環境最高クラスのパワーを持つカードを多数搭載し、事前の複数の異なる大会で結果を残していたこと、そして違うデッキを使うことで読者の皆さんをがっかりさせたくなかったということもあって、このデッキで参戦することを決めました。

――記事の中では、大会で結果を残せるほどの調整の時間が取れず、理想的なプランとは言えないながらも、限られた時間の中でベストな選択としてデッキの使い方を学んだ、と書かれていましたよね。練習時間が限られた状態での参加でトップ8は凄いですね。オンライン、リアルという選択肢があると思いますが、普段はどういった調整の仕方をしていますか?

Emma: 現在は調整の殆どはリアルです。調整の方法としては、サイドのプランや仮想敵とのマッチアップにおいて、カードの強さよりも役割について研究することに時間を使います。クリスマスの時期になって時間ができたら、クオリティーの高い練習のためにオンラインでストリーミングをしながら練習することも考えています。

――強いプレイヤーのプレイ動画はプレイングの説明等が聞けて勉強になるので楽しみです。



デッキについて

――今回のリストのメイン、サイドには、他のリストでは見られない《永遠の見守り》が採用されていましたが、採用理由と使用してみた感想を教えて貰えますか?


永遠の見守り


Emma:《永遠の見守り》ミラーマッチとGB、両方のマッチで強いカードです《呪文捕らえ》《密輸人の回転翼機》をブロックできるようになったり、《大天使アヴァシン》《闇の掌握》1枚では除去されなくなったりと地味ですがしっかりと仕事をするカードですね。最初の1枚は強いカードですが、複数引いてもそれほど高い効果が望めず、ミラーマッチやGB以外のマッチではそれほど強くないことがメイン、サイドにわずか1枚ずつ採用されている理由です。



ミラーマッチでの戦い方


無私の霊魂密輸人の回転翼機


Emma: ミラーマッチは《無私の霊魂》《密輸人の回転翼機》でプレッシャーをかけて、相手にマナを使わせてタップアウトさせることが重要になります。

――なるほど。相手にマナを使わせる事によって《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《折れた刃、ギセラ》といった脅威が通りやすくなりますね。

Emma: その通りです!

ミラーマッチのサイドプラン


In

折れた刃、ギセラ 折れた刃、ギセラ
石の宣告 石の宣告
永遠の見守り


Out

反射魔道士 反射魔道士 反射魔道士
革命的拒絶 革命的拒絶


Emma: ミラーマッチでの《反射魔道士》のバウンスは、マナコストが軽いクリーチャーが多いのでテンポアドバンテージが取れないこと、そして瞬速持ちが多いこともあるので、そこまで重要ではありません。

――なるほど。確かに《呪文捕らえ》《スレイベンの検査官》はバウンスしてもうれしいクリーチャーではなさそうですよね。

Emma: そうですね。《革命的拒絶》は後手では間に合わないことが多いので、サイドインされるカードの方が断然活躍すると思います。

――インタビューのご協力ありがとうございました。SCG Open初のトップ8入賞改めておめでとうございます。次の大会も頑張ってください。




Andrew Tenjum「WR Midrange」
SCGO Knoxville(10位)

11 《平地》
6 《山》
4 《感動的な眺望所》
4 《鋭い突端》
1 《ガイアー岬の療養所》

-土地 (26)-

4 《スレイベンの検査官》
3 《経験豊富な操縦者》
4 《博覧会場の警備員》
2 《サリアの槍騎兵》
2 《折れた刃、ギセラ》
2 《大天使アヴァシン》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《消えゆく光、ブルーナ》

-クリーチャー (19)-
2 《蓄霊稲妻》
4 《停滞の罠》
4 《密輸人の回転翼機》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
4 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文 (15)-
4 《流電砲撃》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
3 《燻蒸》
2 《断片化》
2 《ヴァラクートの涙》

-サイドボード (15)-
hareruya



 惜しくもトップ8は逃しましたが、SCG Tourのグラインダーで強豪プレイヤーのAndrew Tenjumは特徴的なWRミッドレンジでトップ16入賞を果たしています。WR機体をベースに《折れた刃、ギセラ》《先駆ける者、ナヒリ》がメインから採用されており、ミッドレンジ寄りの構成にすることで他の機体アグロ、WU Flash、GBとのマッチアップに備えています。


☆注目ポイント


先駆ける者、ナヒリ折れた刃、ギセラ


 《屑鉄場のたかり屋》《模範的な造り手》はコストの軽い反面、UW FlashやGB Deliriumのカードパワーの前では分が悪くなります。そこで、《先駆ける者、ナヒリ》《折れた刃、ギセラ》といった4マナのカードに差し替えられており、ロングゲームを想定した構成になっています

 《最後の望み、リリアナ》の能力で落ちる《無私の霊魂》など、タフネス1のクリーチャーも不採用です。環境の主要な除去は《殺害》のような破壊系の除去よりも《闇の掌握》のようなマイナス修正の除去であり、WU Flashの主要な除去も《停滞の罠》《石の宣告》であるため、環境的に破壊不能がそこまで強くないことも、不採用になった理由だと思われます


博覧会場の警備員


 《博覧会場の警備員》は相手のクリーチャーを追放しつつ《密輸人の回転翼機》に「搭乗」してアタックすることで、テンポアドバンテージも得られ、このデッキの方向性にマッチしています。


先駆ける者、ナヒリ


 Jeskai Controlも採用していた《先駆ける者、ナヒリ》は、このデッキでも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》より優先して採用されています。タップ状態の《密輸人の回転翼機》や各クリーチャーを追放し、WU Flashの主要な除去である《停滞の罠》も追放できます。


大天使アヴァシンサリアの槍騎兵消えゆく光、ブルーナ


 《大天使アヴァシン》《消えゆく光、ブルーナ》《折れた刃、ギセラ》《保護者、リンヴァーラ》といった伝説の天使クリーチャーを多数採用しているので《サリアの槍騎兵》によって状況に応じてサーチしてくることが可能です。《ガイアー岬の療養所》も探せるので、6枚目の土地を確保することもできますし、望むなら《領事の旗艦、スカイソブリン》もサーチ可能です。

 《保護者、リンヴァーラ》は特に多数のトークンを出す《墓後家蜘蛛、イシュカナ》相手に有効で、劣勢を巻き返します



総括

 SCG Tourなどの結果から、現環境のスタンダードは完全にGBとUWの2強状態です。しかしながら、今回紹介した準優勝を収めたJeskaiや、トップ16入賞を収めていたWR Midrange、Magic Onlineでコンスタントに結果を残し続けているAetherworksなど、現環境にはまだまだイノベーションの余地がありそうです。GP Denver、SCGInvitational Atlanta、The Last Sun 2016など現環境のスタンダードは続きますので、これからの動向からも目が離せません。


以上USA Standard Express vol.86でした。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!



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