USA Standard Express vol.93 -機体と猫、睨み合う2つの勢力-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 気になる禁止改定は《守護フェリダー》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といったカードが禁止になると予想されていましたが予想に反してノーチェンジでした。新セットがリリースされるまで様子を見るといったところでしょうか。

 前回の禁止改定からスタンダードでは、環境の停滞を避けるため積極的に禁止カードを出すという印象があり、プレイヤー的には愛用していたデッキが使えなくなるかもしれない、練習に費やした時間が無駄になる可能性があるというリスクがありましたが、今回の禁止改定の結果から一つのデッキが支配するなど、余程のことがない限りは禁止カードを出さないようです。

 今回の連載では【グランプリ・ニュージャージー2017】【グランプリ・バルセロナ2017】の結果を見ていきたいと思います。




グランプリ・ニュージャージー2017
~4C Saheeli コンボのワンツーフィニッシュ~


3/12

Corey Baumeister
※画像は【Magic:the Gathering英語公式ページ】より引用させていただきました。


1位 4C Saheeli
2位 4C Saheeli
3位 Mardu Vehicles
4位 Jund Energy
5位 Mardu Vehicles
6位 Mardu Vehicles
7位 4C Saheeli
8位 Mardu Vehicles

トップ8のデッキリストは【こちら】

 アメリカで開催されたスタンダードのGPの上位はMardu Vehiclesと4C Saheeliが上位を支配し決勝戦は4C Saheeliミラーマッチでした。プレイオフではJavis YuやBen Friedmanといった東海岸の強豪プレイヤーやHall of famerのPaul Rietzl、Ben Starkといったプレイヤーが見られアメリカのGPらしく濃いメンツとなりました。

グランプリ・ニュージャージー2017 デッキ紹介

「4C Saheeli」「Mardu Vehicles」「Jund Energy」



Corey Baumeister「4C Saheeli」
グランプリ・ニュージャージー2017(1位)

5《森》
1《平地》
1《島》
1《山》
4《霊気拠点》
4《植物の聖域》
2《獲物道》
2《尖塔断の運河》
1《感動的な眺望所》

-土地 (21)-

4《導路の召使い》
4《ならず者の精製屋》
3《つむじ風の巨匠》
2《不屈の追跡者》
4《守護フェリダー》

-クリーチャー (17)-
4《霊気との調和》
4《蓄霊稲妻》
4《ニッサの誓い》
3《チャンドラの誓い》
4《サヒーリ・ライ》
3《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (22)-
3《グレムリン解放》
2《歩行バリスタ》
2《払拭》
2《自然のままに》
2《否認》
2《領事の旗艦、スカイソブリン》
1《不屈の追跡者》
1《領事の権限》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会で見事に優勝を飾った4C Saheeliコンボは、プロツアーでは結果を残せなかったものの環境に対応することで、トップメタにまで上り詰めており、緑黒に対して強くJeskai Saheeliコンボのときに相性が悪かったMardu Vehiclesに対してもサイド後は大分改善されます。かつてモダンの環境を支配した双子のように、4ターン目にコンボを決めて勝つ以外にもミッドレンジとしての動くことも可能で、相手もコンボを阻止するためにマナを立てておくことが困難で、フレキシブルなところがこのバージョンの最大の強みとなり現環境でTier1として活躍する要因です。

☆注目ポイント

反逆の先導者、チャンドラチャンドラの誓い

 《反逆の先導者、チャンドラ》は「-3」能力により《守護フェリダー》を除去可能なのと、「+1」能力により《サヒーリ・ライ》にダメージが入るのでミラーマッチで強さを発揮するプレインズウォーカーです。《チャンドラの誓い》は緑黒の主力クリーチャーの《巻きつき蛇》を除去する事が可能で、緑黒の初動を著しく減速させます。

不屈の追跡者

 決勝まで勝ち進んだBen FriedmanとCorey Baumeisterがメインから採用している《不屈の追跡者》同型の消耗戦において活躍します。カードアドバンテージを提供しつつ、サイズでも勝り特にCoreyはサイドにも追加の一枚を採用していたこともあり決勝戦では決め手となりました。

グレムリン解放墓後家蜘蛛、イシュカナ

 今大会見事に優勝を飾ったCorey BaumeisterはMardu Vehiclesがミラーマッチ対策にサイドに採用している《グレムリン解放》をサイドに採用しています。Mardu Vehiclesに対してアドバンテージが取ることが可能でサイド後の相性の改善に貢献します。 Ben Friedmanのリストは今大会の入賞者のリストの中でも極めて特徴的で、「昂揚」要素も組み込まれています。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》はMarduに対してかなりの時間を稼ぎ《キランの真意号》や最近また見られるようになってきた《大天使アヴァシン》をきっちりブロックします。

ウルヴェンワルド横断歩行バリスタ

 《ウルヴェンワルド横断》はコンボパーツである《守護フェリダー》や先程の《墓後家蜘蛛、イシュカナ》などを状況に応じてサーチしてくることでロングゲームを有利にします。《歩行バリスタ》は同型対策になりアーティファクト・クリーチャーなので「昂揚」達成も容易となります。



Paul Rietzl「Mardu Vehicles」
グランプリ・ニュージャージー2017(3位)

3《平地》
3《沼》
1《燻る湿地》
4《秘密の中庭》
4《感動的な眺望所》
4《産業の塔》
2《霊気拠点》
2《乱脈な気孔》
1《鋭い突端》

-土地 (24)-

4《歩行バリスタ》
4《スレイベンの検査官》
4《模範的な造り手》
4《屑鉄場のたかり屋》
3《異端聖戦士、サリア》
2《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (21)-
3《致命的な一押し》
4《無許可の分解》
4《キランの真意号》
4《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (15)-
2《グレムリン解放》
2《苦い真理》
2《苦渋の破棄》
2《先駆ける者、ナヒリ》
1《鋭い突端》
1《大天使アヴァシン》
1《致命的な一押し》
1《リリアナの誓い》
1《停滞の罠》
1《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
1《死の宿敵、ソリン》

-サイドボード (15)-
hareruya


 プロツアーを制したMardu Vehiclesも環境の変化に合わせて変化しています。Hall of Famerでアグロデッキを得意とするPaul Rietzlは今大会でもMardu Vehiclesを使用し見事に入賞を果たしています。かつてのUW Flashと同様にミッドレンジ寄りに調整することで、ミラーマッチや4C Saheeliコンボ、緑黒とのマッチアップに備えます。除去に《致命的な一押し》、クリーチャーも5マナの《大天使アヴァシン》がメインから採用されておりサイドも追加の除去やプレインズウォーカー、ドロースペルなどコントロールデッキに変形するリストが現在の主流です。

☆注目ポイント

異端聖戦士、サリア苦い真理苦渋の破棄

 《異端聖戦士、サリア》は特殊地形が多い4色のSaheeliコンボに対しては決定的となるクリーチャーで、ミラーマッチにおいても最近メインから採用されている《大天使アヴァシン》対策になります。 サイド後はさらに重めのコントロール寄りの構成となりドロースペルの《苦い真理》やプレインズウォーカーの《死の宿敵、ソリン》《先駆ける者、ナヒリ》 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が投入されます。《死の宿敵、ソリン》の-能力は相手のプレインズウオーカーなど、脅威を処理しつつ《苦い真理》《苦渋の破棄》によって損失したライフの回復をします。

先駆ける者、ナヒリ灯の再覚醒、オブ・ニクシリス死の宿敵、ソリン

 同型のサイド後のゲームは《グレムリン解放》によって変化します。機体と《模範的な造り手》でビートダウンするという戦略は効果が薄く、《グレムリン解放》によって大きくアドバンテージを失うことを防ぐために、アーティファクトを並べることを避ける必要も出てくるので、Paulは《キランの真意号》以外の機体の採用を見送っています。



Ben Stark「Jund Energy」
グランプリ・ニュージャージー2017(4位)

5《森》
2《沼》
1《山》
3《進化する未開地》
4《霊気拠点》
4《花盛りの湿地》
2《風切る泥沼》

-土地 (21)-

4《歩行バリスタ》
4《緑地帯の暴れ者》
4《牙長獣の仔》
4《屑鉄場のたかり屋》
4《巻きつき蛇》
3《不屈の追跡者》
2《ピーマの改革派、リシュカー》
2《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (27)-
4《致命的な一押し》
4《霊気との調和》
4《無許可の分解》

-呪文 (12)-
4《光袖会の収集者》
3《精神背信》
2《ラスヌーのヘリオン》
2《豪華の王、ゴンティ》
2《自然のままに》
2《自然廃退》

-サイドボード (15)-
hareruya


 Hall of FamerのBen Starkは今大会ではBG Energyに赤をタッチしたバージョンで入賞を果たしています。MarduとSaheeliコンボだらけの今大会の上位で数少ない異なるアーキタイプで、赤は《無許可の分解》とサイドの《ラスヌーのヘリオン》のためにタッチされているだけで、基本的には緑黒のバリエーションです。《緑地帯の暴れ者》《牙長獣の仔》といった軽いクリーチャーが多数積まれており《新緑の機械巨人》の枚数が削られているなど速さを重視しています。

☆注目ポイント

無許可の分解屑鉄場のたかり屋

 《無許可の分解》は環境のインスタントスピードの確定除去で《歩行バリスタ》《屑鉄場のたかり屋》といったアーティファクトクリーチャーを採用しているので追加のダメージも誘発させやすくMarduやSaheeliコンボに有効な除去です。《歩行バリスタ》はこのデッキが苦手とするSaheeliコンボに睨みを利かせます。 《不屈の追跡者》は追加のアーティファクトであるClueトークンを生み出し、メインでは数少ないアドバンテージ獲得手段となります。

自然のままに自然廃退精神背信

 Marduや他の緑黒のようにサイドにプレインズウォーカー等を採用することでミッドレンジ寄りに変形する戦略は採らずに序盤から猛攻を仕掛けることを優先されています。妨害スペルも《自然のままに》《自然廃退》《精神背信》と軽さが優先されておりメイン、サイド共に一貫性があります。《自然廃退》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》、各種Gearhulk、《電招の塔》といったカードに対するアンサーになる軽いインスタントなので使いやすい除去スペルです。2色なので動きが安定しておりMarduやSaheeliコンボ以外のデッキを使いたいという方にもお勧めです。


グランプリ・バルセロナ2017
~解明されたフォーマット、MarduとSaheeliコンボの2強~


3/12

Petr Sochurek
※画像は【Magic:the Gathering英語公式ページ】より引用させていただきました。


1位 4C Saheeli
2位 Mardu Vehicles
3位 Mardu Vehicles
4位 4C Saheeli
5位 Mardu Vehicles
6位 Mardu Vehicles
7位 4C Saheeli
8位 4C Saheeli

トップ8のデッキリストは【こちら】

 GP New Jerseyと同様にSaheeliコンボとMarduの2強状態でした。優勝を果たしたのはHareruya Prosの一員でプラチナプロのPetr Sochurekでした。彼の使用していた4C Saheeliのサイドには《領事の旗艦、スカイソブリン》が搭載されており、環境のライバルであるMarduとのマッチアップで決め手となりました。

グランプリ・バルセロナ2017 デッキ紹介

「Temur Marvel」



Marc Tobiasch「Temur Marvel」
グランプリ・バルセロナ2017(9位)

4《森》
2《山》
1《島》
1《燃えがらの林間地》
3《進化する未開地》
4《霊気拠点》
4《植物の聖域》
2《尖塔断の運河》

-土地 (21)-

4《導路の召使い》
1《守られた霊気泥棒》
4《ならず者の精製屋》
4《つむじ風の巨匠》
2《不屈の追跡者》
4《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (19)-
4《霊気との調和》
2《ショック》
4《蓄霊稲妻》
4《霊気池の驚異》
3《織木師の組細工》
3《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (20)-
3《否認》
2《不屈の追跡者》
2《自然廃退》
2《金属の叱責》
2《慮外な押収》
1《守られた霊気泥棒》
1《世界を壊すもの》
1《払拭》
1《焼夷流》

-サイドボード (15)-
hareruya



Matti Kuisma「Temur Marvel」
グランプリ・バルセロナ2017(11位)

5《森》
2《島》
1《山》
4《霊気拠点》
4《植物の聖域》
4《尖塔断の運河》
1《伐採地の滝》

-土地 (21)-

4《導路の召使い》
1《守られた霊気泥棒》
4《つむじ風の巨匠》
3《ならず者の精製屋》
3《奔流の機械巨人》
3《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (18)-
4《霊気との調和》
4《蓄霊稲妻》
2《否認》
4《天才の片鱗》
1《バラルの巧技》
4《霊気池の驚異》
2《織木師の組細工》

-呪文 (21)-
2《老いたる深海鬼》
2《グレムリン解放》
2《否認》
2《不許可》
2《領事の権限》
1《平地》
1《払拭》
1《焼夷流》
1《バラルの巧技》
1《ニッサの復興》

-サイドボード (15)-
hareruya



 惜しくもプレイオフ進出は逃したものトップ16(9位と11位)という好成績を残していたTemur Marvel。《霊気池の驚異》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を出すエネルギーカウンターを利用したコンボデッキで《つむじ風の巨匠》などによる各種エネルギークリーチャーやリストによっては《不屈の追跡者》《奔流の機械巨人》など別の勝ち手段も用意されているので《失われた遺産》などにも耐性があります。  

☆注目ポイント

つむじ風の巨匠絶え間ない飢餓、ウラモグならず者の精製屋

 基本的に他のエネルギーカウンターを使うデッキと同様に 《導路の召使い》《つむじ風の巨匠》《ならず者の精製屋》といったエネルギークリーチャーを展開し、エネルギーカウンターを蓄積します。フィニッシャーが《約束された終末、エムラクール》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》になりましたが4ターン目に《霊気池の驚異》を回して《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を展開し相手の土地を2枚追放すればほぼ勝ちです。

織木師の組細工霊気池の驚異

 《織木師の組細工》は2ターン目に展開し、3ターン目にサクリファイスしてライフとエネルギーカウンターを得ることで、4ターン目に《霊気池の驚異》を起動することを可能にし、トータル6点のライフゲインはコンボが決まるまでに時間を稼ぎ、《霊気池の驚異》以外にも《つむじ風の巨匠》とのシナジーがあります。 惜しくもトップ8は逃したものの、トップ16に2名のプレイヤーを輩出したTemur Marvelは《霊気池の驚異》というカードのアンフェアさから、今後調整次第でトップメタに仲間入りする可能性のあるデッキです。


総括

 GP New Jerseyと GP Barcelonaの結果から現環境はMarduとSaheeliコンボの2強であることが明らかになりました。Saheeliコンボの存在がデッキ構築の時点で影響が出ていることからも、最低でも《守護フェリダー》は禁止になると予想されていましたが、結局はノーチェンジで、変化を期待していたプレイヤーにとっては残念な知らせとなりました。しかし、今週末に開催されるGP静岡のデッキ選択に影響がなかったのは多くのプレイヤーを安心させたことだと思います。

 今回の禁止改定はネット上でプロも含めて議論されており、Temur Tower Controlなど現環境には試す価値があるデッキや戦略があるというプレイヤーが存在する一方で、多くのプレイヤーは変化を望んでいたようで単純に《守護フェリダー》など現環境を支配するデッキのキーカードを禁止にすることを望んだプレイヤーもいれば、《真髄の針》のように軽い妨害要素や汎用性が高い《英雄の破滅》などを再録することによってバランスを取るなど意見が分かれていました。

 以上USA Standard Express vol.93でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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