皆さんこんにちは。
6年振りに開催された日本選手権2017も終了し、『イクサラン』のリリースも迫ってきました。新しい環境を考えるのが楽しい時期でもあります。
今月末リリース予定の『イクサラン』は、恐竜や海賊が中心で、SFとファンタジー冒険の要素を融合させた今までにない面白そうなテーマのセットになっているようです。
さて、今回の連載ではグランプリ・ワシントン2017とグランプリ・トリノ2017、日本選手権2017の入賞デッキを見ていきます。
グランプリ・ワシントン2017
「機体」がスタンダードGPラッシュの最終章を駆け抜ける
2017年09月02日
- 1位 Mardu Vehicles
- 2位 GW Ramp
- 3位 Mardu Vehicles
- 4位 Mono White Eldrazi
- 5位 BG Aggro
- 6位 Mono Red
- 7位 Temur Energy
- 8位 Mono Black Zombies
Matt Severa
トップ8のデッキリストはこちら
スタンダードGPラッシュの最後を飾るグランプリ・ワシントン2017は、1500名以上の参加者と大盛況の内に幕を閉じました。
多数のGPで結果を残し続けているアメリカの強豪プレイヤーのMatt Severaは、使い続けているMardu Vehiclesで見事に優勝を果たしました。環境終盤にも関わらず準優勝を果たした革新的なGW Rampなど、新しいデッキも見られ現環境のスタンダードの面白さが伝わってきます。
グランプリ・ワシントン2017 デッキ紹介
「Mardu Vehicles」「GW Ramp」
Mardu Vehicles
1 《沼》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《霊気拠点》 4 《産業の塔》 2 《ラムナプの遺跡》 2 《シェフェトの砂丘》 1 《イフニルの死界》 1 《鋭い突端》 1 《乱脈な気孔》 -土地 (24)- 3 《歩行バリスタ》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《ピア・ナラー》 4 《難題の予見者》 3 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (24)- |
2 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 1 《木端+微塵》 4 《キランの真意号》 1 《霊気圏の収集艇》 -呪文 (12)- |
4 《削剥》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 3 《霊気圏の収集艇》 1 《致命的な一押し》 1 《苦渋の破棄》 1 《大災厄》 1 《先駆ける者、ナヒリ》 -サイドボード (15)- |
環境も終盤に突入し、完成されていた印象があったMardu Vehiclesでしたが、Matt Severaのリストは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がサイドに落とされ、その代わりとしてエルドラージが採用されるなど特徴的なリストに仕上がっています。
今までの3色に加え、無色マナを用意しなければいけないのでマナベースに難がありますが、コンボデッキやコントロールデッキに有効な《難題の予見者》にアクセス可能になりました。
☆注目ポイント
《難題の予見者》は最近人気がでてきているGod-Pharaoh’s Giftなど、コンボデッキに有効な妨害手段兼クロックとして活躍します。タフネスが4なので《削剥》にも耐性があり、Temur Energyに対してもハンデスにより《栄光をもたらすもの》や《逆毛ハイドラ》といったフィニッシャーを追放できます。
無色マナを安定して調達するために、《シェフェトの砂丘》や《ラムナプの遺跡》といった砂漠が基本土地の代わりに採用されており、中盤以降のマナフラッド対策にもなります。
Ramunap Redのようなアグロデッキが現環境のトップメタなので、すぐ落とされてしまう《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がメインには採用されていません。代わりに採用された《難題の予見者》は、パワーが4で「機体」の「搭乗」要員に困ることはなさそうです。
プレインズウォーカーをサイドに落としているので、ミラーマッチやBG、コントロールなどには弱くなりますが、Ramunap RedやTemur Energyがトップメタだった今大会では、《難題の予見者》はメタ的に良いチョイスでした。
GW Ramp
4 《森》 2 《平地》 4 《まばらな木立ち》 4 《ハシェプのオアシス》 3 《要塞化した村》 3 《シェフェトの砂丘》 3 《見捨てられた神々の神殿》 1 《ウギンの聖域》 1 《屍肉あさりの地》 1 《海門の残骸》 -土地 (26)- 2 《歩行バリスタ》 4 《スレイベンの検査官》 3 《世界を壊すもの》 1 《保護者、リンヴァーラ》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (13)- |
4 《燻蒸》 4 《約束の刻》 2 《罪人への急襲》 2 《開拓+精神》 4 《楽園の贈り物》 3 《奇妙な森》 2 《排斥》 -呪文 (21)- |
4 《忘却蒔き》 4 《威厳あるカラカル》 4 《領事の権限》 1 《保護者、リンヴァーラ》 1 《世界を壊すもの》 1 《隔離の場》 -サイドボード (15)- |
モダンでもScapeshiftをトップメタへと押し上げた《約束の刻》は、スタンダードのランプデッキの強化にも貢献しています。
《開拓+精神》や《奇妙な森》、《楽園の贈り物》から《約束の刻》に繋ぎ、 《見捨てられた神々の神殿》をサーチすることで、最終的に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などフィニッシャーに繋げるランプデッキです。
《否認》などに耐性を付けるために、フィニッシャーは《歩行バリスタ》や《世界を壊すもの》といったクリーチャースペルが中心になっています。クロックを展開し、マナ加速や全体除去を《否認》する戦略を取るTemur Energyに強いデッキです。
☆注目ポイント
《楽園の贈り物》は時間を稼ぎつつマナ加速するので、このデッキに適したカードです。《約束の刻》をキャストすることで、《見捨てられた神々の神殿》をサーチし一気に土地を7枚まで伸ばすことが可能です。次のターンには《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などのフィニッシャーを叩きつけてやりましょう。
白を使うことのメリットとして、全体除去の《罪人への急襲》や《燻蒸》、パーマネントに対処可能な《排斥》にアクセス可能なことが挙げられます。ランプデッキが苦手とするアグロデッキに対して、十分な時間を稼ぐことが可能になります。
サイド後の《領事の権限》は速攻クリーチャーをタップインさせることで、Ramunap Redを著しく減速させます。Temur EnergyやRamunap Redなどアグロデッキに対しては、《約束の刻》などマナランプスペルやフィニッシャーの枚数を減らし、《威厳あるカラカル》などが投入されます。地上を固める《威厳あるカラカル》は、フィニッシャーを展開するまでの時間を稼いでくれるでしょう。《否認》に耐性を付けるために、サイドもクリーチャーが中心です。《忘却蒔き》は5/8と硬く、キャストした際の誘発能力により《否認》されないマナ加速にもなるので、フィニッシャーに繋げやすくなります。
グランプリ・トリノ2017
スカラベ神の降臨
2017年09月02日
- 1位 UB Control
- 2位 Mardu Vehicles
- 3位 Mono Black Zombies
- 4位 Temur Energy
- 5位 UW Control
- 6位 RW Aggro
- 7位 4C Energy
- 8位 God-Pharaoh’s Gift
Robin Dolar
トップ8のデッキリストはこちら
グランプリ・ワシントン2017と同週末に開催されたグランプリ・トリノ2017はトップメタのTemur EnergyやRamunap Red、復権してきたMardu Vehiclesが中心でした。
ローテーション直前の環境ですが、プレイオフには6つの異なるアーキタイプが入賞を果たしており、そんな中優勝を果たしたのはUB Controlでした。
グランプリ・トリノ2017 デッキ紹介
「UB Control」
UB Control
9 《沼》 6 《島》 4 《異臭の池》 4 《窪み渓谷》 3 《詰まった河口》 -土地 (26)- 3 《スカラベの神》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (6)- |
4 《致命的な一押し》 4 《検閲》 4 《闇の掌握》 3 《本質の散乱》 1 《否認》 3 《不許可》 3 《至高の意志》 2 《鞭打つ触手》 4 《天才の片鱗》 -呪文 (28)- |
3 《才気ある霊基体》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《餌食》 2 《即時却下》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《払拭》 1 《否認》 1 《不帰+回帰》 -サイドボード (15)- |
『破滅の刻』リリース当時から話題になっていた《スカラベの神》が遂にGPで優勝するに至りました。
カウンター、除去、少数のフィニッシャーでまとめられた伝統的なコントロールで、メインは《スカラベの神》と《鞭打つ触手》以外はインスタントスピードなので、隙の少ないプレイングが可能な構成です。
タップアウト系のコントロールよりも、昔ながらのパーミッションスタイルのコントロールが好きな方にお勧めのデッキです。カウンターを多用するのため、重いクリーチャーが主力のTemur Energyに強いデッキです。
☆注目ポイント
《スカラベの神》は《奔流の機械巨人》と並ぶこのデッキのフィニッシャーです。5マナとフィニッシャーの中ではリーズナブルなコストであり、一度戦場にだしてしまえば、能力を起動することでライフロスと占術によってドローの質を高めつつ勝利を目指すことが可能になります。
《検閲》や《至高の意志》はソフトカウンターと同時に、「サイクリング」やドロースペルとしても使えるので無駄カードにならず、毎ターン土地を置くことが重要となるこのデッキでは重宝します。
メインはインスタントスピードのスペルが大半を占めますが、サイドには《才気ある霊基体》や《ゲトの裏切り者、カリタス》といった絆魂持ちのクリーチャーや、プレインズウォーカーの《最後の望み、リリアナ》が見られ、このデッキが苦手とするRamunap Redなどの対策に力を入れています。
エルドラージスペルの誘発も打ち消せる《即時却下》は、《約束の刻》の登場により復権してきたランプ系のデッキとのマッチアップで活躍します。カウンター以外でのプレインズウォーカー対策に貧しいという弱点があるので、《餌食》と《不帰+回帰》でカバーしていきます。
日本選手権2017
原根 健太選手が6年振りの日本選手権を制する
2017年09月09日
- 1位 4C Energy
- 2位 Temur Energy
- 3位 4C Energy
- 4位 Mardu Vehicles
- 5位 Eldrazi
- 6位 Mardu Vehicles
- 7位 Eldrazi
- 8位 4C Energy
原根 健太
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597名の参加者が募った日本選手権2017は歴代で最も大規模な日本選手権となりました。
今大会で見事に優勝を果たし日本王者となった原根 健太選手、今年の代表チームの座を勝ち取った殿堂プレイヤーの八十岡 翔太選手と渡辺 雄也選手、GP東京2016優勝者の熊谷 陸選手、プロツアー『戦乱のゼンディカー』準優勝の玉田 遼一選手、BIG MAGICプロでグランプリ・京都2016チーム優勝経験のある松本 友樹選手といったプレイヤーが見られタレント揃いのプレイオフとなりました。
日本選手権2017 デッキ紹介
「4C Energy」
4C Energy
3 《森》 2 《山》 1 《島》 1 《沼》 2 《隠れた茂み》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 2 《尖塔断の運河》 2 《伐採地の滝》 1 《獲物道》 -土地 (22)- 4 《導路の召使い》 3 《牙長獣の仔》 4 《ならず者の精製屋》 3 《つむじ風の巨匠》 4 《放浪する森林》 4 《栄光をもたらすもの》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー (24)- |
4 《霊気との調和》 4 《削剥》 4 《蓄霊稲妻》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (14)- |
3 《否認》 2 《不屈の追跡者》 2 《チャンドラの敗北》 2 《捲土+重来》 1 《侵襲手術》 1 《光輝の炎》 1 《慮外な押収》 1 《没収の曲杖》 1 《生命の力、ニッサ》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
Temur Energyに《スカラベの神》をタッチしたバージョンで、《霊気拠点》によりキャストや能力の起動もしやすくなっています。ミラーマッチにおいてロングゲームに有利な構成となっていました。
純正のTemur Energyと同様に、ローテーション後も《放浪する森林》を除いたパーツがほとんど残るので、その後の環境でも引き続き人気がでそうなデッキです。
☆注目ポイント
グランプリ・トリノ2017でも、UB Controlのフィニッシャーとして活躍していた 《スカラベの神》は、Temur Energyでもタフネスが5と固く対策されにくいため、ミラーマッチ用にタッチされています。墓地対策にもなる起動能力はGod-Pharaoh’s Giftなどにも有効で、余ったマナを有効活用する手段にもなります。起動型能力でアドバンテージを稼ぐことが可能なため、ミラーマッチを含めた多くのマッチアップを有利に進めることが可能になります。
《放浪する森林》は「収斂」によって、このデッキでは6/6を狙うことが可能です。4マナ警戒トランプルはミラーマッチやRamunap Redとのマッチアップで処理されにくく、《闇の掌握》1枚で落ちないのも強みです。このクリーチャーと《スカラベの神》のためにこの4C Energyを選択したプレイヤーは多く、《栄光をもたらすもの》や《反逆の先導者、チャンドラ》に対抗するためにタフネスが5以上のクリーチャーが優先される傾向にあるようです。
サイドの《捲土+重来》は除去として機能しつつ、墓地対策としても使えるのでGod-Pharaoh’s Giftなどにも有効です。《チャンドラの敗北》はインスタントスピードなので非常に使いやすく、このデッキ最高のカードである《栄光をもたらすもの》や《反逆の先導者、チャンドラ》をわずか1マナで処理することが可能です。
『イクサラン』注目のカード
『イクサラン』のリリースも迫りプレビューも公開され始めています。今回の連載ではおまけとして、現在公開されている情報の中から新環境のスタンダードで活躍しそうなカードを見ていきたいと思います。
《切り裂き顎の猛竜》
ダメージを与えられるとドローできるクリーチャーでサイズで、能力の関係上相手からしたらブロックしたいクリーチャーではなく《歩行バリスタ》ともシナジーがあり、緑デッキの主力となりそうな恐竜です。《殺戮の暴君》
カウンターされず除去耐性もあり、タフネスも6と高いので全体除去以外では対処されにくく、緑ミッドレンジやランプ系の新たな対コントロール用のフィニッシャーとなりそうなクリーチャーです。
《選択》
『インベイジョン』からの再録カードで、《選択》やサイクリングスペルの《検閲》、《ヒエログリフの輝き》と、新環境の青いデッキは軽いインスタントスピードのドロースペルに恵まれています。軽い優秀なカウンターである《呪文貫き》も再録されるので、パーミッションスタイルのコントロールにも可能性がありそうです。
《レギサウルスの頭目》
他の恐竜クリーチャーに速攻を与え、ETB能力で3/3の恐竜トークンを引き連れてくるので、単体除去に強くアドバンテージが取れます。Temur Energyにも入りそうなクリーチャーですが、5マナ域には《栄光をもたらすもの》が存在するので難しいところです。
《人質取り》
ETB能力でアーティファクトかクリーチャーを追放し、それをキャストすることができるカード。海賊というタイプに相応しい能力で、特に青黒では対策が難しいアーティファクトに触れるのが魅力です。《セイレーンの嵐鎮め》など他にも使えそうな海賊クリーチャーがプレビューされているので、青黒(またはGrixis)海賊デッキも組めそうです。
総括
『イクサラン』のリリースも迫り、いよいよ現環境のスタンダードともお別れの時が近付いてきました。
グランプリ・ワシントン2017とグランプリ・トリノ2017、日本選手権2017の結果から、現在のスタンダードは終盤ながらTemur Energyなどトップメタだけでなく、UB ControlやEldrazi、GW Rampなど多数の異なるデッキが活躍する面白い環境でした。正直あと一か月ほど続いたらと名残惜しい気持ちになります。しかし『イクサラン』もプレビューから面白さが伝わってくるセットなので楽しみです。
以上USA Standard Express vol.105でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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