皆さんこんにちは。
『ドミナリア』のリリースは来月下旬とまだ先ですが、予想外なセット情報のリークによりいつもよりも速いペースでプレビューが公開されています。
対抗色版M10ランドや《ラノワールのエルフ》の再録、新たな強力プレインズウォーカー、《Karn, Scion of Urza》やプレインズウォーカー関連のルールの変更などもあり、セット自体の完成度が高そうなので今から楽しみです。
さて、今回の連載ではグランプリ・マドリード2018の入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・マドリード2018
《スカラベの神》が支配する世界
2018年3月10-11日
- 1位 Grixis Energy
- 2位 UB Midrange
- 3位 UB Control
- 4位 Mono Red
Christoph Green/Ben Jones/Charles Eliatamby
トップ4のデッキリストはこちら
今週末に開催されるグランプリ・京都2018と同じフォーマットであるチーム構築戦、ということで注目が集まったグランプリ・マドリード2018のスタンダードは、Grixis EnergyやUB Controlなどアーキタイプに差はあったものの、《スカラベの神》を採用したデッキが結果を残しました。
《スカラベの神》を使ったデッキ以外では、環境初期から結果を残し続けている赤単やRG Monstersが見られます。
《スカラベの神》、《再燃するフェニックス》、《熱烈の神ハゾレト》といったカードが支配する現環境では、確定除去である《ヴラスカの侮辱》にアクセス可能な黒を使わない理由がなく、《致命的な一押し》など軽い除去にも恵まれているのも青黒系の人気の理由です。
グランプリ・マドリード2018 デッキ紹介
「Grixis Energy」「UB Midrange」「Esper Gifts」
Grixis Energy
1 《島》
1 《山》
4 《泥濘の峡谷》
4 《異臭の池》
4 《霊気拠点》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《水没した地下墓地》
3 《尖塔断の運河》
-土地 (27)- 4 《光袖会の収集者》
4 《つむじ風の巨匠》
2 《豪華の王、ゴンティ》
4 《スカラベの神》
-クリーチャー (14)-
4 《蓄霊稲妻》
2 《削剥》
1 《本質の散乱》
1 《革命的拒絶》
1 《大災厄》
1 《至高の意志》
4 《ヴラスカの侮辱》
2 《慮外な押収》
1 《暗記+記憶》
-呪文 (19)-
2 《否認》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《多面相の侍臣》
1 《奔流の機械巨人》
1 《チャンドラの敗北》
1 《致命的な一押し》
1 《マグマのしぶき》
1 《呪文貫き》
1 《天才の片鱗》
1 《慮外な押収》
1 《アルゲールの断血》
-サイドボード (15)-
エネルギーを利用することでカードアドバンテージを稼ぎ出す《光袖会の収集者》、環境を定義するパワーカードである《スカラベの神》と、それを確実に処理する《ヴラスカの侮辱》が使える黒は現環境のマストです。
Grixis Energyは、前回カバーしたグランプリ・メンフィス2018でも成功を収めたデッキで、MOでもトップメタに位置しています。Grixis Energyが青黒の2色よりも優れている理由の一つに、《つむじ風の巨匠》を使える点があります。これにより赤単との相性がかなり改善されます。《王神の贈り物》などを対策できるのもGrixisを選ぶ理由になります。
☆注目ポイント
《豪華の王、ゴンティ》は、UB Controlなどにとってはマストカウンターとなり、カウンターされても《スカラベの神》によってリアニメイトすることが可能で、赤単を除いた環境の多くのデッキに対して強く、このデッキの4ターン目における最も強力なアクションの一つとなります。同型やUB Controlが多いメタでは4枚採用しても良いクリーチャーです。
《王神の贈り物》など、厄介な置物も処理できる《削剥》は、赤を足す理由の一つです。Temurのときほどでは無いものの、《霊気拠点》の恩恵で色を足すハードルも低めです。
《暗記+記憶》は、追加の《ヴラスカの侮辱》ようにも扱えるスペルで、カウンターではなく、スペルをライブラリーの2番目のトップにバウンスするため、《殺戮の暴君》などカウンター不能のスペルにも有効という付加価値が付いています。『余波』できれば墓地対策としての使い道もあります。
サイドに採用されている《反逆の先導者、チャンドラ》も、Grixisを選択するメリットの一つで、「+1」能力を5ターン目に起動することで《スカラベの神》を展開しつつ《否認》など、カウンターを構えることもできるようになります。
UB Midrange
4 《島》
4 《異臭の池》
1 《泥濘の峡谷》
4 《霊気拠点》
4 《水没した地下墓地》
3 《廃墟の地》
-土地 (26)- 2 《歩行バリスタ》
4 《光袖会の収集者》
3 《薄暮軍団の盲信者》
4 《機知の勇者》
2 《豪華の王、ゴンティ》
3 《スカラベの神》
2 《奔流の機械巨人》
-クリーチャー (20)-
先ほどのGrixis Energyと比較すると除去の種類の面では劣りますが、コントロールやミッドレンジ同型とのマッチアップではUB Midrangeに分があります。
Grixisバージョンは、《機知の勇者》によって不要碑を変換する手段に貧しいのでコントロールなど除去が腐りやすいマッチアップで少し不利が付きます。2色なので速度で勝り、マナ基盤に余裕があるため《廃墟の地》を採用できる強みがあります。
UB Controlよりもクリーチャーが多く、除去や妨害も豊富なので、環境の多くのデッキと渡り合えるデッキです。しかし、《機知の勇者》で捨てるカードの判断次第で、後のゲームに響きやすく難易度は高めなので、大会に持ち込む際は十分にプレイテストをしておきたいところです。
☆注目ポイント
2色なので、《水没遺跡、アズカンタ》などを対策できる《廃墟の地》を採用しやすくなっています。《機知の勇者》は、デッキを掘り進みつつ墓地も肥やせるので《スカラベの神》、《奔流の機械巨人》、《死の権威、リリアナ》とシナジーがあり、「永遠」や《スカラベの神》の能力によって墓地から復活させることでアドバンテージを稼ぎ出します。
環境に除去が多いことを意識していたのか、赤単に有効とされていた《才気ある霊基体》の採用が見送られています。小型クリーチャー対策になる《歩行バリスタ》は、赤単はもちろんのことプレインズウォーカーも牽制することが可能です。同型やGrixis Energyにとってキーとなる《光袖会の収集者》を除去することもできるので、環境の多くのマッチで活躍します。
《奔流の機械巨人》やスイーパーなどにメインから対策するために《機知の勇者》がフル搭載されており、コントロール寄りの構成で《暗記+記憶》、《本質の散乱》、《至高の意志》といったカウンターがメインから多めに採られています。
以前採用されていた《航路の作成》の代わりに、《薄暮軍団の盲信者》が採用されています。《スカラベの神》の能力で復活させれば、ゲーム後半でもアドバンテージを提供してくれます。
サイドには《天才の片鱗》や《アルゲールの断血》、《ジェイスの敗北》、《否認》、《大災厄》、《強迫》、《川の叱責》など、UB Controlや同型、Grixis Energy、UW Controlなどに対してのカードが多めです。
《ジェイスの敗北》は、《否認》や《天才の片鱗》といった呪文だけでなく、相手の《奔流の機械巨人》や《スカラベの神》といった脅威に対しても確定カウンターとなります。《川の叱責》は、Temur Energyがミラー対策として採用していたスペルですが、現環境でもGrixis Energyや《王神の贈り物》デッキ、同型に対して有効なスペルとなります。
Esper Gifts
《王神の贈り物》デッキも結果を残しています。《貪欲なチュパカブラ》、《薄暮軍団の盲信者》といった黒の優秀なクリーチャーが加入し、青白に黒を足したEsperカラーが注目を集めています。
黒を足したことで、環境最高の除去である《ヴラスカの侮辱》にもアクセスが可能になり、《スカラベの神》も使えるようになったため、戦略の幅が広がりコンボというよりもUB Midrangeに近い構成になっています。
《貪欲なチュパカブラ》は、《人質取り》と異なり赤単など除去を搭載したアグロデッキに対して、確実にクロックを処理しつつアドバンテージを取ることができます。
《薄暮軍団の盲信者》は、序盤はドローを進めつつブロッカーとして機能し、中盤以降は《王神の贈り物》によってアドバンテージを稼ぎつつクロックとしても活躍します。自分の《歩行バリスタ》によって墓地に落としやすく《来世への門》を発動させることも容易となります。
サイドの《沈黙の墓石》は、墓地対策カードであると同時に墓地のクリーチャーカードを相手の《スカラベの神》から守ります。《沈黙の墓石》の影響下でも、墓地のクリーチャーを対象に取らない《王神の贈り物》の恩恵は受けられます。このように《沈黙の墓石》は、《スカラベの神》を採用したデッキ全般に有効なカードとなります。
《削剥》、《スカラベの神》、《排斥》など、このデッキを対策するカードが現環境には多数存在するため、サイド後は《スカラベの神》や《ヴラスカの侮辱》、《否認》、《夢盗人》も投入することで、Esper Midrange寄りにシフトしていきます。《夢盗人》は「永遠」を起動することでアドバンテージを得ることができ、攻撃が通ればUB Controlなどに刺さります。《否認》もUW ApproachやUW Cycling Control、UB Controlといった、コントロールデッキと渡り合う手段となります。
ボーナストピック ~RG Monsters~
『ドミナリア』のリリースまでまだ少し間がありますが、すでにプレビューが公開されているので『ドミナリア』によって強化されそうなデッキをご紹介していきたいと思います。
《極楽鳥》に次ぐ、元祖マナクリーチャーの《ラノワールのエルフ》が再録されます。《エルフの神秘家》がローテーション落ちして以来、1マナのマナクリーチャーがスタンダードで見られなくなりましたが、現環境では《致命的な一押し》、《マグマのしぶき》、《削剥》、《稲妻の一撃》、《不可解な終焉》など、軽い除去が多数存在するのでバランスも取れており、クリーチャーが横に並ぶ戦略対しても《燻蒸》などが存在します。
既存のデッキで《ラノワールのエルフ》の恩恵を受けるのは、グランプリ・メンフィス2018でも優勝を収めていたRG Monstersが挙げられます。《ラノワールのエルフ》によって2ターン目に《翡翠光のレインジャー》、3ターン目に《再燃するフェニックス》という動きが可能で、展開次第では《栄光をもたらすもの》も最速で3ターン目に戦場を走らせることができます。
7 《森》
4 《隠れた茂み》
4 《根縛りの岩山》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地 (25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《立て直しのケンラ》
1 《媒介者の修練者》
4 《翡翠光のレインジャー》
1 《不屈の神ロナス》
4 《再燃するフェニックス》
4 《栄光をもたらすもの》
1 《殺戮の暴君》
-クリーチャー (27)-
総括
グランプリ・メンフィス2018、グランプリ・マドリード2018と経て研究が進み、現在のスタンダードはGrixis EnergyやUB Controlといった《スカラベの神》を採用したデッキが頭一つ抜けている印象です。
『ドミナリア』からのルール変更は、《反逆の先導者、チャンドラ》や《熱烈の神ハゾレト》の能力によってプレインズウォーカーにダメージが入らなくなるなど、カードの評価に影響を及ぼしそうです。
以上、USA Standard Express vol.118でした。チーム構築戦のグランプリ・京都2018も今週末開催なので、参加される方は楽しい週末をお過ごし下さい。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!