皆さんこんにちは。
新環境に入ってから早くも3週間が過ぎようとしていますが、皆さんスタンダードを楽しんでますか?Mardu Vehiclesや緑黒系のアグロ、Grixisといったデッキが復権、登場し、スタンダードは今が最も面白い時期だと思います。
さて、今回の連載ではSCGO PhiladelphiaとSCG Classics Philadelphiaの入賞デッキをご紹介していきたいと思います。
SCGO Philadelphia
神々の対立と『イクサラン』のレインジャー
2018年1月27-28日
- 1位 Sultai Constrictor
- 2位 Grixis Energy
- 3位 GR Aggro
- 4位 Grixis Energy
- 5位 Jeskai Aggro
- 6位 Mardu Vehicles
- 7位 Mardu Vehicles
- 8位 Grixis Control
Lo/Michaels/Henry
トップ8のデッキリストはこちら
『イクサランの相克』から1週間後に開催されたチーム戦のオープンは、SCGO Dallasと同様にTemur Energyと赤単が支配する環境とは異なり、様々な戦略やデッキが結果を残していました。
特に活躍が著しいのは、アグロデッキの《熱烈の神ハゾレト》やコントロールデッキの《スカラベの神》、そして緑系ミッドレンジの《翡翠光のレインジャー》を使ったデッキで、それらは新環境のスタンダードを定義するカードと見て間違いなさそうです。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Sultai Constrictor」「Grixis Energy」「Jeskai Aggro」
Sultai Constrictor
2 《森》
1 《島》
3 《異臭の池》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
2 《ハシェプのオアシス》
1 《イフニルの死界》
-土地(24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《光袖会の収集者》
4 《導路の召使い》
4 《巻きつき蛇》
3 《翡翠光のレインジャー》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
2 《貪欲なチュパカブラ》
2 《スカラベの神》
2 《新緑の機械巨人》
-クリーチャー(27)-
BG Constrictorに環境屈指のパワーカードである《スカラベの神》と、カウンターのために青をタッチしたのがSultai Constrictorです。《翡翠光のレインジャー》による「+1/+1」カウンターのシナジーを始めとしたアドバンテージと、クリーチャーの質がこのデッキの強みです。
Sultaiは前環境でもSultai Energyという形で存在していましたが、Temur Energyと赤単の2強よりもデッキパワーの面で一歩届かず、徐々にフェイドアウトしていきました。しかし、『イクサランの相克』リリース後に禁止改定により環境が激変し、Temur Energyと赤単の弱体化によりBG Constrictorも復権してきました。
☆注目ポイント
《翡翠光のレインジャー》の「探検」は《巻きつき蛇》と相性が良く、従来のフィニッシャーである《新緑の機械巨人》と《歩行バリスタ》も健在です。
《巻きつき蛇》の爆発力に加えて《光袖会の収集者》、《貪欲なチュパカブラ》、《スカラベの神》、そしてサイドに忍ばせてある《人質取り》によってアドバンテージを得ることができ、ロングゲームにも対応できます。《光袖会の収集者》のライフロスを回復してくれる《貪る死肉あさり》もサイドに採用されています。
Sultaiカラーのメリットとして、《燻蒸》などの全体除去に対抗して青をタッチしているため、コントロールとの相性が良くなっています。新環境になり復権してきたMardu Vehiclesも、サイド後はコントロール寄りになるので、プレインズウォーカー、除去、全体除去、機体を対策できる《否認》、《呪文貫き》は頼りになります。
Grixis Energy
新環境のスタンダードでも、エネルギー系のデッキは依然として人気があります。《ならず者の精製屋》と《霊気との調和》を失い緑を使う意味は薄れましたが、《つむじ風の巨匠》や《光袖会の収集者》といったエネルギークリーチャーは健在です。
軽いエネルギー火力除去の《蓄霊稲妻》を始め、《栄光をもたらすもの》や《再燃するフェニックス》、《反逆の先導者、チャンドラ》といったパワーカードにアクセスできる赤を使わない理由は見当たらず、新環境の最高のエネルギーデッキはGrixisと見て間違いなさそうです。
☆注目ポイント
《光袖会の収集者》は、エネルギー系デッキの《牙長獣の仔》に代わる主力の2マナ域です。《牙長獣の仔》はパンチ力で勝るアタッカーでしたが、《光袖会の収集者》はエネルギーカウンターによって、カードアドバンテージを提供し続けるクリーチャーで、あの《闇の腹心》を彷彿させます。さらに加えて回避能力持ちで、攻撃に参加する度にエネルギーカウンターを得られます。エネルギークリーチャーではありませんが、《スカラベの神》も《光袖会の収集者》と同様に黒が使われる理由の一つで、除去されずに生き残れば速やかにゲームを終わらせます。
RG Monstersなどに採用されている《再燃するフェニックス》は、このデッキにも中盤以降のアタッカーとして採用されています。《燻蒸》や《栄光をもたらすもの》などに耐性があり、このクリーチャーに対するクリーンなアンサーは、《ヴラスカの侮辱》や《排斥》などの追放除去に限定されています。相手に対して《スカラベの神》を処理するための貴重なスペルを使わせることは、それだけで強力です。このフェニックスは、今後も赤を使う様々なデッキで使われそうです。
Brennan DeCandioのリストで特に興味深かったのは、サイドに3枚採用されている《夢盗人》です。ハンデスのサボタージュ能力に加えて威迫持ちなので攻撃も通りやすく、ミラーマッチやUW Approachなど、各種コントロールデッキとのマッチアップで活躍が期待できます。
Jeskai Aggro
2 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
4 《尖塔断の運河》
-土地(22)- 4 《ボーマットの急使》
4 《勇敢な海賊》
4 《狂信的扇動者》
4 《帆綱走り》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
4 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー(27)-
Jeskaiといっても《胆力の道》と《否認》のために白と青をタッチした赤単で、マナベースは《霊気拠点》とファストランドを活用しています。
《勇敢な海賊》や《狂信的扇動者》といった『イクサランの相克』の新カードも数種類見られ、《暴れ回るフェロキドン》と《ラムナプの遺跡》を失い以前ほどロングゲームにおける強さは薄れましたが、まだまだ一線級の戦略のようです。
☆注目ポイント
《胆力の道》は、速攻クリーチャーを多数採用したこのデッキでは変身させやすく、一度変身すれば毎ターン相手に2点火力 or 攻撃したクリーチャーを除去の起動能力を使うことが可能です。どちらも起動コストが軽く、特に2点火力の部分は《ラムナプの遺跡》に代わる中盤以降のダメージソースとしても期待できます。
《勇敢な海賊》は海賊クリーチャーを多数採用したこのデッキでは、多くの場合1マナ2/2としてカウントすることが可能です。《胆力の道》とのシナジーを考慮し、《狂信的扇動者》や《アン一門の壊し屋》、《帆綱走り》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》といった速攻や先制攻撃を持ったクリーチャーが厳選されています。軽いクリーチャーを多数採用しているので手札の消費も速く、《熱烈の神ハゾレト》を活かすことができ、《制覇の塔、メッツァーリ》と共にゲームを速やかに終わらせます。
Approachや《王神の贈り物》コンボなどとのマッチアップに備えて、サイドの《否認》のために青をタッチしています。《カーリ・ゼヴの巧技》はMardu VehiclesやRG Monstersなどとのマッチアップで、相手のクリーチャーや機体を奪いつつ更に展開することができるので、速攻クリーチャーを追加で出せれば、《胆力の道》を変身させることも可能になります。赤いアグロデッキの新たなスタイルとして要注目です。
SCG Classics Philadelphia
ハゾレトの支配する世界
2018年1月27-28日
- 1位 Mono Red Aggro
- 2位 Mardu Vehicles
- 3位 UW Eternalize
- 4位 Grixis Energy
- 5位 Grixis Improvise
- 6位 GR Monsters
- 7位 Grixis Control
- 8位 UB Midrange
Aiden Brier
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SCG Classics Dallasから引き続いて赤単の優勝で幕を閉じたSCG Classics Philadelphiaは、準優勝もMardu Vehiclesで《熱烈の神ハゾレト》デッキが安定した強さを見せます。
新たなエネルギーデッキであるGrixis EnergyやUB Midrange 、UW Eternalize、Grixis Controlなど、ミッドレンジやコントロールも結果を残しており、多種多様なデッキが活躍する環境になっています。
プレイヤーインタビュー Aiden Brier
今大会で赤単を使って見事に優勝を果たした、Aiden Brierにお話を聞くことができました。Aidenは注目のチームとして紹介されていたチャリティーチームであるMTGAccess.Orgの一員でもあります。
4 《陽焼けした砂漠》
2 《屍肉あさりの地》
-土地(22)- 4 《ボーマットの急使》
4 《損魂魔道士》
4 《地揺すりのケンラ》
2 《過酷な指導者》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
4 《熱烈の神ハゾレト》
1 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー(26)-
2 《チャンドラの敗北》
2 《マグマのしぶき》
2 《暴力の激励》
2 《霊気圏の収集艇》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《栄光をもたらすもの》
1 《過酷な指導者》
1 《削剥》
-サイドボード(15)-
--「まず最初に赤単を使うことに決めた理由を教えて。」
Aiden「新環境になって副陽コントロールとか色々と試してみたんだけど、赤単がベストな結果を頻繁に出していたんだ。直前までMardu Vehiclesか赤単で迷っていたんだけど、赤単を使ってMOのリーグで4-1を数回したこととコンスタントに環境のデッキに勝てたから、赤単を使うことに決めたよ。」
--「《ラムナプの遺跡》と《暴れ回るフェロキドン》を失っても赤単はまだまだ強いデッキみたいだね。」
Aiden「そうだね。禁止カードが出たことで、むしろ赤単にとって有利な環境になったと思っているんだ。《ラムナプの遺跡》と《暴れ回るフェロキドン》が禁止になったことで、前の環境ほど赤単が警戒されなくなって、《つむじ風の巨匠》や《致命的な一押し》はMardu Vehiclesのようにミッドレンジ寄りのアグロには強いけど、ハイパーアグレッシブな現在の形の赤単は速さで有利なんだ。」
--「なるほど。確かに前シーズンの赤単と比べると土地が22枚にまで減らされていて《栄光をもたらすもの》もわずかに1枚、クリーチャーも1マナ域が増えて全体的に軽くまとまっているね。メインから採用されている《過酷な指導者》はどうだった?」
Aiden「《過酷な指導者》は大活躍だったね。チーム戦のメインイベントでは、メインに《過酷な指導者》は不採用で代わりに《暴力の激励》をメインから4枚採用したリストだったんだけど、Classicsではこの《過酷な指導者》2枚と《暴力の激励》2枚に変更した。《暴力の激励》はアグロデッキやミッドレンジとのダメージレースでは強かったんだけど、コントロールには弱かったからね。メインの《過酷な指導者》は、Grixis Energyのような本来ならほぼ五分のデッキに対して1ゲーム目から有利を得ることができる。元々少し有利なマッチアップだったMardu Vehiclesに対しても、更に強くなったね。」
--「エネルギー系も機体も起動能力を持つカードを多数採用しているから、メイン《過酷な指導者》は確かに強そうだね。」
Aiden「《過酷な指導者》が戦場にいたおかげで、相手が《スカラベの神》を自由に起動できなかったゲームもいくつかあったよ。このデッキを相手にしているとライフも低い状態のことが多いからね。」
--「各マッチアップについても詳しく聞かせてくれる?」
Aiden「Mardu Vehiclesは、Mardu側の方がロングゲームに強くなるから、可能な限り展開して押していく。相手が展開した脅威を火力で除去していくことも重要で、《熱烈の神ハゾレト》まで最速でたどり着くことに努めるよ。」
Aiden「Sultaiはロングゲームになると、《歩行バリスタ》でゲームをコントロールしてくる。なので序盤のクリーチャーを火力で除去しながら、速さを活かしてダメージレースで有利に立つことが重要だね。特にサイド後は《ヴラスカの侮辱》が追加されるから、あまり《熱烈の神ハゾレト》に頼り過ぎないこと。」
Aiden「Grixis Energyはほぼ互角のマッチアップで、このマッチアップも可能な限り早い段階でダメージを与えることが重要だ。《光袖会の収集者》は優先的に除去していく。もしGrixis Energy側が除去を構えてマナを立てているなら、クリーチャーを展開する代わりに火力を本体に撃っていく。」
Aiden「Approachは赤単にとって有利なマッチで、《残骸の漂着》をケアすることは大切だけど、あまりケアしすぎても勝つチャンスを逃すから、相手が持っていないことにしてアタックする必要もある。UB Controlは特にサイド後は五分で、相手の土地が揃う5-6ターン以降のスペルはあまり通ることは期待できないから序盤の内に攻めることが重要で、《熱烈の神ハゾレト》は強いけど相手も解答があるから過信は禁物だ。」
--「なるほど。こうして見てみると、《ラムナプの遺跡》が禁止になってロングゲームでの勝負では不利になるから、本来の赤単らしくスピードを活かして序盤から攻めることが重要になるみたいだね。」
Aiden「そうだね。現環境の多くのデッキは中盤から後半のゲームで有利になるように構築されているから、ゲーム後半の4~6点の確定ダメージがなくなったいま、Big Redのような戦略は厳しいね。」
--「今回の75枚から変更したいところはある?」
Aiden「多分《暴力の激励》の枚数を調整する以外では特に無いかな。この先も赤単は良い選択肢であり続けると思う。《胆力の道》を採用したタッチ白バージョンも面白そうだね。例を挙げるとチーム戦でトップ8に入賞していたCraig Krempelsのリストが良さそうだね。」
Aiden「環境にもよるけど、この先赤単がメタられるようなら色を足すことも考えられる。ただそうするとマナベースに不安が残りそうだから、もしマナベースの安定性を求めるなら単色の方が良さそうだね。」
--「今回はデッキについて詳しく解説してくれてありがとう。改めて優勝おめでとう。」
前環境でもトップメタであった赤単は、新環境になっても形を変えつつ結果を残し続けています。《ラムナプの遺跡》を失いロングゲームにおけるアンフェアな強さはありませんが、環境屈指の速度は健在で、半端な妨害手段ではその速さについていくのは難しいことが証明されています。
総括
現在は赤単、Grixis Energy、Mardu Vehicles、BG Constrictorなどアグロ、ミッドレンジが中心の環境です。
スタンダードのプロツアーがなかったこともあり、いつもより環境の変化するスピードが緩やかなスタンダードですが、今月末にはグランプリ・メンフィス2018がスタンダードで開催されます。GPのように競技志向の強いプレイヤーが集まるイベント後は、環境の研究が進む傾向にあるので、今後どのように変化していくのか楽しみです。
以上、USA Standard Express vol.115でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!