インタビュー: ルーカス・エスペル・ベルサウド ~ひとりはみんなのために~

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアーでは、終始ハイレベルな戦いが繰り広げられる。

 その初日を、全勝で終える。これがどれだけ困難なことであるかは、想像に難くない。

 ここでは、見事初日を全勝で終えたルーカス・エスペル・ベルサウドに話を伺ってみよう。

ルーカス・エスペル・ベルサウド

ルーカス・エスペル・ベルサウド

――「初日全勝、おめでとうございます!」

ルーカス「ありがとうございます。どうにか成し遂げました」

――「一日を振り返って、感想をお聞かせ願えますか?」

ルーカス・エスペル・ベルサウド

ルーカス「幸運と、練習の成果を出せた、というのが率直な感想です。ドラフトでは白黒をドラフトしました。環境のベストな組み合わせ、とは到底言えませんが、マルシオ・カルヴァリョに教わった成果を出し切れたと思います。構築に関しては、黒緑《巻きつき蛇》を使用しました」

巻きつき蛇

――「『ドミナリア』によって、トーナメントに返り咲いたデッキですね。あなたが優勝したプロツアー『霊気紛争』でもトップメタの一角でした」

ルーカス「そうですね。《ラノワールのエルフ》を始めとして、様々な新戦力が加わっています。コントロールに対しては無類の強さを誇ります。赤系のアグロは正直に言って苦手だったのですが……」

――「メタゲームブレイクダウンを見る限り、使用率はトップでしたね……」

ルーカス「ええ、残念ながら(笑) ただ、これはある意味予想どおりだったので、サイドボードにかなりの枠を割いています

――「そうだったのですね。具体的にはどのようなカードを採用しているのですか?」

喪心ヴラスカの侮辱秘宝探究者、ヴラスカ

ルーカス「まずは《喪心》《ヴラスカの侮辱》を採用しました。除去はいくらでも欲しくなるので、手厚くしています。それから、《秘宝探究者、ヴラスカ》も採用して、サイドボード後はコントロール気味に立ち回ることができるようにしています」

――「そうやって対策した結果が、5-0という成績だったわけですね」

ルーカス「初日は赤黒と4回戦って勝利しています。しっかりと準備できた証拠、と言えると思いますよ」

強さの秘密

――「初日を見事に全勝を終えて、トップ8がグッと近づきましたね。少し答えづらい質問かもしれませんが、あなたの強さの秘密はどこにあるのですか?」

ルーカス・エスペル・ベルサウド

ルーカス「これは難しい質問ですね……答えになっているのか分かりませんが、努力を積み重ねて、少しずつ実力を伸ばす。そうすれば、きっと結果が付いてくると考えています。プロツアーに参加すると、トップレベルのプレイヤーと対戦し、意見を交換できます。グランプリや、地元の大会でも、学べることはいくらでもあります。学び続けること……これは私が常に心に刻んでいる言葉なんです」

――「なるほど。とても良い言葉ですね」

ルーカス「ハイレベルなトーナメントで戦うためには、その場にたどり着かなければなりません。プロツアーの出場権は良い例ですね。そして、勝利するためには常に集中していなければならないんです。少しでも気が逸れると、手なりで酷いプレイをしてしまうものですよね。そうなると、勝利を逃し、学ぶ機会も失われてしまいます。反省することはできますが、それだけでは成長できません。集中し続ける、というのは本当に大変ですが、プロとして戦う以上、身につけるべきスキルだと思います

 そして、彼は“仲間の存在”について言及する。

ルーカス・エスペル・ベルサウド

ルーカス「私が勝利できるのは、個人の力ではないんです。チーム、そしてコミュニティの力です。今回も直前に練習会を行い、各々が得意とする分野を活かしながら、全員で強くなりました。なので、『どうしてあなたはそんなに強いのか?』という問いには、『私たちが強いんだ』と答えるべきかもしれませんね」

 笑顔を見せながら、彼は答えた。

 彼は、仲間のことを何よりも大切に考えている。

 前回のプロツアー『イクサランの相克』で、彼は最終ラウンドで敗れてトップ8入賞を逃した。対戦相手は、同じHareruya Latinに所属するルイス・サルヴァットだ。敗れた彼の悔しさは想像を絶する。それでも彼は「仲間を応援しなければ」と、日曜日、会場に誰よりも早く足を運んで、仲間を支えた

 まだ誰も会場に居ない時間。ルーカスは、仲間を応援するために誰よりも早く会場に足を運んでいた。

 私が挨拶をすると、彼はいつものように笑顔で答えてくれた。

――「早いですね」

ルーカス「もちろんです。ルイスが精一杯戦えるように、サポートをしなければいけませんからね」

プロツアーの終わりに: ルーカス・エスペル・ベルサウドより

 そして、ルイスはチャンピオンになったのだ。

 そのことを思い出し、私は感動に打ちひしがれながら、私は最後の質問を投げかけた。

 「今シーズン、あなたの目標はなんですか?」

 この問いに対する答えも、実に彼らしいものだった。

 「ゴールド・レベルになる」「世界選手権に出場する」……そんな個人の目標よりも前に、彼ははっきりと答えた。

「Help my team.(チームを助けたい)」

 そして、こう続けたのだ。

ルーカス「できるかぎり良い成績を残し続けて、Hareruya Latinの仲間を助けたいと思っています。そして、全員でチーム・シリーズの頂点に立ちたいですね。私は、素晴らしい仲間に恵まれています。彼らを助け、そして助けられながら、勝利を目指したいと思います」


 「勝利することで、仲間を助けたい」

 これが、初日を全勝で終えたトッププレイヤーの言葉である。

 Hareruya Latin、そして南米プレイヤーの結束力は実に強力だ。彼らが一致団結し、仲間を支え、応援する姿は、これからもプロツアーや、チームシリーズで目にすることができるに違いない。

 ルーカス、そしてHareruya Latinのさらなる活躍に期待しよう。

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