By Kazuki Watanabe
プロツアーでは、終始ハイレベルな戦いが繰り広げられる。
その初日を、全勝で終える。これがどれだけ困難なことであるかは、想像に難くない。
Day 1 of #PTDOM is a wrap, and two players are undefeated – HUGE CONGRATULATIONS to @bertuuuu and Ernest Lim! We'll see you all again tomorrow for Day 2! pic.twitter.com/ZLOBw1ymSB
— Magic Pro Tour (@magicprotour) 2018年6月1日
ここでは、見事初日を全勝で終えたルーカス・エスペル・ベルサウドに話を伺ってみよう。
――「初日全勝、おめでとうございます!」
ルーカス「ありがとうございます。どうにか成し遂げました」
――「一日を振り返って、感想をお聞かせ願えますか?」
ルーカス「幸運と、練習の成果を出せた、というのが率直な感想です。ドラフトでは白黒をドラフトしました。環境のベストな組み合わせ、とは到底言えませんが、マルシオ・カルヴァリョに教わった成果を出し切れたと思います。構築に関しては、黒緑《巻きつき蛇》を使用しました」
――「『ドミナリア』によって、トーナメントに返り咲いたデッキですね。あなたが優勝したプロツアー『霊気紛争』でもトップメタの一角でした」
ルーカス「そうですね。《ラノワールのエルフ》を始めとして、様々な新戦力が加わっています。コントロールに対しては無類の強さを誇ります。赤系のアグロは正直に言って苦手だったのですが……」
――「メタゲームブレイクダウンを見る限り、使用率はトップでしたね……」
ルーカス「ええ、残念ながら(笑) ただ、これはある意味予想どおりだったので、サイドボードにかなりの枠を割いています」
――「そうだったのですね。具体的にはどのようなカードを採用しているのですか?」
ルーカス「まずは《喪心》と《ヴラスカの侮辱》を採用しました。除去はいくらでも欲しくなるので、手厚くしています。それから、《秘宝探究者、ヴラスカ》も採用して、サイドボード後はコントロール気味に立ち回ることができるようにしています」
――「そうやって対策した結果が、5-0という成績だったわけですね」
ルーカス「初日は赤黒と4回戦って勝利しています。しっかりと準備できた証拠、と言えると思いますよ」
強さの秘密
――「初日を見事に全勝を終えて、トップ8がグッと近づきましたね。少し答えづらい質問かもしれませんが、あなたの強さの秘密はどこにあるのですか?」
ルーカス「これは難しい質問ですね……答えになっているのか分かりませんが、努力を積み重ねて、少しずつ実力を伸ばす。そうすれば、きっと結果が付いてくると考えています。プロツアーに参加すると、トップレベルのプレイヤーと対戦し、意見を交換できます。グランプリや、地元の大会でも、学べることはいくらでもあります。学び続けること……これは私が常に心に刻んでいる言葉なんです」
――「なるほど。とても良い言葉ですね」
ルーカス「ハイレベルなトーナメントで戦うためには、その場にたどり着かなければなりません。プロツアーの出場権は良い例ですね。そして、勝利するためには常に集中していなければならないんです。少しでも気が逸れると、手なりで酷いプレイをしてしまうものですよね。そうなると、勝利を逃し、学ぶ機会も失われてしまいます。反省することはできますが、それだけでは成長できません。集中し続ける、というのは本当に大変ですが、プロとして戦う以上、身につけるべきスキルだと思います」
そして、彼は“仲間の存在”について言及する。
ルーカス「私が勝利できるのは、個人の力ではないんです。チーム、そしてコミュニティの力です。今回も直前に練習会を行い、各々が得意とする分野を活かしながら、全員で強くなりました。なので、『どうしてあなたはそんなに強いのか?』という問いには、『私たちが強いんだ』と答えるべきかもしれませんね」
笑顔を見せながら、彼は答えた。
彼は、仲間のことを何よりも大切に考えている。
前回のプロツアー『イクサランの相克』で、彼は最終ラウンドで敗れてトップ8入賞を逃した。対戦相手は、同じHareruya Latinに所属するルイス・サルヴァットだ。敗れた彼の悔しさは想像を絶する。それでも彼は「仲間を応援しなければ」と、日曜日、会場に誰よりも早く足を運んで、仲間を支えた。
まだ誰も会場に居ない時間。ルーカスは、仲間を応援するために誰よりも早く会場に足を運んでいた。
私が挨拶をすると、彼はいつものように笑顔で答えてくれた。
――「早いですね」
ルーカス「もちろんです。ルイスが精一杯戦えるように、サポートをしなければいけませんからね」
そして、ルイスはチャンピオンになったのだ。
そのことを思い出し、私は感動に打ちひしがれながら、私は最後の質問を投げかけた。
「今シーズン、あなたの目標はなんですか?」
この問いに対する答えも、実に彼らしいものだった。
「ゴールド・レベルになる」「世界選手権に出場する」……そんな個人の目標よりも前に、彼ははっきりと答えた。
「Help my team.(チームを助けたい)」
そして、こう続けたのだ。
ルーカス「できるかぎり良い成績を残し続けて、Hareruya Latinの仲間を助けたいと思っています。そして、全員でチーム・シリーズの頂点に立ちたいですね。私は、素晴らしい仲間に恵まれています。彼らを助け、そして助けられながら、勝利を目指したいと思います」
「勝利することで、仲間を助けたい」
これが、初日を全勝で終えたトッププレイヤーの言葉である。
Hareruya Latin、そして南米プレイヤーの結束力は実に強力だ。彼らが一致団結し、仲間を支え、応援する姿は、これからもプロツアーや、チームシリーズで目にすることができるに違いない。
ルーカス、そしてHareruya Latinのさらなる活躍に期待しよう。
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