皆さんこんにちは、井川です。
前回のブログから間が空いてすみません。負けに負けていた上に書きたいことがまとまらず、筆不精になってました。3月~5月のプロポイント上積みはたったの1点…。
さて、プロツアー『ドミナリア』に参加してきました。前回のプロツアーから引き続き、チーム曲者+Hareruya Hopesの佐藤レイ、そして僕を合わせた8人での調整グループです。前週のグランプリ・ワシントンDC(チームリミテッド)から遠征し、余裕を持って現地入り。調整自体は難航したものの、最終的には納得のいくデッキ構築・選択ができたと思っています。
1stドラフトはレアや流れに恵まれたこともあり2-1と上々の滑り出しでしたが(こちらの記事をどうぞ)、スタンダードラウンドは全くデッキが回らず、1-4と惨敗。トータル3-5で初日落ちしてしまいました。残念無念。
ただし僕自身は振るわなかったものの、デッキをシェアしたBIGMAGIC所属プロ・瀧村 和幸がスタンダードラウンドで8-2を記録し、見事トップ8に入賞しました!
2 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
3 《燃え殻の痩せ地》
2 《霊気拠点》
-土地 (25)- 1 《歩行バリスタ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
1 《熱烈の神ハゾレト》
3 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (17)-
4 《削剥》
1 《無許可の分解》
1 《ヴラスカの侮辱》
1 《木端+微塵》
3 《キランの真意号》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《ウルザの後継、カーン》
-呪文 (18)-
2 《大災厄》
2 《アルゲールの断血》
2 《ヴラスカの侮辱》
2 《木端+微塵》
1 《熱烈の神ハゾレト》
1 《チャンドラの敗北》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《炎鎖のアングラス》
-サイドボード (15)-
※今回のリストは4名にシェア・計5名が使用。
※デッキを使用したメンバーのうち、瀧村・中村・熊谷は上記リスト、井川・佐藤は《強迫》4《魔術遠眼鏡》0でした。
見ての通り、メインボードに大量の1枚刺し。自分で作っておいてなんですが、多分プロツアーの赤黒の中で一番リストが美しくないデッキだったかと思います。しかしもちろん、この汚いリストは細かい調整の結晶でもあります。
そこで、各カードの採用理由や枚数について簡単に解説していこうと思います。
赤黒ミッドレンジを選んだ理由
今のスタンダードで最も強いと感じた=使いたかったのが、《ゴブリンの鎖回し》。そして《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》《ウルザの後継、カーン》のラインです。
《ゴブリンの鎖回し》は特に意識せずとも「ただ出すだけで得をする」超優秀クリーチャー。3/3先制攻撃というボディもアタック/ブロックどちらでも大活躍するのでぜひ使いたい。こういう環境を定義しているカードは、出される側より出す側に回るほうが断然楽ですよね。
そして、環境最強のブン回りであり、ダブルマリガンからでも容易に勝てるのが後者の《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》《ウルザの後継、カーン》のライン。
これらをすべて使えるのが、赤黒でした。
前者だけなら赤単もアリですし、後者だけなら白黒機体や緑系のデッキでも実現できます。ですがプレイをすればするほど、この両者を内包したデッキこそが環境のベストデッキだと感じたので、今回は赤黒アグロ/ミッドレンジに調整時間の大部分を費やすことにしたのです。
この「赤黒」のデッキの強みについては原根くんが分かりやすくまとめてくれていますので、そちらもご覧いただければと。
調整初期、5/19のMOCSスタンダードに参加した時点でのリストはこんな感じ。
1 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《燃え殻の痩せ地》
2 《霊気拠点》
1 《産業の塔》
-土地 (25)- 3 《歩行バリスタ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
3 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (18)-
PTで使用したリストとはまだ大分違いますが、この時点で赤黒を使う上で自分なりのポイントを決めていました。
赤黒ミラーマッチを制するために
赤黒というカラーの組み合わせがトップメタなのは明白だったので、ミラー系に有利な構成を考える必要がありました。そこで考えたのが以下の3点です。
1マナ域を採用しない
《ゴブリンの鎖回し》で悲しい思いをする《ボーマットの急使》はミラーマッチにおいて最も弱い1枚であり、デッキに入れないことがアドバンテージになります。
《ゴブリンの鎖回し》とのコンボがあり、《チャンドラの敗北》と合わせて《熱烈の神ハゾレト》を対処できる《損魂魔道士》ですが、こちらもトップデッキ合戦になりがちなミラーマッチにおいては力不足と言わざるを得ないと判断しました。もちろん有効なタイミングもありますが、お互い有効牌を引くかどうかの試合をしているときに駆けつける1マナ1/2。考えるだけで頭が痛くなります。
そこで1マナ域が全く入っていない、Martin Juzaのリスト=ミッドレンジ型をベースに調整を進めました。GPバーミンガムの結果が出る前から「赤黒機体は強いけど1マナ域が弱い。抜いた形を作りたい」と語っていたなかしゅーさんは慧眼でした。さすが。
《ヴラスカの侮辱》を使う
ミラーマッチはプレインズウォーカー・《再燃するフェニックス》・《栄光をもたらすもの》といったパワーカードを叩きつけ合うことになります。そこで「テンポロスをせずに絶対に1:1交換をできる」カードである《ヴラスカの侮辱》に白羽の矢が立ちました。
Simon Nielsenがサイドボードに《ヴラスカの侮辱》を1枚採用していたのを真似して試してみると、これが強い、強い。ミラーマッチはもちろんのこと、赤単の《熱烈の神ハゾレト》、青白コントロールの《ドミナリアの英雄、テフェリー》/《黎明をもたらす者ライラ》、青黒系の《スカラベの神》など、まさに環境最強除去としての強さを遺憾なく発揮してくれました。
その強さ、汎用性からサイド1枚⇒サイド2枚⇒メイン1枚・サイド2枚と自然と枚数が増えていき、それに合わせてマナベースも改良していくことになりました。
《熱烈の神ハゾレト》を使う
赤単系が赤黒系に有利とされている大きな理由、それは《熱烈の神ハゾレト》の存在です。赤系ミラーではほぼ対処できないため盤面に大きなインパクトを与えるとともに1枚でゲームを決めることも少なくありません。
そこで赤黒ミッドレンジでも使えないかどうか試してみたところ、これまた手応えや良し。重いカードを多数採用しているミッドレンジタイプなので採用枚数に限界はありますが、1-2枚であれば運用に支障はありませんでした。赤単のように4ターン目に走ることができなくても、手札を使い切ったあとの対処不能なフィニッシャーとして活躍できたのです。ドローがないデッキなので、普通にプレイしていればそのうち手札が1枚以下になりますし、手札が2枚以上あるということは他のアクションがあるということなので、急いで《熱烈の神ハゾレト》を出す必要もありません。
「《熱烈の神ハゾレト》がデッキに入っている」
この1点だけでミラーマッチにおけるアドバンテージを築くことができたのです。0枚と1枚、入っているか入っていないかは大きな違いです。
上記のリストのように最初はサイドボードに2枚の採用でしたが、ミラー系が多いこと、また青白コントロールにも有効(メインに入っている大量の不要牌を火力に変換できる)であることから、最終的には1枚をメインに移して、サイドボードの枠を空けることになりました。
除去枠について
調整のラスト数日で変えた部分がこちら。
《マグマのしぶき》3枚、《削剥》4枚はミッドレンジ型(1マナ域なし型)の固定枠として早い段階から確定していましたが、僕が違和感を覚えたのは《無許可の分解》でした。
《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》のラインは維持しているためライフレースしている際は重宝しますが、3マナの除去であり初手のキープ基準にならない点、《ボーマットの急使》が不採用であるミッドレンジ寄りのリストだと3点が飛ばないことも多々ある点、そして青白コントロール相手に不要牌になる点が気になりました。
赤単系や青白コントロールなど、主要だと考えられるマッチアップに対して、この3マナ除去が腐る/足を引っ張って負けることが多く、それは練習を重ねるごとに顕著になっていきます。
そこで、「2マナのキープ基準になる」「《歩行バリスタ》を減らした分のX火力を担保してくれる」《木端+微塵》、「どのマッチアップでもまず腐らない」「一番サイドイン率が高い」《ヴラスカの侮辱》と枚数を散らし、《無許可の分解》だけが手札にかさばらないように微調整しました。
簡単にそれぞれの長所や枚数を説明すると、
ベスト1マナ域。《屑鉄場のたかり屋》が幅を効かせている環境なので、後腐れなく対処できるのが本当に嬉しい。3枚。
メインボードでは初手にキープしていることが多いので、他の火力や戦闘との合わせ技で《スカラベの神》を追放することも多いですね。
環境最高の2マナ除去。このデッキは攻め100%のデッキではないので、悩まず4枚採用しました。
「メイン《マグマのしぶき》3、《削剥》4」は現状のメタゲームではまず変更しないでしょう。
2-4枚採用されていることが多いこのカードですが、3マナ除去はキープ基準にならないこと、3点ダメージの価値が他の赤黒系に比べて低いこと、そして青白コントロールに対して腐る除去を減らしたかったことなどから、枚数を大幅に削りました。
この除去枠は、後述する《木端+微塵》と《ヴラスカの侮辱》に譲っており、トータルの除去枚数自体は減っていません。
先述の通り、赤系のミラーマッチでは《熱烈の神ハゾレト》や《再燃するフェニックス》への対処が一番の問題となってきます。そこで目をつけたのが黒いデッキの基本除去である《ヴラスカの侮辱》です。
メインはほぼ赤単ですが、メインサイド合わせて《ヴラスカの侮辱》を3枚運用するために赤黒タップインランド(《燃え殻の痩せ地》)を通常よりも多めに採用し、黒マナを15枚担保しています。
最初はサイドボードのみの採用だったのですが、前述の通り《無許可の分解》を減らしたかった(除去枠をコントロールに腐らないカードに変えたかった)こと、そして何よりあまりにもサイドイン率が高いためメインに移しました。
ほぼすべてのマッチアップでサイドインするのですが、メインの4マナ域は能動的なアクション(クリーチャー・プレインズウォーカー)を優先するために1枚に抑えてあります。なおサイドボード後も、このカードをサイドインする場合は他の4-5マナ域を減らして4マナ過多になりすぎないようにすることが多いです(除去コンモードにシフトする際を除く)。
黒緑蛇やガルタに対抗するには75枚のうちに3枚は欲しかったので、《無許可の分解》を減らすとともにサイドの枠を削るためにメインに1枚採用しました。これで《削剥》と合わせて2マナ除去が5枚になり、後攻番でも《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》に蹂躙される確率が下がりました。《燃え殻の痩せ地》を増やした都合もあったので、3ターン目に「2マナ+タップイン」で動きやすくなったのも好感触でした。
2マナ4点除去である《木端》がアグロに強いのはもちろん、X火力である《微塵》はコントロールやミッドレンジで効果を発揮しますし、赤系とのタイトなダメージレースを制することもあります。タキニキの準々決勝、G1およびG3を御覧いただいた方は実感できたかと。
その他、採用したカードについて一言
《ゴブリンの鎖回し》が流行った結果、タフネス1の生物が減少⇒このカードの価値も低下。2マナ(X=1)で出すと《ゴブリンの鎖回し》を食らうのも辛いですね。
マナフラッド受け、《再燃するフェニックス》キラー、青白コントロールへのX火力、2マナ1点除去など役割は複数あるものの、序盤に複数枚引くと負けに直結するので1枚に。
固い、強い。対赤いデッキ、特にサイド後は《チャンドラの敗北》されないので一番裏目がないアクションになります。
対コントロールでは、できる限り「-2」でトークンを生成してプレッシャーをかけるようにしましょう。悩んだらトークン。
対コントロールで最強のPW。《排斥》されても《ヴラスカの侮辱》されてもカードカウントで得をしますし、《反逆の先導者、チャンドラ》や《ウルザの後継、カーン》よりも直接的に、戦場に残ったターン数がそのままアドバンテージに直結します。「-3」能力で相手の《黎明をもたらす者ライラ》や《奔流の機械巨人》を奪って勝利することも。
黒緑蛇やガルタのような生物単には、出して即「-3」することにより、《反逆の先導者、チャンドラ》や《栄光をもたらすもの》のように使うこともできます。
《ヴラスカの侮辱》や《アルゲールの断血》を安定して運用できるように、デッキリスト提出前日に2枚目を採用することに決めました。代わりに入っていた《産業の塔》が不安定で、特にサイド後に《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》減らすときにヤバすぎた、というのも実情。
「《廃墟の地》2連打されましたが、《沼》2枚サーチできたおかげで、相手の《スカラベの神》を《ヴラスカの侮辱》して勝ちました!」とPT本戦でくまぜみさんから報告もらって嬉しかったです(素直な感想)。
完成
ということで、微調整に微調整を重ねていった結果、できたのが以下のリスト。
2 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
3 《燃え殻の痩せ地》
2 《霊気拠点》
-土地 (25)- 1 《歩行バリスタ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
1 《熱烈の神ハゾレト》
3 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (17)-
4 《削剥》
1 《無許可の分解》
1 《ヴラスカの侮辱》
1 《木端+微塵》
3 《キランの真意号》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《ウルザの後継、カーン》
-呪文 (18)-
2 《大災厄》
2 《アルゲールの断血》
2 《ヴラスカの侮辱》
2 《木端+微塵》
1 《熱烈の神ハゾレト》
1 《チャンドラの敗北》
1 《炎鎖のアングラス》
-サイドボード (15)-
結果的に「会場で最も重い」赤黒ミッドレンジが完成しました。4マナ域のパーマネントが8枚、5マナ域も3枚とかなりの重厚さです。土地を26枚にすることも検討しましたが、少なくとも《アルゲールの断血》のないメインボードはマナフラッドにそこまで強くないので、目をつぶって25枚で我慢。
僕個人としては通常「メインが軽く、サイド後が重い」ビートダウンを特に好んでいるのですが、今回は「軽い」ことが《ゴブリンの鎖回し》によって否定されていたので、トコトン重い、トップデッキ合戦に強い形に収束しました。
メインは似たような中速デッキ全般に滅法強く、極端に速い赤単系=《熱烈の神ハゾレト》デッキと、除去が腐りやすい青白コントロールには不利が付きます。ですがどちらもサイド後には相性が大きく改善され、マッチトータルで五分以上まで持っていくことができます。
また今回は《ヴラスカの侮辱》を無理やり採用した関係で、メインが赤単気味なのに《燃え殻の痩せ地》が3枚に《沼》が2枚採用していたりします。「サイド後の勝率を上げるために、メインの勝率を妥協した」結果ともいえるかもしれません。
ラムナプ・レッドのときの「《地揺すりのケンラ》3枚」もそうでしたが、
こういったおよそ当然だと思われていたであろう部分に疑問を持ち、実際に試し、自力でその反証ができたのが今回の良かった点ですね。
次のイベントであるグランプリ・シンガポール2018でも、自分で自信を持った構築・デッキをプレイできるよう、練習に励んでいきます。
おまけ、簡易サイドボーディングガイド
相手のリストやサイドボードでいくらでも変わるので、あくまで参考程度に。
vs.赤系アグロ(《ボーマットの急使》《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》入りの速いタイプ)
vs. 赤系アグロ
vs.赤黒ミッドレンジ(1マナ域少なめ)
vs. 赤黒ミッドレンジ
vs.青白コントロール、エスパーコントロール
vs. 青系コントロール
vs.黒緑《巻きつき蛇》
vs. 黒緑《巻きつき蛇》
vs.緑単《原初の飢え、ガルタ》
vs. 緑単《原初の飢え、ガルタ》
vs.青黒ミッドレンジ
vs. 青黒ミッドレンジ
そんなこんなで、自身は勝てないプロツアーでしたが、同じ調整チームであり友人であるタキニキが勝ってくれて素直に嬉しいです。改めておめでとう&勝ってくれてありがとう、タキニキ!!
それでは、また次のブログでお会いしましょう!
井川