これで安心!九印のマジック入門講座 vol.2 ~カード・アドバンテージを得よう~

三輪 祐介

 カードを引くのは好きですか? 戦場にクリーチャーを並べるのは? こんにちは、九印えらり(@kuin_erari)こと三輪です。

 マジックの基本的なプレイングや知識について伝えて、安心してショップのイベントに挑戦してもらいたい! ということで始めたマジック入門講座の第1回は、Twitterなどで数多くの宣伝と感想を拝見しました。ありがとうございます。

 それではさっそく、マジック入門講座の第2回を始めましょう!

「カードをたくさん引けば勝てる!」

記憶の意義ふるい分け溢れ出る洞察

 「カードをたくさん引けば勝てる」。あなたよりも先にマジックを始めているプレイヤーたちが、そんなことを言っていませんでしたか?

 あるいは、「この1枚でカード・アドバンテージの差が大きく開く」だとか、ベテラン同士が「アドが取れるから強い」というような会話をしているのを聞いたことは?

 「カード・アドバンテージって何? それがあるとマジックで勝てるの?」

 「どうすればカード・アドバンテージを得られるのかな……」

 ほかの人の会話を聞いて、そんな風に疑問に思ったことはありますか?

 ある? それは素晴らしい研究意欲ですね! 今日はこの「カード・アドバンテージ」についての基本的な話をしていきます。

「カード・アドバンテージ」って何?

 では最初に、「カード・アドバンテージ」という言葉の意味について説明しましょう。

 マジックではカード・アドバンテージと言えば、基本的に「カードの枚数差(による優位)」を意味します。

 つまり、一方のプレイヤーに1枚、他方のプレイヤーに2枚のカードがあれば、後者がカード・アドバンテージという基準において優位にあるということです。その状態に持ち込むための行為や、実際に枚数差を生じさせた結果について、「カード・アドバンテージを得る」「アドを取る」などと表現します。

闇の取り引き復活虚ろな者、アゴロス

カード・アドバンテージが得られるカードの例

 今回は、手札にあるカードや戦場に出ているカード(パーマネント)といった、「ゲームに影響を与えるカードの枚数差」がカード・アドバンテージである、と思っておいてください。

 たとえば、墓地にあるカードの枚数差がゲームに影響を与えることはあまりありません。追放されたカードの枚数や、ライブラリーのカードの枚数をお互いに比べあっても、それが勝敗に関係してくることはめったにないでしょう。そのため、今回は基本である、手札とパーマネントの枚数の比較に絞って解説します。それらはほぼすべてのゲームで勝敗に影響するからです。

カード・アドバンテージを得る、その強さとは

 「それで、カード・アドバンテージを得ると勝てるの?」

 そうですね、カード・アドバンテージによって何が起こるのかを説明する前に、前提となるマジックの仕組みについて理解を共有しておきましょう。

 マジックは、先攻の最初のターンを除き、自分のターンに1枚のカードを引くルールです。自分のターンが来たら1枚引く。次は相手のターンになって、相手が1枚引く。この繰り返しですね。つまり、使えるカードの枚数に差はつかないということです。

 ここで、『お互いに毎ターン、3/3の《ケンタウルスの狩猟者》を引いてそれを戦場に出す』ということだけを繰り返したとします。普通はそこにゲームの勝敗を決めるような差はつきません。1体で攻撃すれば1体のブロック・クリーチャーと相打ちになるでしょうし、かといって自分のターンに引けるカードは1枚なのですから、数で上回ることもありません。基本的に1ターンに引けるカードは1枚というマジックのルールにより、何もしなければ互角の状況が生まれる仕組みです。

お互いに各ターン1枚ずつケンタウルスの狩猟者を並べていく
予言

 さて、もしここで《予言》のようにカードを2枚引ける呪文を使うとどうなるでしょうか? 手札を1枚使いますが、代わりに新しいカードを2枚手に入れました。つまり、1枚分のカードが増えましたね? 相手とは1枚分のカード差ができたことになります。

 このカード1枚分の差は、どのような結果を生み出すでしょうか?

 先ほどまでは1ターンに1体しか出せなかった《ケンタウルスの狩猟者》ですが、《予言》で手札が1枚増えたので、このターンは2体の《ケンタウルスの狩猟者》を戦場に出せることになります。

ケンタウルスの狩猟者の枚数に差が出る。

 いかがでしょう? 戦場のクリーチャーの数を数えてみると、4対3になっていますね。カード1枚の差が、実際にあなたの有利な状況につながりました。

 マナ・コストの支払いを考えないかなり単純化した例ではありましたが、根本的にはこれがカード・アドバンテージを得た結果です。

 そう。このように、カード・アドバンテージを得ることでゲームを優位に進めることができるようになります。それがカード・アドバンテージの強さなんです。その差を維持するかさらに広げることができれば、最終的には勝つことができるでしょう。

 逆に、カード・アドバンテージを失うとゲームに影響を与えるカードの枚数が減って選択肢が狭まり、自分が不利になる行動しか選べなくなることもしばしばあります。そうすれば次第に身動きが取れなくなって、最後には負けてしまうでしょう。

カード・アドバンテージを得よう!

 さて、「ゲームに影響を与えるカードの枚数で相手を上回ると強い! 勝てる!」というところまで説明しました。

 しかし、毎ターン勝手にカードが増えるわけではありません。では、実際にはどうやってカード・アドバンテージを得ればよいのでしょうか? それには大きく分けて2つの方法があります。

自分のカード1枚を2枚以上にする

 一つは、自分のカードを増やすことで相手との枚数差を生み出し、カード・アドバンテージを得る方法です。

 先ほど例で用いた《予言》《魂回収》のように1枚で複数のカードを手に入れる呪文は、この方法の中でも最も基本的なものです。それから、《ロウクスの神託者》のように戦場に出たときにカードを引かせてくれるクリーチャーや、1枚の手札から2体のクリーチャー・トークンを生成できる《騎兵呼集》も、ゲームに影響を与えるカードの枚数が1枚増えます。

魂回収ロウクスの神託者騎兵呼集

 これらはすぐさま確実にカード・アドバンテージを獲得してくれます。しかしそれは一度限りです。逆に即時性や確実性は下がるものの、継続的にカード・アドバンテージを獲得する種類のカードも紹介しましょう。

 カードを引ける《神秘の考古学者》やトークンを生成できる《轟く棘背びれ》は、コストを支払って能力を起動できるところまで生き残れば、倒されるまでずっとカード・アドバンテージを獲得しつづけることが可能です。ほかにもアップキープのたびにトークンを生成する《新緑の魔力》、条件を満たすたびにカードを引ける《サテュロスの結界師》など、いろいろなカードがさまざまな形でカード・アドバンテージを与えてくれます。

神秘の考古学者轟く棘背びれサテュロスの結界師

 自分のカードを増やすことで相手との枚数差を生み出す方法は、ほとんどの状況で確実に成果を得られます。

自分のカード1枚で相手のカード2枚以上を倒す

 カード・アドバンテージを得るもう一つの方法は、自分のカード1枚と引き換えに相手のカードを2枚以上無力化する(倒す)ことで枚数差を生み出すというものです。これもいくつか紹介しましょう。

 この方法のもっとも一般的な例の一つが、クリーチャーによる戦闘の結果です。あなたが5/4の《炎の精霊》で攻撃し、相手が2/2の《歩く死骸》2体でブロックしてきたら、それらはすべて死亡するでしょう。結果として、あなたは1枚のカードを失い、相手は2枚のカードを失っています。

アタック中の炎の精霊1体を歩く死骸2体がブロックしている

 おや、カードの枚数に差がつきましたね? このように1枚のカードで相手のカード2枚を倒すことを、「1対2交換」と言います。そしてこれにより、相手は1枚分のカード・アドバンテージを失うことになるのです。

 それ以外にも1対2交換を行う方法はいろいろとあります。たとえば《精神腐敗》は、1枚のカードと引き換えに手札2枚を捨てさせる呪文ですし、《貪欲なチュパカブラ》《再利用の賢者》のように自分は戦場にクリーチャーを1枚追加しつつ、相手のカード1枚を失わせる類のクリーチャーも強力です。損をさせた上で、残ったこちらの戦力に対してもう1枚カードを消費しろと迫るのですから、相手はたまったものではないでしょう。

精神腐敗貪欲なチュパカブラ再利用の賢者

 《燻蒸》のようにすべてのクリーチャーを破壊する呪文のことを、全体除去呪文と呼びます。自分のクリーチャーも巻き込まれますが、うまく利用すればこれ1枚で1対4交換1対5交換のような大きな成果を上げることも可能です。

 また、相手のクリーチャーを奪い取る《幻惑の旋律》のようなカードは、自分のカードを1枚使って相手のクリーチャーを自分のものにします。結果として自分は呪文1枚がクリーチャー1枚に変わっているのでプラスマイナスゼロ、相手はクリーチャーを失って1枚分の損失となります。さらに相手が奪われた戦力を倒すために1枚のカードを使えば、こちらが《幻惑の旋律》1枚しか使っていないのに対して、相手が2枚のカードを失っているのでこれも1対2交換です!

燻蒸幻惑の旋律

 ほかにも自分のカード1枚で相手のカード2枚以上を消費させるカードや方法はいろいろあるでしょう。これらは相手のデッキやカード、あるいはプレイングにある程度依存するため、自分のカードを増やす方法に比べれば確実性に欠けます。しかし、カード・アドバンテージを発生させつつ相手の展開を遅らせたり選択肢を狭めたりと、うまくはまった場合はゲーム全体に与える影響が大きく、利用できるなら積極的に用いたいと思わせる方法です。

おわりに

 マジックにおいて、カード・アドバンテージを得ることが勝利への強力な道筋となることは、間違いのないことです。しかしこれは、あくまで有利になるための一つの方法にすぎないとも言えます。仮に《予言》を使って手札をめいっぱい増やしたとしても、それだけではゲームの基本的勝利条件である「相手のライフを0にする」には何の影響もありません。カード・アドバンテージを得たあとは、それを相手を敗北させるための何かへと変換しましょう。

 よく使われるカード・アドバンテージという言葉がどんな意味で、どうゲームの勝利に役立つか、その基本は伝わったでしょうか? カード・アドバンテージを軸にデッキを組む場合、それを生かして勝利するためには時間が必要になるため、中~長期戦を見据えたデッキにするのがいいでしょう。

 単純な枚数の比較だけでなく、ゲームへの影響力についてやスキなく展開できるかどうかなど、今回の話の先にはさらに実戦的な内容が続きます。いずれはその話も取り扱いたいですね。また、カード・アドバンテージについて調べるなら、結果を残しているデッキがなぜそれらのカードを採用しているのかを考えてみるのもいいでしょう。

天才の片鱗奔流の機械巨人残骸の漂着

 もちろん、実際に自分で使ってみて体験することで理解できることもありますよ。とにかくカード・アドバンテージを得るとできることが増えて楽しいですからね!

 今回の記事はここまでとなります。このカード・アドバンテージの記事が役に立った、あるいは始めたばかりのプレイヤーに見せたい記事だと感じてもらえたなら、ぜひTwitterやFacebookなどで宣伝していただければと思います。

 生み出したカード1枚の差が、あなたを勝利へ導いてくれますように。

この記事内で掲載されたカード

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