晴れる屋メディアをご覧の皆さま、初めまして。
カジュアルプレイヤーの紳さんと申します。
今回、のっぴきならぬ事情によりHareruya Prosの井川 良彦氏をお訪ねしました。井川プロはプロツアー『イクサラン』にて17位入賞という好成績を残したばかり。今、ノリにノっているプレイヤーの1人です。
3,000円から始めるマジック:ザ・ギャザリング
「どうしました?」
「折り入ってご相談があるのですが……」
「予算3,000円で組めるスタンダードのデッキを考案していただきたいのです」
「えっ、3,000円!? ……何か事情があるのでしょうか?」
「はい。実は最近、僕の友達が新しくマジックを始めたいと言うのですが、スタートするのに少し躊躇していて悩んでるんです。マジックってお金をたくさんかけないと遊べないと思っているらしくて」
「なるほど。確かに、まったくマジックをプレイしたことがない方はそういうイメージを持っているかも知れませんね」
「なんだかんだでマジックのカードって高額なものも多いじゃないですか。極端な言い方をすると、お金をたくさんかけたものだけが勝つゲーム、というイメージがあるみたいなんです」
「実際にはカジュアルとかリミテッドの分野でいろんなルールやフォーマットがあるし、カード資産が潤沢になければ遊べないというゲームではないのですけれどね」
「井川さんのおっしゃることはもっともだと思います。しかし、人間ってなかなか言葉では理解できない生き物じゃないですか」
「だったら背中で見せるしかないな、って思いまして。低予算でデッキを組み、大会で勝利することができたら、みんなも安心してマジックを始めてくれるんじゃないかなって」
「なるほど」
「ただ、正直、僕にそんなデッキ構築能力はありません。誰か強い人に協力していただけないかと……」
「それで私に白羽の矢が立ったのか……」
「引き受けていただけるでしょうか?」
「やりましょう」
「マジっすか」
「マジックの普及に協力するのはプロの務めです。あと、楽しそうだし」
「ありがとうございます!!!」
はたして3,000円でデッキは組めるのか?
こうして、井川さんの『スタンダード3,000円縛りデッキ構築』の挑戦が始まりました。
ティムール・ エネルギー、青白コントロール、ラムナプ・レッド……仮想敵は多く、いずれも強力なデッキタイプです。これらの対策を怠ることなく、なるべく安いカードでデッキを組むのは至難の業。
環境把握能力、カードの知識、ゲームに勝つために必要な考え方。プロとして培ってきた経験を総動員して取り組んでいただきました。
そして、井川さんが辿り着いたデッキが……
こちらです!!!
総金額:2,990円
※値段は2017年11月9日(木)時点のものです。また、ここでは基本土地は0円として計算しています。
「これが3,000円の勝てるデッキですか!」
「精一杯、考えました。実際に勝ち切れるかどうかはやってみないとわかりませんが」
「何より、唱えるだけでゲームに勝てるというカードが250円だったので。本当は4枚入れたいのですが、3,000円の予算だと250円のカードを4枚入れるのがキツくて……」
「ものすごく試行錯誤してくださったのですね」
「子供の時に経験した、“おやつは300円まで”を思い出しましたね」
「今ならスーパーで野菜とにらめっこしながら、家計をやりくりする主婦の気持ちがよく分かります」
「デッキはいわゆる除去コントロールです。序盤はデッキの大半を占める除去カードでしのぎつつ、《太陽鳥の祈祷》でアドバンテージを得ながら《副陽の接近》での一撃勝利を目指します」
「アグロデッキには元から相性が良いですし、コントロール系の相手にはサイドから投入される《アダントの先兵》がブッ刺さりますよ」
「《アダントの先兵》、10円なんですね! こんなに強いのに、お得!」
「というよりもデッキの大半が10円、20円のカードなんですけどね。《燻蒸》とかめちゃくちゃ入れたかったけど、カードの値段を見て諦めました」
「とはいえ、除去だけは豊富。《没収の曲杖》で墓地対策も万全。抜かりはありません」
「なんという頼もしさ! 3,000円のデッキとは思えない完成度の高さです!」
その後、井川さんにデッキの回し方をレクチャーしていただき、実際に晴れる屋で行われるスタンダードの大会に出ることにしました。
プロにここまでしてもらったのだから、絶対に勝つ! 勝たないとヤバい!
いざ、実戦
井川さん特製の赤白除去コントロールを握りしめ、晴れる屋の平日スタンダード20時の部、全3回戦に挑みました。
Round 1:ジャンド・コントロール
相手はハンデスと除去をしながら重めのクリーチャーやプレインズウォーカーを叩きつけてくるタイプのジャンドデッキでした。
こちらのデッキにはクリーチャーが入っていないので、相手の除去カードは基本的に全て腐ります。加えて、向こうも土地を伸ばしてからメインの行動をとってくる構成なので、一撃必殺コンボが搭載されているこちらのデッキはかなりやれるんじゃないかと期待していました。
1戦目はかなり順調に進み、こちらのライフもほとんど減ることなく《太陽鳥の祈祷》を着地させることに成功。こりゃ勝ったな、と思ったのですが掘っても掘っても《副陽の接近》に一向にたどり着けず……
まさかの《副陽の接近》が3枚ともデッキのボトム付近に眠っていたようで、敗北。相手の墓地から《木端+微塵》が飛んできました。
2戦目は《黄昏のピラミッド》をサイドインしてライブラリーを掘る力を強化しました。占術とドローで《副陽の接近》を探し当てちゃえば良いと思ったのですが、場に出した瞬間に相手の《魔術遠眼鏡》でピラミッドの能力を止められ、その次のターンに再び《黄昏のピラミッド》を引くという悲しい事件が発生。
さらに土地を伸ばしきる前に《太陽鳥の祈祷》と《副陽の接近》をハンデスで捨てられ、涙目。やがて除去しきれなくなった相手のプレインズウォーカーたちの忠誠値がガンガン貯まっていくのをぼんやりと見つめながら、井川さんの顔を思い浮かべておりました。
××
負けてしまいましたが、Round1は全体的に運が悪かっただけで、かなりやれてた印象。気を取り直してRound 2に挑みます。
Round 2:赤黒アグロ
相手は《ボーマットの急使》や《屑鉄場のたかり屋》、《戦慄の放浪者》などが入った赤黒の高速ビートダウンデッキ。墓地から蘇るクリーチャーがたくさん出てくるのですが、こちらのデッキの除去が追放系が多いため、かなり相性が良い相手だと感じていました。
1戦目は順調に対応。相手の手札も尽き、勝てそうな雰囲気がガンガンに漂っていたのですが、トップから飛んでくる《栄光をもたらすもの》や《熱烈の神ハゾレト》のダメージが蓄積して負け。インスタントタイミングでタフネス4を除去できるカードが少ないため、どうしてもダメージをもらってからの対応になってしまいました。本当に強いカードたちです……
2戦目は土地3枚のハンドを満足キープしたところ、7ターン連続で土地を引かず、4枚目の土地を置けないまま瞬殺されちゃいました。これは悔しすぎる。
××
負けてしまいましたが、Round2は本当に勝てそうでした。なんなら、気持ち的には勝ってました。自信を持って最後のRound 3に挑みます。
Round 3:スゥルタイ・エネルギー
相手は《スカラベの神》が入ったエネルギー系のデッキ。プロツアー『イクサラン』でも大活躍した注目のスゥルタイ・エネルギーでしょうか。これに勝てれば最高です。3,000円デッキの集大成を見せたいと思いました。
1戦目、相手のクリーチャーをこちらの除去でどんどん対応していたら、どんどんアドバンテージの差がついちゃいました。例えば《ならず者の精製屋》は場に出た時にカードを引いてエネルギーを溜めるので、こちらが1枚のカードで対応すると完全に損なのですよね。
なので、こちらは《破滅の刻》とか《イクサランの束縛》をうまく使ってアドバンテージを取り返さないといけないのですが、なかなかハマらず。
マナを伸ばされてから《スカラベの神》を出されると、やっぱりすぐに墓地からクリーチャーを出されてしまいますし。本当に強いデッキです……
矢継ぎ早に押し寄せる脅威に対応していたら《太陽鳥の祈祷》を置く余裕もなく、圧死。
2戦目はなんとか粘って《太陽鳥の祈祷》を設置。あとは《副陽の接近》が来れば、と期待!
ところが、《スカラベの神》を《砂漠の拘留》で抑えて安心していたところ、なんと相手の《人質取り》が神を追放。再び現れた《スカラベの神》が強いこと強いこと。
完全に油断していましたが、《砂漠の拘留》は万能除去では無かったのです。
あと一歩及ばず、ゾンビの群れに押し潰されてしまいました。
××
マジックはお金をかけたものだけが勝つゲームじゃない……?
結果はまさかの全敗。
だけど、運が悪いマッチが続いてしまった気がします。感触としてはすごく良かったです!
ちゃんと戦えてたし、勝てそうだったし、惜しかった!!!
あとはプレイングの差でしょうか。多分、井川さんが使っていれば3-0していたと思います。間違いなく。
3,000円の縛りがある中、ここまで完成度の高いデッキを作ってくれた井川さんには感謝しかありません。
「井川さん、負けちゃってすみません。でも、すごく楽しかったです。マジックの新しい可能性を感じました」
「同感です。こういう縛りがある中でデッキを考えるのって、すごく楽しいですよね」
「伝わるかどうか分からないけど、きっとこの記事を見た僕の友人たちは即座にマジックを始めると思います」
「だってマジックは、お金をかけたものだけが勝つゲームじゃないって証明できたと思うから!」
「まぁ、水を差すようで悪いですが、ぜんぜん証明できてないですよ」
「でも、安いカードばかりのデッキでも、工夫次第でトップメタのデッキと渡り合える可能性があるってことは証明できたと思うんです」
「それもまぁ、ぜんぜん証明できてないですよ」
「今回作ってもらった3,000円デッキ、大切にします。練習して、今度こそ大会で勝ってみせますので!」
「ぜひ、チャレンジしてみてください!」
終わりに
本当は勝ちたかったけど、勝負は時の運ですよね。
それにしてもプロに協力してもらい、デッキ作っていただけるなんて僕のマジック人生で初めてのことなので、すごく嬉しかったです! また、少しの工夫でマジックってまだまだいろんな楽しみ方があるんだなって思いました。無理してお金をかけなくても、ずっと長く楽しく遊べるゲームだと思います!
せっかくなので冒頭に出てきたこれからマジックを始めたいという友達にこのデッキをあげたところ、『このデッキで勝てるように改造していきます!』ととても喜んでもらえました。最初は3,000円のデッキでも、工夫や試行錯誤していくことで楽しみが生まれていくと思います!
最後になりましたが、突然の申し出でこういった記事を書かせてくれた晴れる屋メディアチームの皆さま、対戦してくださったプレイヤーの皆さま、プロとして協力していただいた井川さん。貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました!
編集から告知
今回ご紹介させていただいた、Hareruya Pros・井川 良彦謹製の「赤白《副陽の接近》」を2,990円で販売することが決まりました!!
これからマジックを始めてみたいという方はもちろん、すでにマジックにどっぷりな方まで十分楽しんでいただけるデッキとなっております!
全カードスリーブ入りでご購入いただいた日からすぐに遊べるこちらの一品。ご興味がおありの方はぜひ遊んでみてください!
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