これまでの経緯
グランプリ・ラスベガス2017(レガシー)にて、今シーズンの目標である「シルバーレベル」を達成。
- 2017/06/27
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- 原根 健太
さらに翌日のモダングランプリでは13勝2敗の成績を収め、来シーズンのファーストプロツアーである『イクサラン』の権利も獲得でき、帰国後に参加した「『アモンケット』環境名人戦」では優勝と、これまでの不調が嘘のように調子が上がってきています。
- 2017/07/04
- やはりマジックは楽しみ得 -『アモンケット』環境名人戦レポート-
- 原根 健太
今シーズン残されたイベントは「グランプリ・京都2017」と「プロツアー『破滅の刻』」の2つ。本来であればこのピークを受けて勢い付く……はずなのですが、当の本人は冷静でした。と言うのも、これらのイベントが僕にとってそれほど大きな意味を持つものには思えなかったからです。
この時点での僕の状況を整理します。
まずプロツアー権利の面で言えば、グランプリ・京都2017を13勝2敗した場合も、プロツアー『破滅の刻』を11勝5敗した場合も獲得できるプロツアー権利は『イクサラン』で、これはすでに所持しており得られるものがないのです。
次にプロポイントの面で言えば、2大会を合わせて12点を獲得し「ゴールドレベル」に到達することが目標となり得ますが、そのために必要となるルートは以下の通り。
- GP京都で優勝(+6点)し、PT『破滅の刻』で10勝6敗以上
- GP京都で13勝2敗(+2点)し、PT『破滅の刻』で11勝5敗以上
- GP京都で12勝3敗(+1点)し、PT『破滅の刻』で11勝4敗1分以上
- GP京都で11勝3敗1分以下だった場合、PT『破滅の刻』で12勝4敗以上
どのルートを辿るにせよ、プロツアーでの好成績が絶対条件です。
その上でグランプリと連続して成功を収めるか、プロツアーであわやトップ8のラインまで勝利を重ねるかの2択。正直なところ、今の僕ではどちらも現実的には思えませんでした。
理由は2つ。
1つ目は時間的制約問題。限られた時間の中でシールド・ドラフト・スタンダードの3本をこなすのは無理があるのでグランプリに向けた練習は切り捨てざるを得ず、グランプリでのポイント獲得は困難を極めます。
2つ目はポテンシャル的問題。プロツアーにおける過去最高成績は9勝7敗。そこから一気に3段階のレベルアップを遂げるイメージは全く沸きませんでした。
このことから、先の展望に具体性を見出すことができず、非常にふんわりとした状態でシーズンラストを迎えることに。
しかしこれは何も悪いことではありません。前述のレポート内で記した通り、今の僕は肩の力を抜き、エンジョイの精神を保つことでパフォーマンスを発揮しやすくなりました。
むしろ「トップ8しかない」ぐらいの漠然とした状態の方がメンタル的には好影響です。これまでのプロツアーは「11勝5敗で次回プロツアー権利」だとか、「1点でも多くのプロポイント加算」だとか何かしらを背負い込み、いわば追い込まれたような状態で臨むことが多かったので、これだけの気楽さを持って本番を迎えるのは初めてのことでした。
そうした精神状態が自分のパフォーマンスにどういった影響を与えるのか、これは自分でも楽しみなところです。
本番に向けた準備
さて、肝心のプロツアーに向けた準備ですが、前回同様チーム「武蔵」の調整グループにゲスト参加させていただきました。そこに2名の新規メンバーを加え、以下の面々に。
ビートダウンデッキの構築に定評のある2名を迎え入れ、総勢9名での調整グループとなりました。フルスポイラー公開の翌日から時間の取れるメンツで基本毎日集まり、『破滅の刻』の新カードを中心にあらゆるデッキをテスト。
調整の細かな経緯は公式掲載コラム「市川ユウキの『プロツアー参戦記』」に記事が上がると思いますので、ここでは割愛します。お楽しみに。
紆余曲折を経て選択の候補に挙がったのは「赤黒アグロ」「黒単ゾンビ」「黒緑昂揚」の3本。
7 《沼》 6 《山》 2 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 4 《ラムナプの遺跡》 1 《産業の塔》 -土地(24)- 2 《歩行バリスタ》 4 《ボーマットの急使》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《地揺すりのケンラ》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《アムムトの永遠衆》 4 《ピア・ナラー》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(25)- |
4 《ショック》 2 《削剥》 4 《無許可の分解》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(11)- |
『カラデシュ』リリース以降存在し続ける《屑鉄場のたかり屋》と《無許可の分解》を軸にしたアグロデッキの最新版。アグロデッキを担当する覚前さん・高尾くん・加茂くんの3名が調整初期からずっと練り続けてきたデッキで、骨太なアグロデッキとして雑多なデッキに対し高い勝率を収め続けていました。
『破滅の刻』にて加わった新戦力の《地揺すりのケンラ》《アムムトの永遠衆》《ラムナプの遺跡》はダメージソースとして極めて優秀。デッキとしての完成度は2段階ほど向上したように思います。
しかしながら一つ大きな問題があり、それは今回tier1に定めた「赤単アグロ」に対し有利が付かず、良くて5割、構成次第では不利もあり得てしまうことです。
20 《沼》 2 《イフニルの死界》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地(24)- 4 《墓所破り》 4 《戦慄の放浪者》 4 《無情な死者》 3 《金属ミミック》 4 《戦墓の巨人》 4 《アムムトの永遠衆》 -クリーチャー(23)- |
2 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 4 《リリアナの支配》 4 《闇の救済》 -呪文(13)- |
前回のプロツアー『アモンケット』を勝利したチャンピオンデッキ。『破滅の刻』から追加されたのは《アムムトの永遠衆》と《イフニルの死界》の2枚。
《イフニルの死界》はあってもなくても変わらないレベルのカードだと認識していますが、《アムムトの永遠衆》は明確にデッキのレベルアップに貢献した存在。
「赤単アグロ」に対して極めて強く、メインボード時点では処理が困難、サイドボード後は《反逆の先導者、チャンドラ》《栄光をもたらすもの》の対象となりながらも、後続の《ゲトの裏切り者、カリタス》の御膳立てとなります。その他、当日のフィールドに存在してもおかしくないランプのような相手にも優秀なダメージソースとして活躍しますね。
プロツアー本番のフィールドを想定したデッキ群を片っ端からぶつけ合った結果最も高い勝率を示し、「理の選択」となったデッキ。デッキは渡辺 雄也さんのデザイン。
7 《沼》 5 《森》 4 《進化する未開地》 3 《風切る泥沼》 4 《花盛りの湿地》 -土地(23)- 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 4 《不屈の追跡者》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《新緑の機械巨人》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(21)- |
4 《致命的な一押し》 4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《闇の掌握》 4 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(16)- |
他チームが同一の調整過程を歩み、フィールドが赤アグロやゾンビと言ったデッキ群に支配されるようであれば、《ゲトの裏切り者、カリタス》《最後の望み、リリアナ》を使ったボードコントロールデッキが良い選択肢になり得るとの予想から。
ただし最後の最後で浮上した選択肢のため練り込みが不十分で、デッキの完成度が不安。デッキは山本 賢太郎さんのデザイン。
最終的な意思決定は各人に任せ、各自の使用デッキは以下の通りとなりました。
赤黒アグロ
黒単ゾンビ
黒緑昂揚
どのデッキも当日のフィールド次第ではあります。どうなるかは蓋を開けてのお楽しみ。
グランプリ・京都2017
ともあれまずはグランプリです。ここで望外の成績を収めることができればプロツアーでの立ち振る舞いにも大きな変化が生じます。練習は全くしていませんが、各種神や《王神の贈り物》クラスのボムを引き当てることができればバカ勝ちもあり得ますからね。
まぁ当然そんな都合の良い展開は起きないわけで、期待もむなしく強力なレアは引けなかったものの、優秀なコモン・アンコモンを最低限確認できる白緑デッキが初日シールドの相棒となりました。
通常、シールドで盤面の詰まりやすい地上ビートダウンを構築してしまうのは好ましくありませんが、《結束の試練》《超克》《旗幟+鮮明》と押し込み要素を3枚確認できたので悪くないでしょう。その他、相手側の神を対処できるよう2種の追放除去をタッチしました。見た目の感想は6勝3敗、上振れ7勝2敗。
結果は6勝2敗1分と予想の中間点。神にサックリやられたりしながら予定調和の黒星と、引き分けが1つ。クリーチャーの屈強な相手に対しては《バントゥ最後の算段》を使うコントロールプランをサイドボードに用意していたのですが、相手のデッキにも全体除去が入っていてお互いの決め手を潰し合ってしまい、勝ち筋が消えて引き分けに。
初日が奮わなかったため、この2日目のドラフトはプロツアーに向けた練習と割り切ることに決めました。2回のドラフトではそれぞれ白赤と赤黒をピック。
1stドラフトの白赤が3-0で、2ndドラフトの赤黒が2-1。最後の試合はほとんど勝ちだと思っていたところに《熱烈の神ハゾレト》が駆けつけ、《不屈のエイヴン》で疑似警戒と化し瞬く間に盤面を支配されて敗北です。
惜しくも6-0チャンスを逃してしまい、最終結果は11勝3敗1分。これでプロツアーで求められる成績は12勝4敗以上の縛りとなりました。
プロツアー1日目
今回のプロツアーはご存知の通り久方ぶりの国内開催。羽田なり成田なりの空港に参加者が集結し、飛行機で現地に向かう状況が最も「プロツアーが始まるんだ感」を感じるタイミングなのですが、新幹線での移動はなんだか気が抜けていまいますね。今回のスタンス的にはより力が入らずに済んで、僕にとって好都合ではあるのですが。
ドラフトラウンド
直前のグランプリドラフトを5-1できたことで多少なりとも自信が付いており、なおかつ前回の反省から、今回は明確な戦略を持ち込んできました。
事前のドラフト練習の中で感触の良かったアーキタイプをいくつかリストアップしておき、その中で再現性・人気度・認知度を考慮してやりたいアーキタイプの順序を決定しました。今回の狙いは以下。
- 白青飛行
- 赤黒アグロ
- 白赤アグロ・青黒
- 白緑・緑多色
まず最優先されるのが白青飛行。Hareruya Pros&Hopes合同練習会の際2回ほど決め打ちに近い形でテストしてみたのですが、3-0、2-1と好成績。
7 《平地》 5 《島》 3 《周到の砂漠》 1 《信義の砂漠》 1 《生存者の野営地》 -土地 (17)- 1 《這い寄る刃》 2 《忘れられた王族の壁》 1 《呪文織りの永遠衆》 1 《迷宮の守護者》 2 《孤高のラクダ》 1 《陽光鞭の勇者》 1 《空からの導き手》 2 《エイヴンの葦原忍び》 1 《ター一門の精鋭》 1 《ナーガの神託者》 1 《補給の隊商》 1 《尽きぬ希望のエイヴン》 1 《羊頭スフィンクスの君主、アネシ》 -クリーチャー (16)- |
1 《巧みな軍略》 1 《本質の散乱》 1 《叱責の風》 1 《絶妙なタイミング》 1 《強制的永眠》 1 《抑え難い渇き》 1 《研ぎ澄まされたコペシュ》 -呪文 (7)- |
デッキ23枚の呪文の内20枚がコモンと高い再現性を持ち、かつ周囲の話を聞く限りではこのカラーリングが強力なものであるという認識がなさそうだったことを受け、最有力候補に挙げました。
次点で赤黒アグロ。白青のみの決め打ちだと他色の強力レアを引き当てたり流れが悪かった場合の逃げ道がなくなってしまうため、反対色にも受け皿を用意しました。
2, 3ターン目に展開したクロック(《ケンラの永遠衆》や《ケンラの潰し屋》)を《穿刺の一撃》や《毒の責め苦》と言った優秀な除去で押し込んでいく攻撃的なアーキタイプです。これもコモンの比率が高く、卓のポジショニングが上手くいっていれば十分再現可能なデッキだと考えています。
3番手以降は大きく優先度を落とし、主に希望するアーキタイプに向かう中で片側一色の流れが悪いと判断された場合に向かう崩しのカラーリングです。白赤は本来強力なアーキタイプで可能ならばやりたいカラーリングですが、強力ゆえ希望するプレイヤーも多い認識ですので優先度は低く設け、流れを見て行けそうなら行く、あくまで本命は白青と言う位置づけ。
青黒は白青の白が絶たれるか、赤黒の赤が絶たれるかした場合の逃げ道。白も赤も上記の通り人気のカラーリングなので急激に枯れてしまうのは良くある話です。
4番手の白緑・緑多色はどうしてもポジション的に緑をやらざるを得なくなったり、初手で確実に使いたいボム(各種神や《圧倒的輝き》)を引き当てた場合に選ぶ選択肢です。ここ最近の緑多色は《楽園の贈り物》や《オアシスの祭儀師》など分かりやすいカードが増えた関係で認知度が急増し、卓内で混みやすくなった印象を受けます。
グランプリ京都でも緑多色をプレイする海外チームのプレイヤーを多く確認できたので、プロツアーでは極力避けるようにしようと決めました。
その他、青赤果敢や白黒ゾンビなど本来強力なアーキタイプも混雑を理由に原則向かわないことを決めています。特に白黒は先のグランプリで2回とも卓に3人おり、練習会でも被りが多発して0-3製造機となっていたので非常に敬遠気味です。
実際のドラフトは、1-1を《典雅な襲撃者》でスタート。白いデッキの2マナ域は大変貴重で、派手さは無いものの嬉しいスタート。1-2では《陽光鞭の勇者》をピックし白に寄せますが、1-3では巡目に相応しくない《霰炎の責め苦》の姿が。
白黒は避けたいカラーリングなので非常に悩みましたが、明らかに浮いたカードであったためやむなくピック。しかし1-4では黒いカードが見当たらず、《陽光鞭の勇者》の2枚目を見つけたのでそれを。
1-5の《尽きぬ希望のエイヴン》で白が確定し、1-6は《ケンラの潰し屋》、1-7は《抑え難い渇き》で白赤・白青への受けを用意。以降は大したカードが見つからなかったので白いカードを絞って下家に主張を行い1パック目が終了。
2パック目の流れ次第で補色を決める算段ですが、どうにも流れてくるカードが弱く、絞ったはずの白いカードもロクに流れて来ません。唯一緑の流れは良かったもののこの色だけはここまで全くの手付かずで触ることができず、2枚の《ロナスの重鎮》が流れていくのを指を咥えて見ていることしかできませんでした。
大した収穫が得られないまま2パック目が終了。現状デッキにロクな勝ち筋が存在しない状況だったので、止む無く3パック目では安価な勝ち手段として青の飛行クリーチャーを拾い集め、最終的には非常に出来の悪い白青飛行が完成。
失敗デッキ。2マナが薄いので押し込みに弱く、除去も少ない。仮にゲームが長引かせても分かりやすいフィニッシュ手段が《脅威への入口》ぐらいしかありません。デッキ構築のとき隣がなかしゅーさんだったのですが、デッキの全容を見るなり笑われてしまいました……
さすがに0-3を覚悟。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R1 | 白赤アグロ | ×〇× |
R2 | 白青 | 〇〇 |
R3 | 青黒サイクリング (Christian Calcano) |
×× |
R1は《糾弾の天使》入りの強力な白赤アグロに善戦するも惜敗。R2は下家のプレイヤーとマッチングしたのですが、なんと白青の2色被り。少し会話したところどうやら決め打ち気味に白青を選んでいたようで、戦略まで被ってしまっていました。上家の僕がこの様でしたので、相手側のデッキもお察しの内容。
R3は今大会でプラチナレベル及び世界選手権出場を決めたChristian Calcanoが相手。「なんで1回負けたの?!」と聞きたくなってしまうようなパワフルな「青黒サイクリング」で、3枚の《不快な顕現》に2枚の《遺棄地の恐怖》、そして《ドレイクの安息地》。見えるカードも
1-2。
2パック目の返りの悪さは下家に起因するものでしたが、自分が思っていた以上に白青は人気があるのかも。
構築ラウンド
使用デッキは前述の通り「黒単ゾンビ」。デッキの決定は出発直前に行ったため、この構築ラウンドがデッキの初回しです。
ここ最近のプロツアーは大体そんな感じなのですが、個人的に「練習量<正解デッキを選択すること」なのでプレイの精度が下がるのは覚悟の上です。サイドプランとゲームの要点のみ共有を受けていざ対戦へ。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R4 | 赤単アグロ (Travis Woo) |
×○○ |
R5 | 赤単アグロ | ×○○ |
R6 | 黒単ゾンビ (Andrea Mengucchi) |
○○ |
R7 | 白青王神 | ○○ |
R8 | 黒単ゾンビ (Huang Hao-Shan) |
○×○ |
なんと5-0。
ドラフトラウンドを1-2したため雑多なデッキの多い下位卓でスタートしたのですが、幸運なことに緒戦を赤単アグロと2連戦し、無事成績を回復。その後は想定通りのマッチングをこなし、相性の悪い王神にもマッチを取れたりと終始ツイていました。
しかしただ単にツイていただけではなく、調整グループ内で事前にマッチアップの要点を突き詰められていたのが大きかったですね。細い線ではありますが、知っていさえすればそのポイントに対して真っすぐに突き進むことができます。
このマッチアップではいかにして《激変の機械巨人》に対する受けを作るかが重要で、《無情な死者》はマナを浮かし続けることでいくらかのリソースを残すことができますし、《金属ミミック》はアーティファクトカウントで生贄を免れることができます。
また、メインデッキ時点ではコンボに特化している都合で《不敬の皇子、オーメンダール》に対して有効な回答をほとんど持たないので、狙えるシチュエーションでは積極的に狙っていきます。
ドラフトラウンドと合わせ、初日の成績は6勝2敗。これまでのプロツアーの初日成績が3勝5敗、4勝4敗、5勝3敗だったので、回を増す毎に良い結果が出せるようになってきて素直に嬉しいですね。
一つ残念なのは、デッキを共有したメンバーの多くが奮わななかったことです。僕は運良く赤アグロと初戦を2連戦しましたが、他メンバーはランプや王神デッキと連戦した様子で、苦戦を強いられていました。上位卓は赤アグロとゾンビがフィールドのほとんどを占めていましたが、下位卓は雑多なデッキが混在しており、混沌とした様相を示していましたからね。
プロツアー2日目
この日も前日同様6勝2敗の成績を収めることができればゴールドレベルに到達し、6勝1敗1分の成績であればトップ8となります。
しかしやることに変わりはありませんね。気負うことなく、全ラウンド楽しむだけです。
ドラフトラウンド
1-1はなんと《スカラベの神》! この環境で初めて神を引き当てることができたのですが、それがプロツアーの場と言うのは何とも幸運。喜んでこれをピック。
1-2の《不吉なスフィンクス》、遅い巡目の《致死の一刺し》を受けて素直にコントロール青黒へ。
途中《ラザケシュの儀式》をピックできたのは僥倖でした。《スカラベの神》クラスのボムレアは1ターンをサーチに費やしてでもプレイする価値がありますからね。このカードは疑似的にデッキのボムレアを増やす役割を果たします。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R9 | 青赤 (Patrick Dickmann) |
○×× |
R10 | 白赤 | 〇〇 |
R11 | 白緑 | ×〇〇 |
実際の試合も《ラザケシュの儀式》で《スカラベの神》を持ってきて制圧する展開でほとんどのゲームを勝利。初戦のPatrick Dickmannの青赤の完成度が素晴らしく、テンポの良いビートダウンを前にサーチするような暇を許されず押し込まれて負けてしまいました。
ただ、Patrick Dickmannは僕の下家でドラフトをしており、画像の通り自分のデッキ用のカードを取り過ぎてしまっていたので、もう何手かカットに回せたはずです。技術不足のツケを払わされてしまいました。
構築ラウンド
前日会場内を隈なく歩き回った結果、上位卓に「黒緑昂揚」が一定数存在することを確認しました。ホテルに戻ってからサイドプランを考えていたのですが、相手側の戦略が《巻きつき蛇》+《歩行バリスタ》、《ヤヘンニの巧技》、《最後の望み、リリアナ》と多角的で、実際のゲーム展開が見えて来ません。
グループ内で最もゾンビ造詣に深いナベさんに相談しようとするも、夜遅かったこともあり就寝済み。当日朝暇を見つけて声を掛けよう試みますが、対戦や取材で噛み合いが悪く、あれこれしている内に構築の1戦目が始まってしまいました。
「まぁこの1戦が終わったら聞きに行けばいいかな…」なんて思っていたところ
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R12 | 黒緑昂揚 | ×× |
ぬわーーーー!!!!
1ゲーム目は事故でやむなく落としてしまったのですが、2ゲーム目は完全なサイドボーディングミスでした。
第二の犠牲者を出さないために、教訓を残し……。
試合後ようやく見つけたメンバーとサイドプランを共有しますが、時すでに遅し。これにてトップ8の芽は消滅。しかし逆にここまで出来過ぎていたぐらいなので、大きく気を落とすようなことはありませんでした。
こういった状況でこそ気負わない精神は有効に働きますね。敗北をその後のラウンドに引きずらないのって大事なことです。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R13 | マルドゥ機体 | ○○ |
R14 | 赤単アグロ | ○○ |
R15 | 黒単ゾンビ (Pierre Dagen) |
○○ |
その後は上位メタデッキとの対戦を順調にこなし、危なげなく勝利。デッキがフィールドに対してドンピシャにハマっており、気持ち良さすら覚え始めていました。
R15では同じHareruya ProsのメンバーであるPierre Dagenとマッチング。黒単ゾンビのミラーマッチもこれで3度目となりますが、「《墓所破り》《戦墓の巨人》以外は除去しない」「逆に自分はいち早くそれらエンジンの回転に努める」の方針を貫き、勝利を重ねて来ています。フルタップ時の《無情な死者》など除去したくなる気持ちも分かりますが、ここはグッと我慢です。ライフレースによりゲームの勝敗が決することはまずありませんからね。
最終戦を前に、当初絶望的と思われた12勝4敗の成績にリーチ。現状のスコアで11勝5敗以上の成績は確定していますが、前述の通り次のプロツアー権利に価値はありません。
望外のゴールドレベルまであと1勝。最後の一戦、しかしスタンスは崩さず、気楽でリラックスした気持ちを維持し、最終戦のテーブルへ向かいます。しかしそこにいたのは……
藤村 和晃。
かれこれ10年来の付き合いになる友人です。僕がマジックを始める何年も前から競技シーンへの取り組みを続けており、彼もまた、今大会をもってゴールドレベルへの昇格を決めていました。
直前のR15を勝利すればトップ8を確定させるラインにいたのですが、残念ながらSamuel Pardeeの駆る黒緑昂揚に敗れこれを逃しています。彼がこの最終戦を勝利することによるプロレベルの変動はありません。「もし当たるようなことがあれば譲ってあげるよ」と事前に話されていたものの、「そんな都合のいい展開がある訳ないだろう」と笑って押し退けていました。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
---|---|---|
R16 | 藤村和晃 | 〇〇(トス) |
古くからの友人と、時を同じくして同じ舞台に手を掛けたその瞬間。ちょっと感慨深いものがありましたね。辛いことばかりと悩み苦しんだ今シーズン、一時はプレイヤーとしての存続をも悩んだほどでしたが、一度壁を乗り越えた先には素晴らしい景色が広がっていました。
12勝4敗。
プロポイント15点を獲得し、ゴールドレベルに到達!
大会を終えて
自分でも全く予想だにしない結末を迎え、イマイチ実感が沸かず呆然としていましたが、たくさんの方々から祝福の言葉をいただき、ようやく現実のものとして受け入れることができました。ただ、このゴールドレベル自体、自分では棚ぼたのようなものだと思っていて、ここまで書き連ねた通り無数の幸運の末に得たものだと感じています。
しかし仮にそうであっても、ゴールドレベルになったという事実と、その結果来シーズン全てのプロツアーに対する出場権を得たという事実に変わりはありません。
これは一つの契機です。
これまでにもいくつか、大きな契機となることがありました。グランプリ・京都2015でトップ8に入ったこと、Hareruya Prosに入ったこと、チーム武蔵の調整グループに誘っていただいたこと。
これらの出来事はその一つ一つが結び付いており、全てが今現在の自分を形作っています。このゴールドレベルの到達も、僕自身を次なる舞台へと運ぶ新たな契機となることでしょう。
まずはこのチャンスを活かすこと。「最高の舞台で最高のプレイをする」ために。
それではまた次回。
原根
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