By 富田 翼
昨年の10月にHareruya Prosのメンバーから1本の記事が届いた。
「 表面的なサイドボーディングの危険性と機会費用」と題されたこの記事は瞬く間に広まり、大きな反響を呼んだ。点で対処するサイドボードのリスクと、過剰サイドによるデッキバランスの崩壊の危険性を説いていたのだ。
この記事を執筆したピオトル・グロゴゥスキはどんな人物なのか。また、なぜこの記事を書くに至ったのか。我々晴れる屋スタッフ陣は彼と接触する機会をうかがっていた。
そしてついに、ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019でその機会が訪れたのである。
何故あの記事は生まれたのか
――「ピオトル選手が執筆されたサイドボーディングの記事は日本でとても話題になりました。Hareruya Prosへ加入して、何故あの記事を最初に選んだのか理由を教えてもらえますか?」
ピオトル「ありがとう。私はサイドボーディングはマジックでもっとも複雑な部分であり、対峙した相手と熟練度に差があれば、大きなアドバンテージを得ることができると考えています。時には直感に反するような選択も必要になることもあるのです。」
――「直感に反するとは、どういうことなんでしょうか?」ピオトル「“デッキにカードを入れる”のは必ずしも正解ではなく、ときには“デッキ自体を再構築する”ことが要求されるのです。この考え方を知った時、私自身大きな衝撃を受けました。また、新規プレイヤーにとっては理解しがたいものでもあります。」
――「あの記事を読むまではサイドボーディングとは有効なカードと不要なカードの入れ替えだと考えていました。知見が広がった方も多いと思います。」
ピオトル「この考え方については随分と思考を巡らせてきましたが、私はこれまで戦略記事として書いたことはありませんでした。ですから、私にとっても長い間書く場所を求めていたテーマだったのです。それなのでHareruya Prosとして最初の記事としたのです。」
――「それでは今後の記事は“思考系”と“デッキ解説”のどちらを中心に書かれるのでしょうか?」
ピオトル「私はマジックにおいて自分が持つ強みは何なのかを常日頃から考えるようにしています。ですから、自分の得意分野に関連した考えはみなさんにお伝えしたいと思っていますね。」
ピオトル「私はマジックのあらゆる側面で突出しているわけではないですが、自分の強みだと思う領域に関しては非常に自信があります。だからこそ、先日モダンのデッキ選択についての記事を書かせていただいたわけです。」
ピオトル、モダン語り
――「モダンが好きで日常的にプレイされているとのことですが、『ラヴニカの献身』ではモダン界に影響を与えそうなカードが加わる一方で、愛用されていた《クラーク族の鉄工所》が禁止となりましたね。今後どのようなデッキが活躍すると思いますか?」
ピオトル「従来に比べれば、『ラヴニカの献身』が発売されてからモダンをプレイする機会は少し減りました。お気に入りだったアイアンワークスが禁止改定で使えなくなり感傷的にもなったのもありますが、何よりも目の前に迫ったミシックチャンピオンシップの準備に集中したかったからですね。」
ピオトル「新たに登場した《雷電支配》を使ったデッキが強力である可能性はありますが、もし今すぐモダンの大会で勝ちたいというのであれば、《発明品の唸り》プリズン、グリクシス・シャドウ、ドレッジが候補になります。」
――「最後の質問になりますが、ポストアイアンワークスのスロットマシーンがお披露目になりましたね。あのデッキはどういう経緯で完成したのでしょうか。」
ピオトル「《類似の金床》を使ったデッキは、私自身が作り上げたものではありません。私はアイアンワークスに関連したFacebookグループに所属しており、実は《クラーク族の鉄工所》が禁止になった日にそのグループが作ったものなのです。私の最新の記事では、このデッキに対する所感について軽く触れてありますので、是非読んでみてくださいね。」
マジックは思考し続けるゲームだ。だからこそ考えることを止めた瞬間に、残酷な現実が訪れる。ピオトルは止めなかった思考の先を、その世界を知らない我々へと届けてくれたのだ。
今後も彼の活躍と、新たに教えてくれる世界観を楽しみにしよう!