By Kazuki Watanabe
世界選手権2017に出場しているプレイヤーは、当然だが、世界中のトーナメントで活躍をしている実力者ばかりだ。
いずれのプレイヤーの実力も世界最高峰。その彼らを見ていると、ふと、こんな疑問が頭を過る。
「どうすれば、彼らのように強くなれるのだろう?」
これが素朴で幼稚な疑問であることは承知の上。しかし、これは貴重な機会なのだ。直接、その疑問をトッププロにぶつけることができるのだから。
この疑問を、今回は彼にぶつけてみたい。
ハビエル・ドミンゲス。
スペインを代表するプレイヤーである彼は、グランプリトップ8を6回(2度の優勝を含む)、プロツアー『戦乱のゼンディカー』とプロツアー『破滅の刻』で9位に入賞を果たしている。ワールド・マジック・カップでのキャプテンなど、輝かしい戦歴を誇るトッププロである。
複数フォーマットでの活躍し、昨シーズンはその勢いがさらに加速して、見事プラチナ・レベルを獲得。そして、今回の世界選手権2017では、トップ4入賞を果たした。
その彼に、単刀直入に聞いてみた。「どうすれば、あなたのように強くなれるの?」
自分のベストを探す
ハビエル「これは難しい質問だな。だが、一つアドバイスをするとすれば、自分にとってベストなマジックとの付き合い方を見つけること。これに尽きるね」
――「ベストな付き合い方、か。そして、君はそれを見つけたわけだね」
ハビエル「ああ、少なくとも今のベストは見つけたよ。プラチナ・レベルを獲得したのは、自分の付き合い方、言わばスタイルを見つけたからに他ならないよ。見つけるのに少し時間はかかったけどね」
――「かなり色々試したみたいだね」
ハビエル「そのとおりさ。色々なスタイルを試したよ。例えば、一日に3時間はマジックに使うと決めたとしても、その過ごし方で大きく変わってくる。3時間ドラフトをやるのか、スタンダードをやるのか。記事を読む人もいるだろうね。そして、これには万人共通の答えというものはない。人それぞれ、ベストが違うからね」
――「なるほど。じゃあ、”ハビエル・ドミンゲスのベスト”を教えてもらえる?」
ハビエル「俺の場合、一日の時間を決めるようなことはせず、とにかく毎日マジックに集中するようにしている。まずはひたすらMagic Onlineだ。そして、過去のプロツアーやグランプリ、世界選手権などの動画を見る。そして、それを見ながら、自分の考えと比較するんだよ。『これをプレイするだろう』『こうアタックするだろう』『違った! 何故だ?』とね。自分の目標、お気に入りのプレイヤーを見つけて、それをひたすら見るようにするのがおすすめだね」
――「動画を見て学ぶわけだね。お気に入りのプレイヤーはいるの?」
ハビエル「お気に入りは、渡辺 雄也と八十岡 翔太だ。彼らの動画は、ほとんど見ていると言っていいだろうな。日本の読者向けにお世辞を言っているわけじゃない。俺にとって憧れの二人なんだ」
――「その熱さが伝わってくるよ。確かに彼らは世界最高レベルのプレイヤーだよね」
ハビエル「ああ、間違いないね。俺は、残念ながら彼らのような特別な才能を持っていない。だからこそ、学ぶのさ。学ぶ意欲なら、彼らにだって負けてないと思っている。自分のスタイルというのはつまり、ベストな学び方を模索することであり、学ぶことこそが、強くなる鍵なんだよ。それでも、やはり彼らには及ばない。でも、マジックというのは凄いゲームでね。そんな俺でも、彼らと対戦することができる。実際に、ドラフトラウンドで翔太と対戦したんだ。初対面ではないんだが、今回も感動し、そして驚いたよ。『何度見ても、プレイが速すぎる!』とね」
――「楽しい一戦だったみたいだね」
ハビエル「最高だったよ。……彼らの話をすると終わらなくなるから、マジックとの付き合い方の話に戻ろうか。これはあくまでも俺の付き合い方だ。ストイックにひたすらマジックに打ち込む、反対にもっと短く、仕事やプライベートを充実させた方が良いから週末だけ、という人もいるはずだ。誰かのベストに引きずられる必要はない。デッキの選択が人それぞれ違うように、自分だけの付き合い方を見つけて欲しいんだ。コミュニティもそうだ。属した方が良い人、苦手な人、色々居るはずだからな」
――「なるほどね。君の場合の人付き合いについても教えて貰おうかな?」
ハビエル「俺の場合は、自分の考えを仲間に共有し、コメントを貰うということが多いね。その中でも、親友であり師でもあるマルシオ・カルバリョと過ごすのがベストだ。俺がHareruya Prosに加入する直前にHareruya Latinの発表があった。驚いたよ、まさか同じチームになれるとはね。今回も共に出場しているわけだけど、ここに至るまでたくさんのことを教わった。俺のリミテッドの知識は、ほとんど彼に習ったようなものだよ」
――「そうなんだね。連絡を頻繁に取り合っているの?」
ハビエル「ああ、できる限りね。今回は、ほとんど練習の時間が取れなくて困っていたんだ。そんなときにマルシオから連絡があって、『今回のドラフトはこんな感じだよ』と情報を貰った。それでカードの評価や環境全体を把握して、そこからはいつもの生活さ! 何もかも、彼のお陰だよ。……そういえば、マルシオのリミテッド記事を作ったんだって? 日本語が分からないんだが、どんなことが書いてあるんだ?」
――「えーと……(記事を見せながら、少しずつ説明)……と、こんな感じだね」
ハビエル「……困ったな。これで日本のプレイヤーがさらに強くなった。間違いないよ。基礎的な部分をこれで抑えて、練習すれば良いんだからな。日本人は幸運だ。彼がリミテッドを解説する機会は限られているからね」
――「そう言って貰えると、インタビューして良かったと思えるよ」
――「さて、そろそろ次のラウンドだ。最後に、君の母国、スペインについて教えてもらえる?」
ハビエル「スペインに行ったことがある、という人は少ないかもしれないが、とても良いところさ。来年には、ビルバオでプロツアーも開催される。出場する人は、楽しみにしていて欲しい。きっと素晴らしい時間を過ごせるはずさ。コミュニティも強力で、最近は特にモダンの人気が高い。そういった意味でも、プロツアーを楽しみにしていて欲しいな」
――「楽しみにしておくね! 日本に来る予定はあるの?」
ハビエル「プロツアー『破滅の刻』で足を運んだのが最後だが、せっかくHareruya Prosになったんだ、またぜひ行きたいね。スペインも良い国だし、このアメリカも素晴らしいが、日本も同じくらい良いところであるのは知っている。二人のスターが居ることも含めて、俺にとっては憧れの国であり、文化だよ。晴れる屋のユニフォームを身につける一人として、それを誇りに思いながら今シーズンも戦うよ」
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