モダン・レガシーにおける『イクサラン』考察

Javier Dominguez

Translated by Yoshihiko Ikawa

原文はこちら
(掲載日 2017/09/25)

ハロー!

俺はハビエル・ドミンゲス。スペインのプラチナ・レベルプロだ。晴れる屋のために記事を書けて嬉しいよ。

俺の最初の記事では、モダンやエターナルフォーマットで使われるかもしれない『イクサラン』のカードについて話していこうと思う。新しいセットを分析するときまず最初にやることは、従来の使ったことがあるカードと新しいカードを比較することだ。いくつかのカードはメタゲームによって価値が変わるため、このような過去のカードとの比較だけで判断するのは危ないが、その罠に気を付ければ大丈夫だろう。

さぁ、『イクサラン』を見ていこう!

《軍団の上陸》

軍団の上陸

土地に変身する可能性を秘めている1/1の絆魂クリーチャーは、ソウルシスターズや白黒トークンといたデッキに採用しうる。ただ、このカードが優秀であるには両面ともが機能する必要があるが、「変身」は滅多に起こらない。またこのカードは《無形の美徳》と相性が良いが、こういったデッキには《思考囲い》《コジレックの審問》といったカードを1マナ圏のカードとして採用しがちだ。

《穢れを灰に》

穢れを灰に

この”ヘイト”エンチャントは、《安らかなる眠り》《墓掘りの檻》の両方より悪く見える。ライフゲインするカードがどうしても欲しいなら使うかもしれないが、そんなことはそうないだろう。墓地対策をチームで分割して使うのは難しいので、チーム共同デッキ構築モダンで出番があるかもしれないな。

《トカートリの儀仗兵》

トカートリの儀仗兵

1/3クリーチャーに《倦怠の宝珠》が付いてきた。もし《欠片の双子》のようなデッキが支配的なTier1になれば、ヘイトカードとして採用されるだろう。確かにこいつは《稲妻》で倒されてしまうが、《エーテル宣誓会の法学者》がサイドボードの定番になっていることを考えれば、そう大した問題じゃないだろうな。

《アズカンタの探索》

アズカンタの探索

《アズカンタの探索》はこのセットにおいて最も評価が難しいカードの1枚だ。まともなカードではあるが、モダンで通用するためには墓地に置かれて嬉しいカードと一緒に採用する必要がある。たとえば《未練ある魂》が入ったコントロールデッキなんかではサイドボードに欲しいかもしれないが、今のメタゲームを考えると少し遅すぎるだろう。

《選択》

選択

《選択》はこのセットのなかで、最もモダンで使われるカードだろう。初出がモダンイリーガルな『インベイジョン』なので、再録カードではあるが、モダンフォーマットとしては純粋な「新カード」だ。

血清の幻視手練

《血清の幻視》《手練》との優劣はデッキによって変わる。《選択》は掘る力と引き換えに柔軟性を得ていて、リアクティブなデッキはソーサリー2種よりも《選択》を好むだろう。例えば、青白コントールだと対戦相手が何をしてくるか知る前に「《血清の幻視》をプレイする」か「《マナ漏出》のためにマナを構える」かの二択をよく突きつけられている。《選択》はこの問題を解決してくれるし、《瞬唱の魔道士》を考えるとより良くなる。もしカウンターなどのためにマナを使わなかったならば、エンド前に《選択》をフラッシュバックできるんだ。

感染のようなデッキもインスタントでプレイできる《選択》の方が望ましいだろうし、他にも大量のキャントリップ呪文を必要としないデッキで、《血清の幻視》《選択》に差し替えるデッキがあると確信してるよ。

炎の中の過去むかつき

ストームやアドグレイスのようなコンボデッキは、おそらく《選択》より《血清の幻視》《手練》を好むだろう。基本的にこういったデッキはコンボパーツを探しに行くか、もしくは勝ちにいくためにマナを使う。したがって、マナを使わずに相手の妨害に充てるのはコンボデッキには合わないんだ。

特にストームのようなデッキにとって大きな変化となるのは、必要ならば8枚以上のキャントリップ呪文を採用できるようになったという点だ。Wizardsが《ギタクシア派の調査》を禁止にしてからというもの8枚以上のキャントリップを採用するのは難しかった。再び多量のキャントリップを採用できるようになったということは、《深遠の覗き見》のようなカードを《選択》に置き換え、より安定性を高めることができるということだ。

まとめると、あまりインスタントが入ってないようなプロアクティブなデッキでは《血清の幻視》が変わらず優先されるだろうが、ディフェンシブなデッキでは《選択》がキャントリップ呪文として採用されると期待している。

《航路の作成》

航路の作成

本当に『イクサラン』は青使いにカードを引かせたがってるな!このカードのパワーレベルはとても高く、モダンだけではなくレガシーですら使われる可能性があると俺は思っている。そのカギはいかにディスカードをデッキにとって有用なものにするかという点で、それは《先読み》にはできなかったことだ。《入念な研究》よりは確かに劣るだろうが、レガシーのリアニメイトでプレイされている場面を見ることができるだろう。《意志の力》のコストにできるのもいいよな。

御霊の復讐ヴリンの神童、ジェイス

モダンでは、《御霊の復讐》のようなカードと一緒に使うことができる。また、これらのデッキは通常《ヴリンの神童、ジェイス》のような小さなクリーチャーを採用しているため、ただの「2マナ2ドロー」としてプレイするという選択肢があるというのも非常に強力だ。軽くてアドバンテージが取れる呪文というのはマジックにおいてとても珍しいから、このカードから目を離せないね。

《秘儀での順応》

秘儀での順応

モダンやレガシーでの俺の経験に基づくと、このカードはこれまでゲームに勝てるだなんて考えもしなかった未知のコンボを生み出す可能性がある。比較対象になるであろう似たようなカードからの大きな改善点としては、戦場に出ているカードだけではなく、全てに作用するようになっていることだ。そういうコンボデッキがあったよな?そう、《絵描きの召使い》、君のことだ!

《狡猾な漂流者、ジェイス》

狡猾な漂流者、ジェイス

コンボについて話すと、《倍増の季節》が戦場にあるときにこの《狡猾な漂流者、ジェイス》を出せば大量にトークンが出せるんだ。いくつかのカジュアルデッキで見られるだろう。もしガチなモダンで目にするとすれば、きっとルーティングを有効活用できるデッキなんだろうけど、青にはそういったカードがすでにたくさん用意されているんだよなぁ。

《波を司る者、コパラ》

波を司る者、コパラ

モダンのマーフォークで、《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》とポジションを争うのがこの《波を司る者、コパラ》だ。

大いなる玻璃紡ぎ、綺羅

君のクリーチャーを守るという点だけでいうと、《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》の方が優れている。なぜなら、除去を打てるなら2マナぐらい喜んで払ってくるゲームがそう少なくない数あるだろうからだ。また《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》は飛行クリーチャーなので、《未練ある魂》トークンのようなフライヤーに対するブロッカーとして活躍できるという小さいアピールポイントもある。

一方《波を司る者、コパラ》は、クリーチャーを守る点に関しては《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》よりほとんどの状況で少し劣っている。相手がもし対戦相手が2枚の除去でこちらのマーフォーク1体を除去できるなら、どっちにしろ2マナ払うことだってできるだろうからだ。ただ《波を司る者、コパラ》はマーフォークなので、より大きいサイズに成長し、ブロックされない島渡りクリーチャーとして活躍することができる。

突然の衰微

非常に均衡しているように見えるが、あるカードの存在が《波を司る者、コパラ》の方がマーフォークに合っていると考えさせている。そう、《突然の衰微》だ。これまで黒緑系の典型的な《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》への回答が《突然の衰微》だったが、《波を司る者、コパラ》《突然の衰微》にすら2マナの税を押し付けることができるのだ。以前に比べれば《突然の衰微》の採用枚数は減っているが、それでもこれはマーフォークの進歩だと俺は考える。

さらに良いことは、対戦相手は《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》が入っているかどうか知ることができないので、大抵は《致命的な一押し》のような除去から使っていき、《突然の衰微》をまだ見ぬ《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》のために温存しておくことだ。もしこういった順番で除去を使ってくれると、《波を司る者、コパラ》はより輝くことになる。

この2枚は本当に僅差だし、レジェンド・クリーチャーである点も無視できないから、本当にベストなのは両方を1枚ずつ採用することかもしれないな。

《幻惑の旋律》

幻惑の旋律

《死の影》デッキの隆盛により活躍の場を広げてきた《不忠の糸》のような、3マナで《死の影》を奪うことができる《支配魔法》の一種だ。《不忠の糸》はジャンドの貴重な2マナ域-《タルモゴイフ》《闇の腹心》-を奪うために使われてきたが、それらのデッキに対して《幻惑の旋律》《不忠の糸》より少し劣るだろう。《突然の衰微》に耐性があるとはいえ、1マナ余計に払わねばならないことを正当化してはくれない。

支配魔法不忠の糸

《不忠の糸》よりも優れていると本当に推せる点は、《瞬唱の魔道士》で再利用できる点だな。

《帆凧の掠め盗り》

帆凧の掠め盗り

クリーチャータイプが”人間”であるというのが最も評価すべき点だ。人間カンパニーは力強いアーキタイプでありながらコンボデッキに対して非常に脆弱だったので、その相性差を改善するためにこのカードを使いうる。長年様々なクリーチャーデッキのサイドボードに《潮の虚ろの漕ぎ手》を使ってきたことからも分かるように、このカードが人間カンパニーをアップデートしてくれるだろう。

《遺跡の略奪者》

遺跡の略奪者

パワーレベルは明らかに《闇の腹心》に劣るが、もし似たような能力のカードをさらに採用したいデッキがあれば、このオークはしっかりと機能してくれるに違いない。このカードが一番輝くのは、《ヴェールのリリアナ》《血染めの月》が入った赤黒ミッドレンジだろう。

《形成師の聖域》

形成師の聖域
このエンチャントは感染のサイドボードに入るだろうと予想している。狭い《トレストの使者、レオヴォルド》のように働き、こちらのクリーチャーに除去を打ってきたときにドローし、その後に《巨森の蔦》《払拭》のようなカードでカウンターするというアクションができる。感染というデッキは対戦相手が大量の除去を持っていると支障をきたしてしまうが、このカードはそういった状況に対抗するのに良い武器なので、複数枚採用してもいいな。

呪文滑り野生の抵抗

これまではこういったデッキのサイドボードに《呪文滑り》《野生の抵抗》のようなカードが採用されてきたが、《形成師の聖域》はこれらよりも遥かに優れている。エルフのようなカウンター呪文が入ってないデッキでも採用しうるが、こういったデッキは《流刑への道》のような単体除去よりも全体除去の方が厳しいので、あまり合わないだろう。

《老樹林のドライアド》

老樹林のドライアド

このカードが良いカードだとは思わない。土地を与えることで対処するのが容易くなるので、赤緑の超前のめりアグロですらこの欠点は悪すぎる。対戦相手のデッキに基本地形が入っていなければ強力だろうが、今のモダンでそれは酷ってもんだ。

《クメーナの語り部》

クメーナの語り部

いくつかのデッキリストで《集合した中隊》のために緑をタッチしたマーフォークを見たことがあるし、マナベースが許容するならこの緑のマーフォークも採用されるだろう。《呪い捕らえ》よりは明らかに劣るが、いくつかのマッチアップでは1マナ域の不足が常にこのデッキの弱点だったので、《クメーナの語り部》はそういった部分を補ってくれるだろう。

呪い捕らえ

こいつを使うには、十分な島と4枚の《変わり谷》を採用しつつ1ターン目に緑を出すマナソースを何枚用意できるかが大きな問題になるが、もしマナベースが上手く作れるなら、そのサイズは十分に良いに違いない。

《イトリモクの成長儀式》

イトリモクの成長儀式

このカードは過大評価されていると俺は思う。他のカードと差し替えて採用することになるが、《ニッサの誓い》のようなカードと比較すると3マナでこの効果は重すぎる。変身さえすれば、非常に強力な、《ガイアの揺籃の地》よりも優れた土地になるが、モダンにおいて追加のマナを払った後に4体以上クリーチャーがいる状態でターンをパスし、返しに全体除去を打たれないようであれば、《イトリモクの成長儀式》がなくても勝っているだろう。

ニッサの誓いガイアの揺籃の地背教の主導者、エズーリ

《イトリモクの成長儀式》の一番良い使い方は《背教の主導者、エズーリ》が入っているエルフだろうな。このレジェンドが戦場にいる状態で変身すれば、その能力で自陣を《滅び》以外の全体除去から守ることができる。結論としては、俺にはこのカードが「二度勝ち」カードに思えるかな。

《魔術遠眼鏡》

魔術遠眼鏡

最初は、このカードが《真髄の針》より悪く見えた。なぜならこういったカードで1マナ重いというのが非常に大きいからだ。しかし、いくつかの状況では《真髄の針》よりも優れうると分かった。

真髄の針ファイレクシアの破棄者

まず一つは、レガシーやヴィンテージでの無色デッキでの違いだ。《真髄の針》のような効果のカードをメインからプレイしたいが、情報なしでの「カード名指定」は必然的に悪い指定にならざるをえない。

《魔術遠眼鏡》なら、何を指定すればいいか分かるだけでなく、自分のゲームプランを組み立てる前に対戦相手の手札を知ることができる。こういったデッキには《古えの墳墓》のようなカードがあるので、情報を得るために追加の1マナを払うことは十分に価値があるだろう。また、《ファイレクシアの破棄者》のような効果を使う際に手札を見ることはとても良い。

他の状況としては、モダンにおいて、その効果が潜在的には必要であるが対戦相手がそれをプレイしているかが分からないような、いくつかのマッチアップで《魔術遠眼鏡》が使いうると考えている。簡単な例として、モダンで君が緑単トロンを、対戦相手がアブザンをプレイしているとしたら、《大爆発の魔道士》に対処する何かを持っていたいと思うだろう。

大爆発の魔道士幽霊街

しかしながら、もし対戦相手がプレイするまで待つならその効果は手遅れだが、しかし相手が使っているかも分からない状態で指定するのは悪いプランでもある。こういった状況において、《魔術遠眼鏡》は価値ある情報を与えてくれる。なぜなら手札を見ることができた上に、《大爆発の魔道士》《ヴェールのリリアナ》《幽霊街》といった選択肢の中から手札にあるものを指定することができるのだ。《魔術遠眼鏡》は様々なフォーマットで見ることができるほど良いカードだと俺は思う。

《手付かずの領土》

手付かずの領土

明らかに《魂の洞窟》に劣るものの、《手付かずの領土》はスリヴァーのような部族デッキのマナベースを改善するだろう。古いフォーマットではカウンターが飛び交うので、このカードをがプレイされることはないと思う。

《廃墟の地》

廃墟の地

《幽霊街》が好まれるぐらいモダンは早いフォーマットであるので、《幽霊街》と競うには《廃墟の地》は遅すぎる。このカードの競争相手は《地盤の際》であり、いくつかのデッキでは《地盤の際》より優れていると思う。デッキに多くの基本地形が入ってれば、青白コントールのようなデッキのマナを整えてくれるのにも役立つ。また《世界のるつぼ》とのコンボも良く働く。

幽霊街地盤の際

いつだって、新しいカードを試すのはマジックの構築を行う上で一番大好きなパートなんだ。今回話したカードたちを早く試したいぜ!

読んでくれてありがとう!

Javier Dominguez

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