インタビュー: カルロス・ロマオ -ブラジル代表にプラチナ・レベルが揃った理由-

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアー初日の話題としては少し気が早いとは思うのだが、プロツアーが終わった後の話をさせて欲しい。

 1ヶ月後、マジック界を代表する大きなイベントが開催される。

 そう、ワールド・マジック・カップだ。

ワールド・マジック・カップ2016優勝、ギリシャ代表

 世界73ヶ国の代表が世界一の称号を目指して戦いを繰り広げるワールド・マジック・カップ。その代表を決める各国の国別選手権が終了し、全チームが出揃った

 さて、ここで皆様に一つ質問を投げかけよう。

 「あなたは、どの国が優勝すると思いますか?」

 この質問に対して、様々な答えが予想される。どの国も強力であることは間違いない。Hareruya Pros、そしてHarerya Hopesが代表を務めるチームも多数ある。なかなか一つには絞れないだろう。

 そんな中、“優勝候補の筆頭”として、この国を挙げることに異論はないだろう。

 ブラジルだ。

 メンバーは、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサカルロス・ロマオ、そしてルーカス・エスペル・ベルサウド

 史上稀に見る、全員がプラチナ・レベル・プロというドリームチームである。

 今回は、その中の一人、カルロス・ロマオに話を伺った。

 世界選手権2002での優勝を始めとして輝かしい戦績を誇る彼に、「ブラジル代表が、こんなにも強力になった理由」を直接聞いてみよう。

■ プラチナ・レベル、カルロス・ロマオにインタビュー

――「初めまして。お会いできて嬉しいです」

カルロス「こちらこそ、よろしく!」

――「早速、来月に開催されるワールド・マジック・カップについて話を聞きたいと思います。今年のブラジル代表は本当に豪華なメンバーが揃いましたね」

カルロス「ありがとう。そう言ってもらえると、とても嬉しいよ。世界中の皆が羨ましいと思うような2人とチームを組めるんだ。改めて説明するまでもないと思うけど……一応彼らの紹介をしておこうか」

カルロス「まず、ルーカス・エスペル・ベルサウドは、言わずと知れたプロツアーチャンピオンだ。そして、我らがHareruya Latinの仲間でもある。彼とは長い付き合いなのだが、実に聡明で、努力家なんだ。彼がプロツアーで勝利できたのは、その勤勉さが理由だよ。どちらかと言えば大人しいタイプだけど、マジックを楽しむという思いを常に持っているね」

カルロス「そして、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサは……彼こそ、なんと説明すれば良いのか困ってしまうね(笑) 歴史に名を残す偉大なるプレイヤー、とでも言っておこうか。ブラジルを代表するプレイヤーで間違いない。彼がキャプテンを務めることに異論を挟むものはいないだろう」

――「何度見ても、豪華な3名ですね……」

カルロス「私自身、驚いているよ。ブラジル選手権を戦っている最中は、もちろん優勝を目指して手一杯だった。決勝の相手がルーカスになって、『ああ、じゃあ二人で代表だ……ん? ということは、パウロと3人か!』と気付いたときの驚きは忘れられない。それから、優勝が決まったあとにパウロがやって来て、『僕たちがチームだよ』と笑顔で呟いたのも覚えている。これは大変なことになったな、と思ったよ」

■ 誰もが努力を惜しまない

――「以前、世界選手権2017でルーカスにもインタビューをしたのですが、どうしてブラジルのマジックコミュニティは、こんなにも強力なのでしょうか?」

カルロス「どうして強力なのか、か。今まで意識して考えたことがなかったけど、これは良い質問だ。そうだな……まず、これは一つの理由で説明できるものではないね。色々な要素が噛み合わさっている、と言うべきだろう。例えば、ブラジルではマジック以外にe-sportsも人気で、近年の盛り上がりは目を見張るものがある。『カウンターストライク』というFPSは有名だし、最近では『ウィニングイレブン2017』の世界大会でも、ブラジルの選手が優勝したんだ」

――「なるほど。競技的なゲームに対して、土壌があるのかもしれませんね」

カルロス「そうだね。もちろん、ゲームだけではない。数学も有名だし、サッカーの人気は知っているだろう? 我々に取っては、『何かに熱中する』、そして『熱中している人を応援する』というのは当たり前のことなんだ。カーニバルも、もしかしたらそうかもしれない。こういった気質が、マジックの盛り上がりにも寄与しているんじゃないかな」

――「そういった様々な要素が集まって、マジックの盛り上がり、そしてここ最近の輝かしい戦歴に繋がった、と」

Hareruya Latinのメンバーとドラフト中

カルロス「そういうことさ。誰もが努力を惜しまないし、そうやって頑張っている人を応援して一緒に上を目指す、ということが大好きなのさ。私もすっかり”ベテラン”と呼ばれる年になってしまったけど、その気持ちは忘れていない。『有名になりたい』『上を目指したい』と思う若い人がいたら、一切惜しまずに協力するよ。私もそうやって育てられたからね」

――「皆が育てたコミュニティが、結果を残しているわけですからね」

カルロス「そうだね。最近の飛躍は、その芽が出てきたからなのかもしれないね。だからこそ、もっと大きく育てなきゃならないのさ」

■ 最大のライバルは……

――「その結果の一つが、今回のプラチナ3人によるブラジル代表の結成だと思いますが、最大のライバルはどの国だと思いますか?」

カルロス「もちろん日本だ。晴れる屋のためにお世辞を言っているわけじゃない。間違いなく日本だよ。渡辺 雄也八十岡 翔太という世界最高の2人が居る。そして、Hareruya Prosの原根 健太。彼のような若いスターが居るのなら、日本は安心だ」

――「このインタビューは日本語に翻訳するから、今の言葉は彼本人も目にすると思いますよ」

カルロス「ああ、直接伝えておいて欲しいくらいさ。若いスターが居るかどうか、これは非常に重要だよ。ブラジルの仲間と話していて常々思うのだが、ベテランがただ勝ち続けるだけではコミュニティは育たない。我々の仕事は、勝利することで後輩の手本になること。そして――あまり気持ちの良い言い方ではないけれど、『後輩に追い抜かれないように』と少し焦りながら上を目指していくことなんだ」

――「なるほど。凄く深い言葉ですね」

カルロス「私が若い頃に比べたら、今は情報量や速度も含めて、格段に環境は良くなっている。昔は必死になって何週間も前のデッキリストを探していたのに、今じゃスマートフォンで一発だ。『負けてられない』と我々も奮起するし、若いプレイヤーを『追い抜いてこい』と鼓舞する。そうしていくと……プラチナ3人で代表を組めるようになるのさ(笑)」


 ここで、次のラウンドの開始を告げるアナウンスが流れた。

 2人で歩きながら、「日本のファンにメッセージを」と投げかける。すると、一際熱い言葉が帰ってきたので、それを最後に記して、このインタビューを終えることにしよう。

カルロスマジックは最高のゲームだ。地球の裏側に住んでいる私が、日本の皆にメッセージを送ることができる。こんなに素晴らしいものはない! これからも、一緒に楽しもう。あと、ワールド・マジック・カップでは最高の戦いを見せられるようにする。日本の合間でも良いから、応援して欲しい。……もちろん、対戦することになったら負けるつもりはないけどね!」

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