Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2017/11/10)
晴れる屋の少年少女たちよ、元気かい?マナスクリューと相手のトップデッキをグチる前に、自己紹介をさせてもらうぜ。俺の名前はカルロス・ロマオ。ブラジルのプロプレイヤーでHareruya Latinの一員だ。もうかれこれ15年以上もこのゲームをやっている。俺の初プロツアーは1999年。ライトの反射が強すぎてカードが見えないからって理由で、当時のプロツアー・トップ8はスリーブが禁止だったんだぜ。笑っちゃうよな。
簡単な自己紹介はここら辺にして、マジック:ザ・ギャザリングとプロツアー『イクサラン』について話していくとしようか。今回の記事では、プロツアーに向けてどう準備したか、プロツアー自体はどうだったか、俺たちのデッキについて語り、そしてちょっとだけ不運について嘆かせてくれ。
『イクサラン』ドラフトについて
このパートは俺にとって最も難しい。俺は自分が結構イケてるリミテッドプレイヤーだと思っているが、今回は理解するまでに時間がかかったんだ。最初のうちはMagic Onlineで負けまくったし、たとえチームでのディスカッションが俺のやっていることが全て間違っていると示してくれても、人の言うことを中々聞かない頭の固さが俺の成長を邪魔したんだ。
みんなが既に知っていることをここで述べようとは思わない。このフォーマットは長いことドラフトされているし、たくさんの優秀なプレイヤーたちが完璧なガイドを書いてくれているから、俺は考えをいくつか書くに留めておくよ。
自分の色のカードは、いとも容易くブースターから消え失せるんだ!これは何度も体験したし、実際にプロツアーでも起こりやがった。 1stドラフト、俺が1パック目の初手で《聖域探究者》に遭遇したとき、俺の4つ上の席のヤツが《軍団の上陸》を開封してピックした。俺の上家3人(彼の下家3人だ)にとって、彼が白、多分吸血鬼に向かうという明確な宣言だ!下家と被ってカードを分け合うのを好む人はいないし、これで少なくとも3枚はマトモなカードがピックできるだろうてことで俺は最高にハッピーだった。1パック目では本当にうまくピックできたし、マトモなカードはすべて俺が塞き止めたから下家は吸血鬼じゃないはず!「カルロス、お前は本当に天才だな!」なんて頭の中で興奮しながら2パック目を待ってたんだ。この時の俺は本当にいいデッキでこのドラフトを終われるだろうと、本当にそう思ってたし、マジックの神が俺に微笑んでる!とまで思ってたんだよ。
だが真実はこうだ:神は俺に微笑んじゃいなかった、俺を嘲笑ってたんだ!
2パック目は目も当てられないほど悲惨な流れで、3パック目にいたっては俺が完全なるバカヤロウだと自覚させるだけだった。俺はなんとか2-1できたんだが、ドラフト自体は2-1できるようなもんじゃなかったさ。
※編注:「パワーレンジャー」に出てくる戦隊ロボのこと。
ティムール・フォーマット (またの名をスタンダード・フォーマット)
プロツアーでティムールが優勝しなくてマジで良かった!!もし優勝してたら、俺の大好きなデッキのカードたちが「正義の鉄槌」の犠牲者になっていたであろうことは想像に難くないからな。勘違いしないでくれよ、プロプレイヤーたるもの、デッキを愛したり固執しすぎたりすべきでないことは分かってる。でもティムールは強いだけじゃなくて、プレイしていて本当に楽しいんだ!プロツアーは緊迫したトーナメントだ。プロツアーに挑むからには、ありったけの時間をスタンダードとドラフトの調整に費やした上で、すべてが思い通りにいくように天に祈ることになる。そんなとき楽しいデッキを使うチャンスがあれば、心労が少しは減るだろう?早くドラフトを終えて、スタンダードをプレイしたいだなんて思ったのは今回のプロツアーが初めてだったさ。いつもは逆なんだけどな!
『イクサラン』発売から時間が経った上にプロツアーもあったので、メタゲームはすでに確立されたが、俺たちは明確にベストデッキを手に取ったといえる。Hareruya Latinの一員であるセバスティアン・ポッツォが、俺たちが今回のプロツアーで使ったデッキと似たバージョンのティムールを世界選手権で使っていた。チームの何人かはこのリストが気に入っていたので、調整期間がまだ2週間あるにも関わらず6人中3人もがティムールに狙いを定めたんだ。俺たちは住んでいる都市や国が違うから、FacebookのグループとMagic Onlineを正解のリストを見つけるための手段に選んだ。
4色にするのがエネルギーのミラーマッチにおいて優れた選択肢であることは理解していたが、アグレッシブなデッキへの耐性と、《スカラベの神》《秘宝探究者、ヴラスカ》のためにマナベースを犠牲にすることは俺たちの求めたものじゃなかったんだよなぁ。《多面相の侍臣》《慮外な押収》プランが調整中ずっと手応えが良かったから、俺たちは変更するつもりはなかった。調整期間にブラジル選手権に出場して優勝することもできた。この結果のおかげでワールド・マジック・カップのベストチームの一員になれたし、俺にティムールを使う決意もさせた。
ティムールは依然ベストデッキだし、俺の決意も固まった。さぁ、デッキをチューンする時間だ!
俺たちのミラーマッチにおけるサイドボード・プランは《自然に仕える者、ニッサ》だった。調整期間でMagic Onlineやリアルの大会で当たったプレイヤーたちは、ミラーマッチで《牙長獣の仔》たちをサイドアウトするとともにデッキを遅くしていたから、それに対する解答が「3ターン目《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》、占術2」ってことさ。今のティムール・ミラーマッチには《牙長獣の仔》の居場所はないって、いくつかの記事にも書いてあったよな!ミラーマッチだけじゃなく、コントロールや《秘密の備蓄品》トークンにも《自然に仕える者、ニッサ》は強力なんだ!
《奔流の機械巨人》をミラーマッチとコントロールへのサイドプランとして検討したが、《奔流の機械巨人》を活用するためには多くのスロットが必要になるのは知ってるよな。《本質の散乱》《天才の片鱗》が入ってなければ、この素晴らしいカードも何のバリューをもたらしてくれはしない。実際、当初はミラーマッチ用のサイドプラン候補ではあったんだが、長いトーナメントを勝ち抜くためにもっとバランスの良いサイドボードが俺たちには必要だったんだ。
4 《森》 2 《山》 1 《島》 1 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 3 《尖塔断の運河》 3 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 3 《逆毛ハイドラ》 1 《多面相の侍臣》 4 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー (24)- |
4 《霊気との調和》 2 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 2 《慮外な押収》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (14)- |
3 《否認》 3 《自然に仕える者、ニッサ》 2 《呪文貫き》 2 《削剥》 2 《人工物への興味》 1 《マグマのしぶき》 1 《チャンドラの敗北》 1 《ジェイスの敗北》 -サイドボード (15)- |
デッキリストはサブミットした。スリーブにも入れた。さぁ、アルバカーキで俺たちHareruya Latinが輝く準備は整った。俺は良い気分だった。かなりこのトーナメントに期待していたし、再び俺がうまくできるだろうなと感じていたんだ!準優勝だった2016年のプロツアー『カラデシュ』を除いて、直近の3回のプロツアーでは2日目にすら行けなかった。プラチナにはなれたが、俺は凹んだぜ。プロツアーでの信頼を取り戻すためには、もっとうまくやる必要があることは分かってる!俺はマジック:ザ・ギャザリングの神に祈った。Twix(※)3本とFoilの《自然に仕える者、ニッサ》を奉納するから、どうか俺に幸運と素晴らしいトップデッキを頼むよ!!
※編注:「Twix」はバタークッキーをカラメルとミルクチョコレートで覆ったチョコバー。アメリカやイギリスをはじめとした世界各国で販売されている。
……Lineの調子が悪かったのか、はたまた俺の言ったことがよく聞こえなかったのかは定かじゃないが、とにかく俺の願いはまったく聞き入れられなかった。プロツアーの最終結果は8-8(ドラフト3-3、スタンダード5-5)で、16ラウンドのマジック:ザ・ギャザリングはすべて無為になった。ただそれでもティムールを選んだことについては微塵も後悔していない。ブラジル選手権でこのデッキのプレイについて自信が付いていたし、俺は今でもこのデッキがベストだと思っているからな!
来週はグランプリ・アトランタ2017に参加するつもりだが、きっとティムールを使うだろう。メインデッキを少し変える必要があって、《マグマのしぶき》たちをデッキ箱をしまうとともに、メインにもう1枚の《慮外な押収》と2枚目の《削剥》を入れるだろう。(※)《マグマのしぶき》はアグロデッキに対してとても強力だし緑のエネルギーデッキ相手でも時々仕事をするけど、プロツアー優勝デッキに備えて改良する必要があるからな。2枚目の《削剥》は《王神の贈り物》デッキへの解答であり、《人質取り》に対する優秀な除去なんだ!
編注:ロマオがプロツアーで使ったデッキは、セバスティアン・ポッツォとリストが微妙に違うようです。
旅について
もし君が「ブレイキング・バッド」(※)のファンなら、アルバカーキはそんなに珍しくないかもな。逆に、君がもしテレビショーのファンでもなくアメリカに住んでもいないなら、アルバカーキなんて聞いたこともないだろう。ニューメキシコ州の小さくて大きなその都市は、州の実に4分の1の人口を抱えていて、天候は乾いているがとても暖かい(俺は暖かいのが好きだ!!!!)。
テレビの射撃シーンで使われた撮影場所巡りと、ロッキーマウンテン以外は、この都市に見るべきところはないな。旅のハイライトは、プロツアー初日のあとに行ったフォンデュ屋ですごく面白いディナーを過ごしたってぐらいだ。良き歴史、良き食事に良い時間がそこにはあった。もしアルバカーキに行くことがあれば、ぜひ「Melting Pod」に行ってみてくれよな!
※編注:「ブレイキング・バッド」はアメリカのテレビシリーズ。アルバカーキが舞台となっている。
今後について
11月後半から12月前半にかけてはもうとんでもなく大変だ!すでに伝えたように、俺はブラジル王者になったからワールド・マジック・カップに出場するんだが、俺たちは本当に凄いんだ!チームメイトはパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサとルーカス・エスペル・ベルサウド(Hareruya Latinの一員でもある)。チーム全員がプラチナレベルプロで、世界、いや歴史上できっとナンバーワンのチームだといえるだろうし、この重要なトーナメントのチャンピオンになるために俺たちを応援してくれる情熱的な仲間たちもたくさんいる。
Our great team for this years' WMC. You guys can start to pratice now to join us in the top8 there. #MTGNationals; pic.twitter.com/2lNmGUHYt3
— Willy Edel (@bazardebagda) 2017年10月15日
ワールド・マジック・カップの一週間前にはパウロ・ヴィターとオンドレイ・ストラスキーの2人と一緒にチームリミテッドのグランプリ・リヨン2017にも参加する予定だ。ワールド・マジック・カップと別のチームではあるが、このトーナメントも期待が持てるよな!こんな感じで、11月後半から12月前半は忙しくなりそうだぜ!
嘆き ~ただの愚痴ともいう~
最後は、プロツアーでのマナスクリューとマナフラッドについてグチるパートだ。どうやったらこの2つの呪いを俺の人生から取り除けるか、誰か教えてくれよ。除霊してくれる祈祷師や僧侶を知らないか?
プロツアーは超重要だから、こいつらに邪魔されたくないんだよ!
カルロス