こんにちは!
先月頭に開催されたシーズン最初のプロツアー『イクサラン』は、リミテッドが3勝3敗・スタンダードが7勝3敗の合計10勝6敗=58位でフィニッシュでした。使用したデッキはこちらの「4色エネルギー」です。
その翌週にはほとんど同じリストでグランプリ・上海2017にも参加してきましたが、息を吸うように初日落ち。残念ながらプロポイントを追加することは叶いませんでした。
次なるプロツアーは久しぶりのモダン環境ということで、グランプリ・上海2017以降はひたすらモダンで遊んでいます。そこで本日は、Magic Onlineで圧倒的な勝率を叩き出している「マルドゥ・パイロマンサー」を紹介させていただきたいと思います。
マルドゥ・パイロマンサーとは?
Magic Onlineでモダンをプレイされている方であれば、 “Selfeisek” というアカウント名をご存知ではないでしょうか。Selfeisekさんはモダンの競技リーグで実に31回もの5勝0敗を記録している強者で、半年以上前から「マルドゥ・パイロマンサー」という個性的なデッキを使い続けて結果を残していらっしゃるプレイヤーです。
こちらがSelfeisekさんのデッキリストになります。
「マルドゥ・パイロマンサー」は除去が満載のミッドレンジデッキで、ビートダウン・ミッドレンジ・コントロールといったフェアデッキ全般に対して高い勝率を誇ります。ここからは「マルドゥ・パイロマンサー」の得意なデッキと苦手なデッキを見ながら、このアーキタイプの強さの秘訣をひも解いていきましょう。
得意なデッキ:フェアデッキ全般 ~明確なゴールのある戦略~
「マルドゥ・パイロマンサー」は、フェアデッキに対して高い勝率を維持できる明確な仕掛けがあります。それは決して尽きることのない手数です。
それを支えているのは《信仰無き物あさり》と《騒乱の歓楽者》の2枚看板。
コンボデッキでもないのに《信仰無き物あさり》が採用されていることに違和感を覚えた方もいらっしゃるでしょうが、このデッキでは手札の整理に始まり、《僧院の速槍》や《若き紅蓮術士》の能力誘発、《騒乱の歓楽者》のために墓地を肥やしておくなど、その役割は多岐にわたります。
そして、特筆すべきは中盤以降に過剰な土地や手札破壊呪文を新鮮なカードに変換できることです。ただでさえ土地が19枚まで切り詰められたデッキですし、それに加えて無駄カードを効率良くドローに変換できるとあらば対戦相手に手数で負けてしまう道理がありません。
《騒乱の歓楽者》も《信仰無き物あさり》と同様に息切れを防止してくれるカードで、こちらはそれ自体がフィニッシャーの役割も兼ねています。
これら2種類のカードを4枚フル投入することで、中盤戦以降の安定性と持続性は約束されたようなもの。息切れを起こしてしまった対戦相手を尻目に、気が付けば「マルドゥ・パイロマンサー」側のみが一方的に呪文を連打する状態になってしまうのです。《未練ある魂》や《コラガンの命令》といった、マルドゥカラーを象徴するカードもこのデッキの長期戦での強さを助長していますね。
中盤戦から終盤戦にかけての安定性はコントロールデッキを凌ぐほどで、「マルドゥ・パイロマンサー」はフェアデッキ界の王というイメージです。
苦手なデッキ:アンフェアデッキ ~《僧院の速槍》や《血染めの月》の採用理由~
除去が満載のデッキなだけあり、「マルドゥ・パイロマンサー」はコンボデッキを苦手とします。例えば墓地を軸にした「ドレッジ」や「《死せる生》」には1本目はほぼ自動で負けてしまいますし、「ウルザトロン」や「タイタンシフト」などの土地コンボも厳しい戦いを強いられます。
その分サイドボードには対策カードがしっかりと用意してありますが、メインボードでは手札破壊→《若き紅蓮術士》からの火力呪文連打、または《血染めの月》で動きを封じてしまうくらいしか勝ち筋がありません。2枚だけ採用されている《僧院の速槍》は、この点において非常に優秀ですね。
《僧院の速槍》はコンボデッキに対して1ターン目の最良のアクションになります。序盤から呪文を連打するデッキの都合上「果敢」を誘発する手段には事欠きませんし、クリーチャーデッキに対しても最低限の仕事をしてくれるのが秀逸です。2枚という枚数は不自然に映るかもしれませんが、《騒乱の歓楽者》を軽くキャストするためにこれ以上ソーサリーやインスタントを削ることも難しいので、経験に裏打ちされた実に繊細なバランスだと思います。
《血染めの月》
《血染めの月》は主に土地コンボを狙い撃つ1枚です。それ以外にも《発明品の唸り》入りの「ランタンコントロール」や、「ジェスカイ」を筆頭とする青白系のコントロールにも効果的です。
メインボードに1枚だけ入っているのはラッキーパンチ狙い&サイドボードのスロットの節約だと思われますが、見た目以上にカードの引き増しができるデッキなので、1枚入っているだけでも大きな意味を持ちます。
ただし《平地》が入っていないため《血染めの月》を置いてしまうと白マナが出なくなるので、白いカードはあらかじめキャストしておくか《信仰無き物あさり》で捨てるようにしましょう。サイドボード後に《血染めの月》を追加する場合は、《未練ある魂》以外の白いカードはサイドアウトするといいですね。
苦手なカード/絶望的なマッチアップ
リストをご覧いただければ一目瞭然なように、このデッキは墓地対策に弱いです。《コラガンの命令》で破壊できる《大祖始の遺産》や《虚無の呪文爆弾》はまだマシですが、《摩耗+損耗》をサイドインしなければ触れない《安らかなる眠り》や《虚空の力線》は最悪ですね。
デッキとしては「白緑オーラ」が絶望的です。《仕組まれた爆薬》や《悪魔の布告》系のカードを入れない限りこの相性が改善されることはないので、現状のリストで当たってしまった場合には潔く諦めましょう。
簡易マッチアップガイド
親和
対 親和
「マルドゥ・パイロマンサー」はアーティファクトに比べてエンチャントに触る術に乏しいので、サイドボード後には《安らかなる眠り》・《ギラプールの霊気格子》・《血染めの月》といったカードに注意を払い、《摩耗+損耗》をなるべく温存するようにプレイしましょう。
自分のデッキにも入っている《血染めの月》に気を付ける必要があるのかと不思議に思われるかもしれませんが、貼る側と貼られる側では大きく事情が異なります。特に《未練ある魂》・《稲妻のらせん》などで白マナが必須となるこういったマッチアップでは、対戦相手から飛び出す《血染めの月》は致命傷になりえます。
人間
真っ当なクリーチャーデッキということで、メインボードの相性はかなり良いです。ここ最近数を減らしており、試行回数が少ないので細部に自信が持てませんがサイドボーディングも最低限の入れ替えで問題ないでしょう。
対 人間
《真髄の針》は基本的に《霊気の薬瓶》を指定します。後半戦で《霊気の薬瓶》がどうでもいい局面なら《地平線の梢》を指定しましょう。
アブザン
この対決で気を付けるべきカードは《漁る軟泥》と《ヴェールのリリアナ》くらいのものです。サイドボード後には《虚無の呪文爆弾》など追加の墓地対策が加わるでしょうが、クロックの遅いこれらのデッキ相手ならそこからでもしっかりとリカバリーすることができます。
対 アブザン
《二股の稲妻》はあまり効果的とは言えませんが、対戦相手の《未練ある魂》を最も効率良く対処できるカードなので残すようにしています。
グリクシス/ジャンド《死の影》
対戦相手のデッキは決して消耗戦に強くはないので、丁寧にクリーチャーを除去して長期戦にさえ持ち込んでしまえばこちらに分があります。《死の影》の対処に困っている状況や、火力呪文だけでライフを削り切るのが困難な場合には、無暗に攻撃して《死の影》の登場を早めたりしないように気を付けましょう。
対 グリクシス/ジャンド《死の影》
《血染めの月》を1枚しか入れないのは、対戦相手が《血染めの月》を警戒して基本地形を持ってくることが多く、致命傷になりづらい展開もあるためです。《死の影》デッキは基本地形を持ってくるとライフの損失が減るため《死の影》の登場が遅れるので、《血染めの月》はデッキに入っているだけで十分に役割を果たしていると言えます。
とは言え、決定的なシーンがあるのも確かなので1枚は追加しています。
青白/ジェスカイコントロール
最近の青白コントロールには《廃墟の地》が4枚採用されていることが多いので、《聖なる鋳造所》を持ってくるタイミングは慎重に。
全体除去呪文に注意しながら、適時クロックを展開しつつ《血染めの月》を通すタイミングを見計らいましょう。手札破壊はなるべく《血染めの月》の直前、または同一ターンに唱えられるといいですね。
対 青白/ジェスカイコントロール
《真髄の針》は各種「プレインズウォーカー」と《天界の列柱》用に、《摩耗+損耗》は《アズカンタの探索》とサイドインされるであろう《安らかなる眠り》用にサイドインします。
《発明品の唸り》入りランタンコントロール
こちらのクリーチャーはパワー1のものが多いので、《罠の橋》を置かれても数ターンは殴れることが多いです。その間にできるだけダメージを積み重ねておき、火力呪文の射程圏に追い込んでおければ理想的です。《騒乱の歓楽者》・《信仰無き物あさり》とドローサポートがあるおかげで、《洞察のランタン》ロックが決まってしまったあとでも多少は希望が持てます。
対 《発明品の唸り》入りランタンコントロール
《血染めの月》さえ設置できれば相手は《発明品の唸り》がキャストできなくなるので、いずれ殴れるようになりますね。
青赤ストーム
これまた少し相性の悪いマッチです。できるだけ《遵法長、バラル》や《ゴブリンの電術師》を除去できるマナを残して動きたいところですが、ダメージクロックのない状態で待っていてもいずれ負けてしまうので、手札が弱いときほど積極的に動くようにしましょう。
対 青赤ストーム
サイド後に最も注意すべきカードは《巣穴からの総出》です。《ゴブリン・トークン》に対してはこちらもトークンを並べるくらいしか対処法がないため、《思考囲い》は《巣穴からの総出》を落とすくらいの気持ちでキャストしましょう。
長期戦に強い《パズルの欠片》もあれば、《血染めの月》が出てくる可能性もあるので、可能な限り早期決着を目指しましょう。
エルドラージトロン
《血染めの月》があるので一見有利に見えるかもしれませんが、実はかなり相性の悪いマッチアップ。火力で対処できないクリーチャーが多く、それでいて《探検の地図》で《荒地》を持ってこられると《血染めの月》が設置してあってもガンガン行動してきます。
対 エルドラージトロン
サイド後は《荒地》をサーチできる《探検の地図》を徹底的に阻害するプランを取ります。《真髄の針》は件の《探検の地図》、または《幽霊街》を封じるのが主な役割で、《荒地》をサーチされたあとなら《歩行バリスタ》や《終末を招くもの》を指定します。
ドレッジ
墓地を活用したコンボデッキはかなり相性が悪いので、サイドボードには墓地対策の中でも最も効果が大きい《虚空の力線》が4枚採用されています。特に「ドレッジ」に対しては《虚空の力線》以外で勝つことは稀なので、《虚空の力線》が見つかるまで積極的にマリガンしましょう。
対 ドレッジ
おわりに
いかがでしたか?冒頭でもお伝えしたように、Selfeisekさんはこのデッキをずっと使い続けていて結果を残していますが、「人間」デッキの増加などメタゲームの変化もこのデッキにとって大きな追い風になっていると思われます。
いずれにせよ、オリジナルのデッキで結果を残すことはどの環境でも素晴らしいことですよね!来年のプロツアーでもたくさんの個性的なデッキが登場することに期待しつつ、本日はお別れしたいと思います。
それでは、また次回のブログで!
コガモ