Translated by Takumi Yamasaki
こんにちは、みなさん!
【プロツアー『霊気紛争』】は「マルドゥ機体」に支配されていましたね。このことを踏まえて、私たちチームの半数がプロツアー『霊気紛争』で使用したデッキと、スタンダードにおける今後のメタゲームについて話したいと思います。そして後半では、様々な「黒緑デッキ」のバージョンについて触れています。メタゲームによってどんなカードを使用すべきか知るための指標となるでしょう。
さて、今回のプロツアー『霊気紛争』で私たちはメタゲーム的によいと考えていた「ジェスカイデッキ」を使用しました。なぜなら「黒緑」との相性がよく、「ジェスカイサヒーリコンボ」に対してもアドバンテージの面で有利がとれたからです。
しかし残念ながら、私たちはメタゲームの23%を「マルドゥ機体」が占めるとは予想していませんでした。このマッチアップは決して相性が良いとは言えません。1マナ3/2が出てくる相手に4枚ものはプレイしたくない呪文です。サイドボード後のとこれらのカードはとても優秀でしたがこれでもまだ相性がよいものではなかったのです。
ですが、多くの人が「マルドゥ機体」の使用を止めて「黒緑デッキ」が環境に増えたときには、このデッキがに良い立ち位置になると思います。これについては後ほど説明します。
それではこちらが私たちの使用したデッキリストとサイドボードプランです。
Lukas Blohon「ジェスカイ」
プロツアー『霊気紛争』
5
4
4
3
3
4
3
-土地(26)-
4
-クリーチャー(4)- |
2
2
2
4
4
4
4
2
1
1
3
1
-呪文 (30)- |
3
3
3
2
2
2
-サイドボード (15)- |
対 ジェスカイサヒーリコンボ & ミラー
サイドアウト
サイドイン
コントロールミラーにおいてをサイドアウトしてしまうのは論争の的になりそうですが、多くのゲームにおいて軽いフィニッシャーやカウンタースペルのほうが、より良いものとなるのです。サイドボード後にお互い約10枚ものカウンター呪文を搭載しているのに5マナのソーサリータイミングのカードを使用したくはありません。
もちろんこれは彼らが普段のようにサイドボードした場合で、時には状況を突破してくれることもあります。彼はかなり強いですからね。
対 「黒緑エネルギー」
黒緑エネルギーに対しては、除去は抜かず少し増量します。はサイドインしないほうがいいでしょう。正確なサイドボードは彼らの構成にもよりますが、やに対しての相性は良いのですが、や、に対してはあまり良いものではありません。もし彼らが遅めのゲームプランであれば、多くの白いカードをサイドアウトし、とをサイドインしましょう。
■ グランプリ・ピッツバーグ2017後のメタゲームについて
【グランプリ・ピッツバーグ2017】が終了したことで、私たちはメタゲームがすでに移り変わったことを目にすることができます。
TOP8には5つの「黒緑デッキ」、2つの「マルドゥ機体」と「ジェスカイサヒーリコンボ」でした。つまりこれは、メタゲームがとても綺麗に動いたことを表していると考えます。
このグランプリにおいて、「黒緑」は「機体」に対して相性も良く、ベストなデッキだったのでしょう。さらに言うとこの「黒緑」というデッキは、環境すべてのデッキに合わせて構成をカスタマイズすることが可能です。ここでは、異なったタイプすべての黒緑デッキについて、どのマッチアップで、どのカードを選択するかについて話したいと思います。
この話をする前に、私は今後のトーナメントについて言いたいことがあります。
もし「黒緑」が環境で1番強ければ、どんなアーキタイプも、この「黒緑」と「マルドゥ機体」に対して相性が良ければ、良い位置につけるでしょう。例えばを搭載したコントロールデッキや、入りの「現出」デッキなどです。あいにく「現出」デッキについては良いリストが思いつかないので、それは他の人に任せるとしましょう。
さて、それでは「黒緑デッキ」についてお話します。
まずは最初にグランプリ・ピッツバーグ2017のTOP16から、三つの異なった「黒緑デッキ」がどのように組まれているかを見ていきましょう。これらのリストをみてあなたはそれぞれが明らかに違うということがわかるはずです。単純に「黒緑ミッドレンジ」とは呼べなさそうですね。
これらのデッキは一体なにが違うのか? どのバージョンの「黒緑デッキ」がどのメタゲームに対して適しているのか? これの最も簡単な見分け方は、2マナ域のクリーチャーに注目することです。なぜなら黒緑には質のいいクリーチャーが2マナ域にたくさんいますからね。では、一つ一つ分析していきましょう。
Ryan Hare「黒緑アグロ」
グランプリ・ピッツバーグ2017(優勝)
9
7
4
4
-土地(24)-
4
4
4
3
2
4
-クリーチャー(21)- |
3
4
4
1
3
-呪文(15)- |
3
3
2
2
2
1
1
1
-サイドボード(15)- |
Robert Beatty「黒緑エネルギー」
グランプリ・ピッツバーグ2017(4位)
6
3
4
4
3
-土地(20)-
4
4
4
4
3
3
3
-クリーチャー(25)- |
4
4
3
4
-呪文(15)- |
3
3
2
2
2
1
1
1
-サイドボード(15)- |
Ben Rubin「黒緑『昂揚』」
グランプリ・ピッツバーグ2017(11位)
7
2
4
4
4
3
-土地(24)-
2
4
1
3
2
2
1
-クリーチャー(15)- |
4
4
4
2
2
2
3
-呪文(21)- |
4
3
2
1
1
1
1
1
1
-サイドボード(15)- |
最もパワフルな2マナクリーチャーです。
との相性はみなさんがすでに知っている通りで、その他にもや、、と各種エネルギー系のカードとも相性が抜群です。
これだけ言うとすべての黒緑デッキで使用されていると予想できそうです……本当に? いいえ、それは違います。
Ben Rubinは使用していません。なぜなら彼のデッキは他のものと比べて遅く、「昂揚」を中心に組まれています。したがってクリーチャーも数多くありません(最もとのシナジーがあるのはクリーチャーです)。分かっていただけたでしょうか?
こんなに強い2マナ域を使わなくとも「黒緑」というデッキは良いものなのです。そして、これは「黒緑」がいかに異なっているかということを示す一つの例です。私が思うに、彼のデッキはかなり特別なもので、ほとんどの「黒緑」は攻撃的でをもっとうまく使う方向のものばかりでしょう。
この不条理な構築物が「黒緑」に採用されている主な理由は、「マルドゥ機体」に対抗するためです。とのシナジーもよく、終盤戦でも活躍しますが、速いゲームになると圧倒されてしまいます。もし環境からタフネス1のクリーチャーが減り、「黒緑」に除去が増えると採用率が減ると予想しています(これらは黒緑デッキのシナジーを壊すことができるのです)。Benは型のデッキではないのですが、メインボードに2枚とサイドボードに1枚このカードを採用していました。これには理由があり、このカードは「昂揚」を達成するためという大切な役割を持っていたからです。
を彷彿とさせるとても素晴らしいカードです。
しかしタフネスが1であることはとても残念です。がそこら中にいますからね。
やのないコントロールデッキに対しては優れていると言えます。
そして大切なこととして認識してほしいのは、エネルギーデッキでなくとも使用できるという点です。時には簡単にとこのカードから得たエネルギーで待つことなく次のターンにドローすることができます。
従って黒緑デッキが環境から減ることになればどんな黒いデッキにも採用されることでしょう。
エネルギーデッキにおいて2ターン目にプレイできるパワフルなカードです。もし対戦相手が解答を持っていなければ、止められない強さを発揮してくれるでしょう。
このカードのとの相性はとても素晴らしいものですが、問題なのは遅いゲームになったときにサイズが小さすぎることです。2ターン目のプレイとしては素晴らしいのですが、その後なにもしません。たとえ2ターン目でもやなどで少し手を加える必要があります。要するにムラがあるということです。上手くいったときはとても強いのですが、サポートできないと残念なほど弱いのです。
このカードはプロツアー『霊気紛争』において目立ったところはみられませんでしたが、グランプリ・ピッツバーグ2017では採用されています。彼はシンプルに強く、特に他のカードの助けを必要としない点が優れています。
そして大切なこととして、たった一つでも+1/+1カウンターが乗ったこのカードは、攻撃面でも強く、防御面においても「マルドゥ機体」に入ったほとんどのクリーチャーをブロックできます。おそらくこれが他カードを押しのけて採用された主な理由だと思います。
は速いゲームでは間に合わないことも多いのですが、いくつか+1/+1カウンターを乗せてしまえば、このカードは本当に輝き出します。
このカードは、以前の環境ではよく使われていましたが、今は他の多色のカードの陰に隠れています。を使う場合はデッキの方向性を少し変えなければなりません。型ではや、と一緒に採用しても働くことはできるでしょう。
ですがこのカードを採用する場合、「昂揚」を簡単に達成するために、慎重にカードタイプの種類を調整する必要があります。
たとえば、やなしでは「昂揚」することは難しいでしょう。そう、Benのデッキと他二つのデッキではこれが大きな理由となり、まったく違うものに見えたのです。
そして、この前の禁止改訂によりはさらに使用されることが少なくなりました。なぜならあの偉大なをもうプレイすることがなくなったのですからね。
これら3つのデッキリストの中で唯一採用されていない2マナ域です(ここで紹介していないTop8のデッキには採用されています)。一見すると、少し打たれ弱いように見えますが、同型戦とマルドゥ機体に対しては最も効果的なカードです。
後者に対しては2マナの絆魂というのはダメージレースにおいても明確に素晴らしく、このデッキではサイズを上げる方法がたくさんあるのです!同型戦ではがあるため素晴らしい活躍とまではいきませんが、もしあなたが除去を持っていない場合にはへの解答にもなります(これはいくつかの勝ちにつながる簡単な方法でもあります)。
はにとても似ています。私はの方が全体的に少し優れていると思いますが、のほうがより強くなるマッチアップが存在し、こちらの方がシナジー面でより強いのです。理由として+1/+1カウンターを乗せることがかなり強いのは明らかですし、今のメタゲームで大多数を占める「黒緑」と「マルドゥ機体」に対して効果的だからです。もし環境にあるクリーチャーのサイズが今よりも大きくなればの出番でしょう。
このように、「黒緑」の大きな違いを作る要因は、2マナ域ということです。この指針が、あなたが今後のトーナメントを分析した上で、「黒緑」を組むときの援助になれば幸いです。
Robert Beattyのエネルギー型
・はとても良いカードですが、今の環境での「黒緑エネルギー」は好きではありません。
・「マルドゥ機体」と「黒緑」が支配する環境においてはあまり良いものでないのですが、コントロールデッキに対しての相性は良いと思います。
・はコントロールに対して最も効果的で、「マルドゥ機体」に対しても有用なのですが、「黒緑」が環境に多いときにはそれほど素晴らしいものではありません。
・はこのデッキにおいて明確に素晴らしいものですが、私はやの方がより良い場面が多く好きです。
・このバージョンはコントロールデッキに対して有効です。なぜなら最もアグレッシブであり、やといった脅威や彼らを守るがあるからです。その反面除去は少なくなっています。
Ryan Hareのグッドスタッフ型
・私は、一切可愛げなく、シンプルにベストなカードをプレイするという彼のデッキが好きです。
・その中でもはあまり好みではなく、私もそこまで試したことはないのですが、「紛争」のトリガーになったり、1枚で2枚分のパーマネントにもなりへのアクセスもしやすくなることは重要でしょう。
・その他の3マナ域としては、引けたときに素晴らしい活躍をします。
・コントロール用のサイドボードとして採用されているは好きではありません。なぜなら彼らはを持っているからです。なので、の方が良い選択だと思います。
Ben Rubinの「昂揚」型
・主流となっている2つのデッキには、アーティファクトが多く採用されています。それらを除去するため、今やメインデッキにを採用することは、良い判断だと思います。
・私はこのバージョンの「黒緑」が一番好きです。主な理由として「マルドゥ機体」と「黒緑」に対して相性が良いと考えているからです。
・現在、コントロールデッキはそこまで使用されていません。なので、が必要かどうか私にはわかりません。もし必要と感じたら入れるべきでしょう。
・サイドボードのには大賛成です。遅いデッキ相手では、明確に有効です。
・はいまでも「昂揚」がスムーズにできればかなり強いクリーチャーです。
・は「マルドゥ機体」に対して有効です。
・は黒緑デッキの中でも私のお気に入りのカードで、このカードなしではプレイしたくありません。やで回収できれば、さらに良いでしょう。
最後に、みなさんが今後のトーナメントで、現在とは異なったメタゲームを予想したときに、この「黒緑」の分析がデッキを組む際の助けになることを望んでいます。きっと、どのバージョンで、どの2マナ域を使用すれば良いかを判断する助けになるはずです。
スタンダードのメタゲームはとても早く移り変わっています。一週間後にはもう変化しているでしょう。ですから、私はあなたが他の人の思考を予測し、先週選択したデッキとはまた違うデッキを準備することをお勧めします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
Lukas Blohon
Lukas Blohon
チェコ共和国を代表するマジック・プレイヤー。マジックの普及と実力向上に身を捧げる勤勉な努力家であり、Petr Sochurekに「真摯な努力家であり、最高のプレイヤー」と称される。
【プロツアー『闇の隆盛』】トップ8、【グランプリ・ブリュッセル2015】優勝、グランプリトップ8の経験は6度にも上る実力者。【プロツアー『異界月』】優勝という輝かしい成績と共に、Hareruya Prosに加入。
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