神インタビュー: 和田 寛也 ~ゲームの達人を目指したい~

晴れる屋

By Atsushi ito

 再び、この男の出番がやってきた。

 神決定戦のトップバッターを飾るスタンダード。最もメタゲームの移り変わりが激しく、そしてそれゆえに最も防衛が難しいであろうこのフォーマットで、前人未到の2度の防衛を果たし、名実ともに神としての風格を備える男。

 和田 寛也(立石)。

 既にプレイヤーとしては引退した身だが、それでも最後に残った神という肩書きだけが、かろうじて和田をマジックに繋ぎとめている。

 そんな奇妙な状況で再び齋藤という挑戦者を迎えることとなった和田に、インタビューをお願いした。

引退、その後

--「前回のインタビューではマジック引退を表明されましたが、その後マジックとの関わり方は変わりない感じでしょうか?」

和田「そうですね。プレインズウォーカー・ポイントのサイトで確認したところ、最後に公認大会に参加したのは2016年7月のBMOでしたw 正直、『なんでマジックやってねーやつがスタンダード神なんだよ』という誹りを受けてもやむをえないところではあります」

--「ですが、神決定戦となれば準備としてマジックに触らないわけにはいきませんよね」

和田「はい、それもあってこの間久しぶりにスタンダードの大会に参加しました。ですがデッキはOwen Turtenwaldの完コピの『機体』で、他はグランプリ・静岡2017春をカバレージで観戦したくらいなので、勉強が足りているか不安ではありますね」

--「久しぶりのスタンダードはどうでしたか?」

和田「あまり面白くなかったかな……というのは別に環境のせいではなくて、自分なりの戦略やアイデアをデッキに落とし込んだ上で勝ったり考えが合っていたのを確かめたりするのが自分にとってのマジックの楽しみ方なので、他人のデッキを完コピして使ってもそりゃあ面白くないよねという……」

--「なるほど。ところで引退してからはマジック以外のゲームに触る機会が増えたかと思いますが、そこでの経験が、久しぶりに触ったマジックに生きたりはしないものなんでしょうか」

和田「うーん、それはあまりなかったですね。確かにマジックを全力でやっていた時期は、他のマジックプレイヤーと差をつけるためにボードゲームや他のゲームを積極的に触るみたいなのを意識してはいましたし、実際にいくつか効果があったと感じたこともありました。ですが最近では逆に、マジックで学んだゲームにおける基礎的な考え方を他のゲームに生かす機会が多いですね。ドラフトで言ったら手番の数とか、他にもリミテッドで有利不利をどう判断するかみたいな感覚が、意外と他のゲームをする際にも役に立つんですよ」

--「確かに、マジックにおける様々な局面での判断はとても繊細なので、バランス感覚を養ってくれるみたいな部分はあるかもしれませんね」

生身の人間とのゲームが好きなんだと改めて思いました

--「そういえば、ご結婚なされたとか。おめでとうございます」

和田「ありがとうございます」

--「結婚によって何か変わったことがありましたか?」

和田「結婚がどうとかいうよりは、引っ越してテレビがある暮らしになったのが今のところ大きいです(笑)。プレステ4で本当に久しぶりにコンシューマーゲームをやってみたんですが、『自分はゲーム好きじゃないんだな』ということに気づいてしまった」

--「え、ゲームが嫌いだったんですか?」

和田「というより、『対人ではないゲーム』が嫌い、ですね。逆に『自分は対人のゲームであるTCGが好きなんだ』『相手を背中から刺すのが好きなんだ』と、生身の人間とのゲームが好きなんだと改めて思いました

--「コンピューターが相手だと味気ないみたいな感覚ですかね」

和田「そうです。それとシャッフルが好きなんですよね。あまりに好きすぎて仕事中もずっとシャッフルしてます。」

--「はぁ」

和田「けどやっぱり人との対戦中にシャッフルしたいんですよ。対戦中のシャッフルは空っぽになったタンクが満たされる感覚がありますね。なんならこのインタビュー中もずっとシャッフルしたいと思ってました。すみません、シャッフルしていいですか?

突然シャッフルし始める和田

--「そんなゲーム好きな和田さんからすると、生活のありとあらゆるものがゲームに見えてきたりしそうですね」

和田「それはありますね。たとえば、料理はリソース管理ゲーなんですよ。近所のスーパーが業務用の食材を扱っているんですが、そんなの買うと絶対余るわけです。キャベツと米と肉が余りました、じゃあ次はこれを作ろう、と新しい料理 (デッキ) を自然に覚えていく。あとボルダリングはTCGですね。課題を注意深く観察して、どういうルートで手を足と置くか、スタートからゴールまで最初から見られるので、ルートを決めて実際に実行する。これは要は盤面の材料をよく見てゲームプランを組み立て、ミスなく実行するというマジックの基本と同じですね」

--「なにをいっているのかわからない」

和田「そして結婚は嫁のゲージ管理ゲーです」

--「(笑) 本当にゲームが好きなんですね……」

和田「自分の考えや戦略を手探りで反映するのが好きなんですよね。ただコンピューターが相手だと勝ってもあんまり嬉しくないので、やはり人間と戦ってなんぼなところはある気がします。人間の脳同士の戦争がやりたいんですね」

ゲームの達人を目指したい

--「来たる神決定戦に向けての意気込みはいかがでしょうか」

和田「一応スタンダード神の中では最長防衛記録ではあるので『もうそろそろいいかな』と思わなくもないですが、神を襲名するにふさわしい挑戦者じゃなかったら退けてやる!という気持ちもあります。『引退した神ごときに勝てないようではまだまだ』ということですね」

--「今回の対戦相手、齋藤 智也さんは長いキャリアも持っていますし、オリジナルデッキも作れるのでそういった意味では資格十分な気がしますが」

和田「齋藤さんは使っているデッキを見ると、『強いデッキ』『強いカード』が好きなんだろうな、と思いますね。いわゆる、『近距離パワー型』だと思っています。そういった相手は背中から突き飛ばしたり、脇から刺したり、足をひっかけたりしながら戦うに限る(笑) まあ、これまでやってきたやり方でやるだけかな、と思っています」

--「神らしくない(笑) 最後に神は別として、これからの和田さんの目標はどこにあるんでしょうか?」

和田「これは昔から変わらない目標ですが、『ゲームの達人』を目指しています

--「なるほど。ありがとうございました」

和田「脳の戦争で勝ちたいので」

--「わかりましたから!」

ちなみに和田のシャッフルはインタビューの最後まで続いた

 明晰にして自由。あらゆる事象を自分の世界観の言葉で表現するその様は、既にして達人を思わせる雰囲気であった。

 はたして和田は宣言通り「ゲームの達人」へとまた一歩近づくことができるのか。当日の生放送で、その成否が決する瞬間を見逃さないようにして欲しい。

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