Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/08/15)
エルドラージトロンを選択した理由
ロンドンマリガンと強力なエキスパンション『モダンホライゾン』の登場により、モダンのメタゲームは大きく変化した。ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019 (MC4) やグランプリ・ミネアポリス2019の結果を見れば、ホガークヴァインが最大の敵であるのは誰もが認めるところだろう。バルセロナでは最高の勝率を誇り、ミネアポリスではトップ8に5つも入賞している。ホガークヴァインは間違いなくモダンのベストデッキなんだ。
MC4が始まるまでは、イゼットフェニックスが最大勢力でホガークヴァインは僅差で2番手だろうと思っていた。俺がエルドラージトロンを調整しようと思ったのは、エルドラージトロンにとって相性の良いイゼットフェニックスがホガークヴァインに相性が良く、墓地対策がかつてないほど数を増やすと思っていたからだ。だから墓地に依存するデッキをプレイする気など毛頭なかった。しかし蓋を開けてみれば、俺はホガークヴァインの強さ・速度を見誤っていたことがわかった。
ホガークヴァインがベストデッキであることが明るみになったところで、グランプリ・ミネアポリスで使用するデッキを選択しなければならなかった。俺が導き出した結論は「ホガークヴァインはベストデッキだが、使うには複雑すぎる」というものだった。控えているモダンの大会はこのグランプリ・ミネアポリスだけで、《甦る死滅都市、ホガーク》が禁止される可能性が相当に高いことを踏まると、今回しか使えないデッキのために時間を注ぎたくなかったんだ。そういった考えがあり、俺はエルドラージトロンへと回帰することにした。
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウルザの鉱山》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの塔》
2 《爆発域》
1 《魂の洞窟》
1 《幽霊街》
1 《屍肉あさりの地》
1 《海門の残骸》
-土地 (24)- 3 《歩行バリスタ》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
1 《終末を招くもの》
-クリーチャー (16)-
2 《次元の歪曲》
1 《歩行バリスタ》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《トーモッドの墓所》
1 《墓掘りの檻》
1 《液鋼の塗膜》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《罠の橋》
1 《神秘の炉》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
エルドラージトロンは強力で無駄のない動きをするため、ゲームは一直線でわかりやすい形で展開される。このデッキの難しさはマリガンの判断にあるんだ。MC4では9回戦を通して20~25回以上マリガンをしたけど、なんとか6-3という立派な成績を収めることができた。エルドラージトロンを上手く使いたいなら、《虚空の杯》やサイドボードの《虚空の力線》などの存在によって初期手札が4枚や5枚でも勝てると知っておくことが大切だ。このようなカードは1枚で勝ってしまう力があるからね。
アーキタイプ別の戦い方
俺はエルドラージトロンを使ってプロレベルの大会で十分な成績を何度か収めてきた。各マッチアップの戦い方、サイドボーディングのやり方、そして何よりもマリガンすべきタイミングを見極める方法も知っている。そこで、グランプリ・ラスベガス2019や《甦る死滅都市、ホガーク》禁止後の環境でエルドラージトロンを使おうと思っている人のために今回の記事を書くことにした (ちなみにエルドラージトロンは禁止改定後にベストデッキの1つになると思っている)。
サイドボードガイドだけでなく、そのマッチアップでのポイントや、マリガンで積極的に探すべきカードも紹介する。さぁ、早速見ていこう!
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
相性が良いマッチアップだ。(X)=1の《虚空の杯》は相手の呪文の大半を打ち消し、《難題の予見者》や《現実を砕くもの》のようなクリーチャーは除去されづらい脅威として立ちはだかる。
イゼットフェニックスとの対戦は《氷の中の存在》を中心に展開されることが多い。したがって、最大の脅威である《氷の中の存在》や《炎のアリア》に対処できる《爆発域》を《探検の地図》でサーチできることは忘れないでおこう。《血染めの月》をケアして《荒地》をサーチすることも可能だ。
サイドボード後は、《四肢切断》・《虚空の杯》・《虚空の力線》のどれか1枚でもあればほぼ間違いなくキープするようにしている。
ホガークヴァイン
対 ホガークヴァイン
残念だが、このマッチアップに関してはあまりアドバイスすることがない。ホガークヴァインを倒すのはただただ難しいんだ。1ゲーム目の主な勝ちパターンは《大いなる創造者、カーン》で手札に加えた《罠の橋》や、《全ては塵》、あるいは2ターン目の《虚空の杯》だ。
2ゲーム目以降は相性が大きく改善される。《虚空の力線》や3ターン目にウルザランドを揃えるために積極的にマリガンできるからだ。墓地対策には《トーモッドの墓所》もあるが、俺は《墓掘りの檻》をサイドインする方が良いと思っている。《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力で、マナがかからない《トーモッドの墓所》を手札に加えないといけないタイミングが少なくないからだ。
エルドラージトロン (ミラー)
対 エルドラージトロン (ミラー)
ミラーマッチは形勢が一転二転する。主だったアドバイスはないが、《虚空の杯》や《全ては塵》のような腐るカードを引かないことがポイントだ!サイドボード後はウルザランドや《エルドラージの寺院》、《大いなる創造者、カーン》を探してマリガンすることがとても大切になる。
お互いに《大いなる創造者、カーン》を展開することはあまり珍しくないのだが、その状況で《マイコシンスの格子》が戦場出るとライブラリー枚数が多い方が勝つ。《幽霊街》を過剰に積極的に使ってくる相手は多くいるが、序盤のターンでその動きがベストであることはほとんどない。《爆発域》はこのマッチアップで非常に重要だ。《難題の予見者》、《大いなる創造者、カーン》、そして何よりも《罠の橋》を破壊できるからね。
バーン
対 バーン
先手を取った方に大きなアドバンテージがある。赤単色のバーンなら、1ゲーム目の《虚空の杯》や序盤の《難題の予見者》がこの上なく厄介だろう。
2ゲーム目以降はウルザランド、《エルドラージの寺院》、《虚空の杯》がある手札がくるまでマリガンしたいところだ。先手ならば《大いなる創造者、カーン》で手札に加えるために《虚空の杯》をサイドボードに1枚置いておくことも考えられる。ただ、俺の経験ではほぼ間違いなく《ワームとぐろエンジン》を手札に加えているし、山札に《虚空の杯》が4枚入っていることはあまりにもリターンが大きいと思うよ。
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
このマッチアップは昔からほぼ互角の相性だった。《大いなる創造者、カーン》と《爆発域》が最近になって登場したことで、今はエルドラージトロンがやや有利なんじゃないかな。
早々に《時を解す者、テフェリー》や《精神を刻む者、ジェイス》を展開されると負けてしまうことがある。《爆発域》や《大いなる創造者、カーン》で手札に加えた《魔術遠眼鏡》は相手のプレインズウォーカーを対処できるため、こういったカードがあるとエルドラージトロン側は戦いやすくなる。《虚空の杯》を1枚サイドアウトしているのは、《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力で手札に加えるためだ。
拮抗した相性だが、アゾリウスコントロールと対戦することになっても嫌な気分にならないね。
ジャンド
対 ジャンド
ジャンドは『モダンホライゾン』以降に勢いを取り戻し始めたアーキタイプだ。相性はほぼ50:50だが、ジャンドは伝統的にビッグマナ戦略に苦戦を強いられてきた。それに最近では、《レンと六番》や《漁る軟泥》のようなエルドラージに対して効果的ではないカードの採用が一層増えてきている。
《虚空の杯》は、《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力で手札に加えられるようにサイドアウトしよう。ジャンド相手に(X)=1か2で設置すると大活躍する。
ジャンドと戦っていくうちに気づいたのだが、《ヴェールのリリアナ》の[-2]能力に対して上手く立ち回るためには《歩行バリスタ》は(X)=1でプレイした方が良いことが多い。
エルドラージトロンの可能性
このようにアーキタイプ別の戦い方を見てみると、エルドラージトロンは《甦る死滅都市、ホガーク》禁止後のメタゲームで優れたデッキになるのではないかと思う。ミッドレンジやコントロールには有利だが、ホガークヴァイン、ドレッジ、その他の攻撃的なデッキに対しては弱い。
禁止改定後の環境ではイゼットフェニックス、アゾリウスコントロール、ジャンドが幅を利かせてくるだろうから、そうなればエルドラージトロンは素晴らしい立ち位置になる。禁止改定前の現環境でも手堅いデッキであるから、ホガークヴァイン以外のデッキを探しているのならおすすめだ。
今回も読んでくれてありがとう。みなさんの手札にウルザランドが揃いますように!
ブランドン・エアーズ (Twitter)