Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/08)
まだ知られていない黒単の強さ
『エルドレインの王権』の発売から私は黒単を使い続け、大成功を収めてきました。ですから最近は不思議でしかたないのです。なぜ黒単はもっと使われないのだろう。私が勝てているのはラッキーなだけなのだろうかと。
まずは第0週、紙媒体の発売の1週間前までさかのぼりましょう。日本時間の9月27日に『エルドレインの王権』はMTGアリーナに実装されました。私はその翌日に20マッチ連続で勝利し、ダイアモンド Tier1からミシックの4位まで駆け上がったのです。
20-0 I think I'll take a break pic.twitter.com/TBZnoUWne0
— Fabrizio Anteri (@Anteri_F) September 27, 2019
「20連勝。そろそろ小休止しよう。」
ランク戦には、ランダム性や運が付きものです。ですが、黒単の安定度・強さは他のプレイヤーが当時やろうとしていたことを寄せ付けないレベルだったと自信を持って言えます。
しかし他のプレイヤーも黙ってはいません。それぞれのデッキが洗練されるとともに、黒単のエンジンである《忘れられた神々の僧侶》を止める妨害要素を採用し始めたのです。
それ以来、私はさまざまなカード・構築・コンセプトを試し続けてきました。黒単はカスタマイズ性が高く、多様なアーキタイプに対抗できるだけの土壌があるのです。
そして先週末、私はMagic Online Championship Series(MOCS)プレイオフに黒単で参加し、トップ8に進出することができました。スイスラウンド7回戦でゴロスランプに6回当たり、5回は勝利しました。ゴロスランプは本大会でトップ32に15個も入賞していたデッキです。
ゴロスランプの支配力は世界各地のイベントでも確認されています。今後数週間はこのデッキが環境を代表するデッキになると言って差し支えないでしょう。
検討に値するカード
黒単には採用に値するカードが数多く存在しています。ここからはそのひとつひとつをチェックしていきましょう。マナベース
《ロークスワイン城》
極めて強力なカードです。必ず4枚採用しましょう。
《総動員地区》
無色マナしかでない問題点がありますが、クリーチャー化できることがありがたい場面の方が多かったです。ダブルシンボルやトリプルシンボルを増やし過ぎないようにし、《総動員地区》を1枚採用した構築が気に入っています。
土地の総枚数はマナカーブや構築次第です。《忘れられた神々の僧侶》のマナ生成能力が非常に有用であるため、21~22枚まで抑えることもできます。その他の構築では23~24枚採用し、デッキが安定して動くようにした方が良いでしょう。
1マナ域
《漆黒軍の騎士》、《どぶ骨》
この2枚は一流のクリーチャーたちです。黒単はアグロデッキを成立させる基盤が赤単よりもしっかりとしていますが、それはこれら高性能な1マナ域が揃っているからなのです。
1マナ域は8枚では足りません。この枠を埋めるクリーチャーを模索することにしましょう。
《脚光の悪鬼》
《忘れられた神々の僧侶》にとって最善のパートナー。《脚光の悪鬼》を《忘れられた神々の僧侶》の能力のコストに充てれば、まずタフネス1の小型クリーチャーを除去してから、《忘れられた神々の僧侶》の効果で相手に生け贄を強要できます。
《穢れ沼の騎士》
接死を持つ《穢れ沼の騎士》は《金のガチョウ》や《樹上の草食獣》といった0/2、0/3のクリーチャーにブロックされづらく、「絢爛」を達成しやすいです。「出来事」の効果もたまに使用しますし、1マナ域のおまけとしては十分でしょう。
《大釜の使い魔》、《魔女のかまど》
両者を合わせて採用しているリストも存在します。この2枚のシナジーは好きなのですが、2種を採用するスペースはないですし、単体では残念なカードだと思います。
2マナ域
ここは悩みどころとなります。黒は1マナ域と3マナ域に高性能のカードが揃っているのですが、2マナ域はカードパワーが不足しているのです。
《忘れられた神々の僧侶》
メタゲーム上の立ち位置が良ければ《忘れられた神々の僧侶》はデッキ内で最強のカードとなり、デッキの中心に据える価値が出てきます。しかし残念ながら、ゴロスランプが最大勢力の時期ですから、今は《忘れられた神々の僧侶》の出番ではありません。
《黒槍の模範》
クロックが大きく、瞬速・絆魂・接死はどれも無駄になりません。プレイオフでは3枚でしたが、今後は4枚にしたいと思っています。
《ラゾテプの肉裂き》、《オルゾフの処罰者》
《忘れられた神々の僧侶》と相性が良いですが、それ以外の場合は微妙になるクリーチャー。どちらかといえば、2ターン目にパワー2相当を展開できる《ラゾテプの肉裂き》の方が好印象です。
《恋に落ちた剣士》
《恋に落ちた剣士》を搭載し、騎士にフィーチャーした黒単もあります。私自身はまだ試せていませんが、いつかやってみたいと思っています。
《真夜中の騎士団》
2マナ域としても及第点であり、中盤から終盤にかけての「出来事」にも価値があります。ブロックできないデメリットが痛手になる場面も少なくないため、4枚は過剰という印象です。
《ヤロクの沼潜み》
こちらも2マナ域の中でパッとしないクリーチャーです。他の手札破壊効果と合わせることで真価を発揮します。
3マナ域
《騒乱の落とし子》
厳密には4マナ域であるのは承知しています。《騒乱の落とし子》を使わず、シナジーや生け贄テーマを重視した構築をいろいろと試してみましたが、プレッシャーに欠けるデッキになるだけでした。《騒乱の落とし子》はクロックがとてつもなく大きいうえに、回避能力すら付いています。今のところ4枚採用しない構築は考えられないですね。
《真夜中の死神》
全体除去に対する保険となりますし、《意地悪な狼》で格闘されてもアドバンテージを損しません。クリーチャータイプが騎士であることに意味が生まれる場面もあります。個人的に思い入れがあるカードです。
《ロークスワインの元首、アヤーラ》
非常に強いカードです。ですが、早とちりをしてはいけません。3マナ域は争いが熾烈であり、現在のメタゲームでは彼女がその枠を勝ち取るとは思えないのです。今後攻撃的な戦術が人気となれば、喜んでメインデッキに数枚入れることでしょう。
《残忍な騎士》
3マナのクリーチャーよりも除去として運用することが多い1枚。しかし赤単のようなデッキに対しては、2/3の絆魂クリーチャーとしても使用できることが大きなメリットとなります。これまではほぼ間違いなく4枚採用してきましたが、ゴロスランプに対して強くないので3枚に抑えようかと考えています。
4マナ域
《悪ふざけの名人、ランクル》
唯一無二の存在、《悪ふざけの名人、ランクル》。絶大な働きをします。強力で、汎用性が高く、しかもデッキの大部分のカードとシナジーを形成。黒単では4マナが”やや重い”範疇になるので、適切な枚数に関しては不確かな状態です。2枚しか使わないのはもったいないレベルのカードでしたが、4枚では手札で腐ってしまう場面も出てくることでしょう。今は3枚が正しい数字なのではないかと考えています。
妨害要素とサイドボード
このデッキを気に入っている理由のひとつは、全てのカードが能動的でありながら、相手に有効な妨害を行えることです。ただ《忘れられた神々の僧侶》や《残忍な騎士》では足りないこともありますから、メインデッキに妨害要素を追加してみるのも良いでしょう。
《軍団の最期》
アグロや《死者の原野》のゾンビトークン対策。メインデッキに入れたこともありました。今の環境ならメインデッキに入れて良いでしょう。
《ドリルビット》
ゴロスランプがコントロールを圧倒するようになったため、《強迫》はもはや最高の手札破壊呪文ではなくなりました。《不屈の巡礼者、ゴロス》、《ハイドロイド混成体》、《王国まといの巨人》を手札から落とせることが非常に重要なのです。先週末は《ドリルビット》をメインデッキに入れませんでしたが、今後は採用してみようと思っています。
《害悪な掌握》
緑のクリーチャーを基盤にしたデッキは前環境から大活躍していました。そして《王冠泥棒、オーコ》、《意地悪な狼》、《金のガチョウ》が加わり、一層強化されています。この手のデッキに対して《害悪な掌握》は格別な除去であるため、サイドボードで4枚未満にするつもりはありません。
《魔女の復讐》
個人的に高評価のカード。エレメンタルや騎士といったクリーチャータイプ戦術に効果的なだけでなく、人間・ドルイド・エルフを宣言しても2:1交換を望める場面が多いカードです。
《夢を引き裂く者、アショク》
執筆している最中に気づきましたが、《夢を引き裂く者、アショク》は以前ほどゴロスランプに強くありません。サイドボード後に相手はコントロールとして立ち回ってくるからです。《敬虔な命令》、《ガラスの棺》、《拘留代理人》を複数投入してきます。この枠に最善なプレインズウォーカーは《はぐれ影魔道士、ダブリエル》かもしれません。
《はぐれ影魔道士、ダブリエル》
かつては不採用にしたカードでした。サイドボードに役割が被る3マナ域を詰め込みたくなかったからです。《はぐれ影魔道士、ダブリエル》は《夢を引き裂く者、アショク》よりも多様なマッチで活躍しますし、デッキ内のその他の手札破壊効果とも相性が良いです。
サイドボードとして採用を検討すべきカードは他にもいくつかあります。ただ、実際に採用に値するレベルにはないと思いますし、正確に判断するだけの経験を私が持ち合わせていないカードたちです。
完成したデッキリスト
では話を総括しましょう。以下に掲げたのは、今後最善になるであろう75枚です。ゴロスランプは環境を支配し続けるでしょうから、メインデッキはゴロスランプを倒すことを重視しました。サイドボードはその他のマッチアップ相性を改善してくれるもので構成してあります。
4 《ロークスワイン城》
1 《総動員地区》
-土地 (23)- 4 《漆黒軍の騎士》
4 《どぶ骨》
2 《穢れ沼の騎士》
4 《ヤロクの沼潜み》
4 《黒槍の模範》
2 《真夜中の騎士団》
3 《真夜中の死神》
3 《残忍な騎士》
4 《騒乱の落とし子》
3 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (33)-
3 《ロークスワインの元首、アヤーラ》
2 《魔女の復讐》
2 《はぐれ影魔道士、ダブリエル》
1 《残忍な騎士》
1 《軍団の最期》
1 《ドリルビット》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
-サイドボード (15)-
サイドボードガイド
ゴロスランプ
対 ゴロスランプ
シミック / バントランプ
対 シミック / バントランプ
ジェスカイファイアーズ
対 ジェスカイファイアーズ
赤単
対 赤単
黒単
対 黒単
エスパースタックス
対 エスパースタックス
シミックフラッシュ
対 シミックフラッシュ
さいごに
黒単デッキガイドは以上となります!ここまでお付き合いいただきありがとうございました。黒単でゴロスランプを粉砕しましょう!
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)