Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/01)
はじめに
みなさんこんにちは!できることならグランプリ・アトランタ2019の栄えある勝利をお伝えする記事にしたかったのですが、初日に4-3でドロップし、私の理想とするプランはあえなく崩れ去りました。とはいえ、ここ数か月の調整結果やメタゲームの変遷に合わせた《実物提示教育》デッキの構成の変化についてお伝えしようと思います。みなさんにとって発見が多く、楽しめる記事になっていれば幸いです。
激動のレガシー環境
前回の記事から続く数か月の間に、レガシー環境は何度かの大変革を迎えました。その主たる原因は、『灯争大戦』と『モダンホライゾン』のプレインズウォーカーたちです。《大いなる創造者、カーン》は赤単プリズンなどの既存のアーキタイプを大幅に強化し、《神秘の炉》とともに「カーンフォージ」と呼ばれる全く新しいアーキタイプを”創造”さえしました。
《覆いを割く者、ナーセット》と《時を解す者、テフェリー》は当初から注目され、コントロールやミッドレンジに居場所を見つけました。ですが(スニーク・ショーにとってはありがたいことに)《大いなる創造者、カーン》や『モダンホライゾン』の《レンと六番》ほど影響は持続しませんでした。《レンと六番》は軽量のアドバンテージ源であり、《不毛の大地》を使い回しながら奥義によってゲームを決定づけるプレッシャーを与えます。ティムールデルバーはデッキにピッタリのカードを手に入れ、青赤デルバーから一番人気の座を奪いました。
『モダンホライゾン』といえば《否定の力》を忘れてはなりません。5~6枚目の《意志の力》でありながら、《壌土からの生命》を追放できるため、多くの青のフェアデッキにとって喜ばしい強化となりました。その反面、コンボを使うプレイヤーはピッチスペルを使われる場面が増えてしまいました。
私は自分のエースデッキとしてオムニ・スニークに大いに自信を持っていました。ところが7月にレガシーの練習に戻ってみると、今までと全く様相の異なるメタゲームが存在していて、オムニ・スニークよりも優れた選択肢があるかを探らなければなりませんでした。オムニ・スニークの魅力を低下させるであろうもうひとつの要因がロンドンマリガンです。というのも、新ルールは概してマリガンの増加につながるものであり、コンボ成立に追加で2枚のカードを必要とする《全知》はカードとして弱体化すると考えたのです。
そういった経緯を踏まえ、《全知》を使わないスニーク・ショーを試してみたくなりました。さらに、追加のマナ加速である《猿人の指導霊》や、防御手段である《目くらまし》を採用し、コンボをいち早く安全に狙う構成です。これならばマリガンが重なったとしても少ないカードでコンボを目指せます。コンボ以外のタイミングで《目くらまし》をピッチスペルで唱えると、コンボの始動が1ターン遅れることが多いため、スニーク・ショーで《目くらまし》を使うならばマナ加速手段である《猿人の指導霊》を併用するのは賢明な選択です。
構成を考えていると、グランプリ・千葉2016のファイナリストである木原 惇希が2017年に使用していたデッキリストを思い出しました。私は少しだけ調整を加え、彼のデッキに近しいものを完成させたのです。
1 《山》
2 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
4 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
-土地 (18)- 4 《猿人の指導霊》
4 《グリセルブランド》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (12)-
2 《秘儀の職工》
2 《削剥》
2 《紅蓮地獄》
2 《トーモッドの墓所》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《狼狽の嵐》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
-サイドボード (15)-
デッキリストから感じられる強さがありましたし、実際のパフォーマンスも非常に高いデッキでした。ただ、《猿人の指導霊》を最大枚数まで採用したことでデッキの安定度が下がり、コンボにオールインする要素が強まってしまうのが気がかりでした。それに比べれば細かな点ですが、メインデッキ内の青のカードは22枚しかありません(《実物提示教育》デッキでは24枚以上が理想の目安)。また、土地が18枚で平均的なスニーク・ショーよりも青マナ源が2~3少なく、マナトラブルがときおり発生します。とはいえ、《目くらまし》や《猿人の指導霊》を数枚入れようという背景にある考えは捨てがたいものがあり、いつか再訪しようと決意しました。
その後、私はホガークヴァインを使用し、21-4などの一定の成功を収めました。当時のフェアな青のデッキに非常に強く、墓地対策・打ち消し呪文・除去などのあらゆる妨害を押しのけて勝つだけの力があったのです。一方で苦手としていたのが、高速のコンボデッキや土地単/ダークデプスであり、特に《虚空の杯》戦略は厳しいものがありました。《大いなる創造者、カーン》を搭載した赤単プリズンがMagic Onlineで人気となったことで、私はホガークヴァインを諦め、スニーク・ショーに立ち返ることになったのです。
懐かしきエウレカ・テル
一方そのころ、《夏の帳》を搭載したティムールカラーのスニーク・ショーが話題となり、私も注目しました。3色目にタッチするのは比較的裏目がありません。ただ、少し調整してみたところではタッチする価値がないように感じました。《夏の帳》は打ち消しや手札破壊に対して極めて有効な手段ですが、1マナのソフトカウンター(条件付き打ち消し呪文)を優先させたいところです。ソフトカウンターは汎用性が高いだけでなく、守備的な役割も担えます。たとえば、《呪文貫き》でプレインズウォーカーを打ち消したり、ときには《狼狽の嵐》や《紅蓮破》でキャントリップ呪文を妨害したりできるのです。さらに、《夏の帳》では介入できない《リリアナの勝利》が《悪魔の布告》に取って代わっているのも《夏の帳》の評価を下げる要因でした。
《夏の帳》はスニーク・ショーに採用する価値がありませんでしたが、エウレカ・テルを再訪しようという気にさせてくれました。エウレカ・テルは《師範の占い独楽》入りの青白奇跡がメタゲームを席巻していた2017年に《すべてを護るもの、母聖樹》を最大限に活用しようとして調整したデッキでした。また、《Eureka》は《騙し討ち》と違って《全知》を戦場に出せる魅力があります。
とはいえ、総合的に見た場合、オープンなメタゲームではエウレカ・テルよりもスニーク・ショー、カード単体で言えば《Eureka》よりも《騙し討ち》の方が常に優位でした。《騙し討ち》は手札にクリーチャーがいなくとも先に設置しておくことができるため非常に便利です。というのも、先に設置できれば手札破壊で妨害されづらいですし、タッチカラーを一度に2マナ要求されることがないためマナ基盤にも優しくなるからです。(先に設置できることが特に意味を持つ場面は、《古えの墳墓》などの無色2マナ土地を複数持っているものの、有色のマナが1つしかないときです)
ミラーマッチにおいてエウレカ・テルがコンボを安全に決めるには事前に《全知》を掘り当てる必要があるため、《騙し討ち》を使用できる《実物提示教育》戦術と比較した場合に大きなディスアドバンテージとなります。《実物提示教育》や《Eureka》など、相手も大型クリーチャーを展開できる手段しか持たないエウレカ・テルはミラーマッチでは安定しないでしょう。
こういった欠点はあるものの、『基本セット2020』からの新戦力である《夏の帳》やさほど注目されていない《変容するケラトプス》を搭載したエウレカ・テルを試してみたい気持ちは揺るぎませんでした。《夏の帳》はエウレカ・テルの手札破壊への脆弱さをカバーする優れたツールであり、《変容するケラトプス》は当時のデルバー系の多くに敵なしの強さだろうと思ったのです。このころは青赤デルバーが環境の仮想敵で、《レンと六番》がちょうど注目を浴び始めたころでした。つまり、テンポデッキやコントロールデッキが《不毛の大地》を使い回すことがなかったため、《すべてを護るもの、母聖樹》を軸としたサイドボード戦略が魅力的なものだったのです。
(常に準備万端にしておきたいスニーク・ショーに加え)エウレカ・テルを数週間調整してみたところ、あっさりと勝率は70%を超えました。特に《花の絨毯》から高速展開された《変容するケラトプス》は青赤デルバーに対して目覚ましい活躍を見せたのです。
1 《森》
4 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《汚染された三角州》
1 《沸騰する小湖》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 1 《Elvish Spirit Guide》
3 《グリセルブランド》
3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (7)-
事前の予想通り、《夏の帳》は手札破壊と打ち消しに対して効果抜群でした。ふつうはケアしづらい《狼狽の嵐》さえも対応できます。当時の青赤デルバーに対するサイドボードですが、《意志の力》4枚、《直観》3枚、《全知》3枚をサイドアウトし、《変容するケラトプス》3枚、《夏の帳》3枚、《花の絨毯》2枚、《すべてを護るもの、母聖樹》2枚をサイドインしていました。このサイドボーディングにより、多く搭載された《紅蓮破》系やその他の打ち消し呪文を無力化することができ、私はこのデッキリストに大きな自信を持つようになりました。
しかし不幸なことに、《レンと六番》は(当然)人気沸騰し始め、結果としてティムールデルバーは青赤デルバーからデルバーデッキの頂点の座を奪い取ってしまいました。そのため、悲しいことにエウレカ・テルはほぼ使えないデッキになってしまったのです。《タルモゴイフ》はときに5/6までサイズアップし、図らずも《変容するケラトプス》に対する完璧な解答になっていました。《レンと六番》は環境に《不毛の大地》を急増させ、《すべてを護るもの、母聖樹》はお荷物のような存在に。従来は《すべてを護るもの、母聖樹》の対処に頭を抱えていた青白奇跡やグリクシスコントロールなどのデッキが、《アーカムの天測儀》によるマナサポートで《レンと六番》を搭載した4色奇跡や4色コントロールへと変貌していきました。
その反面、幸運なこともありました。《すべてを護るもの、母聖樹》が時代に合わなくなったものの、《レンと六番》は総じて《実物提示教育》戦略に対してあまり影響を与えないのです。《呪文貫き》を構えているというブラフを含め、ティムールデルバーは序盤から《レンと六番》を唱えるためにタップアウトする余裕は滅多にありません。また、《焦熱島嶼域》や《孤立した砂州》がドローで呪文に変換されない限り、[+1]能力によるアドバンテージが展開に影響することは少ないでしょう。《レンと六番》が本当に問題になるのは、奥義に到達するほどゲームが長引く場合だけです。奥義が決まれば、5マナを支払って《意志の力》を何度も「回顧」される展開になりやすいのです。特に2枚目の《レンと六番》が出てくる場合はその傾向が加速します。
スニーク・ショーへの回帰
私はスニーク・ショーに舞い戻り、新たなメタゲームに適合した構成を見つけようと試行錯誤し始めました。2017年の終盤から使い続けてきた古典的なメインデッキは依然としてデッキパワーと安定性を保っていましたが、私は《猿人の指導霊》と《目くらまし》を全力投入することなく機能する構成を考える気になっていました。グランプリ・アトランタまでひと月を切っており、さらなる大きなメタゲームの変化はないだろうと思われたため、グランプリに適したデッキリストを見つけたいと思っていたころでした。つまり、メインデッキは非常に安定した屈強な構成にし、サイドボードの枠は空けたままにして変化に対応できるような状態を求めていたのです。
キャントリップ呪文とマナベース
キャントリップ呪文をフルの12枚体制にするのは、安定性を極限まで高める意味で合理的な判断だと思いました。12枚のキャントリップ呪文と《山》を入れた構成が結果を出していたこともありましたし、《レンと六番》の影響で《不毛の大地》は増えているという事実もありましたが、私は12枚のキャントリップ呪文を採用すれば《山》なしのマナベースでもデッキは円滑に回ると考えました。この構成にした場合、キャントリップ呪文を同一ターンに複数回唱えられることが増えるため、《山》を引きたいというシーンは非常に限定的になるでしょう。たとえ《騙し討ち》を展開した後に《Volcanic Island》を《不毛の大地》で破壊されたとしても、豊富なキャントリップ呪文が別の赤マナ源をあっさりと見つけ出してくれることも多いはずです。ましてや《猿人の指導霊》もありますしね。
キャントリップ呪文の12枚体制を長年試してきてもうひとつ気づいたのは、4枚目の《引き裂かれし永劫、エムラクール》をカットしても、コンボの速度や安定性は十分だということです。しかも、不要なクリーチャーを重ね引いて動きが鈍くなる確率を下げられます。《引き裂かれし永劫、エムラクール》をカットすることで、価値あるフリースロットを作ることができるのです。
妨害とフリースロット
以前は《呪文貫き》4枚(あるいは《呪文貫き》2枚+《狼狽の嵐》2枚)の構成でしたが、ティムールデルバーに対抗するために《目くらまし》4枚に挑戦することにしました。《目くらまし》はキャントリップ呪文が豊富な構成で効力を増します。というのも、序盤は全てのマナを注いで複数のキャントリップ呪文を唱えたいことが多く、受動的な《呪文貫き》のためにマナを浮かす余裕がないからです。さらに、《エルフの開墾者》は1ターン目に展開できる《カラカス》のサーチ手段であり、ダークデプスやマーベリックなどで定番のカードとなってきています。《目くらまし》は少なくとも先手であれば、《エルフの開墾者》への明確な解答となります。
2つのフリースロット枠は《猿人の指導霊》で埋めてデッキを完成させました。このカードがあれば、たとえコンボ以外のタイミングで何度か《目くらまし》をピッチスペルで唱えていたとしても、テンポを損なうことなく予想外のターンにコンボを始動することができます。
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 2 《猿人の指導霊》
4 《グリセルブランド》
3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (9)-
このデッキリストは25-5という滑り出しでした。1枚の《猿人の指導霊》は《全知》と入れ替えました。《全知》は多くの相手に対してサイドアウトするため、好きになれない時期もありましたが、非常に便利な効果であり、たとえ1枚挿しだとしてもアクセスできるようにしたい存在です。ふつうなら勝てないような展開でも《全知》なら何とかできることがあります。12枚のキャントリップ呪文や、ときには《グリセルブランド》の能力を駆使すれば、1枚挿しのカードも見つけやすいはずです。
Winning streak ended at 18-0. 😔🙃
— Jonathan Anghelescu (@JPAnghelescu) September 1, 2019
「15連勝中。トロフィー20個目。」
「連勝記録は18でストップ。」
アップデートしたデッキリストは開幕18連勝を収め、9月2日のLegacy Challengeの4回戦で記録が途絶えました。今思えば、リーグは4-0の時点でドロップし、Legacy Challengeで最新のデッキリストを使わないようにし、ツイートもしないようにし、グランプリに向けて《目くらまし》の効果を最大限まで高めた方が賢かったかもしれません。しかし残念なことに、私はあまりにも連続で勝利したことで興奮し、浮かれてしまったのです。
とはいえ、《目くらまし》の存在が知られたことを逆手にとれないかと考えました。相手は余裕があるなら、より慎重に《目くらまし》を意識したプレイをしてくるでしょう。以前までティムールデルバーは《目くらまし》や《意志の力》を後ろ盾に、2ターン目にタップアウトして《タルモゴイフ》を展開してくることが多かったですが、こちらの《目くらまし》に引っかからないように1ターン待ってくれるかもしれません。このように、《目くらまし》が知られてしまったこと、そして私が《目くらまし》入りのリストを使用していると思わせることにより、たとえ実際には《目くらまし》の入っていないデッキリストを使用していたとしても、いくつかの恩恵を教授できるだろうと考えました。
しかし、同時に疑問もわいてきました。はたして《目くらまし》はバレていた場合にどの程度弱体化するのだろうか?また、相手が《目くらまし》をケアする余裕があって、序盤のプレイを遅らせてくる頻度は?
浮かび上がる疑問に確かな答えは出せなかったものの、私はとうとう従来の《呪文貫き》4枚、《猿人の指導霊》0枚、《全知》2枚の構成に戻ることにしました。これはグランプリの1週間と少し前のことでした。
新たな敵
This is the ideal Legacy deck. You may not like it, but this is what peak performance looks like. (28-2) pic.twitter.com/o4peYkPUeF
— Maxtortion (@maxtortion) August 24, 2019
「最強のレガシーデッキ。みなさんの好みに合うかわからないけど、これこそが最高のパフォーマンスなんじゃないかな(28-2)」
雲行きが怪しくなったのは、マックス・ギルモア/Max Gilmoreの”NBC” (no bad cards = 弱いカードが一切入っていない)ティムールデルバーがきっかけでした。このデッキにはサイドボードに《カラカス》が入っているのです(ときには《輪作》も併用されています)。このテクニックは《マリット・レイジ トークン》に対して強いだけでなく、スニーク・ショーへの別の角度からの対抗策になります。従来は《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を展開できれば十分に勝てることが一般的でした(返しのターンの攻撃で負ける場合は除く)。しかし今や、伝説のクリーチャーたちに対する打ち消されない解答を手にしてしまったのです。
《グリセルブランド》を早々に出せば、《騙し討ち》を見つけ、《カラカス》を乗り越えて勝利するプランはいまだ健在です。ただ、ティムールデルバーに対するゲームプランは《呪文貫き》や《目くらまし》といったソフトカウンターをケアするために、じっとマナを伸ばしていく展開になりやすいのです。
かつて《全知》はデルバー系に対して容易にサイドアウトするカードでした。今は《カラカス》をくぐり抜ける手段として2ゲーム目以降も残るようになりました。とはいえ、《カラカス》に加えて《燃えがら蔦》や《紅蓮破》があると《全知》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えても抑え込まれてしまいます。そこで私は《全知》ではなく《大祖始》をしばらく試してみることにしました。
《大祖始》は全体的にパフォーマンスが高かったものの、ミラーマッチやコンボ全般に対して《全知》に大きく劣っているという印象でした。《全知》とは異なり、《大祖始》と《騙し討ち》の相性はちょっとした罠です。というのも、相手に10点ダメージを1度通したところで勝ちにはなりづらいからです。ティムールデルバー戦でも十分ではなく、《秘密を掘り下げる者》とのダメージレースで負けてしまうこともあるでしょう。
私は覚悟を決め、ティムールデルバーの1枚挿しの《カラカス》に負ける可能性を受け入れることにしました。サイドボードプランをそれに応じたものにし、グランプリの2日目までに公開されないであろうリーグで景気よく5-0して調整を完了としました。そして以下のデッキリストを自信を持って登録したのです。(本番は《島》ではなく《冠雪の島》でしたが、オンライン上では違いが感じられませんでした)
最終的なデッキリスト
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 4 《グリセルブランド》
3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (7)-
2 《トーモッドの墓所》
2 《防御の光網》
2 《魔術遠眼鏡》
1 《秘儀の職工》
1 《狼狽の嵐》
1 《外科的摘出》
1 《削剥》
1 《残響する真実》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ウルザの後継、カーン》
-サイドボード (15)-
メインデッキは非常に素直な構成です。私の昔ながらのメインデッキと違うのは、《引き裂かれし永劫、エムラクール》1枚、《山》1枚を減らし、《定業》1枚とフェッチランド1枚を追加している点だけです。サイドボードについてはもう少し詳しく解説しましょう。
サイドボードのカード選択
《削剥》 1枚、《残響する真実》 1枚
《暗黒の深部》が四方八方にいたときは、《残響する真実》をしばらく2枚採用していました。《削剥》を復帰させた主な理由は、カーンフォージのアーティファクトや序盤の《エルフの開墾者》といったパーマネントへの明確な解答になるからでした。
《紅蓮地獄》 2枚
《紅蓮地獄》の威力は今が史上最低ではないでしょうか。以前はグリクシスデルバーや青赤デルバー戦で《若き紅蓮術士》への完璧な解答であり、時間を稼ぐことに一役買ってくれていました。しかし今は、《秘密を掘り下げる者》を一掃するタイミングで欲しいタイミングは少なくないものの、《タルモゴイフ》や《戦慄衆の秘儀術師》によって《紅蓮地獄》は使いづらくなっています。
ティムールデルバーに対してはサイドインしないとはいえ、特にグランプリのような広大なメタゲームにおいては《紅蓮地獄》にアクセスできるようにしておきたいところです。《仕組まれた爆薬》などの代役は3マナ以上かかりますし、デス&タックスやマーベリックのヘイトベア―を一掃できないことも良くあります。
《防御の光網》 2枚
ティムールデルバーの隆盛を踏まえての採用です。もし《目くらまし》入りの構成にしていた場合は、すでにティムールデルバーと戦う手段が揃っているため、《防御の光網》は採用していなかったでしょう。このアーティファクトはティムールデルバーにとって絶対に打ち消さなくてはならない軽量呪文です。また、青のミッドレンジやコントロールは《解呪》効果のカードを有しているものの、こういったデッキ相手にも一定の有用性があります。
《秘儀の職工》 1枚
大型クリーチャーを展開する追加の手段でありながら、《呪文貫き》や《狼狽の嵐》などの打ち消し呪文を回避できます。《秘儀の職工》は主にミラーマッチ、追加の脅威が欲しいコントロール戦、あるいは《全知》とともに《封じ込める僧侶》への解答としてサイドインします。相手が《剣を鍬に》を使ってくれるなら、それも良しでしょう。大型クリーチャーに効果的でない《剣を鍬に》を2ゲーム目以降も残してくれているということですからね。《全知》ではなく《大祖始》の構成ならば、《秘儀の職工》の魅力が高まるでしょう。
《狼狽の嵐》 1枚
この枠は追加の打ち消し呪文を入れる比較的自由な枠であり、主に他のコンボデッキに対して守備的に使うものを入れています。また、多くの青のフェアデッキに対してもサイドインします。
《精神を刻む者、ジェイス》 1枚、《ウルザの後継、カーン》 1枚
消耗戦になるコントロールやミッドレンジ相手への追加の脅威です。《精神を刻む者、ジェイス》に限っては、《罠の橋》を設置された場合の勝利条件となります。《精神を刻む者、ジェイス》はサイドボード後にロングゲームになりやすい相手に強く、ミラーマッチやANT、黒赤リアニメイトといったデッキ相手に入れるようにしています。
《ウルザの後継、カーン》の最大の魅力は《紅蓮破》と《水流破》の両方を回避できることです。とはいえ、《精神を刻む者、ジェイス》よりは用途が狭く、サイドインの頻度では劣ります。(《ウルザの後継、カーン》の名誉のために言っておくと、《精神を刻む者、ジェイス》はメインデッキにすら入り得るカードです)
《魔術遠眼鏡》 2枚
《血染めの月》に代わって採用しました。《血染めの月》がある状態で《暗黒の深部》をプレイすると氷カウンターは乗りません。そして、ダークデプスの《活性の力》や《突然の衰微》で《血染めの月》を破壊されると《マリット・レイジ トークン》が生成される条件が整ってしまうのです。そのため、こういったカードが使われたとしても《暗黒の深部》や《カラカス》といった土地に効果的なカードを私は探し求めていました。また、《のぞき見》効果も《実物提示教育》デッキでは非常に有用です。
《血染めの月》と《魔術遠眼鏡》のどちらを使うかで右往左往し、ときには散らして採用したこともありました。そして最終的に私は《大いなる創造者、カーン》デッキの対抗手段を増やしたいという結論を出しました。カーンフォージはグランプリ・アトランタの数週間前に話題になりましたが、《魔術遠眼鏡》で《大いなる創造者、カーン》を指定すれば大抵はゲームエンドです。サイドボードに別の勝ち手段となる《難題の予見者》を採用していたら別ですけどね。
ただし、《猿人の指導霊》を使うデッキリストならば《魔術遠眼鏡》よりも《血染めの月》を優先させるでしょう。ティムールデルバーに対してゲームの勝敗を決する呪文をいち早く叩きつけられるからです。
《トーモッドの墓所》 2枚、《外科的摘出》 1枚
黒赤リアニメイトやドレッジとの相性が悪かったため、テスト中は墓地対策を4枚まで増やしたことがありました。《墓掘りの檻》を採用しなくなったのは、《納墓》で簡単にサーチできるうえに的確な解答である《悪ふざけ》が登場したからです。1枚だけ採用した《外科的摘出》はミラーマッチで《実物提示教育》を仕掛ける前の安全確認としても使用します。
グランプリ・アトランタとLegacy Challenge
グランプリ・アトランタ
冒頭でお伝えしたように、4-3で初日にドロップしました(bye後に2-3)。
ラウンド | デッキ | 結果 |
---|---|---|
1回戦 | Bye | – |
2回戦 | Bye | – |
3回戦 | ティムールデルバー | ×× |
4回戦 | ANT | 〇〇 |
5回戦 | 黒赤リアニメイト | ×× |
6回戦 | カーンフォージ | 〇×〇 |
7回戦 | TES | ×〇× |
運に見はなされて負けることの多かった大会でした。
ティムールデルバー戦では、《意志の力》と《呪文貫き》が打てる状態で3ターン目に《実物提示教育》から《グリセルブランド》を展開しようとしました。相手が《呪文貫き/Spell Pierce》を唱えてきたため、私は《意志の力》のピッチスペルのコストにもう1枚の《意志の力》を使うか《呪文貫き》を使うかで迷いましたが、《呪文貫き》は相手が《意志の力》を唱えてきたときのために温存することにしました。結果、相手は追加の打ち消しを持っておらず、《グリセルブランド》の着地に成功。ライフは18もある安全水域です。相手の盤面には《タルモゴイフ》、《レンと六番》、《呪詛呑み》がいる状況でした。
しかし相手は《稲妻》を《グリセルブランド》に2回唱えようとしてきました。その2枚目に対応し、私は《グリセルブランド》の能力を起動しましたが、ドローしたのはマナソースとクリーチャーのみ。コンボを再び成立させるパーツもなければ、《稲妻》を打ち消す呪文もない。私は再び《グリセルブランド》の能力を起動せざるを得ませんでした。ライフを4にしたとしても、デッキ内にあと2枚ある《意志の力》を見つけなければならなかったのです。
結局私は《意志の力》を見つけることができず、相手がマナを支払わらないことを願って《呪文貫き》を使うしかありませんでした。相手は2マナを支払い、《レンと六番》の[-1]能力で《グリセルブランド》を打ち倒し、《タルモゴイフ》と《呪詛呑み》で私にとどめを刺しました。
2ゲーム目は熱戦になりませんでした。お互いにマリガンし、相手は《秘密を掘り下げる者》と《タルモゴイフ》のクロックを2枚の《意志の力》で支援して勝利しました。
続いて敗北したのは黒赤リアニメイトとの一戦でした。相手は両ゲームで1ターン目に《グリセルブランド》をリアニメイト。1ゲームは手札破壊、2ゲーム目は《別館の大長》でコンボの妨害を許しませんでした。相手は《別館の大長》の誘発能力を失念していましたが、私は《渦まく知識》で《意志の力》や《外科的摘出》を見つけられませんでした。マッチ全体を通して私がプレイしたのは、《冠雪の島》2枚とキャントリップ呪文2枚だけでした。
初日落ちが確定したのは7回戦のTESとのマッチでした。その試合はお互いに一歩も譲らず、3戦目までもつれこみました。《むかつき》のめくれ方が若干ハズレだったものの、相手は《暗黒の儀式》から手札破壊を何度か唱え、私の手札をボロボロにし、その2ターン後にコンボを決めました。
Legacy Challenge
ラウンド | デッキ | 結果 |
---|---|---|
1回戦 | 4色ローム | 〇×〇 |
2回戦 | ANT | 〇×〇 |
3回戦 | エルフ | 〇〇 |
4回戦 | スニーク・ショー | ×〇〇 |
5回戦 | ジャンド | 〇〇 |
6回戦 | マーフォーク | 〇〇 |
7回戦 | ティムールデルバー | ×〇× |
準々決勝 | ティムールデルバー | 〇×× |
日曜日のLegacy Challengeにはグランプリのデッキリストから一切変更を加えずに参加。6回戦までは全勝でしたが、7回戦と準々決勝は3ゲーム目までもつれ込む熱戦のすえにティムールデルバーに敗北しました。とはいえ、グランプリでの挫折を多少は癒すことができましたし、ある程度自信にもつながりました。
おわりに
さて今後についてですが、来月にはレガシーのグランプリがボローニャで開催されます。それに向けて、今からさまざまな構成を再び試していこうと思います。今回の調整過程の考えが読み応えのあるものになっていれば幸いです。それではグランプリで使用したサイドボーディングをご紹介して終わりにしたいと思います!ではまた次回!
付録: サイドボードガイド
ティムールデルバー
対 ティムールデルバー (先手)
対 ティムールデルバー (後手)
ダークデプス
対 ダークデプス (先手)
対 ダークデプス (後手)
青白石鍛冶
対 青白石鍛冶
4色冠雪コントロール
対 4色冠雪コントロール (先手)
対 4色冠雪コントロール (後手)
スニーク・ショー
対 スニーク・ショー
青白(タッチ赤) コントロール / 奇跡
対 青白(タッチ赤) コントロール / 奇跡
ANT
対 ANT
TES
対 TES
黒赤リアニメイト
対 黒赤リアニメイト
赤単プリズン
対 赤単プリズン
カーンフォージ
対 カーンフォージ
ボンバーマン
対 ボンバーマン (先手)
対 ボンバーマン (後手)
デス&タックス
対 デス&タックス (先手)
対 デス&タックス (後手)
マーベリック
対 マーベリック
4色ローム
対 4色ローム
ヨナタン・アンゲレスク (Twitter)