Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/16)
土地、セット、ゴー
土地をセットしてターンを返すデッキ(ドロー・ゴーデッキ)が昔から大好きだった。土地をプレイして、相手の行動に備える。それこそがマジックで成功してきた秘訣だった。でもまさかウィザーズがドロー・ゴーデッキをもうひとつ上の次元へと押し上げるとは思わなかった。ゴロスランプは究極のドロー・ゴーデッキであり、使っていて最高の気分になる。冗談はさておき、スタンダードの新たな王について話していこう。
スタンダードの王
バントゴロスを使うなら、基本的な使い方を知っておくべきだ。土地をセットして、土地を7種類以上揃えて、ゾンビを出す。そしてこれを繰り返す。このデッキがこれだけ強いのは、土地を伸ばしつつ盤面に脅威を並べられるからだ。この強みは全て《不屈の巡礼者、ゴロス》によってもたらされていると言っていいだろう。《死者の原野》をサーチし、次のターンには自身の能力を起動し、3枚のカードにアクセスできるようになる。絶対に息切れしないデッキにどうやって勝てというのだろうか?《ハイドロイド混成体》は手札を常に潤沢にし、《裏切りの工作員》はほぼ全ての脅威に対応する解答だ。
リチャード・ガーフィールドが開発したのはマジックだけではなかった。1ターンに土地は1枚だけというルールも発明していた。彼は聡明で、ゲームは一定の速度を保つべきだとわかっていたんだ。そうすれば、より強力なカードはより遅いターンにしか使えないようになる。一方のプレイヤーが4ターン目に土地を7枚並べ、他方のプレイヤーが3枚だったら、ゲームのバランスが崩れるのは当然のことだ。しかもその土地から攻撃と守備に使える軍勢が湧いてくるのだとすれば、相手は過酷な立場に立たされるだろう。
デッキの核:《不屈の巡礼者、ゴロス》
《不屈の巡礼者、ゴロス》は《死者の原野》とともにデッキの核を成すカードだ。先ほども言ったように、《死者の原野》をサーチするだけでなく、リソースを常に満タンにしてくれる。開発陣が《不屈の巡礼者、ゴロス》の能力を考えているとき、起動コストに5色を含めれば安易に起動できなくなるだろうと思ったはずだ。しかし問題なのは、ゴロスランプが5色の条件をあっさりとクリアしてしまうことにある。《迂回路》を一度でも使えば、必要とされる全ての色を揃えられるんだ。仮に《不屈の巡礼者、ゴロス》が印刷されていなかったとしたら、ゴロスランプというデッキは現状ほど強くなっていなかっただろうと思う。
ミシックチャンピオンシップでのデッキ選択
2 《島》
1 《平地》
1 《沼》
2 《繁殖池》
2 《寺院の庭》
1 《神聖なる泉》
3 《寓話の小道》
1 《アゾリウスのギルド門》
1 《ボロスのギルド門》
1 《ディミーアのギルド門》
1 《セレズニアのギルド門》
1 《シミックのギルド門》
1 《天啓の神殿》
1 《疾病の神殿》
1 《神秘の神殿》
1 《花咲く砂地》
1 《茨森の滝》
4 《死者の原野》
-土地 (28)- 2 《樹上の草食獣》
3 《ハイドロイド混成体》
4 《不屈の巡礼者、ゴロス》
1 《帰還した王、ケンリス》
3 《豆の木の巨人》
2 《王国まといの巨人》
1 《裏切りの工作員》
-クリーチャー (16)-
ゴロスランプを選んだワケ
練習中は納得のいくデッキがひとつも見つからなかった。唯一満足できたのはゴロスランプだったが、当初はミラーマッチが頻発するのは理想的ではないと考えていた。その他に試したのは、ゴルガリアドベンチャー・セレズニアアドベンチャー・バントフード・シミックフード・赤単だ。しかし、どれも手ごたえが良いものではなかった。たとえゴロスランプを意識した構成にしたとしても、勝率の改善はわずかなものだった。ゴロスランプに勝つには、相手に効果抜群なカードを必ず複数枚引く必要があるんだ。唯一ゴロスランプに圧倒的な強さを見せたのは赤単だったが、赤単はバントフード・シミックフードにほぼ勝てない。
カード選択
プレインズウォーカー
自分の本心に気づきながらも、他の環境デッキでの調整を重ねた。しかし結局、ゴロスランプを選択し、多様なカードを試すことにしたんだ。最初に手ごたえを感じたのは、《王冠泥棒、オーコ》だった。このデッキのプレインズウォーカーの枠は3枚だったから、《時を解す者、テフェリー》を1枚外して枠を作ることにした。
《探索する獣》や《悪ふざけの名人、ランクル》が厄介なのは、その回避能力だ。ゾンビトークンはこの2枚をブロックできない。しかし、《王冠泥棒、オーコ》の[+1]能力を使えばブロックできるようになるんだ。それに《王冠泥棒、オーコ》はアグロデッキに対してかなり強い。1ターン目の《樹上の草食獣》から2ターン目に展開する脅威としては最強だろう。
全体除去
次に迷ったのは、メインデッキの全体除去の種類と枚数(3~4枚)だった。一般的には《王国まといの巨人》が一番強いが、《不屈の巡礼者、ゴロス》・《ハイドロイド混成体》・《裏切りの工作員》をバウンスできる状況なら《時の一掃》に軍配が上がる。
土地の枚数が多いデッキであり、メインデッキに枠を作るものは難しいものの、《帰還した王、ケンリス》や《裏切りの工作員》の枠を作りたいという気持ちもあった。そこで、4枚目の全体除去を諦め、《王国まといの巨人》が2枚、《時の一掃》が1枚の構成にすることにした。《王国まといの巨人》を多めにしたのは、《むかしむかし》で手札に加えられる点と、《豆の木の巨人》が巻き込まれないという巨人シナジーなどを考慮したからだ。
最後の1枠
本番のデッキを提出した後、どこか納得がいかない気分だった。《裏切りの工作員》の2枚目を採用できなかったからだ。このクリーチャーはミラーマッチだけでなく、緑を軸にした相手に非常に強い。それに《探索する獣》やプレインズウォーカーへの解答にもなるんだ。
《豆の木の巨人》を1枚減らして、《裏切りの工作員》を1枚増やしても良かったかもしれない。《豆の木の巨人》は1枚目は強いが、マナ加速した後の2枚目は微妙だからだ。《むかしむかし》が4枚の採用だから、《豆の木の巨人》が2枚、《裏切りの工作員》が2枚の構成が最善だったのではないかと思う。
サイドボードに採用した《害悪な掌握》
サイドボードには《害悪な掌握》を採用し、ゴロスランプを意識したプレイヤーと戦えるようにした。黒の呪文ではあるが、《帰還した王、ケンリス》の起動型能力のために採用した《沼》があったし、それをサーチする手段も豊富だ。《探索する獣》を手っ取り早く対処できる手段は、喉から手が出るほど欲しい。
《悪ふざけの名人、ランクル》への解答にもなる《牢獄領域》も検討したものの、相手には《暗殺者の戦利品》がある。《害悪な掌握》は使い道が限定されるが、《牢獄領域》よりも優れた選択だと考えた。
デッキの印象
今回のデッキリストや自分自身の判断に満足できているかというと、正直微妙なところだ。ゴロスランプはベストデッキだと思う。だけどミラーマッチになることは多いだろうし、もっと時間と努力を重ねられたら、より良いデッキができていただろうと思えてならないんだ。
10/21の禁止制限改定
公平な立場から単刀直入言おう。ウィザーズは《死者の原野》を禁止にするべきだ。このデッキは現在のメタゲームには強力すぎて、効果的に対処する手段が存在しない。ゴロスランプを使わないなら、《探索する獣》を4枚入れるところから構築を始めることになる。選択の余地がないんだ。
何らかのカードが禁止されるのは本当に好きになれない。プレイヤーたちがデッキに多大なお金と努力を投じてきたことを知っているからだ。デッキを急遽変更できる人の方が少ないだけに、マジックをやっていて特に辛い瞬間なんじゃないかと思う。でも、ゴロスランプがスタンダードをほろ苦くしているのも確かなんだ。
もし《死者の原野》が10月21日に禁止された場合、2つのことが起きると予想している。まず、《王冠泥棒、オーコ》がスタンダードのベストカードになる。そして、エスパースタックスが息を吹き返す!特に後者は個人的に期待している。エスパーカラーのデッキと6マナのプレインズウォーカーを久しく使っていないからだ。エスパースタックスはあらゆる緑軸のデッキに対して有利だと思っている。「出来事」デッキは抜群の働きを見せる《エッジウォールの亭主》というドローエンジンがいるため、厄介な存在になるかもしれない。とはいえ、単体除去や全体除去で対抗できるだろう。
ミシックチャンピオンシップで俺の考えが間違っていたことが証明されるかもしれない。でも、まずそんなことにならないはずだ。《死者の原野》はメタゲームにとって健全ではない。報いを受ける時が来ただろう。冒頭でゴロスランプは新たな王だと表現した。しかしミシックチャンピオンシップが終われば、王の命も長くないだろう。