1. はじめに
こんにちは。Hareruya Hopesの浦瀬です。今回はパイオニアの黒単アグロの解説記事になります。
新フォーマットと言うのはいつでも楽しいもので、自分は最近ずっとパイオニアで遊んでいます。第1期パイオニア神挑戦者決定戦が開催された週、ちょうど黒単アグロが強いと言われ始めた時期でしたが、自分は黒単アグロでマジックオンラインのリーグを19-1するなど、かなり調子がいい状態でした。
仕事の都合でパイオニア神挑戦者決定戦には出られなかったので、Hopesの齋藤 慎也さんにデッキリストとデッキガイド(この記事のベースになっています)を渡したところ、見事にトップ4に入賞してくれました。
パイオニア神2没でした。デッキは@lighdar_urse 謹製の黒単アグロ。パイオニアは今日が初プレイで無限にミスりましたが、デッキが強すぎました。軽いカード満載で序盤は安定、谷城コプターレギオン勇者たかり屋でマナフラ耐性もバッチリ。あと環境的に収集艇がベリーグッド。おススメです。 pic.twitter.com/PWYSsvr06q
— Shinya Saito (@CEOfiver) November 23, 2019
その後も、BIGSのマエノソノ(ケンタ)さんが同一のメインボードでMOCS予選6-2、Windy514さんが11/26付のMOPTQで75枚同一のリストで5位入賞、sasavegetaさんが11/27のMOPTQでほぼ同一のリストで7位入賞と、デッキはかなり良かったように思うので、筆を執らせていただいた次第です。
MOCS予選6-2で初権利!神決8のしんやスペシャル(Hopes浦瀬さん謹製とのこと
— のその (@nosonosaaan) November 23, 2019
2-0BGアグロ
1-2バント原野
2-1イゼフェニ
2-0シミック霊気池
2-0シミックファクト
2-1トリココン
0-2黒単
2-1黒単
収集艇に目から鱗😂インアウトが難しかったけど、アグロが苦手な自分でも何とか戦えたのでパワーは高め! pic.twitter.com/2cGpVAuBoX
2. パイオニア環境と黒単というデッキについて
神挑戦者決定戦の時点では、メタゲームは以下のような認識でした。
そこで慎也さんに渡したデッキリストはこちら。
4 《ロークスワイン城》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《変わり谷》
-土地 (24)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《夜市の見張り》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《残忍な騎士》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (22)-
黒単アグロの強みはいろいろありますが、20枚の1マナ域による圧倒的な手数、にもかかわらず大量のフラッド受けがあり継戦能力にも長けることが一番大きいです。
フラッド受けが多いので24枚という多めの土地カウントを取ることができ、マナスクリューもしにくいです。単色なので色事故もほぼありません。
加えて、地上が止まっても空中戦に移行できる、《至高の評決》で流されても機体や《変わり谷》がある、《思考囲い》により手札すら攻めることができるという多角的な攻めが魅力です。
3. 構築について
黒単アグロはリストがほとんど固定化されており、このリストもほとんど同一ですので、特徴的なところを解説していきます。
《霊気圏の収集艇》2枚
一般的には《悪ふざけの名人、ランクル》の3枚目や《ゲトの裏切り者、カリタス》、13枚目の1マナクリーチャー、9枚目の除去が入っていることの多い枠です。
とどれも感触が悪く、前述のとおり黒単アグロと原野デッキがトップメタだと考えていたので、両デッキに有用な《霊気圏の収集艇》に白羽の矢が立ちました。
黒単のミラーマッチでの《霊気圏の収集艇》の有用性は説明不要でしょう。《密輸人の回転翼機》、《悪ふざけの名人、ランクル》というミラーマッチで鍵となる飛行クロックを一方的に止め、合計で6点ものライフゲインをしてくれる上に、《致命的な一押し》も当たりづらいといいことづくしです。
一方で、原野デッキに対して《霊気圏の収集艇》が有用なのか疑問に思うかもしれません。このマッチでは地上のクリーチャーはゾンビの軍団によりゲームの途中で必ず止まるので、最後の数点を詰め切るために飛行クロックが必須になります。バントverの場合は《至高の評決》が採用されているので、これで除去されない飛行クロックは是が非でも採用したい1枚でした。なお、もし今後原野デッキがゴルガリverばかりになるなら、《騒乱の落とし子》も検討して良いと思います。
サイドボードの《冒涜の悪魔》
主に対イゼットフェニックス用です。当時はイゼットフェニックスがそれなりにいたため、対策カードとして《虚空の力線》を用意していました。しかしイゼットフェニックス側はサイド後にコントロール気味に軸をずらしてくるため、リソースを失う《虚空の力線》はあまり有効ではないことがわかり、《稲妻の斧》でも落ちないタフネス6が頼もしいこのカードを採用しました。
ただ現在ではイゼットフェニックスは数を減らしているので、別のカードにする方が良いと思います。
4. プレイングに関するTIPS
1マナ域のプレイ順
1ターン目に関して、基本的には下記の順でプレイします。
パワーが2あり攻撃が通りやすい《血に染まりし勇者》が最優先です。《漆黒軍の騎士》は序盤に能力を生かしづらいので後回しになります。なお、2ターン目が《密輸人の回転翼機》の場合は《血に染まりし勇者》を手札から捨てて有効活用できるため、《夜市の見張り》を優先して良いでしょう。
また、《思考囲い》のプレイタイミングはかなり限られていて、基本的には下記いずれかのタイミング以外ではプレイしません。
なんとなく安心するためにキャストすることのないようにしましょう。
《変わり谷》チャンスを逃さない
《変わり谷》による2点クロックは非常に重要です。とにかく殴れるチャンスを逃さないようにしましょう。このデッキで一番プレイングが出る部分といって良いかもしれません。クリーチャーを出すことよりも、《変わり谷》による2点を優先する場面も多いです(相手のライフを詰めているシーンや、このターンに展開しても次ターンに殴れなくなりそうなシーン、全体除去をケアしたいシーンなど)。
《変わり谷》にも召喚酔いがあるため、土地を置く順番にはとても気を遣います。手なりで《沼》を置くのは絶対にNGで、かといって常に《変わり谷》から置くようにすると1マナ域を連打できなくなり困ることになります。想定しうる次ターンの相手の展開(ハンデスを撃たれた、カウンターを構えられたetc…)と、自分のトップデッキまで含めた手札を考慮して、一呼吸おいてからセットランドするようにしましょう。
逆に《ロークスワイン城》はあまり起動しません。このデッキはアグロデッキなので、基本的には展開や《変わり谷》、《漆黒軍の騎士》の起動を優先しましょう。
例外は特定のカードが欲しいシーンです。例えば相手が《ゲトの裏切り者、カリタス》をコントロールしていてすぐに除去が必要だったり、対コンボデッキなどでクロックは足りていてあとは《思考囲い》さえ引ければ!といったシーンだったりです。ほかには全体除去をケアして展開を控えたい状況なんかも考えられます。
機体は大切に
機体に関するプレイングは、「相手がインスタント除去を構えているときに起動しない」ということに尽きます。黒単アグロのクリーチャーは、自身で墓地から戻ってきたり、のちのち《屑鉄場のたかり屋》のコストに当てられたりと、ほとんど除去されても構わないものばかりですが、機体は違います。飛行を持っているのでゲーム後半では機体が唯一のダメージ源となるシチュエーションも多く、序盤に安易に機体を失っていたために詰め切れず負け、という展開は避けたいところです。《密輸人の回転翼機》のルーター能力も土地が不要になる終盤の方が強力です。
「相手がインスタント除去を構えているときに機体を起動しない」ことで、相手はこちらのクリーチャーに除去を撃つか、マナを無駄にするかの不自由な二択を迫られることになり、有利にゲームを進めることができます。
地上はチャンプアタックせよ!
すでに言及した通り、このデッキの終盤は飛行クロックが唯一のダメージ源となることが多いです。つまり地上のクリーチャーには賞味期限があるということです。特に《屑鉄場のたかり屋》と《血に染まりし勇者》はブロックすらできないため、地上が殴れなくなると機体に搭乗する以外の役目がなくなってしまいます。飛行の攻撃が概ね3点ずつ入ることを考えれば、地上が殴れなくなったときに相手のライフが6か7かでは大違いです。やがて賞味期限が来る地上クリーチャーを最大限活用するために、チャンプアタックも含め積極的にアタックするようにしましょう。
5. サイドボーディングガイド
黒単アグロ
対 黒単アグロ
《死者の原野》ランプ
対 原野ランプ
緑単信心
対 緑単信心
赤単
対 赤単
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
6. 今後について
今回の記事は神挑戦者決定戦の前までの経験をもとに書いているので、特にサイドボードなど若干古いところがあるかもしれません。
11/28現在、パイオニアにおける黒単アグロの勢力は増すばかりです。ミラーを制する今の主流なプランは《ゲトの裏切り者、カリタス》+《闇の裏切り》のコンビネーションのようです。このまま黒単アグロの天下が続くなら、さらに上のレイヤーが求められます。
まだ実際に試せてはいませんが、《領事の旗艦、スカイソブリン》が回答になり得るでしょう。黒単においてこれを除去する手段は《残忍な騎士》以外になく、「出来事」は大ぶりなので回避も容易です。ただし《霊気圏の収集艇》と合わせて採用すると機体の枚数が増えすぎてパイロット不足が見込まれるので、バランスには要注意です。
(ちなみに《領事の旗艦、スカイソブリン》は、かつて黒単ゾンビがスタンダード環境を制していた際にミラーで有用だったテクニックです。これこそパイオニア!)
7. おわりに
個人的な話をすると、プロポイント制度が終了してしばらく競技マジックから距離を置いていたのですが、先日Wizards of the Coast社様より次回プレイヤーズツアー(PT)の権利があるとのメールを受け取りました。『マジック基本セット2020』シーズンのシルバーレベルによる権利授与のようです。PT名古屋の日程は都合が合わないのでアメリカ・フェニックスまで遠征する必要があるのですが、パイオニアというフォーマットはとにかく楽しいので、また真剣にマジックに取り組んでいけたらと思います。
ではまた次回の記事で。
浦瀬 亮佑 (Twitter)