はじめに
みなさんこんにちは。
先週末にはEternal Party 2019(関西)が開催されました。今週末にもEternal Party 2019(関東)があり、年末に向けてレガシーのイベントが充実しています。
今回の連載では、グランプリ・ボローニャ2019、Legacy Format playoff、Eternal Party 2019(関東)の入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・ボローニャ2019
レガシーでも猛威を振るうオーコ
2019年12月1日
- 1位 Bant Snow Miracles
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Sultai Delver
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Sneak and Show
- 6位 Eldrazi Taxes
- 7位 Dredge
- 8位 Sultai Delver
Marc Vogt
トップ8のデッキリストはこちら
1600人を超える参加者が集い、大盛況の内に幕を閉じたグランプリ・ボローニャ2019は、《レンと六番》が禁止になった直後の新環境ということもあり様々なタイプのデッキが見られました。
スタンダード、パイオニアで禁止となった《王冠泥棒、オーコ》は、レガシーでもSultai Delverや多色ミッドレンジ、今大会で優勝を果たしたMiraclesにも採用されており、今後のレガシー環境を牽引していく存在となりそうです 。
グランプリ・ボローニャ2019 デッキ紹介
「Bant Snow Miracles」「Sultai Midrange」
Bant Snow Miracles
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
1 《Tropical Island》
1 《Tundra》
2 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
-土地 (20)- 3 《瞬唱の魔道士》
2 《氷牙のコアトル》
-クリーチャー (5)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《夏の帳》
1 《対抗呪文》
1 《天使への願い》
2 《否定の力》
4 《意志の力》
3 《終末》
4 《アーカムの天測儀》
3 《王冠泥棒、オーコ》
1 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (35)-
《レンと六番》の退場により、多色コントロールやTemur Delver以外のフェアデッキが復権を果たしました。
前回でも挙げたように、現在のMiraclesは《王冠泥棒、オーコ》と《夏の帳》のために緑をタッチしたバージョンが主流になっています。史上最強のプレインズウォーカーである《王冠泥棒、オーコ》と《アーカムの天測儀》による強固なマナベースから成り立つ構成で、多色ながら《不毛の大地》など特殊地形対策に耐性があり、Sultai Delverなどに強いデッキです。
☆注目ポイント
メインに2枚採用された《夏の帳》は、カウンター合戦やハンデスに対しては1マナの《謎めいた命令》として機能し、ANTの《苦悶の触手》対策にもなる強力なスペルです。Sultai系、Grixis、Dark Depths、同型、ANTなど、多くのデッキが打ち消しやハンデスを搭載しているので腐りにくいのも魅力です。
《王冠泥棒、オーコ》のおかげで、このデッキにとって非常に厄介だった《虚空の杯》などをメインから無理なく対策できるようになりました。忠誠度も高いため火力や戦闘で除去するのは困難で、《終末》から展開される《王冠泥棒、オーコ》は反則的な強さです。Izzet Delver相手は火力によってライフを削り切られてしまうこともあったので、食物トークンによるライフゲインは地味に嬉しい要素です。
今まで主な除去として《剣を鍬に》に頼っていましたが、疑似的なキャントリップ付きの除去として機能する《氷牙のコアトル》を得て守りの面がさらに強化されています。《花の絨毯》は、Delver系を含めた青いフェアデッキとのマッチアップで機能し、《目くらまし》や《呪文貫き》といったソフトカウンターを無効化します。このデッキは特に絶望的なマッチアップが存在せず、動きも安定したデッキですがプレイングが非常に難しくミラーマッチが長引きやすいデッキでもあります。
Sultai Midrange
2 《冠雪の森》
1 《冠雪の沼》
1 《Bayou》
1 《Tropical Island》
1 《Underground Sea》
1 《ドライアドの東屋》
4 《霧深い雨林》
3 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
2 《不毛の大地》
-土地 (21)- 2 《金のガチョウ》
2 《貴族の教主》
4 《氷牙のコアトル》
1 《漁る軟泥》
2 《クルフィックスの狩猟者》
2 《トレストの使者、レオヴォルド》
2 《疫病を仕組むもの》
1 《不屈の追跡者》
1 《探索する獣》
-クリーチャー (17)-
4 《緑の太陽の頂点》
2 《突然の衰微》
4 《意志の力》
1 《森の知恵》
2 《アーカムの天測儀》
4 《王冠泥棒、オーコ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (22)-
2 《外科的摘出》
2 《花の絨毯》
2 《真髄の針》
1 《カラカス》
1 《フェアリーの忌み者》
1 《疫病を仕組むもの》
1 《虚空の力線》
1 《弱者の石》
1 《三なる宝球》
-サイドボード (15)-
決勝戦で当たったBant Snow Miraclesに敗れるまで無敗で駆け抜けたSultai Midrange。
《氷牙のコアトル》や《疫病を仕組むもの》といった『モダンホライゾン』から加入した優秀なクリーチャーに加え、《トレストの使者、レオヴォルド》など特定のデッキに刺さるクリーチャーが多数採用されています。もちろん《王冠泥棒、オーコ》や《夏の帳》なども採用されており、デッキパワー重視のグッドスタッフとなっています。
マナ基盤に不安を抱えることが多かったSultaiカラーでしたが、《アーカムの天測儀》のおかげでデッキが安定しており、基本地形も多いので《基本に帰れ》や《血染めの月》などにも耐性が付きました。
☆注目ポイント
《アーカムの天測儀》に加え、デッキ内の優秀な緑のクリーチャーを《緑の太陽の頂点》でサーチしてこれるため、多色ながらデッキの動きが安定しています。《緑の太陽の頂点》+《ドライアドの東屋》も含めると、ほかのデッキよりも速く《王冠泥棒、オーコ》を展開しやすく、このデッキの明確な強みの一つとなっています。
《王冠泥棒、オーコ》、《トレストの使者、レオヴォルド》など対処しなければならない脅威が多く、Miracles以外のフェアデッキに非常に強いデッキです。ハンデスが不採用で、打ち消しの枚数も少なめなのでコンボに対しては不安が残りますが、メインには《トレストの使者、レオヴォルド》や墓地対策用の《漁る軟泥》、サイドには追加の墓地対策や 《カラカス》、《三なる宝球》、《夏の帳》などが採用されているので見た目よりも相性は悪くないようです。
《探索する獣》はレガシーでは珍しいクリーチャーですが、隙がなく主にプレインズウォーカー対策として機能します。《緑の太陽の頂点》でサーチしてこれるので、1枚のみの採用となっています。除去耐性こそありませんが、環境の主要な除去である《突然の衰微》や《稲妻》に耐性があるため、デッキによっては意外と対処されにくかったりします。
Legacy Format Playoff
Death&Taxes復権
2019年12月10日
- 1位 Death and Taxes
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Bant Snow Control
- 4位 Maverick
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Death and Taxes
- 7位 Reanimator
- 8位 Dark Depths
トップ8のデッキリストはこちら
MOで開催されたレガシーの大規模なイベントで、参加するにはフォーマットポイントが必要なのでレベルの高いイベントとなる傾向にあります。
今大会を制したのは、《レンと六番》の退場により復権してきたDeath and Taxesでした。プレイオフに2名の入賞者を出すなど安定した成績で、上位に多数入賞していたDelver系にも強かったこともあり、良い立ち位置だったようです。
Legacy Format Playoff デッキ紹介
「Death and Taxes」「Izzet Delver」
Death and Taxes
3 《カラカス》
1 《地平線の梢》
4 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》
1 《ミシュラの工廠》
-土地 (25)- 4 《ルーンの母》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《ファイレクシアの破棄者》
3 《ちらつき鬼火》
2 《ミラディンの十字軍》
2 《護衛募集員》
1 《聖域の僧院長》
1 《宮殿の看守》
-クリーチャー (24)-
《レンと六番》によって非常に肩身の狭い立場に追いやられていたDeath and Taxesでしたが、禁止改定により環境が変わり見事に復権を果たしました。
再びタフネス1のクリーチャーを採用できるようになったので《ルーンの与え手》を採用する必要がなくなり、《ルーンの母》や《スレイベンの守護者、サリア》、《ちらつき鬼火》などを強く使えるようになりました。
《リシャーダの港》や《不毛の大地》によるマナ否定は《アーカムの天測儀》によって多色化した多くのフェアデッキに刺さり、《スレイベンの守護者、サリア》とともに相手の行動を制限していくコントロール戦略は健在です。
☆注目ポイント
プロテクション(黒)と(緑)を持つ《ミラディンの十字軍》は、最近数を増やしてきていたSultai系とのマッチアップで対処されにくい脅威として活躍するクリーチャーで、装備品と相性も良く《王冠泥棒、オーコ》対策としても機能します。
《宮殿の看守》は除去として機能するクリーチャーで、《護衛募集員》からサーチすることができます。《ちらつき鬼火》によって能力を使い回すことが可能で、「統治者」を維持できれば容易にアドバンテージを取り続けることができます。
サイドの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は、Miraclesなどフェアデッキに対する追加の勝ち手段です。《霊気の薬瓶》によって脅威を展開するこのデッキに対して、《意志の力》などのカウンターをサイドアウト、または減らしてくる相手に刺さります。《王冠泥棒、オーコ》を対策しないとゲームが終わってしまうので、《議会の採決》が3枚と多めに採られています。以前と比べると減少傾向にありますが、《真の名の宿敵》にも対策する必要があるため、必ず採用しておきたいスペルの1枚です。
《耳の痛い静寂》は1マナと軽く非常に使いやすいコンボ対策カードです。クリーチャー呪文が主力のこのデッキにほぼ影響がないのも強みで、高速コンボとの相性が改善されました。
Izzet Delver
禁止改定以前にもEternal Weekend Asia 2019で準優勝するなど、コンスタントに結果を残し続けていたIzzet Delver。
グランプリ・ボローニャ2019でもトップ4に入賞しており、今大会でも準優勝という好成績を残していることからも、現環境の最高のDelver系の一つとして間違いなさそうです。《若き紅蓮術士》や《戦慄衆の秘儀術師》など積極的にスペルをプレイすることでアドバンテージが取れるクリーチャーが複数採用されているため、Delver系の中でもミッドレンジ寄りのSultaiバージョンなどと比べると最も軽い構成となっています。
☆注目ポイント
《レンと六番》の退場により、《若き紅蓮術士》が強く使えるようになりました。除去されずに生き残ればトークンによる物量で圧倒することができ、横に並ぶので《王冠泥棒、オーコ》を含めたプレインズウォーカーを戦闘で倒しやすくなります。
2色なのでデッキの動きが安定しており、相手の《不毛の大地》などアンチ特殊地形に耐性があります。そのため、逆にサイドに忍ばせてある《血染めの月》で相手をロック状態に持ち込むこともできます。主な妨害スペルをカウンターに頼っているため、Delver系の中ではコンボに弱くなります。また青赤という色の構成上火力が主な除去となっているため、《タルモゴイフ》や《聖遺の騎士》、《グルマグのアンコウ》など高タフネスのクリーチャーには苦戦を強いられます。
サイドにはこのデッキの弱点をカバーするカードが複数見られます。《厚かましい借り手》は、このデッキにとって厄介な高タフネスのクリーチャーやマリッドレイジトークン、《虚空の杯》など様々なパーマネントを対処することができます。《タルモゴイフ》や《グルマグのアンコウ》をバウンスすることで、テンポ面でほかのDelver系に有利をつけることができ、同じ3マナの《真の名の宿敵》と競合しますがメインから採用しているリストも見られます。
打ち消し以外のコンボ対策として《紅蓮光電の柱》も採用されています。《無のロッド》は《アーカムの天測儀》もシャットアウトすることもできるので、必ずサイドに1枚は採用しておきたいカードです。
《王冠泥棒、オーコ》対策にもなる《紅蓮破》を使えることが青赤の強みなので、フェアデッキを使いたいけど《王冠泥棒、オーコ》ミラーはやりたくないというプレイヤーにもお勧めできるデッキの一つです。
Eternal Party 2019(大阪)
Omni Sneakが関西のトップに
2019年12月14日
- 1位 Omni Sneak
- 2位 Bant Snow Miracles
- 3位 Omni Sneak
- 4位 4C Snow Blade
- 5位 Bant Infect
- 6位 Tin Fins
- 7位 Bant Maverick
- 8位 Lands
福留 友
トップ16のデッキリストはこちら
参加者243名とまだまだ熱いフォーマットのレガシー。Bant Snow Miraclesが制したグランプリ・ボローニャ2019が記憶に新しいですが、あれからメタはどのように動いたのでしょうか。
メタゲームブレイクダウンをみると、今大会のプレイオフではSultai DelverやIzzet DelverといったDelver系は母数の多さに反して見られず、Bant Snow Miraclesが最大勢力で、プレイオフにも残り準優勝と安定した成績を残し続けています。
今大会を制したのは、《全知》と《騙し討ち》の両方を採用したOmni Sneakでした。プレイオフには相性の悪いDelver系が不在で、多くのデッキがフェアデッキとのマッチアップに寄せていたこともあり今大会では良チョイスでした。
Eternal Party 2019(大阪) デッキ紹介
Omni Sneak
《王冠泥棒、オーコ》を無視できるコンボデッキは、現環境では非常に強い選択肢の一つでした。現在幅を利かせている《王冠泥棒、オーコ》ですが、このデッキの《実物提示教育》から《グリセルブランド》の前ではあまり意味を成さず、たとえ「大鹿」にされても14枚のカードを引いてしまえばアドバンテージ差で押し切ることも容易です。
デッキパワーが高く打ち消しも多数搭載しているため、半端な妨害は軽く乗り越えていけます。Bant Snow Miraclesに有利で、《全知》パッケージを搭載しているため復権してきたDeath and Taxesにも強いデッキです。
☆注目ポイント
《レンと六番》の退場によってDeath and TaxesやMaverickといったデッキも復権してきているので、《騙し討ち》プランを妨害してくる《ファイレクシアの破棄者》や《カラカス》対策のために《全知》は欠かせません。《全知》を出した後の《狡猾な願い》から《蟻の解き放ち》のプランは、《ファイレクシアの破棄者》や《カラカス》では対策されません。
《実物提示教育》や《狡猾な願い》といったキースペルを確実に通すために、《すべてを護るもの、母聖樹》がサイドに2枚採られています。特にサイド後カウンターを増量してくるBant Snow Miraclesとのマッチアップで強さを発揮する土地で、最近は《アーカムの天測儀》の影響で《基本に帰れ》が効きにくくなったこともあり、減少傾向にあるのもこの土地の強さを後押ししています。
ヘイトベアーの対策は重要なので、サイドには《稲妻》、《突然のショック》、《コジレックの帰還》、《紅蓮地獄》といった除去やスイーパーも多めに採用されています。特に《コジレックの帰還》は《ルーンの母》のプロテクションを無視できるのも大きく、復権してきているDeath and Taxesとのマッチアップでは強力なスイーパーとして機能します。
総括
クリーチャー以外の勝ち手段であった《レンと六番》を失ったDelver系はコントロールを押し切ることが難しくなり、《終末》が使えるMiraclesは現環境最高のデッキの一つとして考えて間違いなさそうです。
2019年に登場したカードは歴代でも非常にパワーレベルが高く、レガシーを含めて様々なフォーマットに多大な影響を与えました。《王冠泥棒、オーコ》はレガシーにおいてもこのプレインズウォーカーのために緑を足すなど、フェアデッキの必須カードとして定着しています。中にはメインから採用されている《夏の帳》が強すぎるのではないかという意見も見られますが、Temur Delver一強だった旧環境と比べると多様性を取り戻しているのもあり、先日の禁止制限告知ではノーチェンジでした。今後のメタゲームにも要注目です。
以上、USA Legacy Express vol.161でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!