Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/01/21)
モダン環境に再び激震が走る
1月13日月曜日、モダンにとって重大な禁止告知が発表されました。《王冠泥棒、オーコ》、《オパールのモックス》、《マイコシンスの格子》が一挙に禁止となったのです。またしてもモダンのメタゲームは大きな変化を迎えることになるでしょう。
昨年の中頃、《信仰無き物あさり》の禁止によってモダンにテコ入れが行われました。同様に『灯争大戦』、『モダンホライゾン』、『エルドレインの王権』の発売がモダンの風景に変化を起こしたことはご存知の通りです。
《王冠泥棒、オーコ》
みなさんが大好きな胸元全開のプレインズウォーカーは、徐々に下の環境で禁止されていっています。Magic Onlineのモダンリーグ、プレリミナリのどちらのデータを参照しても、《王冠泥棒、オーコ》はモダンでパフォーマンスが高いデッキの40%で使用されていました。プレインズウォーカーというのは結局”フェア”なカードでしかないので(ここで”フェア”という言葉が最適ではないかもしれませんが)、40%というのは驚異的な支配率です。
《王冠泥棒、オーコ》は印刷された数字に難があったことは明らかであり、単体で《最高工匠卿、ウルザ》デッキにフェアな戦い方を実現させ、なおかつアーティファクトシナジーもサポートできるカードでした。この禁止には誰も驚かなかったことでしょう。《王冠泥棒、オーコ》は印刷されたこと自体が過ちでしたから、個人的には満足のいく禁止です。
《マイコシンスの格子》
《マイコシンスの格子》は《大いなる創造者、カーン》を1枚コンボのカードにしていました。とはいえ、このコンボは《大いなる創造者、カーン》が攻撃で陥落しないことが求められるだけでなく、合計で10マナかかります。
《大いなる創造者、カーン》はメインデッキからついでにアーティファクト戦略を対策してくるのは面白くないと常々思っていましたが、アーティファクトが関与しないマッチアップや戦闘で《大いなる創造者、カーン》を攻められるマッチアップでは決してオーバーパワーなカードだとは思っていませんでした。しかし、ウィザーズはそうは思っていなかったようですね。
《マイコシンスの格子》が禁止になったことで《大いなる創造者、カーン》はマイナーなランプ戦略で姿を見せなくなるでしょう。ウルザランドを用いるデッキも《大いなる創造者、カーン》の採用を真剣に考え直さなければなりません。ただ、エルドラージトロンは採用できるカードの幅が狭いため、[-2]能力でサーチできるカードが満載のサイドボードとともに《大いなる創造者、カーン》を採用し続けるのが正しい可能性が残ります。
この禁止については少々驚いていると言わざるを得ません。サイドボードの枠を[-2]能力のために割く機会損失は極めて大きいため、日頃から《大いなる創造者、カーン》は少し過大評価されていると感じていたのです。
ただし、いずれにしてもサイドボードの幅が狭いエルドラージトロンはここでも例外的な存在でした。もしかしたらウィザーズの内部データではエルドラージトロンが思い描くよりも少々強いことを示していたのかもしれません。また、《オパールのモックス》が禁止になったことで常在型能力が活躍する場は以前よりも減るでしょうから、《大いなる創造者、カーン》も同時に弱体化することになります。
《オパールのモックス》
モダン設立から約9年。絶え間なく禁止の声が上がっていた《オパールのモックス》はとうとうモダンで禁止となりました。最高の相棒、どうか安らかに眠ってください。絶対に君のことは忘れません。世間の反応は、《オパールのモックス》は長い間悪さをしてきた報いを受けたといったもののようです。長年にわたって多くのデッキを一回り強いものにしてきましたが、その一方でモダンではアーティファクトデッキが数を増やしていきました。
親和や《硬化した鱗》などのアーティファクトアグロ、《クラーク族の鉄工所》を用いたコンボ、ランタンコントロールや《発明品の唸り》プリズンといったロック戦略、直近では《最高工匠卿、ウルザ》を使ったミッドレンジやコントロールさえ生まれています。こういったデッキの多くを愛してきた私としては、今回の禁止を客観的に判断できません。もちろん、《オパールのモックス》を運用できるデッキは例外なく競技レベルになり得るのは、一種の問題の兆候なのではないかという主張は成り立つと理解しています。2019年の早々から、オールイン要素が強く柔軟性が低い《オパールのモックス》戦略の立場を悪くするカードが多く登場しました。《クラーク族の鉄工所》コンボが支配していた時代は《石のような静寂》しかありませんでしたが、それ以降《大いなる創造者、カーン》《溜め込み屋のアウフ》《活性の力》といった対策が環境に導入され、《ダークスティールの城塞》はプレイアブルではないと言えるほど頼りない存在になってしまったのです。
しかし同時にアーティファクト戦略の幅を広げる《最高工匠卿、ウルザ》や《アーカムの天測儀》といった新カードも出てきました。すべてに決着をつけるため、ウィザーズは環境に長く残ってきた大きな柱のひとつを抹消し、ウルザデッキに壊滅的なダメージを与えることにしました。
モダンの未来
3枚の禁止がモダンを一層楽しいものにする可能性はあるでしょう。しかし、心配事がひとつあります。モダンの魅力の大部分は、ローテーションがないフォーマットとして比較的安定していることにあったのです。2019年に印刷されたカード、ロンドンマリガンの導入、《信仰無き物あさり》と《オパールのモックス》の禁止。去年モダンに触れてこなかった人からすれば、今のモダンはかろうじてモダンだと認識できるものになってしまっていることでしょう。
それぞれに良いところも悪いところもありますが、今のモダンは以前のものとほぼ別物です。私はモダンをお気に入りのフォーマットとしてずっと位置付けてきましたが、現在のモダンには懐かしさを感じづらく、以前ほど熱狂的になれていないという印象を抱いています。
では、モダンで勝つことを目標とする場合にはどこへ向かえば良いでしょうか?環境に残ったベストカードはおそらく《むかしむかし》でしょう。感染、ドルイドコンボ、《原始のタイタン》デッキは確立した戦略でありながら《むかしむかし》を有効に運用できます。
『テーロス還魂記』はあと数日 で発売されますが、《原始のタイタン》デッキで使える新たなツール、そして《太陽冠のヘリオッド》が収録されています。《太陽冠のヘリオッド》と《スパイクの飼育係》は無限ライフのコンボを成立させ、1枚の《集合した中隊》から一気に揃えることもできます。《太陽冠のヘリオッド》は新たなデッキたちを生み出すことでしょう。
ウルザランドは相変わらずタップすれば7マナ出ますし、《謎めいた命令》を用いたコントロールは環境のサイドライン際で粘っていくはずです。あるいは他人がプレイアブルではないと評価しようとも、自分のやっていることが最強なんだと主張するプレイヤーも半数近くいるでしょう。
パイオニアのプレイヤーズツアーと世界選手権が控えているため、個人的にはモダンに多大な時間を使う予定はしばらくありません。みなさんが生まれ変わったモダンの基礎を理解していく様子をサイドライン際から見守ろうと思います。
読んでいただきありがとうございました。また次回。