By Hiroshi Okubo
“学生最強を決める戦い”。
そういった触れ込みで開始されたこの『マジック・インターハイ』に集まった21チーム63名の学生たちは今や2チーム6名に絞られ、最後の試合に臨まんとしていた。
とはいえ、若い彼らの面持ちはフレッシュで、ピリピリした雰囲気はまったく感じられない。チーム戦故にすぐ隣に友人が座していることも関係があるかもしれないし、「対戦相手も自分たちと同じ学生である」という点に起因する一体感のようなものも働いているのかもしれない。
しかしそれでも。勝負は勝負であり、勝ち負けが存在する。ジャッジがテーブルにトロフィーを持ってくると、6人の視線が一か所に集まった。
白井と平田、齋藤の3名が在籍している横浜国立大学はその名の通り横浜の国立大学であり、”横国”の呼称でも知られる有名大学だ。「B’z」の稲葉 浩志氏(教育学部)や眞鍋かをり女史(教育人間科学部)の出身校としても知られており、周辺には常磐公園や三ツ沢公園といった公園もあってのびのびとした環境も魅力だ。
また、中台らの所属する早稲田大学もまた言わずと知れた有名大学であろう。薩摩藩士にして第8代目内閣総理大臣である大隈 重信が創立した「東京専門学校」をその前進とする、歴史ある名門大学であり【準決勝】で実現した早慶戦で見事に勝利を収め、この決勝戦へと駒を進めている。
6名の役者たちがマリガンチェックまでを終えたところで、「学生最強」の栄冠を賭した決戦の火蓋が切って落とされた。
A卓 Game 1
「白青《パンハモニコン》」操る中台と「赤黒バーン」操る白井のマッチアップは、中台がどれだけ序盤を耐えることができるかが焦点となった。中台は1マリガンながらも除去が2枚ある初手をキープする。
中台 圭介(手前)/白井 圭介(奥)
白井が早々に仕掛けた《ファルケンラスの過食者》に《次元の歪曲》を撃ち込み、《密輸人の回転翼機》のアタックに《神聖な協力》と的確に除去を合わせることで盤面のリードを取らせまいと凌いだ。中台にとってはここまでは予定調和、あとは3枚目、4枚目の土地を引くことができるか否か……
だが、マーフィーの法則曰く「想定し得る最悪の状況はいつか必ず起こる」ものである。中台は土地が2枚で止まってしまい、トップデッキした《停滞の罠》を手札に加えて無言でターンを返す。返す白井も同様に土地が止まってしまうが、同じマナスクリューと言えどもデッキ構成が非常に軽い仕様になっている白井がクリーチャー呪文を連打することでペースを握る。
《発明者の見習い》、《夜市の見張り》、《発明者の見習い》、《ピア・ナラー》と次々にクリーチャーを叩きつけながら《街の鍵》でバックアップしつつ中台のライフを削りっていく。
この猛攻に対してようやく引き込んだ3枚目の土地をセットし、《反射魔道士》でわずかに猶予を得たかと思われた中台だったが、さらに上手を行った白井の《街の鍵》による《夜市の見張り》アンブロッカブル付与+《癇しゃく》「マッドネス」によって膝を屈することとなった。
白井 1-0 中田
Game 1 C卓
島村が《残忍な剥ぎ取り》2体、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と蜘蛛トークン2体という盤面を築き上げているのに対し、齋藤も《新緑の機械巨人》と《森の代言者》(「+1/+1」カウンターが4つ)、《永遠の見守り》2枚と負けていない。
齋藤は《永遠の見守り》によって6/6警戒・トランプルとなっている《新緑の機械巨人》で攻撃を仕掛けるが、島村はこの機を待っていたと言わんばかりに2体の《残忍な剥ぎ取り》をブロックに向かわせて《新緑の機械巨人》を打ち取ると《餌食》で《森の代言者》を除去する。
迂闊なアタックをしっかりと諫められ、一気に勢力図が塗り替わって苦境に立たされる齋藤の前に島村が突き付けたのは《膨らんだ意識曲げ》。これによって齋藤の手札に土地しかないことを確認すると一挙に攻勢を仕掛ける。
齋藤はトップデッキした《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でブロッカーを用意するも、島村がプレイした《過去との取り組み》が《約束された終末、エムラクール》を回収するのを見ると苦い表情を浮かべながらカードを片付け、すでに2ゲーム目に差し掛かっている仲間・平田の盤面に目を移した。
Game 2 B卓
齋藤とともに、平田の「《霊気池の驚異》デッキ」と斉藤の「赤白機体」の試合に目を移そう。
斉藤 徹(手前)/平田 弘達(奥)
すでに第1ゲームは平田が《霊気池の驚異》から繰り出した《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で暴力的に勝利をもぎ取っていたが、第2ゲームもまた終盤へ差し掛かっていた。
《密輸人の回転翼機》や《スレイベンの検査官》の軍勢に押し込まれてゆく平田はすでにかなり苦しそうな様子だ。
最後の望みを託してプレイした《安堵の再会》も状況を打破するカードを見出すことはできず。平田はライフメモにバツ印をつけ、第3ゲームへと進むことを選んだ。
平田 1-1 斉藤
Game 2 A卓
中台が先んじて《面晶体の這行器》をプレイし、白井が《屑鉄場のたかり屋》で攻勢をかけるスタート。これに《呪文捕らえ》を出して空と地上のすれ違いのダメージレースを挑みに行く中台だったが、白井の手から繰り出された《無許可の分解》によって攻守の逆転はならなかった。
第1ゲームのように押し込まれてしまう展開を避けるべく、体勢を立て直さんと《変位エルドラージ》をプレイして様子を窺う白井を中台のプレイした《反逆の先導者、チャンドラ》が一気に追い詰める。
その「-3」能力が《変位エルドラージ》を焼き払い、続くターンにプレイした《希望を溺れさせるもの》までもが2枚目の《無許可の分解》で除去されると中台のライフは5まで減り、もはや一刻の猶予もなくなってしまう。
中台は2枚目の《変位エルドラージ》をブロッカーとしてプレイするも、白井は手札から零れ落ちた3枚目の《無許可の分解》が最後の希望を摘み取った。
白井 2-0 中田
Game 3 B卓
白井がチームに先勝を届けたところで、B卓でも勝負が決するところだった。
最速で起動された《霊気池の驚異》が《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を見つけ出し、斉藤から土地を奪い去ると盤面は完全に崩壊してしまう。
土地が2枚しかない状況でトップデッキしたカードは斉藤をあざ笑うような《停滞の罠》。
もはやこれまでと天を仰ぎ見たとき、斉藤がマジック・インターハイの勝者が決した――
平田 2-1 斉藤
マジック・インターハイの優勝者は白井/平田/齋藤(横浜国立大学)!
おめでとう!!