はじめに
近年、MTGアリーナが導入されたことで、Magic: The Gatheringのオンラインイベントはかつてないほどの隆盛をみせています。自宅にいながらグランプリと同様のハイレベルなプレイと緊張感、達成感を味わえるものです。
本稿では盛り上がりをみせるオンライン上で開催された大会結果をまとめて、みなさんにお届けしていきたいと思います。今回は先週末に開催されたプレイヤーズツアー・オンライン1&2の結果を振り返っていきましょう。
プレイヤーズツアー・オンラインとは
MTGアリーナで開催されるプレイヤーズツアーであり、今回は2週間の間に計4回実施される。招待プレイヤー数は1000名以上にのぼり、4回の内いずれかへ参加可能。各イベントごとに順位に応じた賞金が用意され、一定の成績を残すことでプレイヤーズツアーファイナルへの出場権獲得も与えられる。
プレイヤーズツアー・オンライン1
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Elias Watsfeldt | ティムール再生 |
準優勝 | Dominik Görtzen | ティムール再生 |
トップ4 | Joonas Eloranta | ティムール再生 |
トップ4 | Louis Samuel Deltour | バントランプ |
トップ8 | Simon Goertzen | ティムール再生 |
トップ8 | 林 眞右 | バントランプ |
トップ8 | Jeong Woo Cho | ティムール再生 |
トップ8 | 野稲 和弘 | ティムール再生 |
初回となったプレイヤーズツアー・オンライン#1は参加者195人と、やや小規模な大会となりました。しかし、揃ったのは精鋭ばかり。
【お知らせ】日本語Twitchチャンネルにて「2020プレイヤーズツアー・オンライン」オンライン1のホスト配信を開始しました!
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) June 13, 2020
参加者約200名の中にはMPL6名・ライバルズ5名・殿堂12名の姿も!お見逃しなく!
⬇配信URLhttps://t.co/pObHc1ZAmm
⬇観戦者向け情報https://t.co/pn12zn63L5#PTArena1 pic.twitter.com/whRBW7nZCL
テーブルトップと違いフィーチャーエリアがないことが悔やまれましたが、それでもいくつもの名勝負がモニター越しに生まれました。トップ8は2種類のアーキタイプのみとかなりいびつなデッキ分布となり、ティムール再生が6名、バントランプが2名となっています。バントランプはティムール再生キラーとして位置づけられていましたが準決勝までに敗北してしまい、決勝戦はティムール再生のミラーマッチとなりElias Watsfeldt選手が優勝しました。
トップ8デッキリストはこちら。
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 初日 | 2日目 |
---|---|---|
ティムール再生 | 79 | 44 |
ジャンドサクリファイス | 30 | 17 |
バントランプ | 17 | 12 |
スゥルタイランプ | 14 | 7 |
アゾリウスコントロール | 12 | 1 |
赤単アグロ | 11 | 4 |
エスパーコントロール | 4 | 2 |
グルールアグロ | 4 | 2 |
マルドゥ騎士 | 4 | 1 |
緑単アグロ | 3 | 3 |
ラクドスサクリファイス | 3 | 0 |
ティムールアドベンチャー | 3 | 1 |
その他 | 11 | 2 |
合計 | 195 | 96 |
同大会のメタゲームブレイクダウンになりますが、まず目を引くのは圧倒的なティムール再生の数でしょう。初日の40%超えもさることながら、2日目はさらにシェアを伸ばしています(約46%)。このデッキがメタゲームの中心に位置することは間違いなく、ミラーマッチを意識した構築もみられました。メインボードにとられることの多い《焦熱の竜火》を削り、カウンターの増量や《夜群れの伏兵》を採用していたのです。
次点でシェアが高かったのは、2番手が定位置となったジャンドサクリファイスですが、ティムール再生の使用者数をみるに厳しい選択となったようです。《強迫》《燃えがら蔦》こそあるものの、直接対決は不利であるため、苦戦が続きそうです。
3番手に位置するのはティムール再生へのメタデッキであるバントランプです。マナ加速によりティムール再生と同速度で動け、《時を解す者、テフェリー》《ドビンの拒否権》と《荒野の再生》の動きを止めるカードが多用されています。使用者数上位3デッキが2日目もシェアを伸ばしていることからわかるように、ほかに比べて明確にデッキパワーが高いものといっていいでしょう。
ここで視点をかえて、使用者数から突破率へ目を移してみましょう。すると目を引くものが2つあります。まずは突破率100%を誇る緑単アグロ。同じアグロデッキながら骨太のクリーチャーたちでのビートダウンを目指し、展開力やダメージ効率こそ赤単に一歩遅れをとるものの、環境的に優秀な《水晶壊し》を採用できる点やサイズ感が魅力です。《変容するケラトプス》《探索する獣》のように速攻もちのクリーチャーもいるため、相手の隙をつきダメージを押し込みやすい構造となっています。
もう1つはバントランプであり、なんとティムール再生とジャンドサクリファイスを上回る70%の突破率を誇ります。ティムール再生が多いフィールドでは優れた選択肢であることは、この大会の結果からも証明されています。
バントランプ
2 《島》
2 《森》
4 《寓話の小道》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
2 《啓蒙の神殿》
2 《神秘の神殿》
2 《豊潤の神殿》
-土地 (28)- 2 《ハイドロイド混成体》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (5)-
3 《霊気の疾風》
1 《ドビンの拒否権》
2 《空の粉砕》
1 《次元の浄化》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《サメ台風》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《伝承の収集者、タミヨウ》
3 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-呪文 (27)-
Hareruya Hopes 林 眞右選手はバントランプを使用し、見事プレイヤーズツアー・オンラインでトップ8の座を射止めました。これまではジェスカイルーカに弱かったため鳴りを潜めていましたが、スタンダードからの退場により復活してきました。
マナ加速からプレインズウォーカーや《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によってゲームを組み立てていきます。ティムール再生に対しては《時を解す者、テフェリー》を軸に、《世界を揺るがす者、ニッサ》《サメ台風》のクロックを《ドビンの拒否権》がバックアップします。サイドボードにはしっかり《空の粉砕》と単体除去がとられ、アグロデッキもとりこぼさないようになっています。
打倒ティムール再生を掲げ、このデッキは構築されています。2種類のカウンターにより《荒野の再生》自体を着地させず、仮に着地した場合は《時を解す者、テフェリー》がその存在自体を無効化します。《サメ台風》や《厚かましい借り手》などティムール再生側にも対処手段はありますが、それ以外では対処しづらいため非常に優位にゲームを進められるようになります。
サイドボードには追加の《ドビンの拒否権》と《夜群れの伏兵》がとられ、インスタントスピードでのゲームへ移行できるように構築されています。特に《ドビンの拒否権》は《荒野の再生》《発展/発破》に対して絶大な効果を誇ります。
このデッキのオススメ!
ティムール再生一強のメタゲームに風穴を開ける存在となったバントランプ。《時を解す者、テフェリー》を使えるだけではなく、自由度が高くメタゲームに合わせた構築が魅力です。だからこそプレイヤーの力量が問われます。ティムール再生に有利なデッキを使いたい、メタゲーム分析に自信があるあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/6/5
- コヴァルスキ先生の新環境デッキ講座 ~勝ち組を探せ!~
- グジェゴジュ・コヴァルスキ
プレイヤーズツアー・オンライン2
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 村栄 龍司 | ティムール再生 |
準優勝 | Jean Emmanuel Depraz | ティムール再生 |
トップ4 | Allison Warfield | ティムール再生 |
トップ4 | Christoffer Larsen | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | Eduardo Sajgalik | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | Eli Loveman | ラクドスサクリファイス |
トップ8 | Kevin Perez | スゥルタイランプ |
トップ8 | Abe Corrigan | ティムール再生 |
参加者242名の頂点にたったのはチーム曲者所属である、村栄 龍司選手!決勝戦はMPL所属のJean Emmanuel Depraz選手とティムール再生のミラーマッチとなり、熱戦を繰り広げました。手に汗握る試合は最終戦までもつれ込み、見事《発展/発破》がゲームを決めました。
#1に比べるとティムール再生のトップ8入賞数は減っていますが、それでも全体の半数にあたる4名となっています。特筆すべきはバントランプの不在と、サクリファイス系の躍進でしょう。不利なメタゲームながら3名がトップ8に入賞したのは興味深い結果です。
トップ8デッキリストはこちら。
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 初日 | 2日目 |
---|---|---|
ティムール再生 | 71 | 46 |
ジャンドサクリファイス | 32 | 15 |
スゥルタイランプ | 29 | 12 |
バントランプ | 20 | 13 |
赤単アグロ | 14 | 7 |
アゾリウスコントロール | 13 | 7 |
ラクドスサクリファイス | 12 | 8 |
緑単アグロ | 8 | 4 |
ティムールアドベンチャー | 7 | 2 |
その他 | 36 | 5 |
合計 | 242 | 119 |
同大会のメタゲームブレイクダウンになります。#1には及ばないものの、ティムール再生の使用者数は全体の30%にのぼります。デッキパワーの高さだけではなく、不利なデッキがバントランプしかないためでしょう。そのバントランプは2番手のジャンドサクリファイスに不利であるため、思ったほど数が伸びていません。結果的にティムール再生がベストな選択肢と考えたプレイヤーが多かったようです。
サクリファイス系、バントランプ、赤単アグロと続き似通った部分はありますが、#1との明確な違いはスゥルタイランプの選択者の多さです。対ティムール再生戦では《時を解す者、テフェリー》が使用できるバントランプに軍配があがりますが、スゥルタイランプにも有利な点が存在します。
相手の手札に干渉する《思考消去》は後々の展開を読みやすく、ミッドレンジ/コントロールマッチでは早めにプレイしたい1枚となります。また、《戦争の犠牲》はパーマネントでゲームをコントロールしていくバントランプやジャンドサクリファイスに効果的です。《思考のひずみ》などサイドボードも優秀なカードがあるため、過剰にメタられず、かつメタゲームで優位に立つべく選択されたデッキなのでしょう。
ティムール再生
優勝した村栄選手のティムール再生をみていきたいと思います。ティムール再生を中心に回り始めたメタゲームは、ほかへ移ることなく加速しています。そのため段々とデッキリストにも変化が生まれています。
特徴的な部分は固定化されていた《選択》と除去の計7~8枚のスロットです。環境初期にみられるアグロ/ミッドレンジ/コントロールが一通り存在する場合、必要牌へのアクセスを早める《選択》とクリーチャー除去を採用することは一般的です。ですが、メタゲームの天秤が極端にティムール再生へと傾いた今、これらのスロットに何を入れるかで結果も違ってきます。大まかには《選択》とカウンター、カウンターと除去、カウンターと《夜群れの伏兵》の3パターンに分かれます。
今回のデッキはカウンターと除去が採用され、ミラーマッチやランプ戦を意識しつつもクリーチャーデッキをとりこぼさないように構築されています。《厚かましい借り手》や《霊気の疾風》のようにアグロとミラーマッチ両方のゲームへ干渉できるようになっています。
サイドボードにはインスタントタイミングでの仕掛けを増やすため、《夜群れの伏兵》と《終局の始まり》がとられています。ミラーマッチではカウンターを構えながら《荒野の再生》の設置を目指すのではなく、相手のターンにクリーチャーを展開しながらカウンターで妨害するクロックパーミッション戦略へ移行するようになっているのです。
このデッキのオススメ!
環境トップを走り続ける不動の1番手であるティムール再生。《時を解す者、テフェリー》《思考のひずみ》といったメタカードが増えてきましたが、カウンターの選択を変えたり、スイッチサイドボードを用いることで対応可能となっています。《荒野の再生》と《発展/発破》の爽快感、ゲームごとに戦略を変えたいあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/5/22
- 増田 勝仁のティムール再生 パーフェクトガイド ~土地を起こし続けたその先に~
- 増田 勝仁
今週末の勝ち組を探せ!!
全体的にアグロデッキは駆逐され、ボードコントロールに優れたデッキが勝ち組となった先週末のプレイヤーズツアー・オンライン。しかし、両大会ともにティムール再生が制したことから、より過剰なティムール再生メタが進むのではないでしょうか。
2番手に甘んじているジャンドサクリファイスよりも、環境に適応しつつあるバントランプ/スゥルタイランプは今後も増えていきそうです。手札破壊や打ち消しといった干渉呪文と《時を解す者、テフェリー》《燃えがら蔦》といったパーマネントによる対策を組み合わせて使用すべきでしょう。
ティムール再生とランプ系が中心となれば、一点突破のアグロデッキは狙い目かもしれません。インスタントスピードでバックアップされたクリーチャーデッキは攻略の糸口となりそうです。《エンバレスの宝剣》を採用した赤系アグロが勝ち組になるでしょう。
今週末にはプレイヤーズツアー・オンライン3&4が控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。